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3-1・今回ばかりは素直に楽しむことができそうにない。

ー/ー



 明日部美穂ちゃんのお守りは週2回くらいのペースで続いていた。
 なんでも、一度俺と眠ると何日かは眠れるようで、その効力が切れてきたころにまた彼女から連絡がくる。それが大体週2回のペースとなっているのだ。
 場所はいくつか用意した。ネカフェ、カラオケ、ファミレスに喫茶店、珍しいところで言うと公園とかでも寝た。
 一度だけ格安のビジネスホテルで部屋を借りて眠ったこともある。
 そうやって、彼女と一緒に寝る時間を過ごすようになって、1ヶ月ほど経過した。
 出会う前は血色が悪かった顔も、今は艶とハリのある生気に満ち溢れた顔をしている。
 足取りは軽く、振る舞いは明るく、まさに愛嬌溢れる美少女といったところか。
 ホプ女の制服も変わり、白と黒のカラーリングでスカートとブレザータイプから、オルタネイトストライプのワンピースタイプへと変わった。どっちにしろ目立つデザインだ。
 無論俺は一切手を出していない。友人である宗志は会うたびにどこまでいったんだと訊いてくるが、手を繋いですらいない。
 いや、確かに寝るときは彼女の方から手を握ってきたり、指に触れたりするけど、それはあくまで男女としての触れあいというよりも、安心毛布みたいな、そういう扱いだ。
 ゆえに美穂ちゃんは特に意識してないだろう。もちろん俺も。
『明日なんですけど場所変えてもいいですか?』
 大学での休み時間。准教授こと七葉ちゃんから渡された課題を消化することでやり過ごしていると、美穂ちゃんから連絡がきた。
 明日は確か大学近くのカラオケで数時間ほど過ごす予定だった。日付の変更とかはこれまでもあったけど、利用する場所の変更は珍しい。
 なにか事情でもあったのか聞きたいけれど、聞くのはなんだか違う気がする。プライベートに干渉するのはルール違反というか、付き合っていない男女の距離感じゃないというか。
 とはいえどこに変わるかくらいは聞いてもいいだろう。というか聞かないと分からん。
 ひとまず場所が変わるのを了承しつつ、どこにするのか聞いてみる。
 するとメッセージにすぐ既読がついて返信がきた。
『うちの学校の前です!』
 職質された情景が脳裏に蘇る。よりによってホプ女で集合だなんて。俺の気まずさも少しは考えてほしいと思うが、まぁそれを年下の女の子に求めるのは酷なものだろう。
 うわぁっと思いつつも、俺はメッセージを送る。大丈夫だよと返事すると美穂ちゃんがありがとうございますというスタンプが返ってくる。
 そしてさらに、追加のメッセージ。その送られてきた内容に俺は目を疑った。
『明日は私の友達も来るんですけど、いいですか?』
 マジで言ってるのか。
 友達って、学校の友達のことか。いたんだ。いやいるだろ。あんなに可愛くてあんなにいい子なんだぞ。友達の1人や2人いるに決まってる。
 いや問題はそこじゃない。美穂ちゃんが友達を連れてくるってとこだ。この子守の時間に。
 正気とは思えない。そもそも美穂ちゃんはその友達に俺のことをどんなふうに話したんだ。いつも一緒に寝てくれる大学生の男の人とでも言ったのか。
 正直言うと断りたい。連れてくるのはちょっとと言いたい。しかしそう言ってしまえばなぜダメなのか説明する必要があるし、まるでやましいことをしているか、しようとしているみたいに思われてしまう。
 それだけは避けたい。俺と美穂ちゃんはあくまで健全な関係なのだと、その友達とやらに納得してもらう必要もある。
 ならば提案を受け入れるしかないだろう。俺はスマホの画面を見下ろし、ゆっくりと長く息を吐き『構わないよ』と返信する。
 少し時間が空いて既読がつき、美穂ちゃんからメッセージが送られてくる。
『分かりました。それじゃあ明日よろしくおねがいします』
 ぺこっとマスコットキャラクターが頭を下げるスタンプが送られてくる。いつもなら結構楽しみなのだが、今回ばかりは素直に楽しむことができそうにない。


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 明日部美穂ちゃんのお守りは週2回くらいのペースで続いていた。
 なんでも、一度俺と眠ると何日かは眠れるようで、その効力が切れてきたころにまた彼女から連絡がくる。それが大体週2回のペースとなっているのだ。
 場所はいくつか用意した。ネカフェ、カラオケ、ファミレスに喫茶店、珍しいところで言うと公園とかでも寝た。
 一度だけ格安のビジネスホテルで部屋を借りて眠ったこともある。
 そうやって、彼女と一緒に寝る時間を過ごすようになって、1ヶ月ほど経過した。
 出会う前は血色が悪かった顔も、今は艶とハリのある生気に満ち溢れた顔をしている。
 足取りは軽く、振る舞いは明るく、まさに愛嬌溢れる美少女といったところか。
 ホプ女の制服も変わり、白と黒のカラーリングでスカートとブレザータイプから、オルタネイトストライプのワンピースタイプへと変わった。どっちにしろ目立つデザインだ。
 無論俺は一切手を出していない。友人である宗志は会うたびにどこまでいったんだと訊いてくるが、手を繋いですらいない。
 いや、確かに寝るときは彼女の方から手を握ってきたり、指に触れたりするけど、それはあくまで男女としての触れあいというよりも、安心毛布みたいな、そういう扱いだ。
 ゆえに美穂ちゃんは特に意識してないだろう。もちろん俺も。
『明日なんですけど場所変えてもいいですか?』
 大学での休み時間。准教授こと七葉ちゃんから渡された課題を消化することでやり過ごしていると、美穂ちゃんから連絡がきた。
 明日は確か大学近くのカラオケで数時間ほど過ごす予定だった。日付の変更とかはこれまでもあったけど、利用する場所の変更は珍しい。
 なにか事情でもあったのか聞きたいけれど、聞くのはなんだか違う気がする。プライベートに干渉するのはルール違反というか、付き合っていない男女の距離感じゃないというか。
 とはいえどこに変わるかくらいは聞いてもいいだろう。というか聞かないと分からん。
 ひとまず場所が変わるのを了承しつつ、どこにするのか聞いてみる。
 するとメッセージにすぐ既読がついて返信がきた。
『うちの学校の前です!』
 職質された情景が脳裏に蘇る。よりによってホプ女で集合だなんて。俺の気まずさも少しは考えてほしいと思うが、まぁそれを年下の女の子に求めるのは酷なものだろう。
 うわぁっと思いつつも、俺はメッセージを送る。大丈夫だよと返事すると美穂ちゃんがありがとうございますというスタンプが返ってくる。
 そしてさらに、追加のメッセージ。その送られてきた内容に俺は目を疑った。
『明日は私の友達も来るんですけど、いいですか?』
 マジで言ってるのか。
 友達って、学校の友達のことか。いたんだ。いやいるだろ。あんなに可愛くてあんなにいい子なんだぞ。友達の1人や2人いるに決まってる。
 いや問題はそこじゃない。美穂ちゃんが友達を連れてくるってとこだ。この子守の時間に。
 正気とは思えない。そもそも美穂ちゃんはその友達に俺のことをどんなふうに話したんだ。いつも一緒に寝てくれる大学生の男の人とでも言ったのか。
 正直言うと断りたい。連れてくるのはちょっとと言いたい。しかしそう言ってしまえばなぜダメなのか説明する必要があるし、まるでやましいことをしているか、しようとしているみたいに思われてしまう。
 それだけは避けたい。俺と美穂ちゃんはあくまで健全な関係なのだと、その友達とやらに納得してもらう必要もある。
 ならば提案を受け入れるしかないだろう。俺はスマホの画面を見下ろし、ゆっくりと長く息を吐き『構わないよ』と返信する。
 少し時間が空いて既読がつき、美穂ちゃんからメッセージが送られてくる。
『分かりました。それじゃあ明日よろしくおねがいします』
 ぺこっとマスコットキャラクターが頭を下げるスタンプが送られてくる。いつもなら結構楽しみなのだが、今回ばかりは素直に楽しむことができそうにない。