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第一部 39話 鬼退治

ー/ー



 その日の内に鬼の集落にはたどり着いた。
 王都に程近い山である。

「あれが鬼の集落……?」

 山の中腹で廃棄された農村に住み着いているようだ。
 文明的な暮らしぶりとは言えず、古い民家を雨露を凌ぐために使っている。
 その姿は典型的な魔物に見えた。

「よし、あれを倒せば良いんだな?」

「報奨金が多いからな。頑張ろうぜ」

「でも、あいつらが大魔法なんて分かってるのかね?」

 いかにも傭兵らしい集団が口々に笑っていた。

 鬼の集落がある山の近くで俺達は野営地を築いた。
 明日は早朝から討伐の予定だ。

 俺はニナとミアと三人で軽い情報交換も兼ねて話し合っていた。

「では、アッシュ殿はあのブラウン・バケット魔術師団長と一緒に行動しているのですか!?」

「あー、やっぱり凄いことなのかぁ」

「当然っす。
 王国の遠距離兵器っすよ?」

 何だその恐ろしい表現。

「でも、お世話になってるからなぁ」

「まあ、人格者ではあるでしょうね。
 騎士団と組合のいざこざとも上手く付き合っている節があります」

「確かにそうっすね。
 いつも仲裁に入ってくれる感じ?」

「ははは、そうだろうなぁ。
 でもブラウン団長は勘が良すぎて、たまに怖い」

 二人が軽く笑った。
 それから表情を引き締める。

「アッシュ殿。これから気を付けて下さいね。
 貴方は間違いなく鬼に狙われている」

「加えて、狙われていることが判明している……っすね。
 ま、あたしらが言うのも変だけど」

 鬼に襲われること。餌として使われること。
 この二つを心配してくれているのだと分かった。

 翌日。
 討伐隊は鬼の集落を襲撃した。

 大した抵抗もなく、鬼が討伐されていく。驚くほど順調に。
 確かにメンバーを考えればおかしなことではない。

 それでも、おかしい。

 ――違い過ぎる! 
 ――『赤鬼』とも『青鬼』とも違う! どうしても、同じ種族とは思えない!

 ――下級の魔物にしか見えない鬼達から『青鬼』の知能が生まれると思えない。
 ――鬼達の生活水準から刀や金棒を作り出す技術が生まれるように思えない。

 ――だとしたら、あいつらは何だ?
 ――『赤鬼』だと『青鬼』だと言っているが、明らかに別物じゃないか。

 今更ながら敵の正体不明さに恐怖していた。
 俺はあいつらのことを知らないのだ。



 レンは鬼達が殲滅される様子を隠れて眺めていた。

『ハーフエルフの小国』にはいられないので森を抜けた。
 その後に鬼の討伐隊の噂を聞いたので、様子を見に来たのだ。
 あの青い鬼は警戒するべきだと考えていたのである。

 無意識にレンはナイフを使って戦う少年を目で追っていた。
 戦い方が自分に似ていたからだ。

「チッ」

 舌打ちを一つ。
 がむしゃらに戦う姿を苛立たしく思い、視線を切る。

 ここに青い鬼はいないと結論づけて、誰かに見られる前に立ち去るべきだと、レンは考えた。そのまま鬼の集落へと背を向ける。

 目的地は王都だった。



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 その日の内に鬼の集落にはたどり着いた。
 王都に程近い山である。
「あれが鬼の集落……?」
 山の中腹で廃棄された農村に住み着いているようだ。
 文明的な暮らしぶりとは言えず、古い民家を雨露を凌ぐために使っている。
 その姿は典型的な魔物に見えた。
「よし、あれを倒せば良いんだな?」
「報奨金が多いからな。頑張ろうぜ」
「でも、あいつらが大魔法なんて分かってるのかね?」
 いかにも傭兵らしい集団が口々に笑っていた。
 鬼の集落がある山の近くで俺達は野営地を築いた。
 明日は早朝から討伐の予定だ。
 俺はニナとミアと三人で軽い情報交換も兼ねて話し合っていた。
「では、アッシュ殿はあのブラウン・バケット魔術師団長と一緒に行動しているのですか!?」
「あー、やっぱり凄いことなのかぁ」
「当然っす。
 王国の遠距離兵器っすよ?」
 何だその恐ろしい表現。
「でも、お世話になってるからなぁ」
「まあ、人格者ではあるでしょうね。
 騎士団と組合のいざこざとも上手く付き合っている節があります」
「確かにそうっすね。
 いつも仲裁に入ってくれる感じ?」
「ははは、そうだろうなぁ。
 でもブラウン団長は勘が良すぎて、たまに怖い」
 二人が軽く笑った。
 それから表情を引き締める。
「アッシュ殿。これから気を付けて下さいね。
 貴方は間違いなく鬼に狙われている」
「加えて、狙われていることが判明している……っすね。
 ま、あたしらが言うのも変だけど」
 鬼に襲われること。餌として使われること。
 この二つを心配してくれているのだと分かった。
 翌日。
 討伐隊は鬼の集落を襲撃した。
 大した抵抗もなく、鬼が討伐されていく。驚くほど順調に。
 確かにメンバーを考えればおかしなことではない。
 それでも、おかしい。
 ――違い過ぎる! 
 ――『赤鬼』とも『青鬼』とも違う! どうしても、同じ種族とは思えない!
 ――下級の魔物にしか見えない鬼達から『青鬼』の知能が生まれると思えない。
 ――鬼達の生活水準から刀や金棒を作り出す技術が生まれるように思えない。
 ――だとしたら、あいつらは何だ?
 ――『赤鬼』だと『青鬼』だと言っているが、明らかに別物じゃないか。
 今更ながら敵の正体不明さに恐怖していた。
 俺はあいつらのことを知らないのだ。
 レンは鬼達が殲滅される様子を隠れて眺めていた。
『ハーフエルフの小国』にはいられないので森を抜けた。
 その後に鬼の討伐隊の噂を聞いたので、様子を見に来たのだ。
 あの青い鬼は警戒するべきだと考えていたのである。
 無意識にレンはナイフを使って戦う少年を目で追っていた。
 戦い方が自分に似ていたからだ。
「チッ」
 舌打ちを一つ。
 がむしゃらに戦う姿を苛立たしく思い、視線を切る。
 ここに青い鬼はいないと結論づけて、誰かに見られる前に立ち去るべきだと、レンは考えた。そのまま鬼の集落へと背を向ける。
 目的地は王都だった。