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第二部 32話 役目

ー/ー



「よぉ、久しぶりだな。『鬼』の時以来だろ?」
「……お久しぶりです」

 ギルバートの言葉に、俺は慎重に答える。
 一筋縄でいかないことは知っている。

「今回の件は連合が裏で糸を引いている。
 だがな? その連合を操ってるのは『鬼』の疑いがある」
「! ……それは」
 可能性は考えていたが、そこまで深刻なのか?

「ひとまず、それは良い。問題はお前だ。
 クレフ兄妹の兄。今回もお前は関係者なんだな」
「……好きで関わっているわけではないですよ」
 強めに見つめ返した。事実を言っているだけだ。
 
「分かった。ひとまずはそれで良い」
 俺の様子から何を得たのか、ギルバートは頷いた。

「状況は分かっているはずだ。
 今夜、ソフィア・ターナーが父親の仇討ちに入る」
「……」
「組合はそこに助太刀の体で介入する」
「美味しいところを持っていきたいということですか?」
「逆だ、バカ。
 美味しいところを持っていきたくないということだ」
「?」
 ギルバートは吐き捨てるように、切り返す。

「仇討ちの助太刀に入った奴らが仇に手を出してどうする?」

 ギルバートの言おうとしていることに気が付いた。
 今の状態では組合はレイン子爵に手を出せない。

 仇討ちの助太刀の体なのだから。
 それだけ大義名分を重視しているということか。
 そして、それは恐らく。

「レイン子爵を殺したくない?」

 ギルバートがにやりと笑った。
 なるほど。だからわざわざ組合長が現れたのか。

「あいつには伯爵領に逃げてほしいのさ」
「逃がす?」
「伯爵は連合に加入したが、それだけで攻め込んだら具合が悪い。
 連合側は仲間が加入しただけで攻撃されたと言い出すだろうよ」
「そうか。現時点では連合が介入する理由はない」
「分かったか? 今は王国と連合が理由を探しているんだ」
 俺は黙ってしまう。だとしたら。

「こちらの苦労に気付いてくれて嬉しいよ。
 公爵令嬢が動いたからには仇討ちは起こさなきゃならない。
 だが、レイン子爵には逃げてほしい。戦う理由にしたいからだ」
「じゃあ、俺への用件は……」

「手を貸せ」
 ギルバートの睨むような好戦的な笑みに息を呑んだ。

「仇討ちが始まったら利害は一致している。
 お前は予定通りにソフィア・ターナーを止めろ」
 さらに笑みを深める。

「監視は付けている。お嬢様の安全は保障してやるよ。
 こいつらがお嬢様の元まで連れて行く。そこも保証してやる」
 足止めした代わりにお膳立ては全てすると言う。

「だから、お前は止めろ」
 役目を果たせと言う。

 俺は確かに頷いた。



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「よぉ、久しぶりだな。『鬼』の時以来だろ?」
「……お久しぶりです」
 ギルバートの言葉に、俺は慎重に答える。
 一筋縄でいかないことは知っている。
「今回の件は連合が裏で糸を引いている。
 だがな? その連合を操ってるのは『鬼』の疑いがある」
「! ……それは」
 可能性は考えていたが、そこまで深刻なのか?
「ひとまず、それは良い。問題はお前だ。
 クレフ兄妹の兄。今回もお前は関係者なんだな」
「……好きで関わっているわけではないですよ」
 強めに見つめ返した。事実を言っているだけだ。
「分かった。ひとまずはそれで良い」
 俺の様子から何を得たのか、ギルバートは頷いた。
「状況は分かっているはずだ。
 今夜、ソフィア・ターナーが父親の仇討ちに入る」
「……」
「組合はそこに助太刀の体で介入する」
「美味しいところを持っていきたいということですか?」
「逆だ、バカ。
 美味しいところを持っていきたくないということだ」
「?」
 ギルバートは吐き捨てるように、切り返す。
「仇討ちの助太刀に入った奴らが仇に手を出してどうする?」
 ギルバートの言おうとしていることに気が付いた。
 今の状態では組合はレイン子爵に手を出せない。
 仇討ちの助太刀の体なのだから。
 それだけ大義名分を重視しているということか。
 そして、それは恐らく。
「レイン子爵を殺したくない?」
 ギルバートがにやりと笑った。
 なるほど。だからわざわざ組合長が現れたのか。
「あいつには伯爵領に逃げてほしいのさ」
「逃がす?」
「伯爵は連合に加入したが、それだけで攻め込んだら具合が悪い。
 連合側は仲間が加入しただけで攻撃されたと言い出すだろうよ」
「そうか。現時点では連合が介入する理由はない」
「分かったか? 今は王国と連合が理由を探しているんだ」
 俺は黙ってしまう。だとしたら。
「こちらの苦労に気付いてくれて嬉しいよ。
 公爵令嬢が動いたからには仇討ちは起こさなきゃならない。
 だが、レイン子爵には逃げてほしい。戦う理由にしたいからだ」
「じゃあ、俺への用件は……」
「手を貸せ」
 ギルバートの睨むような好戦的な笑みに息を呑んだ。
「仇討ちが始まったら利害は一致している。
 お前は予定通りにソフィア・ターナーを止めろ」
 さらに笑みを深める。
「監視は付けている。お嬢様の安全は保障してやるよ。
 こいつらがお嬢様の元まで連れて行く。そこも保証してやる」
 足止めした代わりにお膳立ては全てすると言う。
「だから、お前は止めろ」
 役目を果たせと言う。
 俺は確かに頷いた。