呼び出し
ー/ー 4階の音楽室の前にはだいぶ年季の入ったロッカーがあって、一番左上がクラリネット用。歪んだ扉を開けるコツはもう心得ている。
そこに入っているA4の茶封筒から、盟子は新曲の楽譜の原本を取り出した。これを各自コピーして使う。
「あっらぁ」
最寄りのコンビニにコピーしに行こうとしたところ、4階の階段の前でばったり守谷に出くわした。白のスタンドカラーシャツと黒のチノパンという学校用のキレイめスタイルは今日も主役オーラ満載だ。
「どうしたんですか先生、こんなところで」
盟子は目を丸くした。
「こんなところにいちゃ悪い?」
4階の音楽室前の階段は、音楽の授業で使われる以外はほぼ吹奏楽部のテリトリー。こんなところで守谷を見かけるというのは、バグか何かかと感じてしまう。彼は1階の美術室と2階の職員室界隈にしか出没しないはずの人だ。
「音楽室に用事ですか? 岡田先生なら今いないですけど……」
「違う違う。屋上に呼び出しよぉ、よ・び・だ・し!」
「磯部先生ですか?」
「あたしってそんな磯部先生にシバかれてるイメージ?」
そこに入っているA4の茶封筒から、盟子は新曲の楽譜の原本を取り出した。これを各自コピーして使う。
「あっらぁ」
最寄りのコンビニにコピーしに行こうとしたところ、4階の階段の前でばったり守谷に出くわした。白のスタンドカラーシャツと黒のチノパンという学校用のキレイめスタイルは今日も主役オーラ満載だ。
「どうしたんですか先生、こんなところで」
盟子は目を丸くした。
「こんなところにいちゃ悪い?」
4階の音楽室前の階段は、音楽の授業で使われる以外はほぼ吹奏楽部のテリトリー。こんなところで守谷を見かけるというのは、バグか何かかと感じてしまう。彼は1階の美術室と2階の職員室界隈にしか出没しないはずの人だ。
「音楽室に用事ですか? 岡田先生なら今いないですけど……」
「違う違う。屋上に呼び出しよぉ、よ・び・だ・し!」
「磯部先生ですか?」
「あたしってそんな磯部先生にシバかれてるイメージ?」
「まあ、そうですね……」
「黒田ちゃんよ」
「えっ」
その名前に、嫌な予感がした。
「重たい相談があるから聞いてほしいんですって。あはは」
重たい相談。
それは何かおかしい、と盟子は考える。
良くも悪くも直情型で思考がそのまま口から垂れ流しになる南緒が、相談事を重たくなるまでひとりで抱えているなんて絶対に無理だ。
「あの子、いつもテキトーにあしらっちゃってるから、たまには聞いてやらなきゃね」
だとしたら、その「重たい相談」というのは何かの口実に違いない。
でも、何かって何だろう?
今更告白でもないはずだ。そんなこともう、守谷含め学校中に知れ渡っているのだから。
「先生、それ絶対やめた方がいいやつです!」
胸騒ぎがする。
「どうして屋上なんですか? 職員室か美術室だっていいでしょ?」
「んー実はさ、どこか外で二人きりで話したいって前々から言われてたのね」
断ってもしぶといんだわ、と守谷は苦笑する。
「けどさすがに外は無理だから、屋上が妥協点なわけ」
「だめです! 絶対だめ!」
自分でもなぜだかわからないまま、盟子は必死に食い下がった。
「やだぁもしかして妬いてる? ちょっと嬉しい♪」
階段を一足飛びで駆け上がった守谷の背中が見えなくなると、盟子はいてもたってもいられなくなった。
「えっ」
その名前に、嫌な予感がした。
「重たい相談があるから聞いてほしいんですって。あはは」
重たい相談。
それは何かおかしい、と盟子は考える。
良くも悪くも直情型で思考がそのまま口から垂れ流しになる南緒が、相談事を重たくなるまでひとりで抱えているなんて絶対に無理だ。
「あの子、いつもテキトーにあしらっちゃってるから、たまには聞いてやらなきゃね」
だとしたら、その「重たい相談」というのは何かの口実に違いない。
でも、何かって何だろう?
今更告白でもないはずだ。そんなこともう、守谷含め学校中に知れ渡っているのだから。
「先生、それ絶対やめた方がいいやつです!」
胸騒ぎがする。
「どうして屋上なんですか? 職員室か美術室だっていいでしょ?」
「んー実はさ、どこか外で二人きりで話したいって前々から言われてたのね」
断ってもしぶといんだわ、と守谷は苦笑する。
「けどさすがに外は無理だから、屋上が妥協点なわけ」
「だめです! 絶対だめ!」
自分でもなぜだかわからないまま、盟子は必死に食い下がった。
「やだぁもしかして妬いてる? ちょっと嬉しい♪」
階段を一足飛びで駆け上がった守谷の背中が見えなくなると、盟子はいてもたってもいられなくなった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
4階の音楽室の前にはだいぶ年季の入ったロッカーがあって、一番左上がクラリネット用。歪んだ扉を開けるコツはもう心得ている。
そこに入っているA4の茶封筒から、盟子は新曲の楽譜の原本を取り出した。これを各自コピーして使う。
そこに入っているA4の茶封筒から、盟子は新曲の楽譜の原本を取り出した。これを各自コピーして使う。
「あっらぁ」
最寄りのコンビニにコピーしに行こうとしたところ、4階の階段の前でばったり守谷に出くわした。白のスタンドカラーシャツと黒のチノパンという学校用のキレイめスタイルは今日も主役オーラ満載だ。
最寄りのコンビニにコピーしに行こうとしたところ、4階の階段の前でばったり守谷に出くわした。白のスタンドカラーシャツと黒のチノパンという学校用のキレイめスタイルは今日も主役オーラ満載だ。
「どうしたんですか先生、こんなところで」
盟子は目を丸くした。
「こんなところにいちゃ悪い?」
4階の音楽室前の階段は、音楽の授業で使われる以外はほぼ吹奏楽部のテリトリー。こんなところで守谷を見かけるというのは、バグか何かかと感じてしまう。彼は1階の美術室と2階の職員室界隈にしか出没しないはずの人だ。
盟子は目を丸くした。
「こんなところにいちゃ悪い?」
4階の音楽室前の階段は、音楽の授業で使われる以外はほぼ吹奏楽部のテリトリー。こんなところで守谷を見かけるというのは、バグか何かかと感じてしまう。彼は1階の美術室と2階の職員室界隈にしか出没しないはずの人だ。
「音楽室に用事ですか? 岡田先生なら今いないですけど……」
「違う違う。屋上に呼び出しよぉ、よ・び・だ・し!」
「磯部先生ですか?」
「あたしってそんな磯部先生にシバかれてるイメージ?」
「違う違う。屋上に呼び出しよぉ、よ・び・だ・し!」
「磯部先生ですか?」
「あたしってそんな磯部先生にシバかれてるイメージ?」
「まあ、そうですね……」
「黒田ちゃんよ」
「えっ」
「えっ」
その名前に、嫌な予感がした。
「重たい相談があるから聞いてほしいんですって。あはは」
重たい相談。
それは何かおかしい、と盟子は考える。
良くも悪くも直情型で思考がそのまま口から垂れ流しになる南緒が、相談事を重たくなるまでひとりで抱えているなんて絶対に無理だ。
重たい相談。
それは何かおかしい、と盟子は考える。
良くも悪くも直情型で思考がそのまま口から垂れ流しになる南緒が、相談事を重たくなるまでひとりで抱えているなんて絶対に無理だ。
「あの子、いつもテキトーにあしらっちゃってるから、たまには聞いてやらなきゃね」
だとしたら、その「重たい相談」というのは|何か《・・》の口実に違いない。
でも、|何か《・・》って何だろう?
今更告白でもないはずだ。そんなこともう、守谷含め学校中に知れ渡っているのだから。
でも、|何か《・・》って何だろう?
今更告白でもないはずだ。そんなこともう、守谷含め学校中に知れ渡っているのだから。
「先生、それ絶対やめた方がいいやつです!」
胸騒ぎがする。
「どうして屋上なんですか? 職員室か美術室だっていいでしょ?」
「んー実はさ、どこか外で二人きりで話したいって前々から言われてたのね」
断ってもしぶといんだわ、と守谷は苦笑する。
「けどさすがに外は無理だから、屋上が妥協点なわけ」
「だめです! 絶対だめ!」
自分でもなぜだかわからないまま、盟子は必死に食い下がった。
胸騒ぎがする。
「どうして屋上なんですか? 職員室か美術室だっていいでしょ?」
「んー実はさ、どこか外で二人きりで話したいって前々から言われてたのね」
断ってもしぶといんだわ、と守谷は苦笑する。
「けどさすがに外は無理だから、屋上が妥協点なわけ」
「だめです! 絶対だめ!」
自分でもなぜだかわからないまま、盟子は必死に食い下がった。
「やだぁもしかして妬いてる? ちょっと嬉しい♪」
階段を一足飛びで駆け上がった守谷の背中が見えなくなると、盟子はいてもたってもいられなくなった。