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第二部 11話 中身と容器

ー/ー




「どうしたんだ、アリス? 急に出掛けようなんて……」
「良いから良いから!」

 聞き覚えのある声に目を向けると、アリスがブラウン団長の手を引いていた。

「あ、アリス―!」

 ナタリーがぶんぶんと手を振っている。
 俺達はちょうど市場で食べ歩きをしているところだった。

「何だ。アッシュ達と会う予定だったのか、それならそう言ってくれれば――」
 ブラウン団長がピタリと動きを止める。その視線はナタリーの隣で固定されていた。

 ――ソフィア様?

 ブラウン団長が声に出さず、口だけで呟いた。
 名前を出さない方が良いという判断だろう。

 口を開けて固まっている。こんなにも驚いたブラウン団長は初めて見た。
 無理もない。王族がナタリーの真似をしながら串焼きを齧っているのだ。
 
 それでも数秒で立て直して、俺の元へと歩み寄った。
 正直、それだけでも立派だと思う。

「お互いの情報を共有しよう。私はアリスに連れられて、ここに来た。以上だ」
 魔術師団長が一番酷い巻き込まれ方をしていた。

 一通り事情を説明すると、ブラウン団長は納得したように呟いた。
「なるほど。シェリーの差し金か……。ならばある意味では安全だろう」
「? そうなのですか?」
「ああ。安全を確保した上での提案だろう。ここにいる護衛以外も準備しているはずだ」
「……そういう方なのですね」

 ブラウン団長が頷いた。ならば大丈夫なのだろう。
 しかし……。

「心臓に悪いと言うか」
「それは否定しないが」

 とは言ったものの、護衛任務に助っ人が来たことで、俺はやっと余裕が出てきた。

 いつの間にか自己紹介を済ませていたアリスは、ナタリーと一緒にソフィアに構っている。
 困った表情を浮かべながらも、ソフィアは大きく抵抗することもない。

 しばらく歩き回っていると、さり気なくソフィアが歩み寄って来た。

「これが先生の日常なのね?」
「ええ。うるさいでしょう?」
「いいえ。賑やかで良いじゃない」

 子供らしく俺の手を握ると、嬉しそうにこちらを見上げる。
「今日は、勇気を出して良かった」

 無邪気に微笑む表情と真赤に光る魂は、まるで中身と容器が合っていないようだった。



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「どうしたんだ、アリス? 急に出掛けようなんて……」
「良いから良いから!」
 聞き覚えのある声に目を向けると、アリスがブラウン団長の手を引いていた。
「あ、アリス―!」
 ナタリーがぶんぶんと手を振っている。
 俺達はちょうど市場で食べ歩きをしているところだった。
「何だ。アッシュ達と会う予定だったのか、それならそう言ってくれれば――」
 ブラウン団長がピタリと動きを止める。その視線はナタリーの隣で固定されていた。
 ――ソフィア様?
 ブラウン団長が声に出さず、口だけで呟いた。
 名前を出さない方が良いという判断だろう。
 口を開けて固まっている。こんなにも驚いたブラウン団長は初めて見た。
 無理もない。王族がナタリーの真似をしながら串焼きを齧っているのだ。
 それでも数秒で立て直して、俺の元へと歩み寄った。
 正直、それだけでも立派だと思う。
「お互いの情報を共有しよう。私はアリスに連れられて、ここに来た。以上だ」
 魔術師団長が一番酷い巻き込まれ方をしていた。
 一通り事情を説明すると、ブラウン団長は納得したように呟いた。
「なるほど。シェリーの差し金か……。ならばある意味では安全だろう」
「? そうなのですか?」
「ああ。安全を確保した上での提案だろう。ここにいる護衛以外も準備しているはずだ」
「……そういう方なのですね」
 ブラウン団長が頷いた。ならば大丈夫なのだろう。
 しかし……。
「心臓に悪いと言うか」
「それは否定しないが」
 とは言ったものの、護衛任務に助っ人が来たことで、俺はやっと余裕が出てきた。
 いつの間にか自己紹介を済ませていたアリスは、ナタリーと一緒にソフィアに構っている。
 困った表情を浮かべながらも、ソフィアは大きく抵抗することもない。
 しばらく歩き回っていると、さり気なくソフィアが歩み寄って来た。
「これが先生の日常なのね?」
「ええ。うるさいでしょう?」
「いいえ。賑やかで良いじゃない」
 子供らしく俺の手を握ると、嬉しそうにこちらを見上げる。
「今日は、勇気を出して良かった」
 無邪気に微笑む表情と真赤に光る魂は、まるで中身と容器が合っていないようだった。