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第二部 3話 お嬢様

ー/ー



「ではお嬢様。今日からよろしくお願いします」
「は、はい」

 案内された一室は広かった。俺の宿屋全体よりも広いのでは?
 俺とソフィアは椅子を向かい合わせて、座っている。
 俺は前と同じ騎士団の制服。ソフィアは普段着でも苦しくなさそうな淡い色のドレスだった。

「ああ、そんなに緊張しないで下さい。実を言うと、俺も人に教える経験なんてほとんどないんですから」
「……そうなんですか?」
「ええ。俺が教えたことのある相手は、妹とその友達くらいですよ。また、こいつらが生意気でして……」
「……」

 ソフィアが目を丸くして俺を見ていた。

「? どうしました?」
「いえ、おばあ様から聞いていた話と随分印象が違うので……」
「……ちなみに、何と言われてましたか?」

「悪名高い鬼を片っ端から返り討ちにし続ける、魔術師団長推薦の凄腕錬金剣士と」
「ふ、風評被害もいいところですよ!」

「違うのですか?」
「うーん……」
 違う、とは言い辛い。一言で言えば『盛りすぎ』なのだ。
 否定し辛さにも悪意を感じる。

「正確ではない、というところですね」
「?」
「鬼が襲ってくるから、必死に生き残って来ただけなんですよ」
「……ですが、ギルドが最近出した新聞の号外誌にも先生の名前がありましたよ?」
「……初耳ですが?」

 ソフィアは席を立つと、机の引き出しから一枚の紙を持ってきた。
 俺は受け取ると、新聞らしき紙に目を通す。
 見出しを読んだ瞬間に顔をしかめてしまう。

 ――A級冒険者『ミア・クラーク』へのインタビュー!
 
 ――A級冒険者への昇級おめでとうございます。
 ――ありがとうございます。

 ――どんな任務でもそつなくこなす印象で、昇級確実と言われていました。感想を良いですか?
 ――はい。ずっと目標としてきたので、本当に嬉しいです。受けられる任務も各段に増えますし、今まで以上に貢献していきたいです。

 ――七年前の鬼による王都襲撃での貢献が評価されたという声もあります。その時のことを伺っても?
 ――いえ、私とニナ副隊長の二人掛かりでも追い返すことが精一杯でした。今でも悔やまれます。

 ――謙虚ですね。
 ――いいえ。騎士団員の『アッシュ・クレフ』さんは一人で何度も鬼を追い返しているそうです。見習いたいと思います。

 あの野郎!?
 自分だけが注目されることが嫌で俺を出しに使いやがった……!

「先生?」
「なんでもありません。この人は大嘘吐きなので信じないように」

 新聞をソフィアへと手渡す。
 ソフィアは受け取ると、しばらく呆然と俺の顔をみて――ふふ、と楽しそうに微笑んだ。

「本当に……思っていたのと違いすぎます」

 新聞を握ったまま、ソフィアは笑いを堪えている。
 その様子は、どこにでもいる『ハーフエルフの女の子』だった。

「お嬢様は剣術に興味があるとのことでしたが、何か目標でも?」
 話がひと区切りしたので、雑談の延長で俺は軽く訊いてみた。

「いいえ。ただ、剣を使ってみたいなと。自分でも良く分かっていないのですが……」
「なるほど」

 この感じは兄さんっぽい。
 俺は「では」と続ける。

「手合わせでもしてみますか」



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「ではお嬢様。今日からよろしくお願いします」
「は、はい」
 案内された一室は広かった。俺の宿屋全体よりも広いのでは?
 俺とソフィアは椅子を向かい合わせて、座っている。
 俺は前と同じ騎士団の制服。ソフィアは普段着でも苦しくなさそうな淡い色のドレスだった。
「ああ、そんなに緊張しないで下さい。実を言うと、俺も人に教える経験なんてほとんどないんですから」
「……そうなんですか?」
「ええ。俺が教えたことのある相手は、妹とその友達くらいですよ。また、こいつらが生意気でして……」
「……」
 ソフィアが目を丸くして俺を見ていた。
「? どうしました?」
「いえ、おばあ様から聞いていた話と随分印象が違うので……」
「……ちなみに、何と言われてましたか?」
「悪名高い鬼を片っ端から返り討ちにし続ける、魔術師団長推薦の凄腕錬金剣士と」
「ふ、風評被害もいいところですよ!」
「違うのですか?」
「うーん……」
 違う、とは言い辛い。一言で言えば『盛りすぎ』なのだ。
 否定し辛さにも悪意を感じる。
「正確ではない、というところですね」
「?」
「鬼が襲ってくるから、必死に生き残って来ただけなんですよ」
「……ですが、ギルドが最近出した新聞の号外誌にも先生の名前がありましたよ?」
「……初耳ですが?」
 ソフィアは席を立つと、机の引き出しから一枚の紙を持ってきた。
 俺は受け取ると、新聞らしき紙に目を通す。
 見出しを読んだ瞬間に顔をしかめてしまう。
 ――A級冒険者『ミア・クラーク』へのインタビュー!
 ――A級冒険者への昇級おめでとうございます。
 ――ありがとうございます。
 ――どんな任務でもそつなくこなす印象で、昇級確実と言われていました。感想を良いですか?
 ――はい。ずっと目標としてきたので、本当に嬉しいです。受けられる任務も各段に増えますし、今まで以上に貢献していきたいです。
 ――七年前の鬼による王都襲撃での貢献が評価されたという声もあります。その時のことを伺っても?
 ――いえ、私とニナ副隊長の二人掛かりでも追い返すことが精一杯でした。今でも悔やまれます。
 ――謙虚ですね。
 ――いいえ。騎士団員の『アッシュ・クレフ』さんは一人で何度も鬼を追い返しているそうです。見習いたいと思います。
 あの野郎!?
 自分だけが注目されることが嫌で俺を出しに使いやがった……!
「先生?」
「なんでもありません。この人は大嘘吐きなので信じないように」
 新聞をソフィアへと手渡す。
 ソフィアは受け取ると、しばらく呆然と俺の顔をみて――ふふ、と楽しそうに微笑んだ。
「本当に……思っていたのと違いすぎます」
 新聞を握ったまま、ソフィアは笑いを堪えている。
 その様子は、どこにでもいる『ハーフエルフの女の子』だった。
「お嬢様は剣術に興味があるとのことでしたが、何か目標でも?」
 話がひと区切りしたので、雑談の延長で俺は軽く訊いてみた。
「いいえ。ただ、剣を使ってみたいなと。自分でも良く分かっていないのですが……」
「なるほど」
 この感じは兄さんっぽい。
 俺は「では」と続ける。
「手合わせでもしてみますか」