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2-7・ピュアなリアクションに俺は思わずキュンとしてしまう。

ー/ー



 俺は美穂ちゃんを連れて駅から少し歩いたところにあるネットカフェに入った。
 駅の近くでも良かったのだが、ホプ女の生徒ならまだしも、教員とかに見つかると面倒くさいだろうなーと思ってのチョイスだ。
「……なんか、明るくて綺麗なところですね。イメージと違う」
 店内に入るなり美穂ちゃんが呟く。通学用のカバンを両手で持ってキョロキョロと顔を動かすその姿はなんだかお嬢様っぽい。
「個室もまぁまぁ広いし、照明も明るいし。防音もしっかりしてるし。おススメのところだよ。つっても、俺も大学の先輩に教えてもらったんだけど」
 話しながらカウンターへと向かう。まぁその分少し値段が高いのだが、そこはまぁ仕方がない。暗くて汚いネカフェに連れていくわけにもいかないだろう。
 受付機で会員カードを入れる。画面が切り替わり空いている部屋が表示される。
「あー……美穂ちゃん、ちょっと」
 後ろで待つ彼女へ声をかける。パタパタと歩き、俺の斜め後ろについた。
「なんですか?」
「部屋なんだけど……そのどうせ一緒なわけだし……ここでもいい?」
 受付機の液晶画面を指す。男女の2人組のみが利用可能なカップルシート。ペアシートよりも若干安くなっている。
 しかしカップルシートだ。俺達はそんな関係ではないというのに利用するというのはいかがなものだろうか。
 俺はいい。なにかするつもりなんてないし別に構わない。
 だが美穂ちゃんは違うだろう。多少なりとも思うところがあるはず。
「あぁ、全然いいですよ。だいじょぶです」
 ノーリアクションでの返事。考えたり恥ずかしがったり、そういう逡巡みたいなのは一切なしのシンプルな返事に俺は肩透かしを喰らう。
 まぁしかしよく考えるとだ、制服姿で男とネカフェに入ってるのだからこんなの今更だろう。
 彼女からの了承も得たところで受付を手早く済ませる。返ってきた会員カードを手に取ってそのまま部屋へ向かった。
「漫画、なんか読む?」
 部屋に入る前に美穂ちゃんへ声をかける。さっきからずっとキョロキョロしっぱなしの彼女はハッとして目を見開き「へぇ?」と素っ頓狂な声をあげる。
「いやほら、一応なんか読むかなーって思って」
「……ここにあるやつですか?」
「うん、いや向こうにも本棚はあるけど」
「えーここにある本ぜんぶ……」
 カバンを握ったまま本棚を見上げる美穂ちゃん。もしかして、こういうところ来るの初めてなのだろうか。さっきからやたらキョロキョロしてるし。
 もしそうだとしたらこれも知らないはずだ。俺は心の中にしまっていた嗜虐心がひょこっと顔を出したのを自覚し、小首を傾げて少し身を屈めた。
「実はここ、ドリンク飲み放題なんだよ。ほら、あっちにドリンクバーあるでしょ?」
 囁くように伝えると美穂ちゃんは驚いた顔のままドリンクバーを見つける。
「ほんとだ……あれ、無料なんですか?」
「利用者はね。あとほら、隣見てごらん」
「となり? なんですか、あれ」
「あれはねフライドポテト。あれも食べ放題」
「フライドポテトも……」
「で、その隣にはソフトクリーム作るやつ」
「ソフトクリームも!?」
 甲高い声をあげて跳ねる美穂ちゃん。思わず大笑いしそうになるが、その前に彼女を落ち着かせなければ。
「美穂ちゃん、声。あんまおっきい声出しちゃダメだよ」
「え? あっ、ごめんなさい。その、びっくりしちゃって」
 美穂ちゃんが恥ずかしそうに顔を俯かせる。ピュアなリアクションに俺は思わずキュンとしてしまう。こんな純粋な子がまだ東京にいたんだな。
 ひとまず、せっかく来たのだから俺は暇つぶし用の漫画を数冊、美穂ちゃんはこれまた無料のミニパンケーキの上にソフトクリームを乗せて持ってきた。
「これが無料だなんて……ネットカフェ、すごい」
 オレンジ色の瞳をキラキラと輝かせながら美穂ちゃんは通路を歩く。
 どうやらお気に召してくれたようだ。微妙なリアクションされたらどうしようと思っていた。
「ここだ。この部屋」
 指定された部屋の前まで来たところで、カードスロットに会員証を挿し込む。ピピッと音が鳴ってロックが解除されドアが開く。
「あい、どうぞ」
「おじゃましまーす……わっ、思ってたより広いかも」
 個室に入るなり美穂ちゃんはスライド式のデスクにソフトクリームが盛られたお皿を置いて足を曲げて座る。
 2人は余裕で寝られるフルフラットシートは適度に明るく涼しげだ。俺もとりあえずカバンを置いて壁際に座り、近くに漫画を置く。
「よし、それじゃあ後はご自由に。食べるなり、寝るなり、好きにしてください」
「はーい。今更ですけどここって何時までいられるんですか?」
「帰るときに精算するからねぇ。逆に美穂ちゃんは何時までいられるの?」
「何時……多分8時くらいまでだと思います」
「そっか、じゃあ8時前くらいになったら起こすよ」
 そう言って俺は足を伸ばして寛ぐ。美穂ちゃんも持ってきたソフトクリームを食べ始めた。
 なんだか不思議な時間だ。まだ会ったばかりの女子高生とネカフェのカップルシートで2人っきりだなんて。しかも彼女のお守りしているだけ。


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 俺は美穂ちゃんを連れて駅から少し歩いたところにあるネットカフェに入った。
 駅の近くでも良かったのだが、ホプ女の生徒ならまだしも、教員とかに見つかると面倒くさいだろうなーと思ってのチョイスだ。
「……なんか、明るくて綺麗なところですね。イメージと違う」
 店内に入るなり美穂ちゃんが呟く。通学用のカバンを両手で持ってキョロキョロと顔を動かすその姿はなんだかお嬢様っぽい。
「個室もまぁまぁ広いし、照明も明るいし。防音もしっかりしてるし。おススメのところだよ。つっても、俺も大学の先輩に教えてもらったんだけど」
 話しながらカウンターへと向かう。まぁその分少し値段が高いのだが、そこはまぁ仕方がない。暗くて汚いネカフェに連れていくわけにもいかないだろう。
 受付機で会員カードを入れる。画面が切り替わり空いている部屋が表示される。
「あー……美穂ちゃん、ちょっと」
 後ろで待つ彼女へ声をかける。パタパタと歩き、俺の斜め後ろについた。
「なんですか?」
「部屋なんだけど……そのどうせ一緒なわけだし……ここでもいい?」
 受付機の液晶画面を指す。男女の2人組のみが利用可能なカップルシート。ペアシートよりも若干安くなっている。
 しかしカップルシートだ。俺達はそんな関係ではないというのに利用するというのはいかがなものだろうか。
 俺はいい。なにかするつもりなんてないし別に構わない。
 だが美穂ちゃんは違うだろう。多少なりとも思うところがあるはず。
「あぁ、全然いいですよ。だいじょぶです」
 ノーリアクションでの返事。考えたり恥ずかしがったり、そういう逡巡みたいなのは一切なしのシンプルな返事に俺は肩透かしを喰らう。
 まぁしかしよく考えるとだ、制服姿で男とネカフェに入ってるのだからこんなの今更だろう。
 彼女からの了承も得たところで受付を手早く済ませる。返ってきた会員カードを手に取ってそのまま部屋へ向かった。
「漫画、なんか読む?」
 部屋に入る前に美穂ちゃんへ声をかける。さっきからずっとキョロキョロしっぱなしの彼女はハッとして目を見開き「へぇ?」と素っ頓狂な声をあげる。
「いやほら、一応なんか読むかなーって思って」
「……ここにあるやつですか?」
「うん、いや向こうにも本棚はあるけど」
「えーここにある本ぜんぶ……」
 カバンを握ったまま本棚を見上げる美穂ちゃん。もしかして、こういうところ来るの初めてなのだろうか。さっきからやたらキョロキョロしてるし。
 もしそうだとしたらこれも知らないはずだ。俺は心の中にしまっていた嗜虐心がひょこっと顔を出したのを自覚し、小首を傾げて少し身を屈めた。
「実はここ、ドリンク飲み放題なんだよ。ほら、あっちにドリンクバーあるでしょ?」
 囁くように伝えると美穂ちゃんは驚いた顔のままドリンクバーを見つける。
「ほんとだ……あれ、無料なんですか?」
「利用者はね。あとほら、隣見てごらん」
「となり? なんですか、あれ」
「あれはねフライドポテト。あれも食べ放題」
「フライドポテトも……」
「で、その隣にはソフトクリーム作るやつ」
「ソフトクリームも!?」
 甲高い声をあげて跳ねる美穂ちゃん。思わず大笑いしそうになるが、その前に彼女を落ち着かせなければ。
「美穂ちゃん、声。あんまおっきい声出しちゃダメだよ」
「え? あっ、ごめんなさい。その、びっくりしちゃって」
 美穂ちゃんが恥ずかしそうに顔を俯かせる。ピュアなリアクションに俺は思わずキュンとしてしまう。こんな純粋な子がまだ東京にいたんだな。
 ひとまず、せっかく来たのだから俺は暇つぶし用の漫画を数冊、美穂ちゃんはこれまた無料のミニパンケーキの上にソフトクリームを乗せて持ってきた。
「これが無料だなんて……ネットカフェ、すごい」
 オレンジ色の瞳をキラキラと輝かせながら美穂ちゃんは通路を歩く。
 どうやらお気に召してくれたようだ。微妙なリアクションされたらどうしようと思っていた。
「ここだ。この部屋」
 指定された部屋の前まで来たところで、カードスロットに会員証を挿し込む。ピピッと音が鳴ってロックが解除されドアが開く。
「あい、どうぞ」
「おじゃましまーす……わっ、思ってたより広いかも」
 個室に入るなり美穂ちゃんはスライド式のデスクにソフトクリームが盛られたお皿を置いて足を曲げて座る。
 2人は余裕で寝られるフルフラットシートは適度に明るく涼しげだ。俺もとりあえずカバンを置いて壁際に座り、近くに漫画を置く。
「よし、それじゃあ後はご自由に。食べるなり、寝るなり、好きにしてください」
「はーい。今更ですけどここって何時までいられるんですか?」
「帰るときに精算するからねぇ。逆に美穂ちゃんは何時までいられるの?」
「何時……多分8時くらいまでだと思います」
「そっか、じゃあ8時前くらいになったら起こすよ」
 そう言って俺は足を伸ばして寛ぐ。美穂ちゃんも持ってきたソフトクリームを食べ始めた。
 なんだか不思議な時間だ。まだ会ったばかりの女子高生とネカフェのカップルシートで2人っきりだなんて。しかも彼女のお守りしているだけ。