お見合い物語④
ー/ー「それは盟ちゃんのエゴだと思う」
市来花は、盟子の話を聞くと、いつものおっとりした調子でそう切り出した。大学の帰り、新宿のパンケーキ屋さんで向かい合いながら。
エゴ。
けれどそのキツい言葉も、たっぷりシロップをつけたたまご色のパンケーキを頬張りつつの花に言われると、抵抗なく胸に落ちる気がする。
花もまた盟子と同じく風雅堂カフェの古参スタッフで、研究者目指して大学院に在籍中だ。平日の昼間というのんびりした時間にここに来れるのは大学生の特権。
「でもまぁ、あの人も特殊な家の特殊な人だからねぇ」
ナイフとフォークを置いてミルクティを一口飲むと、花はふうっとため息を吐いた。
「それでもさ、玲さんが結婚するから八つ当たりなんて、盟ちゃんらしくない。好きな人の幸せなら、辛くても笑って応援してあげなきゃ」
それが「好き」ってことだよ? と諸々の事情を知っている花に諭されて、鼻の奥がつんとした。
本当にその通りだと思う。お互いが望んで結ばれるのだとしたら、こんなに幸せなことはないはずだ。結婚なんかしないものと盟子が勝手に都合よく思い込んでいただけで、相手と会って意志が翻る可能性は当然あった。
「……そうなんですよねぇ。解ってるんです」
目の前のパンケーキを見つめながら、食べることも忘れて盟子は呟いた。
守谷の両親も、はねっ返り次男の結婚が決まればきっと喜ぶに違いない。孫と和解できないまま亡くなってしまった天国の祖父だってもちろん。それを祝福できない嫌な自分。
……遠峰神社で守谷の初舞を見た高校生の時。
あの背中を見失いたくないと願った。「待って」なんて高望みしちゃいけないのだと自分を戒めた。
そのことを思えば、いまだこうして近くにいられる自分は、あの頃望んだ夢の先にちゃんと立っているのに。
「私、欲張りすぎでした」
カフェオレを一口すすって、ちょっと練習させてくださいと盟子は背筋を正す。呼吸を整える。
「玲峰先生、ご結婚おめでとうございます」
そうしてとびきりの笑顔を添えようと思ったのに。
……だめだぁ。
慌ててハンカチを探す。そんな盟子の頭を、あーもう純粋すぎてこっちまで心が洗われちゃう、と花がくしゃくしゃと撫でた。
「……っていうのは建前ってヤツでね、盟ちゃん」
そして、にこぉっといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ここから本音ね。その美人さんと玲さん、そのうち終わるから大丈夫だよ」
「え……?」
みっともない泣き顔をハンカチで隠すのも忘れて、盟子はぽかんと花を見つめた。
「あの玲さんがだよ? 当てがわれた結婚なんてぜぇーったい無理。てかあの人結婚自体があんま向いてない気がする。よっぽどほれ込んだ相手でもない限り」
「その、ほれ込んだ、ってやつじゃないんですか……?」
「違う違う」
花はケラケラと笑った。
「あれは宝石がきれいって言ってるのと一緒。好きになったんじゃなくて」
「そ、そうなんですか……!?」
「自分でわかっちゃいないんだよ。あの人いい歳して子供なとこあるから」
鋭い洞察力と容赦ない毒舌。盟子にはいつだって優しいけれど。
「芸術家ってそういうとこあるものなんじゃない?」
「どうなんだろう。でも先生、確かにきれいなもの好きですよね」
「単純なんだよ、女慣れしてますみたいな顔しちゃって」
散々な言われようだけれど、当たっていなくもない気もする。
「大丈夫大丈夫、すぐ飽きるから」
そういえば、と花はまた何かを思い出したらしく、ひとりで笑い出す。
「一昨日玲さんがね、すっごい神妙な顔で花ちゃん花ちゃんって言うからさ、何かと思ったら……」
「何だったんですか?」
「『盟子何かあたしのこと言ってた?』だって。めっちゃ気にしてるよあれ」
それはもう何と言うか。ごめんなさいと言う他ない。
「だからね私、何かやらかしたんですかって聞いたの。そしたらね」
花の笑いが止まらない。
「嫌われた、って。お見合い相手の前で一人称僕って言ったら気持ち悪いって言われたって。こんなの初めてだってけっこう凹んでたよ」
……やっぱりというか、不憫にすらなってくる。根本のところを解っていなさ過ぎて。考えてみたら守谷は何も悪いことはしていないのであって、ものすごく申し訳なくなってきた。
「でさ、嫌われてはないと思うけど、どうしてそう言われたのかもうちょっと考えてみたら? って言ったらさ、すんごい真剣に考え込んでた」
一瞬前に泣いていたのも忘れて、二人でげらげら笑う。
「あの人、あんなだけど中身普通に男だよねぇ」
そう。守谷のあれは決して女装ではないし、心が女だということでもない。
男らしさと女っぽさの両端に自在に振れる針は、たぶん神楽から来ている。あれは決して作ったキャラじゃなく、たおやかな女神にも雄々しい男神にもなる双面性の間でバランスを取るための在りよう。そんなオネエな外側にすっかり騙されるけれど、素の思考回路は結構男寄り。
「前にさー私、どうしてメイクしようと思ったんですか? って玲さんに聞いたことあるの。そしたら、普通にあたしきれいだし似合うから、だってさ」
そういう芸術家的な感性が、更に状況をややこしくしていたりもする。
「だから盟ちゃんね、すこーし待ってなよ。てか盟ちゃんも、他の男の子とちょっと遊んだりしてみたら?」
「そういうのも必要なのかな、とは思うんですけど」
「男って言えば好きか嫌いか、とかそういう世界でもないのよ。友達として人として、っていうのもあるんだから」
ぐずぐずしている自分の横で、全くもって本当にその通りだと言っている自分が確かにいる。
「たぶんこの話さー、1年後笑い話になってるよ」
盟子は頷いて、ようやくナイフとフォークに手を伸ばした。
市来花は、盟子の話を聞くと、いつものおっとりした調子でそう切り出した。大学の帰り、新宿のパンケーキ屋さんで向かい合いながら。
エゴ。
けれどそのキツい言葉も、たっぷりシロップをつけたたまご色のパンケーキを頬張りつつの花に言われると、抵抗なく胸に落ちる気がする。
花もまた盟子と同じく風雅堂カフェの古参スタッフで、研究者目指して大学院に在籍中だ。平日の昼間というのんびりした時間にここに来れるのは大学生の特権。
「でもまぁ、あの人も特殊な家の特殊な人だからねぇ」
ナイフとフォークを置いてミルクティを一口飲むと、花はふうっとため息を吐いた。
「それでもさ、玲さんが結婚するから八つ当たりなんて、盟ちゃんらしくない。好きな人の幸せなら、辛くても笑って応援してあげなきゃ」
それが「好き」ってことだよ? と諸々の事情を知っている花に諭されて、鼻の奥がつんとした。
本当にその通りだと思う。お互いが望んで結ばれるのだとしたら、こんなに幸せなことはないはずだ。結婚なんかしないものと盟子が勝手に都合よく思い込んでいただけで、相手と会って意志が翻る可能性は当然あった。
「……そうなんですよねぇ。解ってるんです」
目の前のパンケーキを見つめながら、食べることも忘れて盟子は呟いた。
守谷の両親も、はねっ返り次男の結婚が決まればきっと喜ぶに違いない。孫と和解できないまま亡くなってしまった天国の祖父だってもちろん。それを祝福できない嫌な自分。
……遠峰神社で守谷の初舞を見た高校生の時。
あの背中を見失いたくないと願った。「待って」なんて高望みしちゃいけないのだと自分を戒めた。
そのことを思えば、いまだこうして近くにいられる自分は、あの頃望んだ夢の先にちゃんと立っているのに。
「私、欲張りすぎでした」
カフェオレを一口すすって、ちょっと練習させてくださいと盟子は背筋を正す。呼吸を整える。
「玲峰先生、ご結婚おめでとうございます」
そうしてとびきりの笑顔を添えようと思ったのに。
……だめだぁ。
慌ててハンカチを探す。そんな盟子の頭を、あーもう純粋すぎてこっちまで心が洗われちゃう、と花がくしゃくしゃと撫でた。
「……っていうのは建前ってヤツでね、盟ちゃん」
そして、にこぉっといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ここから本音ね。その美人さんと玲さん、そのうち終わるから大丈夫だよ」
「え……?」
みっともない泣き顔をハンカチで隠すのも忘れて、盟子はぽかんと花を見つめた。
「あの玲さんがだよ? 当てがわれた結婚なんてぜぇーったい無理。てかあの人結婚自体があんま向いてない気がする。よっぽどほれ込んだ相手でもない限り」
「その、ほれ込んだ、ってやつじゃないんですか……?」
「違う違う」
花はケラケラと笑った。
「あれは宝石がきれいって言ってるのと一緒。好きになったんじゃなくて」
「そ、そうなんですか……!?」
「自分でわかっちゃいないんだよ。あの人いい歳して子供なとこあるから」
鋭い洞察力と容赦ない毒舌。盟子にはいつだって優しいけれど。
「芸術家ってそういうとこあるものなんじゃない?」
「どうなんだろう。でも先生、確かにきれいなもの好きですよね」
「単純なんだよ、女慣れしてますみたいな顔しちゃって」
散々な言われようだけれど、当たっていなくもない気もする。
「大丈夫大丈夫、すぐ飽きるから」
そういえば、と花はまた何かを思い出したらしく、ひとりで笑い出す。
「一昨日玲さんがね、すっごい神妙な顔で花ちゃん花ちゃんって言うからさ、何かと思ったら……」
「何だったんですか?」
「『盟子何かあたしのこと言ってた?』だって。めっちゃ気にしてるよあれ」
それはもう何と言うか。ごめんなさいと言う他ない。
「だからね私、何かやらかしたんですかって聞いたの。そしたらね」
花の笑いが止まらない。
「嫌われた、って。お見合い相手の前で一人称僕って言ったら気持ち悪いって言われたって。こんなの初めてだってけっこう凹んでたよ」
……やっぱりというか、不憫にすらなってくる。根本のところを解っていなさ過ぎて。考えてみたら守谷は何も悪いことはしていないのであって、ものすごく申し訳なくなってきた。
「でさ、嫌われてはないと思うけど、どうしてそう言われたのかもうちょっと考えてみたら? って言ったらさ、すんごい真剣に考え込んでた」
一瞬前に泣いていたのも忘れて、二人でげらげら笑う。
「あの人、あんなだけど中身普通に男だよねぇ」
そう。守谷のあれは決して女装ではないし、心が女だということでもない。
男らしさと女っぽさの両端に自在に振れる針は、たぶん神楽から来ている。あれは決して作ったキャラじゃなく、たおやかな女神にも雄々しい男神にもなる双面性の間でバランスを取るための在りよう。そんなオネエな外側にすっかり騙されるけれど、素の思考回路は結構男寄り。
「前にさー私、どうしてメイクしようと思ったんですか? って玲さんに聞いたことあるの。そしたら、普通にあたしきれいだし似合うから、だってさ」
そういう芸術家的な感性が、更に状況をややこしくしていたりもする。
「だから盟ちゃんね、すこーし待ってなよ。てか盟ちゃんも、他の男の子とちょっと遊んだりしてみたら?」
「そういうのも必要なのかな、とは思うんですけど」
「男って言えば好きか嫌いか、とかそういう世界でもないのよ。友達として人として、っていうのもあるんだから」
ぐずぐずしている自分の横で、全くもって本当にその通りだと言っている自分が確かにいる。
「たぶんこの話さー、1年後笑い話になってるよ」
盟子は頷いて、ようやくナイフとフォークに手を伸ばした。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「それは盟ちゃんのエゴだと思う」
|市来花《いちきはな》は、盟子の話を聞くと、いつものおっとりした調子でそう切り出した。大学の帰り、新宿のパンケーキ屋さんで向かい合いながら。
エゴ。
けれどそのキツい言葉も、たっぷりシロップをつけたたまご色のパンケーキを頬張りつつの花に言われると、抵抗なく胸に落ちる気がする。
花もまた盟子と同じく風雅堂カフェの古参スタッフで、研究者目指して大学院に在籍中だ。平日の昼間というのんびりした時間にここに来れるのは大学生の特権。
花もまた盟子と同じく風雅堂カフェの古参スタッフで、研究者目指して大学院に在籍中だ。平日の昼間というのんびりした時間にここに来れるのは大学生の特権。
「でもまぁ、あの人も特殊な家の特殊な人だからねぇ」
ナイフとフォークを置いてミルクティを一口飲むと、花はふうっとため息を吐いた。
「それでもさ、玲さんが結婚するから八つ当たりなんて、盟ちゃんらしくない。好きな人の幸せなら、辛くても笑って応援してあげなきゃ」
それが「好き」ってことだよ? と諸々の事情を知っている花に諭されて、鼻の奥がつんとした。
本当にその通りだと思う。お互いが望んで結ばれるのだとしたら、こんなに幸せなことはないはずだ。結婚なんかしないものと盟子が勝手に都合よく思い込んでいただけで、相手と会って意志が翻る可能性は当然あった。
それが「好き」ってことだよ? と諸々の事情を知っている花に諭されて、鼻の奥がつんとした。
本当にその通りだと思う。お互いが望んで結ばれるのだとしたら、こんなに幸せなことはないはずだ。結婚なんかしないものと盟子が勝手に都合よく思い込んでいただけで、相手と会って意志が翻る可能性は当然あった。
「……そうなんですよねぇ。解ってるんです」
目の前のパンケーキを見つめながら、食べることも忘れて盟子は呟いた。
守谷の両親も、はねっ返り次男の結婚が決まればきっと喜ぶに違いない。孫と和解できないまま亡くなってしまった天国の祖父だってもちろん。それを祝福できない嫌な自分。
……遠峰神社で守谷の初舞を見た高校生の時。
あの背中を見失いたくないと願った。「待って」なんて高望みしちゃいけないのだと自分を戒めた。
そのことを思えば、いまだこうして近くにいられる自分は、あの頃望んだ夢の先にちゃんと立っているのに。
あの背中を見失いたくないと願った。「待って」なんて高望みしちゃいけないのだと自分を戒めた。
そのことを思えば、いまだこうして近くにいられる自分は、あの頃望んだ夢の先にちゃんと立っているのに。
「私、欲張りすぎでした」
カフェオレを一口すすって、ちょっと練習させてくださいと盟子は背筋を正す。呼吸を整える。
「玲峰先生、ご結婚おめでとうございます」
そうしてとびきりの笑顔を添えようと思ったのに。
……だめだぁ。
慌ててハンカチを探す。そんな盟子の頭を、あーもう純粋すぎてこっちまで心が洗われちゃう、と花がくしゃくしゃと撫でた。
……だめだぁ。
慌ててハンカチを探す。そんな盟子の頭を、あーもう純粋すぎてこっちまで心が洗われちゃう、と花がくしゃくしゃと撫でた。
「……っていうのは建前ってヤツでね、盟ちゃん」
そして、にこぉっといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ここから本音ね。その美人さんと玲さん、そのうち終わるから大丈夫だよ」
「え……?」
そして、にこぉっといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ここから本音ね。その美人さんと玲さん、そのうち終わるから大丈夫だよ」
「え……?」
みっともない泣き顔をハンカチで隠すのも忘れて、盟子はぽかんと花を見つめた。
「あの玲さんがだよ? 当てがわれた結婚なんてぜぇーったい無理。てかあの人結婚自体があんま向いてない気がする。よっぽどほれ込んだ相手でもない限り」
「その、ほれ込んだ、ってやつじゃないんですか……?」
「違う違う」
花はケラケラと笑った。
「あれは宝石がきれいって言ってるのと一緒。好きになったんじゃなくて」
「そ、そうなんですか……!?」
「自分でわかっちゃいないんだよ。あの人いい歳して子供なとこあるから」
鋭い洞察力と容赦ない毒舌。盟子にはいつだって優しいけれど。
「その、ほれ込んだ、ってやつじゃないんですか……?」
「違う違う」
花はケラケラと笑った。
「あれは宝石がきれいって言ってるのと一緒。好きになったんじゃなくて」
「そ、そうなんですか……!?」
「自分でわかっちゃいないんだよ。あの人いい歳して子供なとこあるから」
鋭い洞察力と容赦ない毒舌。盟子にはいつだって優しいけれど。
「芸術家ってそういうとこあるものなんじゃない?」
「どうなんだろう。でも先生、確かにきれいなもの好きですよね」
「単純なんだよ、女慣れしてますみたいな顔しちゃって」
散々な言われようだけれど、当たっていなくもない気もする。
「大丈夫大丈夫、すぐ飽きるから」
「どうなんだろう。でも先生、確かにきれいなもの好きですよね」
「単純なんだよ、女慣れしてますみたいな顔しちゃって」
散々な言われようだけれど、当たっていなくもない気もする。
「大丈夫大丈夫、すぐ飽きるから」
そういえば、と花はまた何かを思い出したらしく、ひとりで笑い出す。
「一昨日玲さんがね、すっごい神妙な顔で花ちゃん花ちゃんって言うからさ、何かと思ったら……」
「何だったんですか?」
「『盟子何かあたしのこと言ってた?』だって。めっちゃ気にしてるよあれ」
それはもう何と言うか。ごめんなさいと言う他ない。
「一昨日玲さんがね、すっごい神妙な顔で花ちゃん花ちゃんって言うからさ、何かと思ったら……」
「何だったんですか?」
「『盟子何かあたしのこと言ってた?』だって。めっちゃ気にしてるよあれ」
それはもう何と言うか。ごめんなさいと言う他ない。
「だからね私、何かやらかしたんですかって聞いたの。そしたらね」
花の笑いが止まらない。
「嫌われた、って。お見合い相手の前で一人称僕って言ったら気持ち悪いって言われたって。こんなの初めてだってけっこう凹んでたよ」
……やっぱりというか、不憫にすらなってくる。根本のところを解っていなさ過ぎて。考えてみたら守谷は何も悪いことはしていないのであって、ものすごく申し訳なくなってきた。
花の笑いが止まらない。
「嫌われた、って。お見合い相手の前で一人称僕って言ったら気持ち悪いって言われたって。こんなの初めてだってけっこう凹んでたよ」
……やっぱりというか、不憫にすらなってくる。根本のところを解っていなさ過ぎて。考えてみたら守谷は何も悪いことはしていないのであって、ものすごく申し訳なくなってきた。
「でさ、嫌われてはないと思うけど、どうしてそう言われたのかもうちょっと考えてみたら? って言ったらさ、すんごい真剣に考え込んでた」
一瞬前に泣いていたのも忘れて、二人でげらげら笑う。
一瞬前に泣いていたのも忘れて、二人でげらげら笑う。
「あの人、あんなだけど中身普通に男だよねぇ」
そう。守谷の|あれ《・・》は決して女装ではないし、心が女だということでもない。
男らしさと女っぽさの両端に自在に振れる針は、たぶん神楽から来ている。|あれ《・・》は決して作ったキャラじゃなく、たおやかな女神にも雄々しい男神にもなる双面性の間でバランスを取るための在りよう。そんなオネエな外側にすっかり騙されるけれど、素の思考回路は結構男寄り。
男らしさと女っぽさの両端に自在に振れる針は、たぶん神楽から来ている。|あれ《・・》は決して作ったキャラじゃなく、たおやかな女神にも雄々しい男神にもなる双面性の間でバランスを取るための在りよう。そんなオネエな外側にすっかり騙されるけれど、素の思考回路は結構男寄り。
「前にさー私、どうしてメイクしようと思ったんですか? って玲さんに聞いたことあるの。そしたら、普通にあたしきれいだし似合うから、だってさ」
そういう芸術家的な感性が、更に状況をややこしくしていたりもする。
そういう芸術家的な感性が、更に状況をややこしくしていたりもする。
「だから盟ちゃんね、すこーし待ってなよ。てか盟ちゃんも、他の男の子とちょっと遊んだりしてみたら?」
「そういうのも必要なのかな、とは思うんですけど」
「男って言えば好きか嫌いか、とかそういう世界でもないのよ。友達として人として、っていうのもあるんだから」
ぐずぐずしている自分の横で、全くもって本当にその通りだと言っている自分が確かにいる。
「そういうのも必要なのかな、とは思うんですけど」
「男って言えば好きか嫌いか、とかそういう世界でもないのよ。友達として人として、っていうのもあるんだから」
ぐずぐずしている自分の横で、全くもって本当にその通りだと言っている自分が確かにいる。
「たぶんこの話さー、1年後笑い話になってるよ」
盟子は頷いて、ようやくナイフとフォークに手を伸ばした。