第一部 35話 騎士団長
ー/ー 案内された詰所の一室は思っていたよりも広かった。恐らくは会議室のような役割を持っているのだろう。そこで俺達は密かに話し合っていた。
「ごめんなさい。余計なことを言って。
……バレちゃったかな?」
ナタリーが項垂れて言った。
「気にしなくて大丈夫だろ。
騎士団は元々俺を探していたみたいだし。……バレる?」
ナタリーにフォローを入れてから、バレる、という単語に俺は疑問を抱いた。
バレて困る事実はあっただろうか?
「ああ、問題はないさ。
他意はなく、言葉通りに鬼に関して話がしたいのだろう」
「でも、アッシュが呼ばれた理由が分からないねー」
「ひょっとしたら組合から話があったのかも。
あるいは『ハーフエルフの小国』が関係あるかな?」
ブラウン団長の言葉に、アリスと加奈が順に応じた。
見ていれば表情がころころと変わって面白い。
ちなみに、ナタリーは加奈の存在をとっくに知っていたらしい。
まあ、あれだけ一緒にいれば当然か。
「……大丈夫だよ、アッシュ。
皆いるんだから、情状酌量の余地は認めてくれるよ」
首を傾げる俺を見て、リックが慰めてくれた。
「情状酌量……?」
部屋の入口の扉が開いた。
騎士団長は人間の女性だった。
年齢はブラウン団長よりも少し若いくらいか? 動きやすそうな服装だった。
「初めまして。
団長のヒルダ・クロムウェルだ」
騎士団長は俺に握手を求めた。すぐに差し出された手を握る。
予想よりも随分と小柄だった。
「アッシュ・クレフです」
「突然呼び出してすまないね。
でも早い方が良いだろう」
騎士団長はにっと気持ちの良い笑みを浮かべる。
「以前ウチのニナが会いに行ったね? 勧誘に失敗したと嘆いていたよ。
可哀想に。上司から小言を言われていたよ」
ニナの上司は続けて言う。一筋縄では行かないようだ。
さらに騎士団長は部屋の中を見回してから言った。
「それにしても大所帯だね。それに――」
騎士団長はちらりとブラウン団長を見る。
「――予定外の大物もいる」
ブラウン団長が片眉を上げた。
「ふむ。予定外なのは君達の方だろう? 彼に聞いてみれば良い。
君達の予定ならば私達には関係ない」
騎士団長が露骨に舌打ちをする。
「まあいいさ。こちらの情報の信憑性が増しただけだ」
「情報と言うと?」
「ああ。察しは付いているだろう? 鬼についてさ」
「なるほど」
下手にとぼけるような真似はしなかった。
無駄に時間を使って心証を悪くする必要もないだろう。
「ここ数日『ハーフエルフの小国』でいくつかの動きがあった。
王子と姫の二人が死亡。さらに町で大魔法の形跡あり、だ」
「鬼が関係しているのですか?」
「そうだ。大魔法の起動に『黒鬼印』が使用されていたからな」
「!」
――加奈が正解。
――また『鍵』を殺したということか?
それにしては違和感があった。
やけに大がかりに思えたからだ。
「そこで騎士団としては王都防衛だ。鬼について調査を始めた。
すると、当然『赤鬼』も調査対象に入る。
次に、つい先日手配された『青鬼』も調査をするだろう。
アッシュ・クレフの名前が出るよなぁ?
そしたら魔術師団長と一緒に組合の馬車でソイツは検問に来やがった」
す、と目を逸らす。
何故か後ろめたい気になったのだ。
「何、話は簡単さ。こちらは情報が欲しい。
話せる範囲で教えてくれないか?」
なるほど……。
思惑はあるだろうが、王都の防衛に役立てたいという点は信頼できる気がした。
それに、恩を売っておく価値は十分にありそうだ。
一度だけブラウン団長に目配せをしてから、俺は組合に話した内容とほとんど同じ内容を繰り返した。
「なるほどね。あんたたち兄妹が鬼に狙われている、か。感謝するよ。
少なくとも王都にいる限りは安全を保証しよう」
「ありがとうございます」
「ひとまず話はこれで終わりだ、帰って良い……あ、そうだ。
一つ提案なのだが、近い内に鬼の集落の一つに討伐隊を組む予定だ。参加しないか?」
「鬼の集落が近くに?」
騎士団長が頷いた。
「……考えておきます」
ひとまず保留にしておくべきだろう。
そして俺達は騎士団の詰所を後にした。
「ごめんなさい。余計なことを言って。
……バレちゃったかな?」
ナタリーが項垂れて言った。
「気にしなくて大丈夫だろ。
騎士団は元々俺を探していたみたいだし。……バレる?」
ナタリーにフォローを入れてから、バレる、という単語に俺は疑問を抱いた。
バレて困る事実はあっただろうか?
「ああ、問題はないさ。
他意はなく、言葉通りに鬼に関して話がしたいのだろう」
「でも、アッシュが呼ばれた理由が分からないねー」
「ひょっとしたら組合から話があったのかも。
あるいは『ハーフエルフの小国』が関係あるかな?」
ブラウン団長の言葉に、アリスと加奈が順に応じた。
見ていれば表情がころころと変わって面白い。
ちなみに、ナタリーは加奈の存在をとっくに知っていたらしい。
まあ、あれだけ一緒にいれば当然か。
「……大丈夫だよ、アッシュ。
皆いるんだから、情状酌量の余地は認めてくれるよ」
首を傾げる俺を見て、リックが慰めてくれた。
「情状酌量……?」
部屋の入口の扉が開いた。
騎士団長は人間の女性だった。
年齢はブラウン団長よりも少し若いくらいか? 動きやすそうな服装だった。
「初めまして。
団長のヒルダ・クロムウェルだ」
騎士団長は俺に握手を求めた。すぐに差し出された手を握る。
予想よりも随分と小柄だった。
「アッシュ・クレフです」
「突然呼び出してすまないね。
でも早い方が良いだろう」
騎士団長はにっと気持ちの良い笑みを浮かべる。
「以前ウチのニナが会いに行ったね? 勧誘に失敗したと嘆いていたよ。
可哀想に。上司から小言を言われていたよ」
ニナの上司は続けて言う。一筋縄では行かないようだ。
さらに騎士団長は部屋の中を見回してから言った。
「それにしても大所帯だね。それに――」
騎士団長はちらりとブラウン団長を見る。
「――予定外の大物もいる」
ブラウン団長が片眉を上げた。
「ふむ。予定外なのは君達の方だろう? 彼に聞いてみれば良い。
君達の予定ならば私達には関係ない」
騎士団長が露骨に舌打ちをする。
「まあいいさ。こちらの情報の信憑性が増しただけだ」
「情報と言うと?」
「ああ。察しは付いているだろう? 鬼についてさ」
「なるほど」
下手にとぼけるような真似はしなかった。
無駄に時間を使って心証を悪くする必要もないだろう。
「ここ数日『ハーフエルフの小国』でいくつかの動きがあった。
王子と姫の二人が死亡。さらに町で大魔法の形跡あり、だ」
「鬼が関係しているのですか?」
「そうだ。大魔法の起動に『黒鬼印』が使用されていたからな」
「!」
――加奈が正解。
――また『鍵』を殺したということか?
それにしては違和感があった。
やけに大がかりに思えたからだ。
「そこで騎士団としては王都防衛だ。鬼について調査を始めた。
すると、当然『赤鬼』も調査対象に入る。
次に、つい先日手配された『青鬼』も調査をするだろう。
アッシュ・クレフの名前が出るよなぁ?
そしたら魔術師団長と一緒に組合の馬車でソイツは検問に来やがった」
す、と目を逸らす。
何故か後ろめたい気になったのだ。
「何、話は簡単さ。こちらは情報が欲しい。
話せる範囲で教えてくれないか?」
なるほど……。
思惑はあるだろうが、王都の防衛に役立てたいという点は信頼できる気がした。
それに、恩を売っておく価値は十分にありそうだ。
一度だけブラウン団長に目配せをしてから、俺は組合に話した内容とほとんど同じ内容を繰り返した。
「なるほどね。あんたたち兄妹が鬼に狙われている、か。感謝するよ。
少なくとも王都にいる限りは安全を保証しよう」
「ありがとうございます」
「ひとまず話はこれで終わりだ、帰って良い……あ、そうだ。
一つ提案なのだが、近い内に鬼の集落の一つに討伐隊を組む予定だ。参加しないか?」
「鬼の集落が近くに?」
騎士団長が頷いた。
「……考えておきます」
ひとまず保留にしておくべきだろう。
そして俺達は騎士団の詰所を後にした。
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