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SHOOT2! 「戦慄の氷帝!氷咲響也とヴィルヘルム!!」前編

ー/ー



「翔ちゃん!! 今日の放課後暇!?」

 朝、俺が教室に入るなり、真っ先に俺に駆け寄った宙斗の言葉がそれだった。

「あのな? まずおはようとかそういう挨拶からじゃねぇのかよ? なんだってんだ藪から棒に!」
「ごめんごめん! でも昨日のエアロドラゴンのこと忘れられなくってさ! 朝、翔ちゃんがきたら真っ先に伝えようと思ってたんだ!! ここに行かないかって!!」

 そう言って宙斗はなにかのチラシを広げた。

「なんだこれ……? 消しバトSHOP・シロクロ?」
「ボクの行きつけのショップなんだ!! ここでブラックナイトとかほかの消しゴムも買ったんだよ!!」
「は、はぁ……」

 まぁ店の名前からそれは想像できるけども……。なんだ消しバト専門店って!普通の文房具屋じゃねぇのかよ……。

「普通の文房具屋とは違うんだ!! 消しバト用のカスタマイズパーツやアクセサリー! バトルアシスト用のアイテムも取り揃えているんだよ!!」

 こわ!なんで思考読まれたんだ!!この前の仮面のおっさんといい、消しゴムバトルに興じたら相手の思考を読める特殊能力でも身につくのか!?

「なんか面白そうな話してるじゃない? なあにそれ?」
「茜!」
「茜さん! おはようございます!」

 動揺してたから気づかなかった……。いつの間にこいつも近づいてきてたんだ……。

「おはよう! でなにそれ?」
「これはですね! ボクの行きつけの消しバトショップのチラシです!! 実は放課後、翔ちゃんと一緒に行こうって話をしてて!」
「は!? ちょっと待てよ!! 俺は行くなんて一言モガ………!!」
「ええ!? 面白そうじゃない!! 行く行く! じゃあ放課後正門集合ね!!」
「はい! ぜひ!!」

 この野郎勝手に話進めやがって……!でもまぁこうなったら逆らえねぇ……しょうがねぇから付き合ってやるかぁ……!

(……まぁそれに!)

 俺は筆箱の中に眠る相棒の姿を思い起こす……。
 昨日、あいつとともに戦ったあの時は、まぁなんだかんだ楽しかった。カスタマイズとかはよくわからねぇけど、相棒のために何か買ってやれるならそれはそれでいいのかもしれない!
 そう考えた俺はとりあえず放課後を楽しみにすることにした。

 というわけで放課後!俺たちは例のショップに来ていた!!

「うわ~すご~い!」
「思ったよりでけぇんだなぁ……!」
「でしょう!! じゃあぼくは店長さんを呼んできますから自由に見ててください!」
 なぜか得意気な宙斗はそう言うとそそくさと店の奥へと消えて行った。

「行っちゃったね」
「まぁ自由に見てろって言ってたし、見ながら待ってようぜ?」
「ま!そうね! じゃああたしあっち見てこようっと!」
「え?あ、おい!」

 一応ここで待ってた方がいいんじゃねぇかって言おうと思ったんだが、それよりも早く茜は店内のどこかへと消えて行った……。

「まぁいいか……。それにしても……」

 俺は改めて店内を見て圧倒されていた。

「なんつうか……すげぇな……」

 もっとこじんまりとした店だろうなって思ってたのに、想像の5倍くらいでかくて広い!
 そんで店内をきょろきょろ見回しながら歩いたんだが、どこもかしこもショーケースばっかり!そんで中には変な形の消しゴムが大量に展示されていたんだ。しかもどいつもこいつも高い!!一個3000円とか中には5万のやつとかもある!
 ……なんというか宙斗みたいな消しゴムマニアは確かに喜びそうな店だなって思った。
 さすがにもう消しバトを下らねぇ遊びだとは思わねぇけど……ここまで熱を上げられるかって言うとそうでもない……と思う……。

(……もしかしたらバトルにのめり込んだら宙斗みたいなマニアになっちまうのか!? おれも!!)

「いやいやいや!!ないない!!……て、ん?

 なんだか嫌な想像が頭をよぎりぶんぶんと首を横に振ったその時、なんか面白そう部屋が目に入った。

「なんだあれ?バトルスペース?」

 まぁこんだけ広いショップだしそういうスペースもあるか……とりあえず興味を持った俺は中に入ってみることにした。
 すると……。

ワァァァァ!!

 外からは聞こえなかったけど、大会でもやってたのかも、中はすごい歓声だ。それにすごい熱気!!そんでもってめちゃくちゃ広い!! 
 改めてこんなに熱中してるやつらがいるんだな……消しバトおそるべし……!

「それでは!!両選手の入場だ!!」

 中央の一際大きな舞台に立つMCのおっさんがそう宣言すると、その檀上に二人の男が上がり、中央に置かれたバトルステージらしき長机をはさんで向き合うように立った。その瞬間、ほかのステージでバトルしてたやつらも手を止めて、部屋中のみんなの視線がその二人に集中した。なんかすげぇやつらみたいだな……!

「では!! みんなに今日のエキシビジョンマッチで戦う二人のバトラーを紹介するぞ!! まずはチャレンジャーの紹介だ!! その消しゴムの鋭さは鉄製定規のごとし!! その消しゴムの固さは文鎮のごとし! 研ぎ澄まされたカスタマイズであらゆる敵を一刀両断!! その刃は戦慄の氷帝に届くのか!? 小学六年生! 柳生将兵衛(やぎゅうしょうべえ)選手!!!」

 なんか眼帯した侍みたいなやつが出てきやがった……。色物すぎるだろ……なんて思ってたら……ん?なんか急に背中引っ張られた!!痛たたたた!!

「痛ってえなあ!!誰だよもう!!って茜……宙斗……」
「誰だよじゃないわよ! たくも~!! 一人で変なとこ行かないでよ!!」
「全く翔ちゃんは!! 自由に見ててって言っても限度があるでしょう!」
「わ、わりぃわりぃ……」

 やべぇ……茜と宙斗のことすっかり忘れてた……。ていうか

「いっしょにいるおっさんは誰だ?」
「おっさんって! もう~! 翔ちゃん! 初対面の人にそれはないでしょう!!」
「そっか! すんません!」
「いやいや、気にすることはないよ! 元気があっていいじゃないか!」

 おっさんはそう言って笑うと咳払いを一つした。

「ウオッホン!! 初めまして! 神風翔くん! わたしがこの消しバトショップ『シロクロ』のオーナー! 大木 護夢蔵(おおき ごむぞう)だ!」
「ゴ……ゴムゾー……す……すごい名前っすね……」
「ウォッホッホッホ! ありがとう翔君! ではさっそく店の案内を……と思ったが、せっかくだしな! このまま試合を観戦しようか! そのあとゆっくり案内しよう」

 おっさんはそういうと、茜と一緒に席に着いた。でも宙斗のやつはなんか嫌なのか座らない……どうしたんだ?

「店長いいんですか? エキシビジョンとは言え公式戦なんですよね? いきなり翔ちゃんに見せるなんて……」
「宙斗くん……君の言いたいことはわかるよ?でも遅かれ早かれ見ることになるだろうしね。君の言うように翔くんが彼の息子ならなおさらさ」
「は……はい……」

 そんななんかよくわからないやり取りをすると、宙斗はしぶしぶ席に着いた。……てか彼の息子って、このおっさん俺の父ちゃんのことしってんのかな?
 しかし深く考える時間はなさそうだ。宙斗が席についたちょうどそのタイミングで侍野郎の消しゴムの説明だか経歴だかの紹介を終えたみたいで、もう片方の男の紹介が始まった。

「そんな彼を迎え撃つは、前回WEC準優勝者にして、全国大会優勝者!! 消しバト界のプリンス!! 同じく小学6年生!! 戦慄の氷帝・氷咲響也(ひさききょうや)選手!!」

 すかした感じの金髪ロン毛野郎が紹介を受けて手を振った瞬間、会場中から黄色い悲鳴が上がった。以外に女人口も多いんだな……この遊び……

「すご~いかっこいい!!」

 となりでも茜が目の色キラキラさせてロン毛を見てやがる……わかりやすいやつだぜ、まったく……。

「うん!!! ね!!? あんたもそう思うわよね! 翔!!」

 なんで俺に同意求めてくるんだこいつは……。

「知らねぇよ……。そうなんじゃねぇの……?」
「なぁにその素っ気ない態度? あ! もしかしてヤキモチ焼いてんのぉ?」
「うるせぇな!! そんなんじゃねぇっての!!」
「君たち? 仲がいいのは結構だが、もうすぐ試合が始まるみたいだよ? ほら」

 そう言っておっさんが指差した先では、さっき紹介された侍とロン毛がすでに消しゴムをセットして向かいあっていた。
「やべ……そうだった……て、ん? どした宙斗?」
 
 前を向こうとしたときに視界の端に映った宙斗がなんか元気なさげにうつむいてるのが気になって俺は声をかけた。

「なんか具合でも悪いのか?」
「え!? あ! ……い、いいえ!! ボクは全然!! だ、大丈夫です! ちょっっとぼーっとしてただけですから!!」
「そうか?」

 なんだ?あんなに慌てて否定して……変な奴……。と!いけねぇ!試合が始まっちまうぜ!

「それでは!! チャレンジャーの将兵衛くんの先行でスタートだ!! 用意はいいな!!?」
「うむ!! 拙者の愛刀・墨切丸も消しカスに飢えておる!!」

 MCの問いかけにも気合十分といった感じで侍がなんか決め台詞っぽいものを言っている。いよいよ始まるみてぇだ!!……なんか俺までドキドキしてきた……!

「OK!! 3・2・1!イレイズ・ゴー!!!」
「出陣せよ!!! 墨切丸!!!」

 侍が腰から刀を引き抜くような鋭い動きで消しゴムを弾いた!!一直線に飛んでいく消しゴムがまるで刀の鋭い突きみたいに見えやがる!!

 「ふうむ……! さすがは柳生くんだ……。あの墨切丸の力をうまく引き出している」
 
 ゴムゾーのおっさんは関心しながらもじゃもじゃしたヒゲをさすっていた……が。

「だが……この刃では彼に届かない……」

 そう呟くとともにおっさんのうごきが止まった。

「は?」

ステージに視線を戻すと、侍の放った消しゴムはロン毛の消しゴムに直撃する寸前まで迫っていた……当たる!!!それを見ていただれもがそう思ったはずだ……でも……次の瞬間信じられないことが起きたんだ……!

「け、消しゴムが直撃寸前で軌道を変えやがった……!!」

 まっすぐな軌道でロン毛の消しゴムに当たる寸前で、まるで相手の消しゴムを避けたかのように軌道を変えたんだ!!

 「やはりな……さすがは戦慄の氷帝……といったところか……」

 ゴムゾーのおっさんは冷や汗をかきながら唸るようにそう呟いた。
 おっさんは多分なにをしたのかわかってるんだろうけど……一体なにをやったんだ?あのロン毛は……。

「ば、ばかな!! 拙者の墨切丸の狙いが逸れるとは……!!」
「……そんなものかい?」
「!?」
「そんなものなのかと聞いているんだ……。その程度の実力で僕と……」

 ロン毛の纏う雰囲気がさっきまでと全然違う!!それに室内の空気が急に寒く!
 
「僕のヴィルヘルムを倒せると! 本気でそう思っているのか!!!?」
「ひ!!?」

 その瞬間、部屋中にすさまじい吹雪が吹き荒れたかのような寒さに包まれた

「その程度で僕たちに挑んだその愚かさに罰を与えよう!!」
「……そ、それでは!! 響也くん、準備はいいかな? 3・2・1!」

 ロン毛がまるでオーケストラの指揮者みたいな構えをとった。変なポーズだが、でもすごい気迫だ……!
 それになんだ……!?消しゴムのまわりに白いモヤモヤが立ち込め始めている……!?

「イレイズ・ゴー!!」

 ロン毛は指揮者みたいに腕を振るう!そして、消しゴムの前に腕が来た瞬間に指をパチンと弾いた!!!

「奏でろ!! ヴィルヘルム!!」

 ヴィルヘルムと呼ばれたその消しゴムはすさまじい勢いで撃ちだされ、敵の消しゴム目掛けて一直線にかっ飛んでいく!けどその姿は完全に白いモヤモヤに覆われていて全然見えねぇ!!
 
「将兵衛くん、君の墨切丸にレクイエムを贈ろう……。さよならを言いたまえ……!」
「へ?」
 
 ロン毛がそう言うと撃ちだされた白いモヤモヤの中心に赤い二つの光が輝きだした!多分……ヴィルヘルムの目だ!!!間違いない!!なにかくる!!!

「ヴィルヘルム!! 鎮魂曲第三番! [忘却の氷河(グレイシャルオブリビオン)]!!」

 瞬間冷たい風が白いモヤモヤを中心に吹き荒れ、侍の消しゴムを包み込んだ!

「フィナーレだ」

 気が付くとロン毛の消しゴムはやつの手元に戻っていた。そして……

「ああ!! 拙者の墨切丸が!!」
 
 侍の消しゴムがあったところにはその姿はなく、代わりあったのは……なんだ?氷の塊?……いや違う!! あいつの消しゴムが氷の中に閉じ込められているんだ!!

「さよならを言えといったろう? その氷はちょっとやそっとの箏では砕けない。かといって氷が解けるころには、君の墨切は二度と使い物にならないだろうがね」
「そ、そんな……」
「……お、おおっとぉ! 墨切丸行動不能!!! さぁ将兵衛選手どうする!!」
「く!!……拙者の負けだ……! 棄権させてくれ!!」
 
 ロン毛への歓声が上がる中、侍は膝から崩れ落ちた。そんな侍を見下しながらロン毛は言葉を続ける。

「何をいってるんだ? 侍たるもの徐々に朽ちていくより戦場で散った方が本望だろう? だから僕が介錯してあげよう! バトルステージという名の戦場で華々しくその命を散らせるがいい!!」
「……!? や、やめてくれ!!」
「これは君たちへの罰なんだよ? 自分の実力もわきまえずこの僕に挑んだ罪へのね?」

 そう言ってロン毛は再び指揮者みたいな構えに入った。

「おおっとぉ!! 響也選手が将兵衛選手の棄権を認めなかったため試合続行だぁ!! 」

 MCが信じられないことをのたまったから、俺と茜は驚きのあまり立ち上り

「な、なにいってんだ!?」
「じょ、冗談よね!?」

 と、そう戸惑いの声を上げると、宙斗が声を震わせながらそれに答えた。

「いえ……本当です……。そしてあれが響也さんのスタイルなんです……」
「はぁ!?」
「うそでしょ!!?」
「残念ながら嘘じゃないんだ……」

 そう口を挟んできたのはゴムゾーのおっさんだ。
 おっさんは険しい顔でヒゲをさすりながら解説を始める。

「彼は天才的な消しバトセンスを持っているがゆえに、実力のないものは許せないんだ……。だから実力のないものを相手にするとああやって、一回の攻撃で行動不能すにする……」
「だったらそこで終わりでいいじゃねえか!!? 抵抗できなくなったやつを破壊なんてしていいわけねえだろうが!!」
「それが、許されるんだよ……」
「なんだと!!?」
 
 おっさんは悲しそうな眼でどこか遠くを見つめながらつづけた。
 
「消しバトは本来、3ポイント先取、もしくは相手の消しゴムを破壊することで勝利となる。それはしっているね? しかし、相手の消しゴムがああいう風に破壊されぬまま行動不能となった場合は、一応まだ試合は続行しているということになるんだ……。そして、行動不能となった消しゴムの持ち主が戦意を喪失していた場合、ターンをパスするということになる……」
「なんだよそれ! 戦意喪失してるならリタイアってことでいいじゃねぇか!!」
「そうよ! そしたら破壊なんてしなくたって!」

 茜と俺の抗議におっさんは目をつむって首をゆっくりと左右に振って答える。

「非公式戦ならそれでいい、しかし、一応これは公式戦……。公式戦では相手側、つまり今回の場合は響也くん側が将兵衛くんのリタイアに合意しなければ試合は続行ということになるんだ……」
「そ、そんな……ひどい……そんなのただの弱い者いじめじゃない!!」
「茜のいう通りだぜ! なんでそんなクソみたいなルールを認めてるんだよ!! なぁ! おっさん!!! あんたの店だろうが!!?」
「店長のせいじゃありません!!」
 
 急に大声で宙斗が叫び、俺と茜はびっくりして固まっちまった。

「世界消しバト委員会の人たちが3年ほど前に、もっとエキサイトな競技に変えるためって! そういって公式戦では今店長が言ったようなルールが採用されるようになったんです!! そしてそれに従わなければ……!」
「店の認可は取り消され……私は消しバト界の商品を取り扱うことがゆるされなくなってしまうんだ……」
「そんな……ひどい……」

 茜は話を聞いておもわず口をふさいじまった。
一方でステージ上では

「さようなら墨切丸……。」

 ロン毛が侍の消しゴムにとどめを刺そうとしていた……。

「葬送曲第六番・凍霜の安らぎ(フロストヴェイル・セレニティ)!!」
「す、墨切丸~~~~!!」

 バギィィィィン!!!

 すさまじい音が響き墨切丸を包んだ氷に小さな塊が激突し、そして氷を砕いた。そして……。

「墨切丸!!」

 侍の消しゴムが生還し、氷を砕いた俺の相棒、エアロドラゴンが侍の前に風を纏いながらふわりと着地した。

「なにものだ……?」 

 ヴィルヘルムを回収したロン毛は、イラついた様子で会場内の俺をにらみつける。だが、そんなもんに怖じるおれじゃねぇ!!

「ちょ、ちょっと翔なにする気!?」
「翔ちゃん!!」
「うるせぇ!!!止めんじゃねぇ!!」

 俺はロン毛のいるステージへとずんずん向かう!そして……!


「俺の名前は神風翔!! 必要以上に相手をいじめやがってこのロン毛野郎が!! 覚悟しやがれ!! 俺がてめぇを叩きのめす!!!」
「……ほう?」

 不敵に笑うロン毛を睨みつけながら、俺はステージへと上がった!


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 そう言って宙斗はなにかのチラシを広げた。
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「は、はぁ……」
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「なんか面白そうな話してるじゃない? なあにそれ?」
「茜!」
「茜さん! おはようございます!」
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「は!? ちょっと待てよ!! 俺は行くなんて一言モガ………!!」
「ええ!? 面白そうじゃない!! 行く行く! じゃあ放課後正門集合ね!!」
「はい! ぜひ!!」
 この野郎勝手に話進めやがって……!でもまぁこうなったら逆らえねぇ……しょうがねぇから付き合ってやるかぁ……!
(……まぁそれに!)
 俺は筆箱の中に眠る相棒の姿を思い起こす……。
 昨日、あいつとともに戦ったあの時は、まぁなんだかんだ楽しかった。カスタマイズとかはよくわからねぇけど、相棒のために何か買ってやれるならそれはそれでいいのかもしれない!
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 というわけで放課後!俺たちは例のショップに来ていた!!
「うわ~すご~い!」
「思ったよりでけぇんだなぁ……!」
「でしょう!! じゃあぼくは店長さんを呼んできますから自由に見ててください!」
 なぜか得意気な宙斗はそう言うとそそくさと店の奥へと消えて行った。
「行っちゃったね」
「まぁ自由に見てろって言ってたし、見ながら待ってようぜ?」
「ま!そうね! じゃああたしあっち見てこようっと!」
「え?あ、おい!」
 一応ここで待ってた方がいいんじゃねぇかって言おうと思ったんだが、それよりも早く茜は店内のどこかへと消えて行った……。
「まぁいいか……。それにしても……」
 俺は改めて店内を見て圧倒されていた。
「なんつうか……すげぇな……」
 もっとこじんまりとした店だろうなって思ってたのに、想像の5倍くらいでかくて広い!
 そんで店内をきょろきょろ見回しながら歩いたんだが、どこもかしこもショーケースばっかり!そんで中には変な形の消しゴムが大量に展示されていたんだ。しかもどいつもこいつも高い!!一個3000円とか中には5万のやつとかもある!
 ……なんというか宙斗みたいな消しゴムマニアは確かに喜びそうな店だなって思った。
 さすがにもう消しバトを下らねぇ遊びだとは思わねぇけど……ここまで熱を上げられるかって言うとそうでもない……と思う……。
(……もしかしたらバトルにのめり込んだら宙斗みたいなマニアになっちまうのか!? おれも!!)
「いやいやいや!!ないない!!……て、ん?

 なんだか嫌な想像が頭をよぎりぶんぶんと首を横に振ったその時、なんか面白そう部屋が目に入った。
「なんだあれ?バトルスペース?」
 まぁこんだけ広いショップだしそういうスペースもあるか……とりあえず興味を持った俺は中に入ってみることにした。
 すると……。
ワァァァァ!!
 外からは聞こえなかったけど、大会でもやってたのかも、中はすごい歓声だ。それにすごい熱気!!そんでもってめちゃくちゃ広い!! 
 改めてこんなに熱中してるやつらがいるんだな……消しバトおそるべし……!
「それでは!!両選手の入場だ!!」
 中央の一際大きな舞台に立つMCのおっさんがそう宣言すると、その檀上に二人の男が上がり、中央に置かれたバトルステージらしき長机をはさんで向き合うように立った。その瞬間、ほかのステージでバトルしてたやつらも手を止めて、部屋中のみんなの視線がその二人に集中した。なんかすげぇやつらみたいだな……!
「では!! みんなに今日のエキシビジョンマッチで戦う二人のバトラーを紹介するぞ!! まずはチャレンジャーの紹介だ!! その消しゴムの鋭さは鉄製定規のごとし!! その消しゴムの固さは文鎮のごとし! 研ぎ澄まされたカスタマイズであらゆる敵を一刀両断!! その刃は戦慄の氷帝に届くのか!? 小学六年生! 柳生将兵衛(やぎゅうしょうべえ)選手!!!」
 なんか眼帯した侍みたいなやつが出てきやがった……。色物すぎるだろ……なんて思ってたら……ん?なんか急に背中引っ張られた!!痛たたたた!!
「痛ってえなあ!!誰だよもう!!って茜……宙斗……」
「誰だよじゃないわよ! たくも~!! 一人で変なとこ行かないでよ!!」
「全く翔ちゃんは!! 自由に見ててって言っても限度があるでしょう!」
「わ、わりぃわりぃ……」
 やべぇ……茜と宙斗のことすっかり忘れてた……。ていうか
「いっしょにいるおっさんは誰だ?」
「おっさんって! もう~! 翔ちゃん! 初対面の人にそれはないでしょう!!」
「そっか! すんません!」
「いやいや、気にすることはないよ! 元気があっていいじゃないか!」
 おっさんはそう言って笑うと咳払いを一つした。
「ウオッホン!! 初めまして! 神風翔くん! わたしがこの消しバトショップ『シロクロ』のオーナー! 大木 護夢蔵(おおき ごむぞう)だ!」
「ゴ……ゴムゾー……す……すごい名前っすね……」
「ウォッホッホッホ! ありがとう翔君! ではさっそく店の案内を……と思ったが、せっかくだしな! このまま試合を観戦しようか! そのあとゆっくり案内しよう」
 おっさんはそういうと、茜と一緒に席に着いた。でも宙斗のやつはなんか嫌なのか座らない……どうしたんだ?
「店長いいんですか? エキシビジョンとは言え公式戦なんですよね? いきなり翔ちゃんに見せるなんて……」
「宙斗くん……君の言いたいことはわかるよ?でも遅かれ早かれ見ることになるだろうしね。君の言うように翔くんが彼の息子ならなおさらさ」
「は……はい……」
 そんななんかよくわからないやり取りをすると、宙斗はしぶしぶ席に着いた。……てか彼の息子って、このおっさん俺の父ちゃんのことしってんのかな?
 しかし深く考える時間はなさそうだ。宙斗が席についたちょうどそのタイミングで侍野郎の消しゴムの説明だか経歴だかの紹介を終えたみたいで、もう片方の男の紹介が始まった。
「そんな彼を迎え撃つは、前回WEC準優勝者にして、全国大会優勝者!! 消しバト界のプリンス!! 同じく小学6年生!! 戦慄の氷帝・氷咲響也(ひさききょうや)選手!!」
 すかした感じの金髪ロン毛野郎が紹介を受けて手を振った瞬間、会場中から黄色い悲鳴が上がった。以外に女人口も多いんだな……この遊び……

「すご~いかっこいい!!」
 となりでも茜が目の色キラキラさせてロン毛を見てやがる……わかりやすいやつだぜ、まったく……。
「うん!!! ね!!? あんたもそう思うわよね! 翔!!」
 なんで俺に同意求めてくるんだこいつは……。
「知らねぇよ……。そうなんじゃねぇの……?」
「なぁにその素っ気ない態度? あ! もしかしてヤキモチ焼いてんのぉ?」
「うるせぇな!! そんなんじゃねぇっての!!」
「君たち? 仲がいいのは結構だが、もうすぐ試合が始まるみたいだよ? ほら」
 そう言っておっさんが指差した先では、さっき紹介された侍とロン毛がすでに消しゴムをセットして向かいあっていた。
「やべ……そうだった……て、ん? どした宙斗?」
 前を向こうとしたときに視界の端に映った宙斗がなんか元気なさげにうつむいてるのが気になって俺は声をかけた。
「なんか具合でも悪いのか?」
「え!? あ! ……い、いいえ!! ボクは全然!! だ、大丈夫です! ちょっっとぼーっとしてただけですから!!」
「そうか?」
 なんだ?あんなに慌てて否定して……変な奴……。と!いけねぇ!試合が始まっちまうぜ!
「それでは!! チャレンジャーの将兵衛くんの先行でスタートだ!! 用意はいいな!!?」
「うむ!! 拙者の愛刀・墨切丸も消しカスに飢えておる!!」
 MCの問いかけにも気合十分といった感じで侍がなんか決め台詞っぽいものを言っている。いよいよ始まるみてぇだ!!……なんか俺までドキドキしてきた……!
「OK!! 3・2・1!イレイズ・ゴー!!!」
「出陣せよ!!! 墨切丸!!!」
 侍が腰から刀を引き抜くような鋭い動きで消しゴムを弾いた!!一直線に飛んでいく消しゴムがまるで刀の鋭い突きみたいに見えやがる!!
 「ふうむ……! さすがは柳生くんだ……。あの墨切丸の力をうまく引き出している」
 ゴムゾーのおっさんは関心しながらもじゃもじゃしたヒゲをさすっていた……が。
「だが……この刃では彼に届かない……」
 そう呟くとともにおっさんのうごきが止まった。
「は?」
ステージに視線を戻すと、侍の放った消しゴムはロン毛の消しゴムに直撃する寸前まで迫っていた……当たる!!!それを見ていただれもがそう思ったはずだ……でも……次の瞬間信じられないことが起きたんだ……!
「け、消しゴムが直撃寸前で軌道を変えやがった……!!」
 まっすぐな軌道でロン毛の消しゴムに当たる寸前で、まるで相手の消しゴムを避けたかのように軌道を変えたんだ!!
 「やはりな……さすがは戦慄の氷帝……といったところか……」
 ゴムゾーのおっさんは冷や汗をかきながら唸るようにそう呟いた。
 おっさんは多分なにをしたのかわかってるんだろうけど……一体なにをやったんだ?あのロン毛は……。
「ば、ばかな!! 拙者の墨切丸の狙いが逸れるとは……!!」
「……そんなものかい?」
「!?」
「そんなものなのかと聞いているんだ……。その程度の実力で僕と……」
 ロン毛の纏う雰囲気がさっきまでと全然違う!!それに室内の空気が急に寒く!
「僕のヴィルヘルムを倒せると! 本気でそう思っているのか!!!?」
「ひ!!?」
 その瞬間、部屋中にすさまじい吹雪が吹き荒れたかのような寒さに包まれた
「その程度で僕たちに挑んだその愚かさに罰を与えよう!!」
「……そ、それでは!! 響也くん、準備はいいかな? 3・2・1!」
 ロン毛がまるでオーケストラの指揮者みたいな構えをとった。変なポーズだが、でもすごい気迫だ……!
 それになんだ……!?消しゴムのまわりに白いモヤモヤが立ち込め始めている……!?
「イレイズ・ゴー!!」
 ロン毛は指揮者みたいに腕を振るう!そして、消しゴムの前に腕が来た瞬間に指をパチンと弾いた!!!
「奏でろ!! ヴィルヘルム!!」
 ヴィルヘルムと呼ばれたその消しゴムはすさまじい勢いで撃ちだされ、敵の消しゴム目掛けて一直線にかっ飛んでいく!けどその姿は完全に白いモヤモヤに覆われていて全然見えねぇ!!
「将兵衛くん、君の墨切丸にレクイエムを贈ろう……。さよならを言いたまえ……!」
「へ?」
 ロン毛がそう言うと撃ちだされた白いモヤモヤの中心に赤い二つの光が輝きだした!多分……ヴィルヘルムの目だ!!!間違いない!!なにかくる!!!
「ヴィルヘルム!! 鎮魂曲第三番! [忘却の氷河(グレイシャルオブリビオン)]!!」
 瞬間冷たい風が白いモヤモヤを中心に吹き荒れ、侍の消しゴムを包み込んだ!
「フィナーレだ」
 気が付くとロン毛の消しゴムはやつの手元に戻っていた。そして……
「ああ!! 拙者の墨切丸が!!」
 侍の消しゴムがあったところにはその姿はなく、代わりあったのは……なんだ?氷の塊?……いや違う!! あいつの消しゴムが氷の中に閉じ込められているんだ!!
「さよならを言えといったろう? その氷はちょっとやそっとの箏では砕けない。かといって氷が解けるころには、君の墨切は二度と使い物にならないだろうがね」
「そ、そんな……」
「……お、おおっとぉ! 墨切丸行動不能!!! さぁ将兵衛選手どうする!!」
「く!!……拙者の負けだ……! 棄権させてくれ!!」
 ロン毛への歓声が上がる中、侍は膝から崩れ落ちた。そんな侍を見下しながらロン毛は言葉を続ける。
「何をいってるんだ? 侍たるもの徐々に朽ちていくより戦場で散った方が本望だろう? だから僕が介錯してあげよう! バトルステージという名の戦場で華々しくその命を散らせるがいい!!」
「……!? や、やめてくれ!!」
「これは君たちへの罰なんだよ? 自分の実力もわきまえずこの僕に挑んだ罪へのね?」
 そう言ってロン毛は再び指揮者みたいな構えに入った。
「おおっとぉ!! 響也選手が将兵衛選手の棄権を認めなかったため試合続行だぁ!! 」
 MCが信じられないことをのたまったから、俺と茜は驚きのあまり立ち上り
「な、なにいってんだ!?」
「じょ、冗談よね!?」
 と、そう戸惑いの声を上げると、宙斗が声を震わせながらそれに答えた。
「いえ……本当です……。そしてあれが響也さんのスタイルなんです……」
「はぁ!?」
「うそでしょ!!?」
「残念ながら嘘じゃないんだ……」
 そう口を挟んできたのはゴムゾーのおっさんだ。
 おっさんは険しい顔でヒゲをさすりながら解説を始める。
「彼は天才的な消しバトセンスを持っているがゆえに、実力のないものは許せないんだ……。だから実力のないものを相手にするとああやって、一回の攻撃で行動不能すにする……」
「だったらそこで終わりでいいじゃねえか!!? 抵抗できなくなったやつを破壊なんてしていいわけねえだろうが!!」
「それが、許されるんだよ……」
「なんだと!!?」
 おっさんは悲しそうな眼でどこか遠くを見つめながらつづけた。
「消しバトは本来、3ポイント先取、もしくは相手の消しゴムを破壊することで勝利となる。それはしっているね? しかし、相手の消しゴムがああいう風に破壊されぬまま行動不能となった場合は、一応まだ試合は続行しているということになるんだ……。そして、行動不能となった消しゴムの持ち主が戦意を喪失していた場合、ターンをパスするということになる……」
「なんだよそれ! 戦意喪失してるならリタイアってことでいいじゃねぇか!!」
「そうよ! そしたら破壊なんてしなくたって!」
 茜と俺の抗議におっさんは目をつむって首をゆっくりと左右に振って答える。
「非公式戦ならそれでいい、しかし、一応これは公式戦……。公式戦では相手側、つまり今回の場合は響也くん側が将兵衛くんのリタイアに合意しなければ試合は続行ということになるんだ……」
「そ、そんな……ひどい……そんなのただの弱い者いじめじゃない!!」
「茜のいう通りだぜ! なんでそんなクソみたいなルールを認めてるんだよ!! なぁ! おっさん!!! あんたの店だろうが!!?」
「店長のせいじゃありません!!」
 急に大声で宙斗が叫び、俺と茜はびっくりして固まっちまった。
「世界消しバト委員会の人たちが3年ほど前に、もっとエキサイトな競技に変えるためって! そういって公式戦では今店長が言ったようなルールが採用されるようになったんです!! そしてそれに従わなければ……!」
「店の認可は取り消され……私は消しバト界の商品を取り扱うことがゆるされなくなってしまうんだ……」
「そんな……ひどい……」
 茜は話を聞いておもわず口をふさいじまった。
一方でステージ上では
「さようなら墨切丸……。」
 ロン毛が侍の消しゴムにとどめを刺そうとしていた……。
「葬送曲第六番・凍霜の安らぎ(フロストヴェイル・セレニティ)!!」
「す、墨切丸~~~~!!」
 バギィィィィン!!!
 すさまじい音が響き墨切丸を包んだ氷に小さな塊が激突し、そして氷を砕いた。そして……。
「墨切丸!!」
 侍の消しゴムが生還し、氷を砕いた俺の相棒、エアロドラゴンが侍の前に風を纏いながらふわりと着地した。
「なにものだ……?」 
 ヴィルヘルムを回収したロン毛は、イラついた様子で会場内の俺をにらみつける。だが、そんなもんに怖じるおれじゃねぇ!!
「ちょ、ちょっと翔なにする気!?」
「翔ちゃん!!」
「うるせぇ!!!止めんじゃねぇ!!」
 俺はロン毛のいるステージへとずんずん向かう!そして……!
「俺の名前は神風翔!! 必要以上に相手をいじめやがってこのロン毛野郎が!! 覚悟しやがれ!! 俺がてめぇを叩きのめす!!!」
「……ほう?」
 不敵に笑うロン毛を睨みつけながら、俺はステージへと上がった!