第二部 6話 公爵令嬢
ー/ー お嬢様との訓練は日課となりつつあった。
今日もいつもと同じように演習場で訓練を始めたのだが……どうしても集中できない。
いや、仕事である以上は許されないことだとは思うのだが、少し大目に見てほしい。
――ソフィアお嬢様の背後に見える大きなお屋敷。
――二階の窓から公爵夫妻がこちらを見ていた。
いやいや、公爵閣下がそこから見てたら、娘さんに剣を打ち込めないじゃないですか?
しかも、反応が分かりやすいのがまた困る。
ソフィアの連撃を弾く。
弾く方向を俺の方で操作して、お嬢様の体勢を崩した。
ここで、ソフィアのお腹辺りに剣を置けば良いのだが……ちらりと二階へと目を向ける。
――公爵閣下は口元を押さえ、目を大きく見開いているのがここからでも見えた。
――公爵夫人がこの世の終わりかと、両手で顔を覆っていた。
俺は一歩下がる。
「……良いですか? 今のように態勢が崩されることがないように次を考えて立ち回ってください」
「はい!」
妥協して取り繕う俺へと、元気いっぱいにソフィアが答える。
「? 今日は一段とやる気がありますね……?」
「ええ、昨日からお父様とお母様が王都に来ているのです」
――知ってます。
――授業参観かな?
しかも、ソフィアの動きがいつもより良い。
両手の短剣を少し長くして小型の小剣に変えたのもあるが、今日は明らかに張り切っていた。
――接待でもするべきなのだろうか?
――真剣勝負でもないし、お嬢様の教育に良ければ負けるくらいは全然構わないが。
「!」
一瞬、余計な事を考えたのが悪かった。
ソフィアが俺の剣を防いで、そのまま俺の懐へと飛び込んだ。
俺の腹へと肘を叩き込もうとする。俺は剣を片手で握り、空いた左手でソフィアの肘を流す。
流れに逆らわず、ソフィアが回転する。右の小剣を下段に払う。
俺は剣で弾いて――もう一方の小剣が俺の首へと払われていることに気が付いた。
予想できなかった一撃に慌てて下がる。
同時に相手の右足に一撃打ち込んで、さらに踏み込むことを防ぐ。
――ん?
――打ち込んで?
「っ!」
追撃しようとしたソフィアが右足の軽い痛みに驚いた顔を見せる。
そのまま、たたらを踏むように転んでしまった。
「今、惜しかったですよね? ね?」
「……はい。一瞬だけ本気で対応しましたよ」
寝転がったソフィアは無邪気に笑っている。両手を挙げて万歳すらしている。
俺が余裕を崩したことが余程嬉しいのだろう。
俺は――まさかクビ、だろうか?
いや、訓練だぞ。そんなはずないだろう。
ちら、と二階へと目を向ける。一瞬だけ目が合ったような気がした。
公爵夫妻は真剣な様子で何事か話し合っていた。
そして、窓から姿を消した。
――あれ? これって本当にまずいのでは?
――いや、それで済むのだろうか? 公爵だぞ?
ポケットに潜ませたリックが「また空回りしてない?」という声を出した。
俺は「してないよ」と答えようと――
「あ! お父様! お母さま!」
「!?」
――ソフィアお嬢様の言葉に、慌てて目を向ける。
公爵夫妻がこちらへと歩いてきた。
今日もいつもと同じように演習場で訓練を始めたのだが……どうしても集中できない。
いや、仕事である以上は許されないことだとは思うのだが、少し大目に見てほしい。
――ソフィアお嬢様の背後に見える大きなお屋敷。
――二階の窓から公爵夫妻がこちらを見ていた。
いやいや、公爵閣下がそこから見てたら、娘さんに剣を打ち込めないじゃないですか?
しかも、反応が分かりやすいのがまた困る。
ソフィアの連撃を弾く。
弾く方向を俺の方で操作して、お嬢様の体勢を崩した。
ここで、ソフィアのお腹辺りに剣を置けば良いのだが……ちらりと二階へと目を向ける。
――公爵閣下は口元を押さえ、目を大きく見開いているのがここからでも見えた。
――公爵夫人がこの世の終わりかと、両手で顔を覆っていた。
俺は一歩下がる。
「……良いですか? 今のように態勢が崩されることがないように次を考えて立ち回ってください」
「はい!」
妥協して取り繕う俺へと、元気いっぱいにソフィアが答える。
「? 今日は一段とやる気がありますね……?」
「ええ、昨日からお父様とお母様が王都に来ているのです」
――知ってます。
――授業参観かな?
しかも、ソフィアの動きがいつもより良い。
両手の短剣を少し長くして小型の小剣に変えたのもあるが、今日は明らかに張り切っていた。
――接待でもするべきなのだろうか?
――真剣勝負でもないし、お嬢様の教育に良ければ負けるくらいは全然構わないが。
「!」
一瞬、余計な事を考えたのが悪かった。
ソフィアが俺の剣を防いで、そのまま俺の懐へと飛び込んだ。
俺の腹へと肘を叩き込もうとする。俺は剣を片手で握り、空いた左手でソフィアの肘を流す。
流れに逆らわず、ソフィアが回転する。右の小剣を下段に払う。
俺は剣で弾いて――もう一方の小剣が俺の首へと払われていることに気が付いた。
予想できなかった一撃に慌てて下がる。
同時に相手の右足に一撃打ち込んで、さらに踏み込むことを防ぐ。
――ん?
――打ち込んで?
「っ!」
追撃しようとしたソフィアが右足の軽い痛みに驚いた顔を見せる。
そのまま、たたらを踏むように転んでしまった。
「今、惜しかったですよね? ね?」
「……はい。一瞬だけ本気で対応しましたよ」
寝転がったソフィアは無邪気に笑っている。両手を挙げて万歳すらしている。
俺が余裕を崩したことが余程嬉しいのだろう。
俺は――まさかクビ、だろうか?
いや、訓練だぞ。そんなはずないだろう。
ちら、と二階へと目を向ける。一瞬だけ目が合ったような気がした。
公爵夫妻は真剣な様子で何事か話し合っていた。
そして、窓から姿を消した。
――あれ? これって本当にまずいのでは?
――いや、それで済むのだろうか? 公爵だぞ?
ポケットに潜ませたリックが「また空回りしてない?」という声を出した。
俺は「してないよ」と答えようと――
「あ! お父様! お母さま!」
「!?」
――ソフィアお嬢様の言葉に、慌てて目を向ける。
公爵夫妻がこちらへと歩いてきた。
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