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第18話 桐吾と晃、あるいは孤独を噛みしめる凪沙

ー/ー



 凪紗とは別れて、別の道を歩いてホテルへ向かう桐吾(とうご)たち。二人は凪沙(なぎさ)を話題にしていた。(あきら)が桐吾をいさめるような口調になる。

「相変わらずだね」

「相変わらずなんだって?」

 桐吾は満面の笑みを浮かべている。晃は桐吾を突き刺すような目つきで睨む。

「そういうとこ」

「いやいやどういうとこだかさっぱり見当がつかんなあ」

「だから! けしかけ、焚きつけ、煽り!」

「いやはや、いずれも吾輩の辞書にはない言葉ばかりだ」

「ねえ酔ってるの? お酒に? それとも凪沙さんの状況に?」

「さあどうだろうな」

「もう!」

「まあそう言うな。とにかく明日二人が幸せになることだけを祈ろう」

「そうしたら他の沢山の人が不幸せになるんだけどね」

「それは仕方ない。人間必ず一つのことしか選択できないんだからな」

「……ありがと」

「ん?」

「僕を選択してくれて」

 桐吾は晃の肩を力強く抱いた。

「よしもう一軒行くか!」

「えっ、もう飲まないんじゃなかったの?」

「前祝いだよ、二人のさ」

「……そうだね」

 桐吾と晃は冬の函館の飲み屋街に消えていった。

 凪沙はアパートに帰りつくとそこには誰もいない。寒々とした狭い部屋にたった一人がいないだけでこんなにも広く、こんなにも寂しく感じてしまうのか。
 ちゃぶ台の上には二つの湯飲みとひとつのマグカップ、消えたアロマキャンドルが侘し気に凪沙の帰りを待っていた。愛玲奈(あれな)が使っていたマグカップを手に取り口づけをした。冷たくて硬質な感触がする。愛玲奈(あれな)の唇や頬とは違う。凪沙は湯飲みとマグカップを洗いながら決意を新たにする。あの温かさ、あの柔らかさ、あのくしゃくしゃの髪、あの瞳、あの声、あの身体、あの心。取り戻す。奪い返す。全てを。
 そして凪沙は一人寝た。薄くて冷たい安物の布団が寒い。愛玲奈(あれな)は今頃温かいホテルで寝ているはずだ。泣いていないだろうか。寂しくはないだろうか。辛くはないだろうか。凪沙も今泣いていた。泣いて泣いてそれでも飽き足らず瞳を涙で潤ませ、必ず愛玲奈(あれな)を取り返すと怒りに震えながら自分と愛玲奈(あれな)に誓ってまた泣いた。気がついた頃には差し込んでいた月明かりも消え、もう五時を回っていた。

◆次回 第19話 告白


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 凪紗とは別れて、別の道を歩いてホテルへ向かう|桐吾《とうご》たち。二人は|凪沙《なぎさ》を話題にしていた。|晃《あきら》が桐吾をいさめるような口調になる。
「相変わらずだね」
「相変わらずなんだって?」
 桐吾は満面の笑みを浮かべている。晃は桐吾を突き刺すような目つきで睨む。
「そういうとこ」
「いやいやどういうとこだかさっぱり見当がつかんなあ」
「だから! けしかけ、焚きつけ、煽り!」
「いやはや、いずれも吾輩の辞書にはない言葉ばかりだ」
「ねえ酔ってるの? お酒に? それとも凪沙さんの状況に?」
「さあどうだろうな」
「もう!」
「まあそう言うな。とにかく明日二人が幸せになることだけを祈ろう」
「そうしたら他の沢山の人が不幸せになるんだけどね」
「それは仕方ない。人間必ず一つのことしか選択できないんだからな」
「……ありがと」
「ん?」
「僕を選択してくれて」
 桐吾は晃の肩を力強く抱いた。
「よしもう一軒行くか!」
「えっ、もう飲まないんじゃなかったの?」
「前祝いだよ、二人のさ」
「……そうだね」
 桐吾と晃は冬の函館の飲み屋街に消えていった。
 凪沙はアパートに帰りつくとそこには誰もいない。寒々とした狭い部屋にたった一人がいないだけでこんなにも広く、こんなにも寂しく感じてしまうのか。
 ちゃぶ台の上には二つの湯飲みとひとつのマグカップ、消えたアロマキャンドルが侘し気に凪沙の帰りを待っていた。|愛玲奈《あれな》が使っていたマグカップを手に取り口づけをした。冷たくて硬質な感触がする。|愛玲奈《あれな》の唇や頬とは違う。凪沙は湯飲みとマグカップを洗いながら決意を新たにする。あの温かさ、あの柔らかさ、あのくしゃくしゃの髪、あの瞳、あの声、あの身体、あの心。取り戻す。奪い返す。全てを。
 そして凪沙は一人寝た。薄くて冷たい安物の布団が寒い。|愛玲奈《あれな》は今頃温かいホテルで寝ているはずだ。泣いていないだろうか。寂しくはないだろうか。辛くはないだろうか。凪沙も今泣いていた。泣いて泣いてそれでも飽き足らず瞳を涙で潤ませ、必ず|愛玲奈《あれな》を取り返すと怒りに震えながら自分と|愛玲奈《あれな》に誓ってまた泣いた。気がついた頃には差し込んでいた月明かりも消え、もう五時を回っていた。
◆次回 第19話 告白