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3-2・大人の男として紳士的かつ礼儀正しく、余裕のある態度で接しなければ。

ー/ー



 翌日、指定された時間より5分ほど早くホプ女の校門に行くと美穂ちゃんを見つけた。
 良かった。これでまた職質される心配はない。なんとなく背筋を正して歩いていると、彼女の近くにもう1人女の子がいることに気付く。
 髪の長い女の子だ。肩甲骨辺りまで伸びていて、綺麗にまっすぐ下ろしている。
 美穂ちゃんよりも背が高く、華奢で首が長い。
 もう少し近づくと美穂ちゃんが俺に気付き、手を挙げて振ってきた。俺も軽く手を振って応えると隣にいた女の子が俺の方を向いた。
 卵型の頭と垂れ目に色素の薄い唇。こんなことを言うのは失礼だが、薄幸の美少女って感じだ。いい意味で言うと大人っぽい顔立ちをしている。
 美穂ちゃんとは反対のタイプの友達と言ったところか。俺が2人の前に辿り着くと、美穂ちゃんはニコッと笑い、お友達は懐疑的な視線を向けてきた。
「お待たせ、美穂ちゃん」
「すみません日之太さん。急に集合場所変えてもらって」
「いや、全然大丈夫よ。それで……」
 言いながら俺は美穂ちゃんのお友達に視線を向ける。
 お友達は微動だにしない。ジッと鋭い目で俺を見ているだけだ。
「えっと、友達の筑田奈保。奈保、この人が佐古日之太さん」
 美穂ちゃんが俺たちの間に入って互いに互いを紹介する。
 奈保ちゃんはカバンをギュッと握りしめ、「どうも」とだけ言った。
 最初っから随分と警戒されているな。まぁ大切な友達のがいつの間にかこんな男と仲良くなっているのだから気に喰わないのも無理はない。
 しかし俺は大人だ。大人の男として紳士的かつ礼儀正しく、余裕のある態度で接しなければ。
 俺は仏頂面で睨む奈保ちゃんへ巧みに微笑みかけた。
「初めまして、佐古日之太です。緑黄館大学の3年生。21歳。文学科の英米語コース。美穂ちゃんとの話は……どこまで聞いてるかな?」
「筑田奈保です。普通科1年です。貴方が純真な美穂を騙していやらしいことをしようとしてるってことは知ってます」
 目ん玉飛び出そうになった。俺はギョッとして奈保ちゃんを見て、すぐに美穂ちゃんを見る。
 彼女も同じくオレンジ色の瞳を見開いて奈保ちゃんへと迫った。
「ちょっ、ちょっと奈保。日之太さんになんてこと言うの」
「美穂は黙ってて。今日は私がこの人を見極めるんだから」
 嫌悪感丸出しで俺を睨む奈保ちゃん。あまりにも純粋な敵意に俺はどうしたらいいか分からず、視線を受け流しながら首筋を掻く。
 これはもう、なにを言っても無理そうだ。フッと自嘲するように息を吐くと、美穂ちゃんは慌てて俺に寄ってきて腕を掴んできた。
「ごめんなさい日之太さん。その、奈保がどうしても会って確かめたいっていうから……その、ほんとに悪気はないんです。ただその……なんていうか」
「大丈夫、分かってるよ。俺だって同じ立場だったら怪しむと思うし」
「そこまで分かってるのに美穂と会うのはやめないんですね」
「奈保っ、やめてってば。ほらもう行こっ」
 奈保ちゃんが口を挟むと美穂ちゃんはすかさず俺から離れて友達の背中を押す。
 心配してくれる友達がいるというのはいいことだけど、これはこれで大変だ。
 宥めながら歩く美穂ちゃんとあきれ顔の奈保ちゃん。そんな2人の女子高生の後ろで俺は居心地悪く歩く。
 そうやって少し進んだところで奈保ちゃんがピタッと足を止めて振り向いてきた。相変わらずの冷たい目で俺を見る。
「知らない男の人に後ろを歩かれるの嫌なんで、前歩いてもらえますか?」
 知らない男の人。そう言われりゃそうなんだけど、なんていうかあまりにもだ。
 とはいえ奈保ちゃんの信頼を得るには素直に従うしかない。俺は努めて柔らかい声色で「もちろん」と言って2人の前へと出る。
「ところで、これからどこに行くのかな? ほら、いつもは俺が行く場所決めてるからさ」
「ええ、そうやって美穂を縄張りに連れ込んでたんですよね。今日はそうはいきません」
「……それで、どこに行くのよ」
 早くも反応するのが面倒になってきた。美穂ちゃんと目を合わせると、彼女は曖昧に笑った。
「今日は私の家に行きます。そこで、美穂が本当に貴方の前で眠れるのか確かめますから」


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 翌日、指定された時間より5分ほど早くホプ女の校門に行くと美穂ちゃんを見つけた。
 良かった。これでまた職質される心配はない。なんとなく背筋を正して歩いていると、彼女の近くにもう1人女の子がいることに気付く。
 髪の長い女の子だ。肩甲骨辺りまで伸びていて、綺麗にまっすぐ下ろしている。
 美穂ちゃんよりも背が高く、華奢で首が長い。
 もう少し近づくと美穂ちゃんが俺に気付き、手を挙げて振ってきた。俺も軽く手を振って応えると隣にいた女の子が俺の方を向いた。
 卵型の頭と垂れ目に色素の薄い唇。こんなことを言うのは失礼だが、薄幸の美少女って感じだ。いい意味で言うと大人っぽい顔立ちをしている。
 美穂ちゃんとは反対のタイプの友達と言ったところか。俺が2人の前に辿り着くと、美穂ちゃんはニコッと笑い、お友達は懐疑的な視線を向けてきた。
「お待たせ、美穂ちゃん」
「すみません日之太さん。急に集合場所変えてもらって」
「いや、全然大丈夫よ。それで……」
 言いながら俺は美穂ちゃんのお友達に視線を向ける。
 お友達は微動だにしない。ジッと鋭い目で俺を見ているだけだ。
「えっと、友達の筑田奈保。奈保、この人が佐古日之太さん」
 美穂ちゃんが俺たちの間に入って互いに互いを紹介する。
 奈保ちゃんはカバンをギュッと握りしめ、「どうも」とだけ言った。
 最初っから随分と警戒されているな。まぁ大切な友達のがいつの間にかこんな男と仲良くなっているのだから気に喰わないのも無理はない。
 しかし俺は大人だ。大人の男として紳士的かつ礼儀正しく、余裕のある態度で接しなければ。
 俺は仏頂面で睨む奈保ちゃんへ巧みに微笑みかけた。
「初めまして、佐古日之太です。緑黄館大学の3年生。21歳。文学科の英米語コース。美穂ちゃんとの話は……どこまで聞いてるかな?」
「筑田奈保です。普通科1年です。貴方が純真な美穂を騙していやらしいことをしようとしてるってことは知ってます」
 目ん玉飛び出そうになった。俺はギョッとして奈保ちゃんを見て、すぐに美穂ちゃんを見る。
 彼女も同じくオレンジ色の瞳を見開いて奈保ちゃんへと迫った。
「ちょっ、ちょっと奈保。日之太さんになんてこと言うの」
「美穂は黙ってて。今日は私がこの人を見極めるんだから」
 嫌悪感丸出しで俺を睨む奈保ちゃん。あまりにも純粋な敵意に俺はどうしたらいいか分からず、視線を受け流しながら首筋を掻く。
 これはもう、なにを言っても無理そうだ。フッと自嘲するように息を吐くと、美穂ちゃんは慌てて俺に寄ってきて腕を掴んできた。
「ごめんなさい日之太さん。その、奈保がどうしても会って確かめたいっていうから……その、ほんとに悪気はないんです。ただその……なんていうか」
「大丈夫、分かってるよ。俺だって同じ立場だったら怪しむと思うし」
「そこまで分かってるのに美穂と会うのはやめないんですね」
「奈保っ、やめてってば。ほらもう行こっ」
 奈保ちゃんが口を挟むと美穂ちゃんはすかさず俺から離れて友達の背中を押す。
 心配してくれる友達がいるというのはいいことだけど、これはこれで大変だ。
 宥めながら歩く美穂ちゃんとあきれ顔の奈保ちゃん。そんな2人の女子高生の後ろで俺は居心地悪く歩く。
 そうやって少し進んだところで奈保ちゃんがピタッと足を止めて振り向いてきた。相変わらずの冷たい目で俺を見る。
「知らない男の人に後ろを歩かれるの嫌なんで、前歩いてもらえますか?」
 知らない男の人。そう言われりゃそうなんだけど、なんていうかあまりにもだ。
 とはいえ奈保ちゃんの信頼を得るには素直に従うしかない。俺は努めて柔らかい声色で「もちろん」と言って2人の前へと出る。
「ところで、これからどこに行くのかな? ほら、いつもは俺が行く場所決めてるからさ」
「ええ、そうやって美穂を縄張りに連れ込んでたんですよね。今日はそうはいきません」
「……それで、どこに行くのよ」
 早くも反応するのが面倒になってきた。美穂ちゃんと目を合わせると、彼女は曖昧に笑った。
「今日は私の家に行きます。そこで、美穂が本当に貴方の前で眠れるのか確かめますから」