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ミーティング

ー/ー



「アドミス」

 私の呼びかけを受けた彼女はすぐに現れた。

「おめでとうございます! 無事にハヤトさんを蘇生させましたね。時間的な猶予がないうえ、ダンジョンの暴走なんてレアな現象も重なる事態だったのに、それを乗り越えるなんてさすがです!」

 祝福と絶賛に心は踊らない。ずっと胸の奥にむず痒さがあるからだ。

「なんで私たちに手を貸したの? あんたのやり方は公平でしょ? 隼人や私たちを贔屓するはずがない」

 この言い分にアドミスは、初めて躊躇いらしきモノを見せた。

「そうですね。アナタの言うとおり、ワタシはあの世界の女神ですので公平を重んじています」
「だったら、なんであんなことをしたの?」
「あんなこととは?」
「とぼけないで! ストレージに入っているはずの再燃の焚き木がサーラちゃんの懐から落ちたこともそうだし、ボスモンスターを倒していないのにアイテムが勝手に使用されてハヤトは蘇生した。そんなことができるのは女神のあんただけでしょ?」
「はい」

 アドミスは笑顔で肯定した。

「もし、アナタが似たような意味の言葉から『公平』を選んで使ったのならばわかるかもしれませんが、ときには『平等』にあつかうこともあるのです」
「たしかに私はそういった意味で言ったわよ」
「二百五十六分の一の確率で起こるダンジョンの暴走。想定していなかった事態にも負けずに仲間のために戦う冒険者たち。そんな人間の熱い想いは最高のエネルギーです。ささやかな奇跡のひとつくらい起きてもおかしくないと思いませんか?」
「だから手を貸したと?」
「ちょっと違います。その望みを叶えるだけのエネルギーを皆さんが出したのです」
「意味がわからない」
「ワタシを敵だと思っているのですか?」
「隼人をゲームの中に引き込んだじゃない!」
「それも少し違います。了承したのはカレですよ。それにアナタはさきほど、ワタシは公平だって言ったじゃないですか。なのに敵視するのはおかしくありませんか?」

 この返しに言葉が詰まってしまった。なので私はもうひとつ別のことをアドミスに突きつけた。

「なら聞くわ、公平なる女神アドミス」
「なんでしょう?」
「隼人は……本当に戻ってくることはできるの?」

 このことを今日までハッキリと聞けなかったのは、『不可能』と言われてしまうことが怖かったから。ハヤトを蘇生させることはできたけど、それは私だけの力じゃない。絵美ちゃん、サーラちゃん、サクさんに、レガシー君の協力があればこそだ。だから、ハッキリさせなければならない。今後も助けてもらうことをお願いするにしても、ゴールが見えなければさすがに頼みようがないからだ。

「ハヤトさんが本当に戻れるのか……」

 異世界転移だのゲーム召喚だので喜ぶなんて、よっぽどこの世を憎んでいるか、家族や友人に感心がなかったり愛情が希薄だったりするとか、チートスキルを得て無双できることが当たり前だと思っている能天気な人なんだと思える。

 現にハヤトはチートスキルなんて与えられなかった。なんてったって公平を重んじる女神の世界だ。私の助けだって本物の命が懸かっているにしてはショボ過ぎるサポートだ。どこかの漫画の『等価交換』のように、バイト代は御業の燃料となってあっと言う間に消えていく。これは本当に等価なのか疑わしいほどだ。
 困難なうえにゴールも見えないのでは、私の心だっていつかは折れてしまうに違いない。

 腹を括ろう。次元の違う超常的な存在を前に、ちっぽけな人間がどうこうできるはずなどないのだから。どんとこい!

「もちろん、戻れますよ。当たり前じゃないですか」
「ホントに? 間違いないのね!」
「ワタシは公平なる女神ですよ」

 肉体は? 電子の世界なんでしょ? どんな仕組みなの? 聞いたところで答えてはくれないだろうし理解もできやしない。百パーセント信用できるはずもないのだけど、アドミスは隼人の帰還を確約した。

 この返答を聞いて一気に気が抜けてしまった私は、いったいなんのために隼人をゲームの中に召喚したのかという理由を訊くことができなかった。

「では、ハヤトさんを帰還させる条件ですが……」

  ※※※

「今日、集まってもらったのは他でもありません。今後のフロンティア攻略、ひいてはハヤト君のサポートについての話し合いをするためです」

 ハヤトの救出から一夜明けた今日。ハヤトには低級ダンジョンで金策をさせ、そのあいだにキラボシ食堂にてミーティングがおこなわれていた。

 エナコの招集にサーラちゃんとサクさんは応じてここにいるのだけど、リディアちゃんもエナコの隣に座って参加していた。お仕事は?

「昨日までの救出作戦でご存じでしょうけど……」
「私は存じません」
「リディアさんはゲストなので、あとでお話しします。えーと、ハヤト君は教会での蘇生ができません。もし、戦いにおいて死ぬようなことがあると、今度はもっと大変なことになります」

 私がね。だって、【再燃の焚き木】って三万(ジュエール)もしたのに、二回目はその十倍。三回目はさらに十倍だっていうんだもん。

 アドミスいわく、お金さえあれば無制限に蘇生できるってことだけど、実質的に限界はある。たとえ風俗に身を落としたとしても、期限以内に三百万円なんて絶対に無理だ。

「なので、特異な彼の境遇を踏まえて、ハヤト君の守護女神からの天啓をお伝えします」
「女神様のお名前は?」
「女神アドミスです」
「私の信仰している女神様じゃないですか! あなたがその使徒だなんて」

 アドミスってこの世界の人に信仰されてるの?

「その使徒のあたしが女神様から授かった使命のための作戦を伝えます」

 リディアちゃんの信じがたい発言が引っかかるけど、ミーティングは進んでいった。

「1・ハヤト君を死なせてはいけません。戦闘不能状態からは一刻も早く復帰させてください」
「はい!」

 サーラちゃんの元気の良い返事が店の中に広がった。

「2・最終目的はバージョン1のクリア」
「バージョン1?」
「魔王の侵略の第一波というような意味です」

 リディアちゃんにはわからないよね。

「北の山脈の黒いダンジョンの主である魔族ディーグラを倒すことです。そう女神様が言っています」

 これがアドミスが提示した帰還の条件だ。

「それで蘇生不能バグから解放できるんですね」
「そうみたい」
「そしたらフレンドメッセージも届くのかな?」

 たぶん届くと思うよ。外部との連絡を制限する意味がなくなるから。ただ、この条件には期限がある。それをエナコが説明した。

「ですが、八月三十日の二十二時までにディーグラを倒さなければなりません」
「なんで期限があるんだい? それに中途半端な日時だし」
「わたしはその時間までしかゲームできないのでちょうど良いのですけど」
「ゲーム?」
「あたしの国の言葉で『冒険』という意味です」
「あぁ、フレイマーの言葉なんですね」

 リディアちゃんだけ違う次元で聞いてるから疑問が多いよね。

「なんで期限内じゃないと蘇生不能バクが解消されないのでしょうか? それを過ぎたらバグが解消されないのですか?」

 サーラちゃんの疑問はもっともだ。

「それはですねぇ。ディーグラを倒すとフラグが立つのですけど、三十日までにそのフラグを立てないと、次の日の大型メンテナンスで当てられる修正バッチが反映されないらしいんです」
「修正バッチ?」
「冒険者のためになされる女神様による世界の浄化です」

 うまいこと言うな。

「その日を逃すと次の大型バージョンアップ……、つまり第二次魔族侵略を阻止するまでは蘇生不能が続くことになるでしょう。そうなってしまうと我々では彼を守ることが難しくなってしまいます」

 専門的なことがわからないサクさんとサーラちゃんもどうにか納得してくれたようだ。だけど、もちろんこれは私が頭を捻って考えた嘘。本当のところは、この日までに隼人が戻らないとそれ以上ごまかすことが難しいから。

 登校の前日になっても隼人が帰ってこないとなれば、さすがにお母さんも動くに違いない。そうなれば、行方不明になったとして警察沙汰になるだろうし、隼人を家に泊めたことになっている立花君にも迷惑がかかってしまう。

「バージョン1の最終ダンジョンが解放されるのが八月二十五日の正午。あたしたちが挑むのは三十日の十八時とします」

 たった三日しかなかったハヤトの救出作戦とは違う。夏休みの終了まであと十三日。中期的計画を立ててその日に備えるのならば、きっと予定どおりに準備できる。

「で、具体的に目指すことは……」

 1・全員のレベルを三十以上にする。
 2・アビリティ強化の弟子入りクエストを、現状で最高レベルの四にする。
 3・ハイレベル装備をひとつ以上入手する。
 4・プレイヤースキルを上げる。

「以上ですが、何か質問がありますか?」

 これに手を挙げたのはリディアちゃんだった。

「はい、リディアさん」
「女神の祝福を受けた冒険者は教会で蘇生できるということですけど、なぜ守護女神の祝福を受けているハヤトさんにはその祝福が働かないのでしょうか?」

 この世界の人ってそういう認識だったのね。つまり、幼馴染のベクマー君は、女神の祝福を受けていない冒険者ってことか。だから、彼には冒険者を辞めてほしかったわけだ。

「う~ん」

 リディアちゃんの質問にエナコは困っている。

「偉大なる女神アドミスよ、彼女の問いに答えたまえ」

 その困りごとを私に投げた。

「ディーグラって魔族の呪いだってことにすればいいんじゃない? 倒すことで呪いが解ける」

 私が即興で考えた理由をエナコが話すと、リディアちゃんだけは完全に信じた。

 このあと、みんなのログインできる曜日や時間を確認し、可能な限りハヤトをひとりにしないようにシフトを組んだ。仕事みたいでゴメンね。

 サーラちゃんは昼間がメイン。サクさんは夜がメイン。一番しんどい早朝はエナコがメインで担当することになった。だけど、夏休みとはいえ高校生が毎日、深夜から早朝にゲームしていては、ご両親から叱責を受けかねない。それが原因でゲームを禁止にされては非常にまずいことになる。なので、私は『作戦』を提案し、彼女の了承のもとに実行に移した。



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「アドミス」
 私の呼びかけを受けた彼女はすぐに現れた。
「おめでとうございます! 無事にハヤトさんを蘇生させましたね。時間的な猶予がないうえ、ダンジョンの暴走なんてレアな現象も重なる事態だったのに、それを乗り越えるなんてさすがです!」
 祝福と絶賛に心は踊らない。ずっと胸の奥にむず痒さがあるからだ。
「なんで私たちに手を貸したの? あんたのやり方は公平でしょ? 隼人や私たちを贔屓するはずがない」
 この言い分にアドミスは、初めて躊躇いらしきモノを見せた。
「そうですね。アナタの言うとおり、ワタシはあの世界の女神ですので公平を重んじています」
「だったら、なんであんなことをしたの?」
「あんなこととは?」
「とぼけないで! ストレージに入っているはずの再燃の焚き木がサーラちゃんの懐から落ちたこともそうだし、ボスモンスターを倒していないのにアイテムが勝手に使用されてハヤトは蘇生した。そんなことができるのは女神のあんただけでしょ?」
「はい」
 アドミスは笑顔で肯定した。
「もし、アナタが似たような意味の言葉から『公平』を選んで使ったのならばわかるかもしれませんが、ときには『平等』にあつかうこともあるのです」
「たしかに私はそういった意味で言ったわよ」
「二百五十六分の一の確率で起こるダンジョンの暴走。想定していなかった事態にも負けずに仲間のために戦う冒険者たち。そんな人間の熱い想いは最高のエネルギーです。ささやかな奇跡のひとつくらい起きてもおかしくないと思いませんか?」
「だから手を貸したと?」
「ちょっと違います。その望みを叶えるだけのエネルギーを皆さんが出したのです」
「意味がわからない」
「ワタシを敵だと思っているのですか?」
「隼人をゲームの中に引き込んだじゃない!」
「それも少し違います。了承したのはカレですよ。それにアナタはさきほど、ワタシは公平だって言ったじゃないですか。なのに敵視するのはおかしくありませんか?」
 この返しに言葉が詰まってしまった。なので私はもうひとつ別のことをアドミスに突きつけた。
「なら聞くわ、公平なる女神アドミス」
「なんでしょう?」
「隼人は……本当に戻ってくることはできるの?」
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「ハヤトさんが本当に戻れるのか……」
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 困難なうえにゴールも見えないのでは、私の心だっていつかは折れてしまうに違いない。
 腹を括ろう。次元の違う超常的な存在を前に、ちっぽけな人間がどうこうできるはずなどないのだから。どんとこい!
「もちろん、戻れますよ。当たり前じゃないですか」
「ホントに? 間違いないのね!」
「ワタシは公平なる女神ですよ」
 肉体は? 電子の世界なんでしょ? どんな仕組みなの? 聞いたところで答えてはくれないだろうし理解もできやしない。百パーセント信用できるはずもないのだけど、アドミスは隼人の帰還を確約した。
 この返答を聞いて一気に気が抜けてしまった私は、いったいなんのために隼人をゲームの中に召喚したのかという理由を訊くことができなかった。
「では、ハヤトさんを帰還させる条件ですが……」
  ※※※
「今日、集まってもらったのは他でもありません。今後のフロンティア攻略、ひいてはハヤト君のサポートについての話し合いをするためです」
 ハヤトの救出から一夜明けた今日。ハヤトには低級ダンジョンで金策をさせ、そのあいだにキラボシ食堂にてミーティングがおこなわれていた。
 エナコの招集にサーラちゃんとサクさんは応じてここにいるのだけど、リディアちゃんもエナコの隣に座って参加していた。お仕事は?
「昨日までの救出作戦でご存じでしょうけど……」
「私は存じません」
「リディアさんはゲストなので、あとでお話しします。えーと、ハヤト君は教会での蘇生ができません。もし、戦いにおいて死ぬようなことがあると、今度はもっと大変なことになります」
 私がね。だって、【再燃の焚き木】って三万|J《ジュエール》もしたのに、二回目はその十倍。三回目はさらに十倍だっていうんだもん。
 アドミスいわく、お金さえあれば無制限に蘇生できるってことだけど、実質的に限界はある。たとえ風俗に身を落としたとしても、期限以内に三百万円なんて絶対に無理だ。
「なので、特異な彼の境遇を踏まえて、ハヤト君の守護女神からの天啓をお伝えします」
「女神様のお名前は?」
「女神アドミスです」
「私の信仰している女神様じゃないですか! あなたがその使徒だなんて」
 アドミスってこの世界の人に信仰されてるの?
「その使徒のあたしが女神様から授かった使命のための作戦を伝えます」
 リディアちゃんの信じがたい発言が引っかかるけど、ミーティングは進んでいった。
「1・ハヤト君を死なせてはいけません。戦闘不能状態からは一刻も早く復帰させてください」
「はい!」
 サーラちゃんの元気の良い返事が店の中に広がった。
「2・最終目的はバージョン1のクリア」
「バージョン1?」
「魔王の侵略の第一波というような意味です」
 リディアちゃんにはわからないよね。
「北の山脈の黒いダンジョンの主である魔族ディーグラを倒すことです。そう女神様が言っています」
 これがアドミスが提示した帰還の条件だ。
「それで蘇生不能バグから解放できるんですね」
「そうみたい」
「そしたらフレンドメッセージも届くのかな?」
 たぶん届くと思うよ。外部との連絡を制限する意味がなくなるから。ただ、この条件には期限がある。それをエナコが説明した。
「ですが、八月三十日の二十二時までにディーグラを倒さなければなりません」
「なんで期限があるんだい? それに中途半端な日時だし」
「わたしはその時間までしかゲームできないのでちょうど良いのですけど」
「ゲーム?」
「あたしの国の言葉で『冒険』という意味です」
「あぁ、フレイマーの言葉なんですね」
 リディアちゃんだけ違う次元で聞いてるから疑問が多いよね。
「なんで期限内じゃないと蘇生不能バクが解消されないのでしょうか? それを過ぎたらバグが解消されないのですか?」
 サーラちゃんの疑問はもっともだ。
「それはですねぇ。ディーグラを倒すとフラグが立つのですけど、三十日までにそのフラグを立てないと、次の日の大型メンテナンスで当てられる修正バッチが反映されないらしいんです」
「修正バッチ?」
「冒険者のためになされる女神様による世界の浄化です」
 うまいこと言うな。
「その日を逃すと次の大型バージョンアップ……、つまり第二次魔族侵略を阻止するまでは蘇生不能が続くことになるでしょう。そうなってしまうと我々では彼を守ることが難しくなってしまいます」
 専門的なことがわからないサクさんとサーラちゃんもどうにか納得してくれたようだ。だけど、もちろんこれは私が頭を捻って考えた嘘。本当のところは、この日までに隼人が戻らないとそれ以上ごまかすことが難しいから。
 登校の前日になっても隼人が帰ってこないとなれば、さすがにお母さんも動くに違いない。そうなれば、行方不明になったとして警察沙汰になるだろうし、隼人を家に泊めたことになっている立花君にも迷惑がかかってしまう。
「バージョン1の最終ダンジョンが解放されるのが八月二十五日の正午。あたしたちが挑むのは三十日の十八時とします」
 たった三日しかなかったハヤトの救出作戦とは違う。夏休みの終了まであと十三日。中期的計画を立ててその日に備えるのならば、きっと予定どおりに準備できる。
「で、具体的に目指すことは……」
 1・全員のレベルを三十以上にする。
 2・アビリティ強化の弟子入りクエストを、現状で最高レベルの四にする。
 3・ハイレベル装備をひとつ以上入手する。
 4・プレイヤースキルを上げる。
「以上ですが、何か質問がありますか?」
 これに手を挙げたのはリディアちゃんだった。
「はい、リディアさん」
「女神の祝福を受けた冒険者は教会で蘇生できるということですけど、なぜ守護女神の祝福を受けているハヤトさんにはその祝福が働かないのでしょうか?」
 この世界の人ってそういう認識だったのね。つまり、幼馴染のベクマー君は、女神の祝福を受けていない冒険者ってことか。だから、彼には冒険者を辞めてほしかったわけだ。
「う~ん」
 リディアちゃんの質問にエナコは困っている。
「偉大なる女神アドミスよ、彼女の問いに答えたまえ」
 その困りごとを私に投げた。
「ディーグラって魔族の呪いだってことにすればいいんじゃない? 倒すことで呪いが解ける」
 私が即興で考えた理由をエナコが話すと、リディアちゃんだけは完全に信じた。
 このあと、みんなのログインできる曜日や時間を確認し、可能な限りハヤトをひとりにしないようにシフトを組んだ。仕事みたいでゴメンね。
 サーラちゃんは昼間がメイン。サクさんは夜がメイン。一番しんどい早朝はエナコがメインで担当することになった。だけど、夏休みとはいえ高校生が毎日、深夜から早朝にゲームしていては、ご両親から叱責を受けかねない。それが原因でゲームを禁止にされては非常にまずいことになる。なので、私は『作戦』を提案し、彼女の了承のもとに実行に移した。