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第一部 56話 突撃魔術戦

ー/ー



 レンは外壁の上から時計塔の上を眺めていた。

「さて、鬼の誘いに乗ってみたが、どうするか……。
 いや、アレを何とかするべきだろうな」

 時計塔の頂上には青いローブを着た男が立っていた。
 相手もすでに気付いているのだろう、射貫くようにレンを見据えていた。

「あそこまで行くか。
 あれじゃ――仁を探せない」

 レンが王都の外壁から静かに飛び降りる。
 すぐさま、青いローブが魔弾を放った。

「へえ。魔術師か」

 呟きながら外壁に影で描いた魔法陣に魔力を流す。
 外壁から突き出すように、氷の床が出来上がった。

 一歩、二歩と歩いてから走り出した。すぐに魔弾が襲ってきた。
 十や二十どころではない魔弾を捌きながら、氷で作った自分の足元に魔法陣を描く。

 風の魔法で、時計塔へと真っ直ぐに突撃した。
 弾丸のような速さで時計塔へと迫る。迎撃の魔弾も全て弾いた。

「――?」

 魔弾の中に一つだけ、手応えの異なるものがあった。硬いような手応えだった。
 違和感こそ覚えたものの、時計塔はもう目の前だった。

 最後の足掻きか、魔術師は今まで以上の数の魔弾を準備している。

 ――問題はない。弾けることは分かっている。
 ――俺の勝ちだな、魔術師。

 レンが笑みを浮かべながら、屋根の縁に足を掛けた。一歩踏み出す。
 手癖のようなもので、影を走らせて『影の形』を読み取った。

「!?ッ」

 慌てて脇に飛び退いた。
 背後からの魔弾が足元に着弾する。

「何が――」

 振り返って凍り付いた。
 弾いたはずの魔弾がレンの視界一面に迫っていた。

 さらに魔術師が魔弾を放つ。
 時計塔の屋根の上へと全方位から魔弾が襲い掛かる。

 流石にレンも余裕を失った。
 全力で探知し、弾いて、避ける。

 それでも長くは保たない。
 そう判断したレンは自分の背後に氷の壁を作り上げる。

 弾いてきた魔弾はこれで防いでくれる――

 パキン、という氷の割れる音。

 ――先ほど違和感を覚えた魔弾。その一撃が氷の壁を消滅させた。

 その魔弾は「氷を溶かせ」と『命令』されていた。

 振り返ったものの、咄嗟に捌けなかったレンは魔弾の連打を浴びせられた。

 そのまま時計塔を弾き出される。
 目的地だった時計塔を通り過ぎた恰好だ。

 ――読み切られた、のか?

 一瞬、魔術師とすれ違う。茶色い髪と茶色い瞳。
 時計塔から落ちていく時、彼はこう言った。

「人を舐めるな、人でなし」

 まるで相手の深いところを見抜いた上で、その罪を抉るかのような、辛辣な呟きが鐘楼に響いた。その瞬間、レンは確かに得体の知れない一撃を受けていた。

 全身に魔弾の殴打を受けながら『レン・クーガー』は時計塔公園へと落ちてゆく。



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 レンは外壁の上から時計塔の上を眺めていた。
「さて、鬼の誘いに乗ってみたが、どうするか……。
 いや、アレを何とかするべきだろうな」
 時計塔の頂上には青いローブを着た男が立っていた。
 相手もすでに気付いているのだろう、射貫くようにレンを見据えていた。
「あそこまで行くか。
 あれじゃ――仁を探せない」
 レンが王都の外壁から静かに飛び降りる。
 すぐさま、青いローブが魔弾を放った。
「へえ。魔術師か」
 呟きながら外壁に影で描いた魔法陣に魔力を流す。
 外壁から突き出すように、氷の床が出来上がった。
 一歩、二歩と歩いてから走り出した。すぐに魔弾が襲ってきた。
 十や二十どころではない魔弾を捌きながら、氷で作った自分の足元に魔法陣を描く。
 風の魔法で、時計塔へと真っ直ぐに突撃した。
 弾丸のような速さで時計塔へと迫る。迎撃の魔弾も全て弾いた。
「――?」
 魔弾の中に一つだけ、手応えの異なるものがあった。硬いような手応えだった。
 違和感こそ覚えたものの、時計塔はもう目の前だった。
 最後の足掻きか、魔術師は今まで以上の数の魔弾を準備している。
 ――問題はない。弾けることは分かっている。
 ――俺の勝ちだな、魔術師。
 レンが笑みを浮かべながら、屋根の縁に足を掛けた。一歩踏み出す。
 手癖のようなもので、影を走らせて『影の形』を読み取った。
「!?ッ」
 慌てて脇に飛び退いた。
 背後からの魔弾が足元に着弾する。
「何が――」
 振り返って凍り付いた。
 弾いたはずの魔弾がレンの視界一面に迫っていた。
 さらに魔術師が魔弾を放つ。
 時計塔の屋根の上へと全方位から魔弾が襲い掛かる。
 流石にレンも余裕を失った。
 全力で探知し、弾いて、避ける。
 それでも長くは保たない。
 そう判断したレンは自分の背後に氷の壁を作り上げる。
 弾いてきた魔弾はこれで防いでくれる――
 パキン、という氷の割れる音。
 ――先ほど違和感を覚えた魔弾。その一撃が氷の壁を消滅させた。
 その魔弾は「氷を溶かせ」と『命令』されていた。
 振り返ったものの、咄嗟に捌けなかったレンは魔弾の連打を浴びせられた。
 そのまま時計塔を弾き出される。
 目的地だった時計塔を通り過ぎた恰好だ。
 ――読み切られた、のか?
 一瞬、魔術師とすれ違う。茶色い髪と茶色い瞳。
 時計塔から落ちていく時、彼はこう言った。
「人を舐めるな、人でなし」
 まるで相手の深いところを見抜いた上で、その罪を抉るかのような、辛辣な呟きが鐘楼に響いた。その瞬間、レンは確かに得体の知れない一撃を受けていた。
 全身に魔弾の殴打を受けながら『レン・クーガー』は時計塔公園へと落ちてゆく。