#1
ー/ー タイタニックから打電された救難信号は、交信可能エリアの船に伝達され、そこからさらに遠方の船へ伝わり、ニューヨークの新聞社、最終的には大西洋の海底ケーブルを通じイギリス本国へ報じられた。
タイタニック号沈没事故のニュースは、間を置かずして世界中が知ることとなる。
「寒くないのかい、アシュリー」
「別に。ブライアンと違って若いし」
「あー……地味に傷つくなぁ。私だってまだ若いよ」
「はいはい」
俺たちはニューヨークで数泊したのち、避難者のために手配されたイギリス行きの船に乗り帰途についた。
「おい、ブライアン。あんまりくっつくなよ」
「冷たいと感じるのは私の気のせいかな。再会したときはしおらしくて可愛かったのに」
誰が可愛いだ。俺はブライアンをひじで押しやり、船首のデッキに立った。
四月の最終週、昨日までの荒れた天気が嘘のように、空は青く晴れ渡っている。船はもうじきサウサンプトン港へ到着する。約三週間ぶりの故郷だ。
タイタニック号沈没事故のニュースは、間を置かずして世界中が知ることとなる。
「寒くないのかい、アシュリー」
「別に。ブライアンと違って若いし」
「あー……地味に傷つくなぁ。私だってまだ若いよ」
「はいはい」
俺たちはニューヨークで数泊したのち、避難者のために手配されたイギリス行きの船に乗り帰途についた。
「おい、ブライアン。あんまりくっつくなよ」
「冷たいと感じるのは私の気のせいかな。再会したときはしおらしくて可愛かったのに」
誰が可愛いだ。俺はブライアンをひじで押しやり、船首のデッキに立った。
四月の最終週、昨日までの荒れた天気が嘘のように、空は青く晴れ渡っている。船はもうじきサウサンプトン港へ到着する。約三週間ぶりの故郷だ。
ニューヨークを発つ前、ウィンチェスターの実家に電報を打った。ふたりとも無事、心配無用と。素っ気ない内容だけど、安否はきちんと伝えられたはずだ。
ここ数日、ずっと気が重い。
それはイギリスが近づくにつれ顕著になっていく。
父さんと母さんにどんな顔して会えばいい?
俺が怒られるのは自業自得だからいいとして、ブライアンへの飛び火はなにがなんでも阻止したかった。
乗らなくてもいいタイタニックに乗る羽目になったのは俺のせいだ。どうにか先制してブライアンを守りたい。
「アシュリーが助かって本当に良かったよ」
きらめく海を眺めながら、しみじみとブライアンが言った。
「それ、そっくりそのまま返すよ」
「でも……父親がふたりいるのは、かなり複雑だろう」
この期に及んで、なんの心配してるんだよ。
「みんなでひとつの家族だって言ったのブライアンだろ。正直、動揺したし怒りを感じたけど、いまは……父さんがふたりいるのも悪くない。……と、思うことにする。さしあたりはね。ちょっとずつなら受け入れられるんじゃないかって」
思いつめたブライアンの表情が、わずかにゆるんだ。
ここ数日、ずっと気が重い。
それはイギリスが近づくにつれ顕著になっていく。
父さんと母さんにどんな顔して会えばいい?
俺が怒られるのは自業自得だからいいとして、ブライアンへの飛び火はなにがなんでも阻止したかった。
乗らなくてもいいタイタニックに乗る羽目になったのは俺のせいだ。どうにか先制してブライアンを守りたい。
「アシュリーが助かって本当に良かったよ」
きらめく海を眺めながら、しみじみとブライアンが言った。
「それ、そっくりそのまま返すよ」
「でも……父親がふたりいるのは、かなり複雑だろう」
この期に及んで、なんの心配してるんだよ。
「みんなでひとつの家族だって言ったのブライアンだろ。正直、動揺したし怒りを感じたけど、いまは……父さんがふたりいるのも悪くない。……と、思うことにする。さしあたりはね。ちょっとずつなら受け入れられるんじゃないかって」
思いつめたブライアンの表情が、わずかにゆるんだ。
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タイタニックから打電された|救難《モールス》信号は、交信可能エリアの船に伝達され、そこからさらに遠方の船へ伝わり、ニューヨークの新聞社、最終的には大西洋の海底ケーブルを通じイギリス本国へ報じられた。
タイタニック号沈没事故のニュースは、間を置かずして世界中が知ることとなる。
「寒くないのかい、アシュリー」
「別に。ブライアンと違って若いし」
「あー……地味に傷つくなぁ。私だってまだ若いよ」
「はいはい」
「別に。ブライアンと違って若いし」
「あー……地味に傷つくなぁ。私だってまだ若いよ」
「はいはい」
俺たちはニューヨークで数泊したのち、避難者のために手配されたイギリス行きの船に乗り帰途についた。
「おい、ブライアン。あんまりくっつくなよ」
「冷たいと感じるのは私の気のせいかな。再会したときはしおらしくて可愛かったのに」
「冷たいと感じるのは私の気のせいかな。再会したときはしおらしくて可愛かったのに」
誰が可愛いだ。俺はブライアンをひじで押しやり、船首のデッキに立った。
四月の最終週、昨日までの荒れた天気が嘘のように、空は青く晴れ渡っている。船はもうじきサウサンプトン港へ到着する。約三週間ぶりの故郷だ。
ニューヨークを発つ前、ウィンチェスターの実家に電報を打った。ふたりとも無事、心配無用と。素っ気ない内容だけど、安否はきちんと伝えられたはずだ。
ここ数日、ずっと気が重い。
それはイギリスが近づくにつれ顕著になっていく。
それはイギリスが近づくにつれ顕著になっていく。
父さんと母さんにどんな顔して会えばいい?
俺が怒られるのは自業自得だからいいとして、ブライアンへの飛び火はなにがなんでも阻止したかった。
乗らなくてもいいタイタニックに乗る羽目になったのは俺のせいだ。どうにか先制してブライアンを守りたい。
「アシュリーが助かって本当に良かったよ」
きらめく海を眺めながら、しみじみとブライアンが言った。
きらめく海を眺めながら、しみじみとブライアンが言った。
「それ、そっくりそのまま返すよ」
「でも……父親がふたりいるのは、かなり複雑だろう」
この期に及んで、なんの心配してるんだよ。
「でも……父親がふたりいるのは、かなり複雑だろう」
この期に及んで、なんの心配してるんだよ。
「みんなでひとつの家族だって言ったのブライアンだろ。正直、動揺したし怒りを感じたけど、いまは……父さんがふたりいるのも悪くない。……と、思うことにする。さしあたりはね。ちょっとずつなら受け入れられるんじゃないかって」
思いつめたブライアンの表情が、わずかにゆるんだ。