「タイトル『暁』」
ひらりと布が落ちると同時に曇り空が開いて、光が差し込んだ。
太陽の輝きをまとって現れた石像は、世界が一変してしまったかのような衝撃だった。
「これを女が創ったというのか!?」
「天の御使い……だが、まるで罪を問われている気持ちだ」
人が生み出す境地を超えていると人々は称賛を声をあげる。
周りのざわめきにヴィタは満たされる想いだ。
ヴィタにとって至高の美しさを世の中に出すことが出来た。
想像上でしか存在しなかった天の使いが降臨する。
いや、それさえも超えた圧倒的な美に人々は浮足立つような感覚を味わった。
「あ、ありえない……ありえてたまるか」
優勝候補となっていた男がわななき、じりじりと後退っていく。
断崖絶壁に立たされた男に、背後から冷たい手が迫った。
「ルーク?」
あれほど目立つ美しさなのに、誰もルークを見ていない。
彫刻家の男の後ろをとって、艶めかしい微笑みを浮かべ、十二の翼を広げた
「偶像崇拝だ」
ルークの手から離れ、男は人をかき分けて大股に飛び出していく。
「これは悪魔の像だ! 神を裏切るは最大の罪だ!!」
「! 待って――!」
そのときのルークの恍惚な笑みに、ヴィタは知る。
これはヴィタを堕とすためのデモンストレーションだと。
浮ついていたヴィタを、誰が縛りつけているか思い知らせるための甘い甘い“敗北”への誘惑だ。
「やめてええええええええっ!!」
暁に刺激された男がハンマーを振りおろすと、苦難の果てに生み出したヴィタの人生において最大の作品が……堕ちる。
愛してると言ってくれた麗しき者の顔にひびが入り、手を伸ばすより早く亀裂が広がって、首が折れて崩れていく。
ガラガラと音を立て彫刻は崩壊し、足元に転がってきた大理石の破片を見て、ヴィタは息を呑む。
軋む音が聞こえたかと思えば、あらぬ方向にポキッと折れ曲がった。
(思い出した。ルークは……)
***
「……ヴィタ?」
お祭り騒ぎの品評会が終わり、夜になると昼間の盛り上がりが嘘のように静かな空間となった。
ヴィタ一人残した広場に、帰りを待っていたであろうルークが翼をはためかせ降りてくる。