肩身の狭い彫刻品評会
ー/ー
城下町の中心にある広場で彫刻品評会は行われる。
曇り空の下にいくつもの石像が並び、布をかけて隠されていた。
いつもなら女という理由で確認または拒絶があるのだが、今回はとんとん拍子に品評会への出場が決まった。
主役は彫刻。
男性しか名乗りをあげない品評会で、ヴィタは拳を握りしめ、顎を前に突き出して立っていた。
「おいおい、なんで女がいるんだぁ? ここは彫刻家の立つ場所だぞ」
挑発してくるのは前回の品評会で最多票数を獲得し、審査員から絶賛された彫刻家の男だ。
同じ舞台に立つ者として、今までにない強気と緊張に拳を握りしめる。
「私は彫刻家です。品評会への挑戦でこの場に立っています」
「女が彫刻とは、ずいぶんと鼻を高くしたものだなぁ。いいか? 芸術に女は不要。この至高の行いは女が穢して良いものではない。さっさとお屋敷へ帰りな」
不快に満ちた光景に耐えようとぐっと気持ちを抑え込んだ。
(めげるな、ヴィタ。なんのためにここまで来た?)
女性の誇りを示すために来たのだろう?
女だからとバカにされてたまるか。
性別を超えた価値観を凌駕する。
美しいものを美しいと思う人間の心を形にした。
「あなたにもあの美しさが伝わることを願います」
男たちに背を向け、ヴィタは出場者の列に並ぶ。
足元を巣食われそうな恐怖に目を向けず、暁色に想いを寄せた。
品評会がはじまり、会場は見事な作品の連続に歓声をあげる。
彫刻への熱気は増すばかりで、ついに民が一番期待を寄せる作品の布が外された。
「なんという曲線美だ」
「なまめかしいこと。さすがは前回の優勝者」
前回の優勝者の男は目をキラリと光らせて、髪をかきあげている。
自信に満ちた様子だったが、誰も男には目を向けず石像に夢中だ。
男の性格は気に食わないが、彫刻家としての腕前はたしかで、ヴィタは盛り上がる気持ちをとめられない。
落ち込むどころか、正々堂々と向き合いたいと高ぶっていた。
気後れはない。
誰も見たことのない美しい彼を彫ったのだからと、いまだ冷めぬ興奮を胸に抱いていた。
――最後の警告はヴィタに届かない。
「続いてはヴィタ……令嬢?」
司会進行をつとめる男が名前の記載された紙を見て、名簿とヴィタを見比べ青ざめる。
ざわつく会場にヴィタは深呼吸をし、すたすたと大股に歩いて前へ進む。
司会は進行をとめるわけにはいかないと機転を回し、石像を覆う布を外すよう指示を出した。
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主役は彫刻。
男性しか名乗りをあげない品評会で、ヴィタは拳を握りしめ、顎を前に突き出して立っていた。
「おいおい、なんで女がいるんだぁ? ここは彫刻家の立つ場所だぞ」
挑発してくるのは前回の品評会で最多票数を獲得し、審査員から絶賛された彫刻家の男だ。
同じ舞台に立つ者として、今までにない強気と緊張に拳を握りしめる。
「私は彫刻家です。品評会への挑戦でこの場に立っています」
「女が彫刻とは、ずいぶんと鼻を高くしたものだなぁ。いいか? 芸術に女は不要。この至高の行いは女が穢して良いものではない。さっさとお屋敷へ帰りな」
不快に満ちた光景に耐えようとぐっと気持ちを抑え込んだ。
(めげるな、ヴィタ。なんのためにここまで来た?)
女性の誇りを示すために来たのだろう?
女だからとバカにされてたまるか。
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美しいものを美しいと思う人間の心を形にした。
「あなたにもあの美しさが伝わることを願います」
男たちに背を向け、ヴィタは出場者の列に並ぶ。
足元を巣食われそうな恐怖に目を向けず、暁色に想いを寄せた。
品評会がはじまり、会場は見事な作品の連続に歓声をあげる。
彫刻への熱気は増すばかりで、ついに民が一番期待を寄せる作品の布が外された。
「なんという曲線美だ」
「なまめかしいこと。さすがは前回の優勝者」
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自信に満ちた様子だったが、誰も男には目を向けず石像に夢中だ。
男の性格は気に食わないが、彫刻家としての腕前はたしかで、ヴィタは盛り上がる気持ちをとめられない。
落ち込むどころか、正々堂々と向き合いたいと高ぶっていた。
気後れはない。
誰も見たことのない美しい彼を彫ったのだからと、いまだ冷めぬ興奮を胸に抱いていた。
――最後の警告はヴィタに届かない。
「続いてはヴィタ……令嬢?」
司会進行をつとめる男が名前の記載された紙を見て、名簿とヴィタを見比べ青ざめる。
ざわつく会場にヴィタは深呼吸をし、すたすたと大股に歩いて前へ進む。
司会は進行をとめるわけにはいかないと機転を回し、石像を覆う布を外すよう指示を出した。