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第二部 12話 歳月

ー/ー



「……最近、ニナさんの人使いが荒くなってないか?」
「忙しいんじゃないかな。アッシュが教育係をやっているしね」
 
 俺の呟きに、肩の上からリックが答えた。
 そう言われてしまうと、唸る他にない。

 そのニナさんからの依頼で、俺達は魔物の討伐に向かっていた。
 馬車の上で俺が気にしているのは、その要員が俺一人ということだった。

「副隊長はアッシュさんを信頼してるんですよ」
「……そうか? 俺はニナさんが団長に似てきたんじゃないかと心配だぞ」

 御者台からの声に答える。
 今回は馬車の御者に騎士団の新人が付いていた。
 ニナさんからの謝罪か、それとも教育命令なのか。
 
「いやいや、謙遜しないで下さいよ」
「謙遜?」

 なんだろう、やけに俺のイメージが良い気がする。

「だってA級冒険者から絶賛されてたじゃないですか!」
「……なるほど」

 ここでもミアの言葉が効いてくるのか……。

「覚えておいて欲しいんだけど……」
「はい?」
「あいつは悪い奴だぞ」
「ははは。仲が良いんですね」

 反撃しようとしたが、冗談だと思われた。
 負け惜しみに溜息を吐く。大人しく馬車に揺られることにした。

「……到着です」

 御者台からの声に体を起こす。『ハーフエルフの森』だ。
 七年前の事件以来、管理能力が大きく失われた森は魔物の大量発生を繰り返していた。

「じゃあ、ここで待ってて。森から離れるのは良いけど、絶対に入らないでね」
「? はい」

 釘を刺すと、俺は森へと入っていった。
 数分も歩かずに、周囲が騒がしくなる。獣の姿をした魔物が集まって来た。
 こんなところまで縄張りが広がっているのか。

 殺気立った魔物達と睨み合う。

 最初に襲い掛かって来たのは怪鳥だった。
 空中から飛び掛かるタイミングに合わせて前へと転がる。
 同時にリックを長剣へ錬金して、下から斬りつけた。
 受身を取ると、怪鳥が地面に落ちる。

 その姿を眺めていた魔物たちが叫びを上げながら殺到した。

 俺はそれを一体ずつ処理してゆく。
 巨大な蜘蛛を貫いて、白い狼を裂いた。黒い大蛇を捌いて、竜人を切り捨てる。

 騒ぎに釣られて十分な魔物が集まってきたことを確認すると、俺はリックを改めて錬金した。
 作ったのは籠手と鎖。木の枝に鎖を掛けて、体を引き上げる。

 全体を俯瞰して、一際魔物が多い空間に当たりを付けた。
 そのまま鎖を駆使してその地点まで体を引っ張る。

 その間に、鎖の何本かを『神鋼糸』の束に錬金。
 着地点を囲む魔物を切り刻んだ。

 鎖で跳び、周囲を糸で引き千切る。
 後は、その繰り返しになっていた。

 俺は森から出ると、新人に声を掛けた。

「おい、もう良いぞ」
「これから戦闘ですか?」
「いやいや、終わったんだって」
「? そんなわけ――」

 新人が勝手に走り出す。
 すぐに戻ってくると、大人しく王都へと馬車を走らせた。
 心なしか、俺を見る目が変わっている気がする。

「やっぱり人使い荒くないか? 結構な数がいたぞ」
「日帰りなんだから文句ばかり言わない方が良いと思うよ」

 リックの言葉にもう一度唸る。

「でも、お嬢様の方を急にお休みにしちゃったんだぞ?」



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「……最近、ニナさんの人使いが荒くなってないか?」
「忙しいんじゃないかな。アッシュが教育係をやっているしね」
 俺の呟きに、肩の上からリックが答えた。
 そう言われてしまうと、唸る他にない。
 そのニナさんからの依頼で、俺達は魔物の討伐に向かっていた。
 馬車の上で俺が気にしているのは、その要員が俺一人ということだった。
「副隊長はアッシュさんを信頼してるんですよ」
「……そうか? 俺はニナさんが団長に似てきたんじゃないかと心配だぞ」
 御者台からの声に答える。
 今回は馬車の御者に騎士団の新人が付いていた。
 ニナさんからの謝罪か、それとも教育命令なのか。
「いやいや、謙遜しないで下さいよ」
「謙遜?」
 なんだろう、やけに俺のイメージが良い気がする。
「だってA級冒険者から絶賛されてたじゃないですか!」
「……なるほど」
 ここでもミアの言葉が効いてくるのか……。
「覚えておいて欲しいんだけど……」
「はい?」
「あいつは悪い奴だぞ」
「ははは。仲が良いんですね」
 反撃しようとしたが、冗談だと思われた。
 負け惜しみに溜息を吐く。大人しく馬車に揺られることにした。
「……到着です」
 御者台からの声に体を起こす。『ハーフエルフの森』だ。
 七年前の事件以来、管理能力が大きく失われた森は魔物の大量発生を繰り返していた。
「じゃあ、ここで待ってて。森から離れるのは良いけど、絶対に入らないでね」
「? はい」
 釘を刺すと、俺は森へと入っていった。
 数分も歩かずに、周囲が騒がしくなる。獣の姿をした魔物が集まって来た。
 こんなところまで縄張りが広がっているのか。
 殺気立った魔物達と睨み合う。
 最初に襲い掛かって来たのは怪鳥だった。
 空中から飛び掛かるタイミングに合わせて前へと転がる。
 同時にリックを長剣へ錬金して、下から斬りつけた。
 受身を取ると、怪鳥が地面に落ちる。
 その姿を眺めていた魔物たちが叫びを上げながら殺到した。
 俺はそれを一体ずつ処理してゆく。
 巨大な蜘蛛を貫いて、白い狼を裂いた。黒い大蛇を捌いて、竜人を切り捨てる。
 騒ぎに釣られて十分な魔物が集まってきたことを確認すると、俺はリックを改めて錬金した。
 作ったのは籠手と鎖。木の枝に鎖を掛けて、体を引き上げる。
 全体を俯瞰して、一際魔物が多い空間に当たりを付けた。
 そのまま鎖を駆使してその地点まで体を引っ張る。
 その間に、鎖の何本かを『神鋼糸』の束に錬金。
 着地点を囲む魔物を切り刻んだ。
 鎖で跳び、周囲を糸で引き千切る。
 後は、その繰り返しになっていた。
 俺は森から出ると、新人に声を掛けた。
「おい、もう良いぞ」
「これから戦闘ですか?」
「いやいや、終わったんだって」
「? そんなわけ――」
 新人が勝手に走り出す。
 すぐに戻ってくると、大人しく王都へと馬車を走らせた。
 心なしか、俺を見る目が変わっている気がする。
「やっぱり人使い荒くないか? 結構な数がいたぞ」
「日帰りなんだから文句ばかり言わない方が良いと思うよ」
 リックの言葉にもう一度唸る。
「でも、お嬢様の方を急にお休みにしちゃったんだぞ?」