第一部 54話 『小惑星』と『二代目赤鬼』
ー/ー 初めに動いたのは二つ名『小惑星』だった。
「邪魔しちゃ悪いっすよ」
軽口を叩きながら、ミアは『赤鬼』を軽く蹴りつけた。
やはり『赤鬼』は防ぎ、ダメージはない。
しかし体が浮かぶような感覚と共に蹴り飛ばされてしまう。
「!」
加えて、ミアはさらに追撃。
まるで肘が吸い込まれるように『赤鬼』の腹に入って巨体がさらに飛ぶ。
そのまま『赤鬼』自分が入って来た穴から出て行った。
そうして戦いになれば辺り一面を巻き込む面倒な存在をひとまず排除すると、ミアはすぐさまその後を追って穴を出て行った。
「痛たた?
いや、痛くはねえんだよな」
屋敷の外に出てみれば『赤鬼』は不思議そうに首を傾げていた。
ミアは『赤鬼』を屋敷から引き離す方法を考えながら、素手のままで構えた。
『赤鬼』は楽しそうに笑って、黒い金棒を構えて応じた。
『赤鬼』が金棒を横に払う。
ミアはすぐさま大きく跳ぶように避ける。
ミアの『引力』『斥力』は『対象』全体へ均一の力を加えることができる。
便利なスキルではあるが『対象』は自分自身の他にもう一つ設定する必要がある。
二つの間に掛かる力を制御する能力だからだ。
設定するための条件は直接触れること。
最初の蹴りで『赤鬼』はスキルの『対象』になっている。
ミアが何度も『赤鬼』を吹き飛ばしているのはそういう理屈からだった。
――でも、この方法じゃ火力が足りないっすね。
――どう考えても、吹き飛ばすことが精一杯。
ミアは唐突に『赤鬼』の懐に入ると、逆立ちから腕でジャンプするように跳ねて『赤鬼』の顎を蹴り上げる。自分の半分にも満たない体格の少女に蹴り飛ばされて『赤鬼』が不快そうに呻いた。
更にミアは後を追って追撃。
宙へ向かって回し蹴りを入れるように『赤鬼』を打ち上げる。
二人とも空中で身動きが取れない状態。
にも関わらず『赤鬼』の体は少女へと引き寄せられて、下から顎へと肘が突き上げられる。
「ぐ」
ダメージこそないものの『赤鬼』から声が漏れる。
そのまま上向いた赤い顔を掴むと、ミアは『赤鬼』と一緒に体を一回転させて――地面に向けて投げ飛ばした。
スキル『斥力』も使い、地面から激しい音が上がる。
実は魔術師団長の提案で屋敷周辺の住人は避難済みだ。
元々開発が遅れていた地域ということもあり、この区画に人はいないだろう。
暴れ放題だった。
「はぁ」
思わず溜息が零れる。
民家の屋根へと降り立ったミアが爆心地を眺めていると『赤鬼』はのそりと起き上がって「痛てえ」と首を鳴らして立ったのだ。あの首を落とすことは簡単ではないだろう。
ミアは諦めて『赤鬼』をスキルの『対象』から外す。
さらに懐へと手を突っ込んだ。
――方法を変えるしかないっすか。
そして、懐から出て来たのは、ただの石ころだった。
「何だぁ? 石ころ?」
「ええ、ただの石ころっすよ……神鋼って知ってます?」
ミアは『対象』を神鋼の原石へと変えて、その石ころを上へと放り投げた。
そして、そのまま石ころをぶん殴る。
民家の屋根から石畳へと最硬の砲弾が叩きつけられた。
もう一度轟音が響く。
「う、これは、流石に……」
「良かったっす。
これでも効かなければお手上げでした」
二つ名『小惑星』の由来である一撃は『赤鬼』の左肩を貫通していた。
傷口を押さえる『赤鬼』をよそに、神鋼は『引力』に従ってミアの元へと戻っていく。
そのまま――神鋼はミアの周囲を公転し始めた。
「この!」
『赤鬼』が金棒を叩きつけた。
ミアが半身躱して空振りに終わる。
ミアはこの大振りな一撃に関しては見切っていた。
さらに、後ろに跳ぶ。
「逃げてんじゃ……がっ?」
冷静さを欠いた『赤鬼』の言葉は最後まで続かなかった。
ミアが公転の距離を操作して『赤鬼』の右足に神鋼をぶつけたのだ。
容易く肉を貫通し、骨を砕いて回転を続ける。
超高速で回転し続ける神鋼は高熱で薄っすらと赤みを帯びていた。
次の瞬間には回復していたが、腕、膝、脇腹と連続で抉られては『赤鬼』もたまらずに後退した。
「ん-、どうにも技術的に足りないんじゃないっすかね?」
ミアが口を開いた。『赤鬼』が怒りに顔を歪ませる。
「うるせえ、俺はまだ経験が足りねえんだ」
「経験っすか。
二代目は襲名したばかりってことっすかね?」
「…………」
せっかくだから、と情報収集にミアは動いたが『赤鬼』は答えなかった。
「まあ、いいっす。
ちょうど良い時間だし」
神鋼が真っ直ぐに『赤鬼』へと向かって来ていた。
「てめぇ」
『赤鬼』は先ほどの会話が軌道調整の時間稼ぎだと気づいて、声を荒立たせる。
だが、すぐに神鋼の迎撃態勢に入った。
迫る神鋼に金棒をぶつける。
真赤に光る神鋼は金棒をひしゃげたものの、その軌道を逸らして『赤鬼』を掠めて行った。
『赤鬼』が一安心と、息を吐く。そこに飛び込んでくる影があった。
「ぐ、あ」
神鋼の後を追って、同じ速度を出した肘鉄が喉に叩き込まれていた。
『赤鬼』の体がもう一度吹き飛ぶ。そのまま民家の一つへと突っ込む。
「さて、どうっすかね?」
ひしゃげた金棒を掴んで『赤鬼』が民家の壁を突き破って出てくる。
怒りの形相で叫びながら突っ込んでくるその胸を――戻って来た神鋼が貫いた。
「邪魔しちゃ悪いっすよ」
軽口を叩きながら、ミアは『赤鬼』を軽く蹴りつけた。
やはり『赤鬼』は防ぎ、ダメージはない。
しかし体が浮かぶような感覚と共に蹴り飛ばされてしまう。
「!」
加えて、ミアはさらに追撃。
まるで肘が吸い込まれるように『赤鬼』の腹に入って巨体がさらに飛ぶ。
そのまま『赤鬼』自分が入って来た穴から出て行った。
そうして戦いになれば辺り一面を巻き込む面倒な存在をひとまず排除すると、ミアはすぐさまその後を追って穴を出て行った。
「痛たた?
いや、痛くはねえんだよな」
屋敷の外に出てみれば『赤鬼』は不思議そうに首を傾げていた。
ミアは『赤鬼』を屋敷から引き離す方法を考えながら、素手のままで構えた。
『赤鬼』は楽しそうに笑って、黒い金棒を構えて応じた。
『赤鬼』が金棒を横に払う。
ミアはすぐさま大きく跳ぶように避ける。
ミアの『引力』『斥力』は『対象』全体へ均一の力を加えることができる。
便利なスキルではあるが『対象』は自分自身の他にもう一つ設定する必要がある。
二つの間に掛かる力を制御する能力だからだ。
設定するための条件は直接触れること。
最初の蹴りで『赤鬼』はスキルの『対象』になっている。
ミアが何度も『赤鬼』を吹き飛ばしているのはそういう理屈からだった。
――でも、この方法じゃ火力が足りないっすね。
――どう考えても、吹き飛ばすことが精一杯。
ミアは唐突に『赤鬼』の懐に入ると、逆立ちから腕でジャンプするように跳ねて『赤鬼』の顎を蹴り上げる。自分の半分にも満たない体格の少女に蹴り飛ばされて『赤鬼』が不快そうに呻いた。
更にミアは後を追って追撃。
宙へ向かって回し蹴りを入れるように『赤鬼』を打ち上げる。
二人とも空中で身動きが取れない状態。
にも関わらず『赤鬼』の体は少女へと引き寄せられて、下から顎へと肘が突き上げられる。
「ぐ」
ダメージこそないものの『赤鬼』から声が漏れる。
そのまま上向いた赤い顔を掴むと、ミアは『赤鬼』と一緒に体を一回転させて――地面に向けて投げ飛ばした。
スキル『斥力』も使い、地面から激しい音が上がる。
実は魔術師団長の提案で屋敷周辺の住人は避難済みだ。
元々開発が遅れていた地域ということもあり、この区画に人はいないだろう。
暴れ放題だった。
「はぁ」
思わず溜息が零れる。
民家の屋根へと降り立ったミアが爆心地を眺めていると『赤鬼』はのそりと起き上がって「痛てえ」と首を鳴らして立ったのだ。あの首を落とすことは簡単ではないだろう。
ミアは諦めて『赤鬼』をスキルの『対象』から外す。
さらに懐へと手を突っ込んだ。
――方法を変えるしかないっすか。
そして、懐から出て来たのは、ただの石ころだった。
「何だぁ? 石ころ?」
「ええ、ただの石ころっすよ……神鋼って知ってます?」
ミアは『対象』を神鋼の原石へと変えて、その石ころを上へと放り投げた。
そして、そのまま石ころをぶん殴る。
民家の屋根から石畳へと最硬の砲弾が叩きつけられた。
もう一度轟音が響く。
「う、これは、流石に……」
「良かったっす。
これでも効かなければお手上げでした」
二つ名『小惑星』の由来である一撃は『赤鬼』の左肩を貫通していた。
傷口を押さえる『赤鬼』をよそに、神鋼は『引力』に従ってミアの元へと戻っていく。
そのまま――神鋼はミアの周囲を公転し始めた。
「この!」
『赤鬼』が金棒を叩きつけた。
ミアが半身躱して空振りに終わる。
ミアはこの大振りな一撃に関しては見切っていた。
さらに、後ろに跳ぶ。
「逃げてんじゃ……がっ?」
冷静さを欠いた『赤鬼』の言葉は最後まで続かなかった。
ミアが公転の距離を操作して『赤鬼』の右足に神鋼をぶつけたのだ。
容易く肉を貫通し、骨を砕いて回転を続ける。
超高速で回転し続ける神鋼は高熱で薄っすらと赤みを帯びていた。
次の瞬間には回復していたが、腕、膝、脇腹と連続で抉られては『赤鬼』もたまらずに後退した。
「ん-、どうにも技術的に足りないんじゃないっすかね?」
ミアが口を開いた。『赤鬼』が怒りに顔を歪ませる。
「うるせえ、俺はまだ経験が足りねえんだ」
「経験っすか。
二代目は襲名したばかりってことっすかね?」
「…………」
せっかくだから、と情報収集にミアは動いたが『赤鬼』は答えなかった。
「まあ、いいっす。
ちょうど良い時間だし」
神鋼が真っ直ぐに『赤鬼』へと向かって来ていた。
「てめぇ」
『赤鬼』は先ほどの会話が軌道調整の時間稼ぎだと気づいて、声を荒立たせる。
だが、すぐに神鋼の迎撃態勢に入った。
迫る神鋼に金棒をぶつける。
真赤に光る神鋼は金棒をひしゃげたものの、その軌道を逸らして『赤鬼』を掠めて行った。
『赤鬼』が一安心と、息を吐く。そこに飛び込んでくる影があった。
「ぐ、あ」
神鋼の後を追って、同じ速度を出した肘鉄が喉に叩き込まれていた。
『赤鬼』の体がもう一度吹き飛ぶ。そのまま民家の一つへと突っ込む。
「さて、どうっすかね?」
ひしゃげた金棒を掴んで『赤鬼』が民家の壁を突き破って出てくる。
怒りの形相で叫びながら突っ込んでくるその胸を――戻って来た神鋼が貫いた。
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