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儚い命。

ー/ー



特殊部隊に入るための試験は過酷だ。知力体力胆力など、ありとあらゆる状況下で高いパフォーマンスを出すことが求められ、常に死と隣り合わせゆえに厳格なまでの審査がある。国家の安全のみならず人命保護の観点からも、必要不可欠だからだ。通常の人間ではまず無理だと言っていい。

「おい!まだトロトロやっているのか!!!」
少しでも動きが鈍化した刹那を見逃さず、上官の罵声が飛ぶ。ここにはモラハラといった言葉はない。嫌なら辞めればいいだけだ。その状況下でも「特殊部隊に入り活躍する」という強いモチベーションを持つ者たちのみが集っている。そしてモチベーションが高くても資質がないものは、すぐに辞めさせられる。ここは、そんな場所なのだ。

罵声を浴びた青年は、上官を見ることもなく思いサックを背負って、そして子犬を連れて再び山を登りだした。特殊部隊は、人質の救出などがミッションになることも多い。「命を守る」ことも極めて重要な要素となるため、訓練では子犬と共に行動する。どんな危険が迫ろうとも、この子犬を守らなければならない。もし死ぬようなことがあれば、辞めさせられるのだ。

「ガリレオ」と、青年は子犬の名前を呼んだ。クーンと愛らしい声で応える。当初、特殊部隊を目指す若者たちにとって、子犬は足手まといだ。自分のミッションをクリアしながら、子犬の命まで面倒を見なければならないのは大変だからだ。しかし、過酷な訓練を積み重ねていくたびに、小さな命を守る使命が芽生え、子犬との間に絆が生まれて愛おしさが生まれる。そして二人三脚で過酷な訓練に挑む原動力にすらなっていくのだ。

「これが最後のミッションになる。これをクリアすれば、映えある特殊部隊の一員になれるぞ」。鬼の上官は、これまでとは違った優しい声で訓練生たちにミッションを伝えた。「子犬を食べるのだ」と。

隊員たちはうろたえた。規律で最上に位置する「命令への絶対服従」のためか、また別の理由か。いずれにせよ、クリアしなければ憧れの部隊に入ることはできないのだ。みな、泣きながら子犬を苦しめないように喉を一気に切り裂き殺し、肉へと解体していく。実はどんな過酷な訓練よりも、この「子犬を殺す」という行為が一番精神的負担が大きく、だからこそ求められる儀式なのだ。青年も、ガリレオを見つめた。つぶらな目で青年を見るガリレオ。「ごめんな」と言いながら、青年はナイフを握った。

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

「そんなに過酷な訓練なんですか!」と、青年に取材していたジャーナリストは驚愕の声をあげる。「そうなんだよ。それをクリアしなければ、特殊部隊には入れないからね」と、元青年は答えた。

そして。

「まあ、私には無理だったがね」といながら、嬉しそうに尻尾を振り続けるガリレオの頭を撫でた。



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特殊部隊に入るための試験は過酷だ。知力体力胆力など、ありとあらゆる状況下で高いパフォーマンスを出すことが求められ、常に死と隣り合わせゆえに厳格なまでの審査がある。国家の安全のみならず人命保護の観点からも、必要不可欠だからだ。通常の人間ではまず無理だと言っていい。
「おい!まだトロトロやっているのか!!!」
少しでも動きが鈍化した刹那を見逃さず、上官の罵声が飛ぶ。ここにはモラハラといった言葉はない。嫌なら辞めればいいだけだ。その状況下でも「特殊部隊に入り活躍する」という強いモチベーションを持つ者たちのみが集っている。そしてモチベーションが高くても資質がないものは、すぐに辞めさせられる。ここは、そんな場所なのだ。
罵声を浴びた青年は、上官を見ることもなく思いサックを背負って、そして子犬を連れて再び山を登りだした。特殊部隊は、人質の救出などがミッションになることも多い。「命を守る」ことも極めて重要な要素となるため、訓練では子犬と共に行動する。どんな危険が迫ろうとも、この子犬を守らなければならない。もし死ぬようなことがあれば、辞めさせられるのだ。
「ガリレオ」と、青年は子犬の名前を呼んだ。クーンと愛らしい声で応える。当初、特殊部隊を目指す若者たちにとって、子犬は足手まといだ。自分のミッションをクリアしながら、子犬の命まで面倒を見なければならないのは大変だからだ。しかし、過酷な訓練を積み重ねていくたびに、小さな命を守る使命が芽生え、子犬との間に絆が生まれて愛おしさが生まれる。そして二人三脚で過酷な訓練に挑む原動力にすらなっていくのだ。
「これが最後のミッションになる。これをクリアすれば、映えある特殊部隊の一員になれるぞ」。鬼の上官は、これまでとは違った優しい声で訓練生たちにミッションを伝えた。「子犬を食べるのだ」と。
隊員たちはうろたえた。規律で最上に位置する「命令への絶対服従」のためか、また別の理由か。いずれにせよ、クリアしなければ憧れの部隊に入ることはできないのだ。みな、泣きながら子犬を苦しめないように喉を一気に切り裂き殺し、肉へと解体していく。実はどんな過酷な訓練よりも、この「子犬を殺す」という行為が一番精神的負担が大きく、だからこそ求められる儀式なのだ。青年も、ガリレオを見つめた。つぶらな目で青年を見るガリレオ。「ごめんな」と言いながら、青年はナイフを握った。
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「そんなに過酷な訓練なんですか!」と、青年に取材していたジャーナリストは驚愕の声をあげる。「そうなんだよ。それをクリアしなければ、特殊部隊には入れないからね」と、元青年は答えた。
そして。
「まあ、私には無理だったがね」といながら、嬉しそうに尻尾を振り続けるガリレオの頭を撫でた。