第一部 42話 容疑者リスト
ー/ー「来たか」
『スキルマスター』に依頼していた、兄さんの――最近性格が変わった人の――調査結果だ。
「……」
一度、皆に連絡してから開けるべきだと理解しながら、我慢できずに路地裏へと駆け込んだ。
ミアはこの手の配慮に慣れているのだろう、一緒に路地裏へと付いてくるような真似はせずに少し離れて人目を気にしてくれている。
リックに目配せしてから、俺は封筒を開けた。
報告書の最初は簡単な手紙のような形式で始まっていた。
依頼通り、王都周辺の『最近性格が変わった人』を探してみたよ。
調査の根拠としては、どうしても伝聞が基本になるが、それは許容してほしい。
正確に表現するならば『周囲が変わったと思う人』だ。
あと、サービスで『ハーフエルフの小国』も対象に含めた。
この時勢だと欲しいだろう?
これは追加料金なので、後ほど請求に行きます。よろしく。
スキルマスター ラルフ・コーネル
セクシー聖女お姉さ
最後の一語だけ筆跡が異なっており『お姉さん』の『ん』だけが判読できない程に乱れていた。まるでお調子者な改竄者が殴られたかのようだ。
内容については、追加請求だけちょっと怖かった。
――ん? 嵌められてないか?
――持ち掛けられた『情報交換』が『借り』になったぞ?
肝心の調査結果へと目を向ける。
良く調べたものだと言うか、どうやって調べたのだろうか?
やっぱりあの人怖い。
そこには人名のリストがあり、状態と素性、性格の差異まで記載されていた。
リストは百行ほどあって、死者まで律儀に書いてあった。
「すげぇな。
このリストを調べれば王都周辺は十分だ」
思わず呟いた。
ペラペラと紙をめくっていく。
「ん?」
思わず手を止める。
死者の一覧が終わった後、行方不明者の記載が一行だけあったのだ。
最後の一文を読み上げる。
「行方不明 ハーフエルフ姫の側近 レン・クーガー 記憶喪失」
ミアとは別れてブラウン団長の家に行くと、使用人達が疲労困憊していた。
アリスだけでも大変なのに、ナタリーもいれば過剰労働だろうな……分かるよ。
――いや、違うだろ。
――ごめんなさい。
心の中で妹の件をちゃんと謝罪する。
流して良い次元じゃないのだ。
ここまでの経緯をブラウン団長とアリス……というか、加奈と共有する。
バケット邸の部屋を借りて、会議の真似事を始めた。
「ふむ。まず鬼については調査あるのみだな」
「そうですね。思った以上に情報不足でした」
「一つ収穫があるとすれば、下級魔物の鬼とは別物だって情報くらい?」
「ああ、その通りだな。むしろ隠れ蓑にしている節がある」
ブラウン団長の言葉に俺が返すと、加奈が指摘してくれた。
確かにこの点は間違いないように思えた。恐らく無関係だ。
「なるほど。では、もう一方の調査については?
こちらも地道な調査しかないように思えるが」
「このリストの中に礼君がいる可能性は高いかな?」
「俺の勘で言えば、高い気がする」
「それは何故? 王国にいる保証すらないのでは?」
「あくまでも勘の域を出ませんが……俺と加奈がここにいるからです」
二人の疑問に俺の意見を言う。
「……なるほど。サラリーマン」
そう。俺と加奈が早く出会えたことに作為があったのなら、兄さんとも早く出会える可能性があると思っているのだ。
「うーん。私にはその人物はよく分からないのだが、彼が『アッシュ』を選んだ理由の一つはレイ? が『王国にいる』からだと言うわけだな?」
「あくまでも勘ですが」
「なるほど。調査する価値はあるだろう、と。では私から提案だ。
どうだろう? この二つの調査を組合に出してみては?」
次の日には最終的にブラウン団長の言う通り、別口として組合に依頼を出した。
依頼料は俺とブラウン団長の折半だ。ここだけは譲らなかった。頑張った。
『赤鬼』討伐の報奨金がここで活きるとは思っていなかった。今回の討伐隊の報奨金もありがたい。ナタリーがくすねた金貨には手を付けたくないんだ……。
「はい。一つ報告来たっすよ。
リスト貸してください」
鬼の調査はともかく、容疑者リストの調査はすぐに進み始めたようだった。
この件でも連絡役を務めてくれたミアが、報告を受けて容疑者リストに線を一本引く。
最後から二番目の行だった。
最後の行は消えていない。
『スキルマスター』に依頼していた、兄さんの――最近性格が変わった人の――調査結果だ。
「……」
一度、皆に連絡してから開けるべきだと理解しながら、我慢できずに路地裏へと駆け込んだ。
ミアはこの手の配慮に慣れているのだろう、一緒に路地裏へと付いてくるような真似はせずに少し離れて人目を気にしてくれている。
リックに目配せしてから、俺は封筒を開けた。
報告書の最初は簡単な手紙のような形式で始まっていた。
依頼通り、王都周辺の『最近性格が変わった人』を探してみたよ。
調査の根拠としては、どうしても伝聞が基本になるが、それは許容してほしい。
正確に表現するならば『周囲が変わったと思う人』だ。
あと、サービスで『ハーフエルフの小国』も対象に含めた。
この時勢だと欲しいだろう?
これは追加料金なので、後ほど請求に行きます。よろしく。
スキルマスター ラルフ・コーネル
セクシー聖女お姉さ
最後の一語だけ筆跡が異なっており『お姉さん』の『ん』だけが判読できない程に乱れていた。まるでお調子者な改竄者が殴られたかのようだ。
内容については、追加請求だけちょっと怖かった。
――ん? 嵌められてないか?
――持ち掛けられた『情報交換』が『借り』になったぞ?
肝心の調査結果へと目を向ける。
良く調べたものだと言うか、どうやって調べたのだろうか?
やっぱりあの人怖い。
そこには人名のリストがあり、状態と素性、性格の差異まで記載されていた。
リストは百行ほどあって、死者まで律儀に書いてあった。
「すげぇな。
このリストを調べれば王都周辺は十分だ」
思わず呟いた。
ペラペラと紙をめくっていく。
「ん?」
思わず手を止める。
死者の一覧が終わった後、行方不明者の記載が一行だけあったのだ。
最後の一文を読み上げる。
「行方不明 ハーフエルフ姫の側近 レン・クーガー 記憶喪失」
ミアとは別れてブラウン団長の家に行くと、使用人達が疲労困憊していた。
アリスだけでも大変なのに、ナタリーもいれば過剰労働だろうな……分かるよ。
――いや、違うだろ。
――ごめんなさい。
心の中で妹の件をちゃんと謝罪する。
流して良い次元じゃないのだ。
ここまでの経緯をブラウン団長とアリス……というか、加奈と共有する。
バケット邸の部屋を借りて、会議の真似事を始めた。
「ふむ。まず鬼については調査あるのみだな」
「そうですね。思った以上に情報不足でした」
「一つ収穫があるとすれば、下級魔物の鬼とは別物だって情報くらい?」
「ああ、その通りだな。むしろ隠れ蓑にしている節がある」
ブラウン団長の言葉に俺が返すと、加奈が指摘してくれた。
確かにこの点は間違いないように思えた。恐らく無関係だ。
「なるほど。では、もう一方の調査については?
こちらも地道な調査しかないように思えるが」
「このリストの中に礼君がいる可能性は高いかな?」
「俺の勘で言えば、高い気がする」
「それは何故? 王国にいる保証すらないのでは?」
「あくまでも勘の域を出ませんが……俺と加奈がここにいるからです」
二人の疑問に俺の意見を言う。
「……なるほど。サラリーマン」
そう。俺と加奈が早く出会えたことに作為があったのなら、兄さんとも早く出会える可能性があると思っているのだ。
「うーん。私にはその人物はよく分からないのだが、彼が『アッシュ』を選んだ理由の一つはレイ? が『王国にいる』からだと言うわけだな?」
「あくまでも勘ですが」
「なるほど。調査する価値はあるだろう、と。では私から提案だ。
どうだろう? この二つの調査を組合に出してみては?」
次の日には最終的にブラウン団長の言う通り、別口として組合に依頼を出した。
依頼料は俺とブラウン団長の折半だ。ここだけは譲らなかった。頑張った。
『赤鬼』討伐の報奨金がここで活きるとは思っていなかった。今回の討伐隊の報奨金もありがたい。ナタリーがくすねた金貨には手を付けたくないんだ……。
「はい。一つ報告来たっすよ。
リスト貸してください」
鬼の調査はともかく、容疑者リストの調査はすぐに進み始めたようだった。
この件でも連絡役を務めてくれたミアが、報告を受けて容疑者リストに線を一本引く。
最後から二番目の行だった。
最後の行は消えていない。
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