彼女のストーカー(未定)は、同じ人文学科の岡田文也だった。
頻繁に目が合う。偶然では片付けられないほど教室移動の時にすれ違う。そういった細かい根拠の累積から警戒を強めている、と言う話だ。
気のせいだと撥ねつけてしまうのは簡単だが、秒針の音が気になって眠れないような感覚に近いのだろうと想像すると共感ができる。
頭の中で岡田を思い起こす。身長は俺より少し高い程度で、筋肉はなく、だらしなさが目立つ中肉中背。よれた暗色のTシャツをよく着ている男とだけは覚えている。
夢の中で岡田と取っ組み合いをしていると、メッセージの通知音で目が覚めた。汗を吸ったTシャツを洗濯機に放り込んでからスマホを開く。午前6時。藤から届いた文章量はちょっとした修学旅行のしおりのようだった。
全てを読むことを諦めて直近の予定のみ確認すると「駅前のカフェ併設のベーカリーで軽食 9時」と書かれていた。3時間も空腹のままで待たされるのかよと思いながら、水を一杯流し込む。
フリの彼氏と偽デートをするだけのために、なんでこんな時間から長文打ってるんだこいつは、と呆れもするが、身だしなみに3時間もかけた藤に会うと思うと体が自然とシャワーを浴びに向かっていた。