#3
ー/ー「アシュリーはできる子だから、期待されてるんだよ」
「いい迷惑だね」
「わかってるよ。小さなころからどんな思いで勉強や教養を身に着けてきたか……苦しんできたかもね。でも、君はまだまだ知らないことが多すぎる。どれほど幸せか、どれほど愛されてるか。どれだけ世界が広いのかを、君はまだ知らないんだ」
「知ってるさ」
「知ってると言い切れるだけ、ひよっこなんだよ」
決めつけられていらっとした。俺に対して過小評価なのも気に入らなかった。
こんなに努力してるのに、まだ不十分だっていうのか。
「俺に説教できるほど、世界を知ってるのかよ」
「アシュリーよりはね」
「はみ出し者のくせに?」
俺は毒を吐き、食事の途中にもかかわらず席を立った。
瞬時に言い過ぎたと後悔したけれど、引っ込みがつかない。
俺を呼び止めるブライアンを無視してレストランを出た。最悪だ。腹が立って、心にもないことを言った。きっと、ブライアンを傷つけた。
「いい迷惑だね」
「わかってるよ。小さなころからどんな思いで勉強や教養を身に着けてきたか……苦しんできたかもね。でも、君はまだまだ知らないことが多すぎる。どれほど幸せか、どれほど愛されてるか。どれだけ世界が広いのかを、君はまだ知らないんだ」
「知ってるさ」
「知ってると言い切れるだけ、ひよっこなんだよ」
決めつけられていらっとした。俺に対して過小評価なのも気に入らなかった。
こんなに努力してるのに、まだ不十分だっていうのか。
「俺に説教できるほど、世界を知ってるのかよ」
「アシュリーよりはね」
「はみ出し者のくせに?」
俺は毒を吐き、食事の途中にもかかわらず席を立った。
瞬時に言い過ぎたと後悔したけれど、引っ込みがつかない。
俺を呼び止めるブライアンを無視してレストランを出た。最悪だ。腹が立って、心にもないことを言った。きっと、ブライアンを傷つけた。
レストランを出て大股で大階段を上がり、プロムナードデッキへ向かった。
吹きつける四月の夜風は冬の冷気を含んでいて、散策する人影はまばらだ。襟元のタイをはずし、手すりにもたれた。夜空と大海原の境目は見えず、果てなく黒い闇が続いている。
俺は本当はブライアンをはみ出し者だなんて思っていない。型にはまらず自分らしいスタイルで生きるブライアンに憧れている。
周囲から俺はブライアンに似ていると言われてきたけど単に外見上のことで、すぐカッとなる性格は嫌になるほど父さんそっくりだ。
どうせなら中身も穏やかなブライアンに似たかった。ひとを傷つける父さんのようにはならないと決めていたのに、まるっきり反対のことをしてる自分に嫌気がさす。
楽しい旅を俺が台無しにした。心が重く、胃の奥がしめつけられる。すぐには立ち直れそうになかった。
俺は本当はブライアンをはみ出し者だなんて思っていない。型にはまらず自分らしいスタイルで生きるブライアンに憧れている。
周囲から俺はブライアンに似ていると言われてきたけど単に外見上のことで、すぐカッとなる性格は嫌になるほど父さんそっくりだ。
どうせなら中身も穏やかなブライアンに似たかった。ひとを傷つける父さんのようにはならないと決めていたのに、まるっきり反対のことをしてる自分に嫌気がさす。
楽しい旅を俺が台無しにした。心が重く、胃の奥がしめつけられる。すぐには立ち直れそうになかった。
***
海風で指先が冷たくなり始め、部屋へ戻ろうかと悩んでいたとき、一匹の子犬が足元に走り寄ってきた。毛足の長いテリアの一種で、遊び相手を見つけ喜んでいるのか、しっぽを振り元気よくじゃれてくる。
「どこから脱走してきたんだよ」
辺りを見渡しても飼い主らしき人物は見当たらない。しゃがんで首輪と同じピンク色のリードを拾い上げ、ひとなつこい子犬の頭をなでた。
もし、この子犬のように屈託無く駆け寄ったら、父さんは喜んで俺を受け入れてくれるだろうか。それとも、まだまだ努力がたりないから愛せないと突っぱねるだろうか……。
そんなとりとめないことを考えながら子犬の相手をしていると、
「まあまあ、坊ちゃん。申し訳ないこと。うちの犬がご迷惑をおかけして」と女性の声が聞こえた。
坊ちゃんとはどうやら俺のことらしい。
顔を上げると、品のいい老婦人がこちらに歩いてくるのが見えた。
「どこから脱走してきたんだよ」
辺りを見渡しても飼い主らしき人物は見当たらない。しゃがんで首輪と同じピンク色のリードを拾い上げ、ひとなつこい子犬の頭をなでた。
もし、この子犬のように屈託無く駆け寄ったら、父さんは喜んで俺を受け入れてくれるだろうか。それとも、まだまだ努力がたりないから愛せないと突っぱねるだろうか……。
そんなとりとめないことを考えながら子犬の相手をしていると、
「まあまあ、坊ちゃん。申し訳ないこと。うちの犬がご迷惑をおかけして」と女性の声が聞こえた。
坊ちゃんとはどうやら俺のことらしい。
顔を上げると、品のいい老婦人がこちらに歩いてくるのが見えた。
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「アシュリーはできる子だから、期待されてるんだよ」
「いい迷惑だね」
「いい迷惑だね」
「わかってるよ。小さなころからどんな思いで勉強や教養を身に着けてきたか……苦しんできたかもね。でも、君はまだまだ知らないことが多すぎる。どれほど幸せか、どれほど愛されてるか。どれだけ世界が広いのかを、君はまだ知らないんだ」
「知ってるさ」
「知ってると言い切れるだけ、ひよっこなんだよ」
「知ってると言い切れるだけ、ひよっこなんだよ」
決めつけられていらっとした。俺に対して過小評価なのも気に入らなかった。
こんなに努力してるのに、まだ不十分だっていうのか。
こんなに努力してるのに、まだ不十分だっていうのか。
「俺に説教できるほど、世界を知ってるのかよ」
「アシュリーよりはね」
「はみ出し者のくせに?」
「アシュリーよりはね」
「はみ出し者のくせに?」
俺は毒を吐き、食事の途中にもかかわらず席を立った。
瞬時に言い過ぎたと後悔したけれど、引っ込みがつかない。
瞬時に言い過ぎたと後悔したけれど、引っ込みがつかない。
俺を呼び止めるブライアンを無視してレストランを出た。最悪だ。腹が立って、心にもないことを言った。きっと、ブライアンを傷つけた。
レストランを出て大股で大階段を上がり、プロムナードデッキへ向かった。
吹きつける四月の夜風は冬の冷気を含んでいて、散策する人影はまばらだ。襟元のタイをはずし、手すりにもたれた。夜空と大海原の境目は見えず、果てなく黒い闇が続いている。
俺は本当はブライアンをはみ出し者だなんて思っていない。型にはまらず自分らしいスタイルで生きるブライアンに憧れている。
周囲から俺はブライアンに似ていると言われてきたけど単に外見上のことで、すぐカッとなる性格は嫌になるほど父さんそっくりだ。
どうせなら中身も穏やかなブライアンに似たかった。ひとを傷つける父さんのようにはならないと決めていたのに、まるっきり反対のことをしてる自分に嫌気がさす。
楽しい旅を俺が台無しにした。心が重く、胃の奥がしめつけられる。すぐには立ち直れそうになかった。
***
海風で指先が冷たくなり始め、部屋へ戻ろうかと悩んでいたとき、一匹の子犬が足元に走り寄ってきた。毛足の長いテリアの一種で、遊び相手を見つけ喜んでいるのか、しっぽを振り元気よくじゃれてくる。
「どこから脱走してきたんだよ」
辺りを見渡しても飼い主らしき人物は見当たらない。しゃがんで首輪と同じピンク色のリードを拾い上げ、ひとなつこい子犬の頭をなでた。
もし、この子犬のように屈託無く駆け寄ったら、父さんは喜んで俺を受け入れてくれるだろうか。それとも、まだまだ努力がたりないから愛せないと突っぱねるだろうか……。
そんなとりとめないことを考えながら子犬の相手をしていると、
「まあまあ、坊ちゃん。申し訳ないこと。うちの犬がご迷惑をおかけして」と女性の声が聞こえた。
「まあまあ、坊ちゃん。申し訳ないこと。うちの犬がご迷惑をおかけして」と女性の声が聞こえた。
坊ちゃんとはどうやら俺のことらしい。
顔を上げると、品のいい老婦人がこちらに歩いてくるのが見えた。
顔を上げると、品のいい老婦人がこちらに歩いてくるのが見えた。