朝、わたしはユウくんの腕のなかで目を覚ます。ユウくんはまだ寝ているみたい。昨夜の仕返しとばかりに、眠っているユウくんの顔をじっと見つめてやる。さらさらの前髪や、しゅっとまっすぐ筋の通った鼻、わたしをとろけさせてしまう形のいい唇。
すこしして、ユウくんが目を覚ました。
「おはよう、紗羽」
「おはよう、ユウくん」
なにをしていたの? 見ていたの。なにを? ユウくんの寝顔。寝顔なんか見て楽しい? うん、とっても。そう言ってわたしたちはくすくす笑い合う。
わたしとユウくんはそろってベッドから下り、一緒に寝室を出る。洗面所で顔を洗い、歯を磨く。それから朝食の準備に取りかかる。
死神のユウくんと、わたしは同じ家で暮らしている。寝るときも、起きるときも、ごはんを食べるときも一緒。こんなに素敵な死神と毎日一緒にいられて、わたしはとっても幸せだ。
「紗羽、今日はどこへ行きたい?」
朝食を食べながら、ユウくんがわたしに言った。
「えっとね……じゃあ、海!」
わたしが言うと、「うん、わかった」とユウくんはにっこり笑ってうなずいた。朝食を食べ終え、部屋で荷物の準備をはじめる。水着に日焼け止め、タオルにレジャーシート、ビーチボールにパラソルに、ハンモックも持っていこうかな。思いつくままに持ち物を増やしていったら、荷物が邪魔でドアから出られなくなってしまった。
「ユウく~ん、たすけて~」
「なにやってるの、紗羽」
ユウくんがあきれたように笑いながらやってくる。
「しかたない。それじゃあもう、ここから行こうか」
うんと返事を返し、背伸びをしてユウくんの肩に手を置いた。目を閉じて、すこししてから開けると、目の前に一面の白い砂浜が広がっていた。その先に見えるエメラルドグリーンの海。雲ひとつない空はどこまでも青一色に染まっている。
わたしたちはさっそく水着に着替えて遊びはじめた。ふたりでひたすら遠くまで泳いでみたり、持ってきたビーチボールを投げ合ったり。ユウくんはわたしが行きたいと言った場所にどこへでも連れていってくれる。この前は秘境の温泉にふたりで入りに行ったし、その前はうんと寒い国へふたりでオーロラを見に行った。どんなに遠いところでも、ユウくんの死神パワーでひとっ飛びだ。
「紗羽」
ゴムボートの上にふたりで寝ていると、ふいにユウくんがわたしの名前を呼んだ。
「なあに、ユウくん」
「紗羽はすごくきれいだね」
「どうしたの、急に」
「好きだよ、紗羽」
「うん。わたしも」
ユウくんはわたしに覆いかぶさるようにキスをした。白く輝く太陽の下、ちょっぴり強引な塩味のキス。
わたしたちは海で日が暮れるまで遊んだ。写真もたくさん撮った。ユウくんはどこへ行くときも必ずカメラを持っていく。ユウくんは思い出を記録したいタイプの死神なのだ。
太陽が完全に沈んでしまったあと、わたしたちは近くの崖の上にのぼって星を眺めた。遠くに浮かぶ島の、そのさらに向こうまで星空は続いている。わたしもいつかこのなかに加わるのかな。隣に座っているユウくんの肩にそっと頭を乗せる。
「ユウくんは、いつわたしを殺すの?」
「そのうちね」
そう言ってユウくんはやさしく笑った。
ユウくんの死神パワーで海から帰ってくると、わたしはくたくたに疲れていた。ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたい。ソファでユウくんに頭をなでてもらっていると、もういつでも寝られそうな気がしてくる。
「お腹が空いたね。ごはん作るよ」
けれどそのひと言で、わたしの目はパチッとさめた。ユウくんはとっても料理上手。ユウくんの作るごはんはいつもすごくおいしいのだ。
テーブルに並べられていく料理。キノコのスープに色鮮やかなサラダ、デミグラスソースのたっぷりかかったハンバーグ。
「おいしぃ~。幸せぇ」
ユウくんの絶品料理を頬張りながら、うっとりとわたしは言う。「あわてないで、まだあるから」とユウくんはすこし困ったように笑い、
「僕も、紗羽と一緒にいられて幸せだよ」
と、わたしを見つめて言った。