お願い

ー/ー



「つまり、ハヤトさんはゲームのバグで普通には蘇生できなくて、あと三日以内にあのボスモンスターを倒して魂を回収しないといけないと。それをしないと二度とゲームにログインできないんですね」
「そのためには、そのときに一緒に戦った人がいないといけないの。だから協力してほしいんだ」
「もちろんです。だけど、あのトカゲのモンスターはかなり強いんです」
「だよね。だから、あたしらもレベル上げて強い仲間も連れていかないといけないの」
「仲間ですかぁ……」

 この重苦しい反応は、前回の電話野郎と電源切り野郎のことを考えているに違いない。

「ハヤト君が死んだ原因は知ってる。だからこそ、信頼できる人じゃないとね。あたしは昨日から始めたばかりだからフレンドがいなくて。サーラちゃんのフレンドにお願いするしかないの」

 彼女は少し考えていた。

「わたしもハヤトさんと遊ぶことが多くて、信頼できるってほどのフレンドは……。このゲームはプレイヤースキルが重視されてるじゃないですか。レベルも上がりにくいので、わたしよりも上のレベルの人はそんなにいないんです。ひとりだけ心当たりがありますが、ハヤトさんを助けるってなると……」

 あぁ、嫉妬心でハヤトのフレンドを切ったレガシー君のことだ。たしかにそれは厳しいかもしれない。

「その人のレベルは?」
「わたしと同じ十七です」
「なら一緒にレベル上げすれば十分間に合うか。ねぇ、その人に連絡してくれない? あたしが事情を話すから」

 サーラちゃんは気乗りしないながらもエナコのお願いを聞き入れてフレンドメッセージを飛ばした。レガシー君はそれをスマホで確認し、すぐに返事をくれた。

「今、外出中だから一時間くらいでログインできるそうです」
「よし、それまでレベリングしよう。目標はレベル二十五だ!」

 志が高いのはいいことだ。その勢いが衰えませんように。

 呼び出しに応じてくれたレガシー君は、予定どおり一時間ほどでログインしてくれた。
 サーラちゃんからキラボシ食堂に来てもらえるように伝えてもらい、そこでエナコによる説得がおこなわれた。

「ということなんだけど、どうか力を貸してくれない?」

 レガシー君は考えている。やはりハヤトの名前が出たときから表情が硬い。嫌いということじゃなくて、フレンドを切ったことが気まずいのだろう。

「もちろん、ただとは言わない。報酬のダンジョンコアは君にあげる。どうかな? あたしたちはどうしても君という重戦士ビルドの前衛が必要なの」
「お願い!」

 サーラちゃんの可愛くも強い言葉に、「わかったよ。今回だけな」と、レガシー君はしぶしぶ了承してくれた。

「やったー、エガシラくんありがとう」
「本名で呼ぶなよ」

 うんうん、青春してる。エガシラ君も下の名前で呼んでもらえるようになるといいね。

「そうと決まればハヤト君救出作戦を開始します! 何はともあれレベルアップからですね。頑張りましょう!」

 高らかに宣言をしたエナコに「ハヤトさんに何かあったんですか?」と、声がかけられた。

「ん?」
「最近お店に来ないんですが、他の国に遠征してるんですか? ちょっと寂しいんですよね」

 リディアちゃんの参戦に、サーラちゃんの表情が険しくなった。

「ちょっとトラブルがありまして……って、この子NPC?」

 あー、リディアちゃんとのことは絵美ちゃんに話してない。っていうか、こんなふうにNPCが話せることも知らないはずだ。

「トラブル? 大丈夫なんですか?!」
「それを解決するためのミーティング中でして。ところで、リディアさん。ハヤト君とはどういうご関係で?」
「心を寄せ合う深い関係じゃないかと」

 NPCが心とか言っちゃってるよ。

「店員とお客様という深い関係ですよね」

 ここにサーラちゃんが割り込んだ。

「あなたは何度か外からお店を覗いていましたね。ハヤトさんの追っかけですか?」

 リディアちゃんってそんなトゲのある言葉を言う子だったの?

「違います、パートナーです」

 ムキになって返すサーラちゃんにレガシー君がショックを受けてる。これは恋の四角関係か?

「まぁまぁ、ふたりとも」

 なだめるエナコにリディアちゃんが聞き返した。

「あなたもハヤトさんのご友人ですか?」
「うん、友人であり幼馴染であり元カノです」

 さらに角が増えた恋の五角関係に、NPCのリディアちゃんだけじゃなくサーラちゃんも固まった。

「彼に知られないようにフレイマーという種族で別人として転生してきました。なので、ハヤト君には内密にお願いします」

 ひと悶着あったキラボシ食堂をあとにした一行は、急務であるレベルアップをするために効率の良い狩場に移動して、数時間ひたすらレベリングをおこなっていた。

「もう晩ご飯の時間だ」

 レガシー君の言葉を聞いて時計を見ると、たしかにそろそろ夕飯の時刻だ。

「一旦ログアウトして各々やることを済ませてから、再び集合しよう」

 エナコに声掛けをしてもらい、パーティーは一時解散となった。

「あたしはすぐ食べてシャワーしたら戻ってきますから」
「絵美ちゃんは無理せず休んだほうがいいよ。昨日だってあまり寝てないんだから」
「サーラちゃんたちよりレベル低いから追いつかないと。あたしが足手まといになるのは嫌ですからね」

 詳しい理由もわからないのにここまで頑張ってくれるのは、もしかして隼人のためじゃなくて、単にこのゲームが楽しいから?

 二十時から再開したレベリングはさらに二時間近く続き、サーラちゃんとレガシー君がレベル十九に上がったところでログアウトすることになった。

「ごめんなさい。もう寝ないと」
「おれもです」
「ありがとね、お疲れさま」
「早く寝るんで明日は早めに入ります」

 サーラちゃんはヤル気まんまんだ。

「単調でつまんないと思うけど、あと二日間お願いね。明日はクエストもやるって言ってるから、今日よりは楽しいかも」
「誰が言ってるんですか?」
「えーと、女神さま?」

 本当に女神の使徒って設定でいくの? だったら女神の名前はアドミスってことにしよう。

 ここから四時間、エナコは一心不乱にレベル上げをおこない、どうにかノルマのレベル十三まで上げることができた。



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「つまり、ハヤトさんはゲームのバグで普通には蘇生できなくて、あと三日以内にあのボスモンスターを倒して魂を回収しないといけないと。それをしないと二度とゲームにログインできないんですね」
「そのためには、そのときに一緒に戦った人がいないといけないの。だから協力してほしいんだ」
「もちろんです。だけど、あのトカゲのモンスターはかなり強いんです」
「だよね。だから、あたしらもレベル上げて強い仲間も連れていかないといけないの」
「仲間ですかぁ……」
 この重苦しい反応は、前回の電話野郎と電源切り野郎のことを考えているに違いない。
「ハヤト君が死んだ原因は知ってる。だからこそ、信頼できる人じゃないとね。あたしは昨日から始めたばかりだからフレンドがいなくて。サーラちゃんのフレンドにお願いするしかないの」
 彼女は少し考えていた。
「わたしもハヤトさんと遊ぶことが多くて、信頼できるってほどのフレンドは……。このゲームはプレイヤースキルが重視されてるじゃないですか。レベルも上がりにくいので、わたしよりも上のレベルの人はそんなにいないんです。ひとりだけ心当たりがありますが、ハヤトさんを助けるってなると……」
 あぁ、嫉妬心でハヤトのフレンドを切ったレガシー君のことだ。たしかにそれは厳しいかもしれない。
「その人のレベルは?」
「わたしと同じ十七です」
「なら一緒にレベル上げすれば十分間に合うか。ねぇ、その人に連絡してくれない? あたしが事情を話すから」
 サーラちゃんは気乗りしないながらもエナコのお願いを聞き入れてフレンドメッセージを飛ばした。レガシー君はそれをスマホで確認し、すぐに返事をくれた。
「今、外出中だから一時間くらいでログインできるそうです」
「よし、それまでレベリングしよう。目標はレベル二十五だ!」
 志が高いのはいいことだ。その勢いが衰えませんように。
 呼び出しに応じてくれたレガシー君は、予定どおり一時間ほどでログインしてくれた。
 サーラちゃんからキラボシ食堂に来てもらえるように伝えてもらい、そこでエナコによる説得がおこなわれた。
「ということなんだけど、どうか力を貸してくれない?」
 レガシー君は考えている。やはりハヤトの名前が出たときから表情が硬い。嫌いということじゃなくて、フレンドを切ったことが気まずいのだろう。
「もちろん、ただとは言わない。報酬のダンジョンコアは君にあげる。どうかな? あたしたちはどうしても君という重戦士ビルドの前衛が必要なの」
「お願い!」
 サーラちゃんの可愛くも強い言葉に、「わかったよ。今回だけな」と、レガシー君はしぶしぶ了承してくれた。
「やったー、エガシラくんありがとう」
「本名で呼ぶなよ」
 うんうん、青春してる。エガシラ君も下の名前で呼んでもらえるようになるといいね。
「そうと決まればハヤト君救出作戦を開始します! 何はともあれレベルアップからですね。頑張りましょう!」
 高らかに宣言をしたエナコに「ハヤトさんに何かあったんですか?」と、声がかけられた。
「ん?」
「最近お店に来ないんですが、他の国に遠征してるんですか? ちょっと寂しいんですよね」
 リディアちゃんの参戦に、サーラちゃんの表情が険しくなった。
「ちょっとトラブルがありまして……って、この子NPC?」
 あー、リディアちゃんとのことは絵美ちゃんに話してない。っていうか、こんなふうにNPCが話せることも知らないはずだ。
「トラブル? 大丈夫なんですか?!」
「それを解決するためのミーティング中でして。ところで、リディアさん。ハヤト君とはどういうご関係で?」
「心を寄せ合う深い関係じゃないかと」
 NPCが心とか言っちゃってるよ。
「店員とお客様という深い関係ですよね」
 ここにサーラちゃんが割り込んだ。
「あなたは何度か外からお店を覗いていましたね。ハヤトさんの追っかけですか?」
 リディアちゃんってそんなトゲのある言葉を言う子だったの?
「違います、パートナーです」
 ムキになって返すサーラちゃんにレガシー君がショックを受けてる。これは恋の四角関係か?
「まぁまぁ、ふたりとも」
 なだめるエナコにリディアちゃんが聞き返した。
「あなたもハヤトさんのご友人ですか?」
「うん、友人であり幼馴染であり元カノです」
 さらに角が増えた恋の五角関係に、NPCのリディアちゃんだけじゃなくサーラちゃんも固まった。
「彼に知られないようにフレイマーという種族で別人として転生してきました。なので、ハヤト君には内密にお願いします」
 ひと悶着あったキラボシ食堂をあとにした一行は、急務であるレベルアップをするために効率の良い狩場に移動して、数時間ひたすらレベリングをおこなっていた。
「もう晩ご飯の時間だ」
 レガシー君の言葉を聞いて時計を見ると、たしかにそろそろ夕飯の時刻だ。
「一旦ログアウトして各々やることを済ませてから、再び集合しよう」
 エナコに声掛けをしてもらい、パーティーは一時解散となった。
「あたしはすぐ食べてシャワーしたら戻ってきますから」
「絵美ちゃんは無理せず休んだほうがいいよ。昨日だってあまり寝てないんだから」
「サーラちゃんたちよりレベル低いから追いつかないと。あたしが足手まといになるのは嫌ですからね」
 詳しい理由もわからないのにここまで頑張ってくれるのは、もしかして隼人のためじゃなくて、単にこのゲームが楽しいから?
 二十時から再開したレベリングはさらに二時間近く続き、サーラちゃんとレガシー君がレベル十九に上がったところでログアウトすることになった。
「ごめんなさい。もう寝ないと」
「おれもです」
「ありがとね、お疲れさま」
「早く寝るんで明日は早めに入ります」
 サーラちゃんはヤル気まんまんだ。
「単調でつまんないと思うけど、あと二日間お願いね。明日はクエストもやるって言ってるから、今日よりは楽しいかも」
「誰が言ってるんですか?」
「えーと、女神さま?」
 本当に女神の使徒って設定でいくの? だったら女神の名前はアドミスってことにしよう。
 ここから四時間、エナコは一心不乱にレベル上げをおこない、どうにかノルマのレベル十三まで上げることができた。