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作戦会議

ー/ー



ラギルーガ―マエナスの家。

「師匠!昨日やった体術を交えたカウンターをもう一度やりたいっす!」

「お前毎日そんなことしてたの?おもしれぇ!俺も相手になるぜ?」

「…クロウさんからカウンターなんて取れるのかなロアくん…。」

「意外とやれるかもしれんな?ふっ…」

「…多分シモンはとちゅうで邪魔して転ばせてあそびたいだけなんだぉ…。」

「おいユキミ…掃除なんていいから酒でも買ってこいよ。」

「い・や・よ。あなたのパートナーではあるけど小間使いやパシリになった覚えはないわよ。まったく…人の家で図々しいわね…。」

元々ひとりで住めればいい程度の大きさの家に何人も。しかも図体の大きい大人の男も増え、家の中はすし詰め状態に近い。

「なんかすごいことになってきちゃったな…。」

「そうですねぇ…集合して5分も経たないうちに各々の個性が爆発してますね。」

「はははっ…マエナスさん帰ってきたら怒られそうだね。」

「マーク…笑っちゃいるがお前も大概だと思うがな…。」

机を囲んでアクリス、ファランクス、マーク、トムが部屋の惨状を遠目に見ながら語り合っている。マークの膝の上にはひとりの女性のエルフが座っており、髪をとかしてあげている。普段おとなしいマークにもこんな一面があるんだと、アクリスは驚きながらも様子を見ていた。

「そう?無事に偵察から帰ってきた『妹』を労ってあげるのは兄として当然じゃないかな?あ、トム、もしかしてヤキモチ?」

「…そういう意味ではない。」

「チガウ?の?」

「ぐっ…!お前まで言うな…!」

キョトンとした表情を見せる女エルフ。名前はミイナ。
色素の薄いブロンドのロングヘアが柔らかく揺れ、傾げた頭に巻かれている母体樹の葉で作られたアクセサリーの赤い宝石がシャラリと音を立てる。

「ははっ!皆仲が良いのは良いことだよ。」

「昔から…変わらないのは私としても見ていて安心しますね。それにしても…マエナス、遅いですね。」

明け方家を空けたマエナス。昼前には戻ると聞いていたアクリスだが…すでに正午を少し回っている。

「うーん…マエナスには悪いけどお昼食べようか?部屋の中じゃ狭いから中庭に用意を…ファラ、マーク、頼める?」

声が掛かった2人は中庭の方へと移動し、未だ部屋の中で騒いでいる者たちを連れ出した。

「ふぅ…これでしばらくは静かになると思うよマエナス。」

出入り口の死角に身を潜めていたのか、アクリスに呼ばれると、マエナスは部屋に帰ってきた。

「はぁ…ここは託児所じゃねぇっての…ククッ!それにしてもよくわかったな?アクリス。」

「あーまぁ…前回も似たような感じの事あったから。マエナスは騒がしいの苦手みたいだし、毎回怒るのも良くないし?」

「ふはっ!こりゃお優しいことで…っと。トムとミイナだけ残したのもこれからする話を見越してたのか?」

ドカッとマエナスは自分の椅子に座ると、布に包まれた謎の荷物を机の真ん中に乱暴に置いた。

「見越してた!わけじゃないけど…ミイナが行っていたハルトの情報はしっかりと聞いておきたいし、その上で今後の行動に関しての意見や助言、アドバイスとか。必要だから。」

「ククッ…少しずつ自覚してきてるみてぇだな。」

「ふっ…ファラの気持ちが少しわかってきた。さてミイナ、王子はハルト偵察の報告を待っているようだ、頼む。」

「ん…わかった。」

マエナスが持ってきた荷物の布を解き、中から取り出した青白く光る大きめの紙をふわりとテーブルに広げる。

「これは…魔法の地図?かなり貴重なものだろ?」

「よくわかったなアクリス?たとえ王族だとしてもなかなかお目にかかれるもんじゃねぇのにな。」

【魔法の地図】
古の魔術師が大陸各地から紙の材料となる素材と、各地の持つ魔力を結晶化させ混合して作られた魔力を帯びた地図だ。結晶化させることが難しく、時間がかかるもので、今の時代、好んで作ろうと思うものおらず、希少なもの。
青白く光を放っている内はその力が発揮されるが、魔力を失うとただの紙になる。再び魔力を紐付ける術を掛ければ使えるのだが、ただの紙になる性質のため見分けがつかず、効力を失ってしまえばそのまま捨てられるか他の紙製品にされるかで中々表向きには出回らない代物だ。

「俺も久しぶりにみたよ、まだ残っている物があったんだね。」

「見つけるのに苦労はしたが…実際現地に行って己の目で見るってぇのは、俺たちの目的からすると難しいし、愚行だ。これを使うほうが安全で…庭にいる脳筋たちにも説明しやすいだろ。」

机に広げられた無地の魔法の地図にミイナが手をかざし、意識を集中させる。すると、アクリスたちの眼前に青い光の線で構成された立体的な建物が浮き出てきた。

「すごいな…実物を見てるみたいだね。修復は済んで、破壊される前のハルトの王城そのまま…?」

「ん…住居区画は荒れたままだから、割愛してる。これでいい?マエナス?」

「ああ、構わねえ。侵入する箇所がこっちのがわかりやすいからな。」

『ハルト城奪還作戦』

偵察から帰還したミイナからの情報によると、城と防壁と正門以外は襲撃の日のまま放置された状態だそうだ。
それに加えて先日、王都サザンライトの王命により、大陸から『都』としての機能をしていない、と下され、通常の地図からハルトは抹消されてしまっている。

「あまりにも都合が良すぎる展開だな。」

「たしかにそうかも知れねぇ。だが、ここを拠点に据えることができるならこちらとしても動きやすいだろ。」

「…長い歴史からこうも簡単に故郷が消されるなんて思いもしなかったな。それでも取り戻せる勝算があるのなら、俺は全力で挑むよ。」

ニヤリといつもの笑みを見せるマエナス。

「我らが王子もやる気ってことで…ミイナ、続きを。」

「ん…。城内を確認。生体、人間が城に居たけど、1人だけ。」

「1人?」

王都程ではないが大きさもあるハルト城を占拠している何者かが、1人というのは不自然だった。

「でも、生きていないのは数え切れない。」

「なるほど、不死者がいるわけだな。これは厄介かもしれない…。」

「…不死者を従えてる生きている人間がハルト城に住みついてる?なんだかあいつの真似事みたいなことをしてるんだね。」

クルクルとミイナが立体の城を動かして詳細な場所と、比較的安全な侵入路を示していく。

「場所と道はこんなところ。…人物を隠れて見ていたけどアクリスより子供。でもすごく嫌な感じ。気を付けたほうがいい、かな。」

「若干だけど城内の細かい部屋とかが変わってるみたい…よくここまで見つからないで調べられたね。危険な仕事だっただのにありがとう、ミイナ。今はゆっくり休んで。」

「ん…マークのとこに行ってくる。」

ミイナが退席して、作戦を詰めていく。

「ねえマエナス、ミイナの出した立体の城に俺の記憶にある城の情報も投影できる?」

「出来るぜ?手を添えて思い描けばいい。…昔良くやってたからな、こういう建物を含む偵察ってなぁ短期間でひとりで普通はここまで詳細に出来ないないもんだ、ミイナが優秀過ぎる。だが、過去の情報はそれにはない。何人かの偵察部隊の情報を合わせて精巧にしていったもんさ。」

アクリスが手を添えると、青い線に重なるように赤い線で構成された新たな城が出来上がっていく。そこに映し出されていったのは…王族しか知り得ないだろう隠し通路を含めた過去の城の姿だった。

「多分マエナスとトムならわかってるとは思うけど緊急時の避難用の隠し通路と、隠し部屋。役に立つ、かな?」

「ククッ!これはありがたい収穫だなトム?」

「ああ、そうだな。大規模に城攻めをするつもりは毛頭ない。強いて言うのであれば暗殺をするようなものだからな。これでこちらの部隊も分けやすくなる。」

「役に立って良かった。元々平穏な世界にいた俺だから…まだまだこういった有事には疎い。2人を…いや、集まってくれたみんなを頼るしかないから。」

申し訳無さそうに笑うアクリスに対して2人は…

「謙遜するな。それだけ信じるに値する者として接し、託すことができるというのは簡単にできることではない。」

「下手すりゃ危うい行動だぞ?少しは警戒すべきだ…っと言いたいところだが、もう俺達はその程度で測れないところに来てるのかもしれねぇ…なんてな。」

「そんなに難しく言わないでさ、素直に人を見る目があるなー!とか言ってくれればいいのに…ははっ!」

束の間の談笑、冗談を交えながらも次なる行動に向けて作戦を練る。

トムが言ったように、侵略という名の城攻めではなく、あくまで拠点を据えることが目的とする作戦だ。
アクリスにとっては自身の故郷を取り戻す、という名目もある。その為か、いつになく真剣に2人の話に耳を傾け、意見をし、慎重に進めていく。

「と、言うことは…正面から陽動するチームと、隠し通路から潜入するチーム。それと後方から支援を行うチーム…の3つに別れる感じかな?」

「大まかに言うとそうなるな。陽動はほぼ襲撃に近い。故に、血の気が多く、細かいことが苦手な奴を抜粋するのがいいだろう。」

「…何となく誰と誰だかわかるね」

「こういうのは相性が大事なんだぜ?とはいえ、シンプルに分けやすい連中で助かるがな?ククッ!」

作戦の内容が固まった。

魔法の地図を一旦閉じ、昼食の準備が整った中庭に移動する。

作戦自体はとてもシンプル、指示通りに行動出来れば恐らくは問題はないだろう。だが、チームワークがどの程度取れるかと言うのは未知数だ。

「――っと。以上が今回の作戦になるよ。皆、大丈夫かな?」

料理を囲み、話終えたアクリスは問う。

「…結構重要な話なはずだけど、こんなタイミングで話ていいのか?」

「んー…皆をみてるとさ、お堅く会議みたいにするより、こんな風にリラックスしている時の方が話しやすいし、伝わる気がしてさ。もう少し厳しくした方がよかった?」

「ふっ…俺たちは今まで散々自由にしてきた。そこをあえて大きく変化をつける訳でなく、普段通りにしてくれる方がありがたい。」

「そうだぉ!こういうときのほうがやるぞぉ!ってなるぉな!?」

「お行儀よく座って集まれるのがご飯時しかないからでしょう?」

「くははっ!言えてるわ!」

和やかな時間が過ぎていく。

この先に待ち構えている脅威を前にしながらも余裕があるように見える…が、それぞれの心の内はザワザワと、そしてソワソワと落ち着きがない。

「決行は明後日…皆!よろしく頼む!」

自分にも喝を入れるようにアクリスは声を上げた。


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次のエピソードへ進む 【閑話】アクリスとファランクス


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ラギルーガ―マエナスの家。
「師匠!昨日やった体術を交えたカウンターをもう一度やりたいっす!」
「お前毎日そんなことしてたの?おもしれぇ!俺も相手になるぜ?」
「…クロウさんからカウンターなんて取れるのかなロアくん…。」
「意外とやれるかもしれんな?ふっ…」
「…多分シモンはとちゅうで邪魔して転ばせてあそびたいだけなんだぉ…。」
「おいユキミ…掃除なんていいから酒でも買ってこいよ。」
「い・や・よ。あなたのパートナーではあるけど小間使いやパシリになった覚えはないわよ。まったく…人の家で図々しいわね…。」
元々ひとりで住めればいい程度の大きさの家に何人も。しかも図体の大きい大人の男も増え、家の中はすし詰め状態に近い。
「なんかすごいことになってきちゃったな…。」
「そうですねぇ…集合して5分も経たないうちに各々の個性が爆発してますね。」
「はははっ…マエナスさん帰ってきたら怒られそうだね。」
「マーク…笑っちゃいるがお前も大概だと思うがな…。」
机を囲んでアクリス、ファランクス、マーク、トムが部屋の惨状を遠目に見ながら語り合っている。マークの膝の上にはひとりの女性のエルフが座っており、髪をとかしてあげている。普段おとなしいマークにもこんな一面があるんだと、アクリスは驚きながらも様子を見ていた。
「そう?無事に偵察から帰ってきた『妹』を労ってあげるのは兄として当然じゃないかな?あ、トム、もしかしてヤキモチ?」
「…そういう意味ではない。」
「チガウ?の?」
「ぐっ…!お前まで言うな…!」
キョトンとした表情を見せる女エルフ。名前はミイナ。
色素の薄いブロンドのロングヘアが柔らかく揺れ、傾げた頭に巻かれている母体樹の葉で作られたアクセサリーの赤い宝石がシャラリと音を立てる。
「ははっ!皆仲が良いのは良いことだよ。」
「昔から…変わらないのは私としても見ていて安心しますね。それにしても…マエナス、遅いですね。」
明け方家を空けたマエナス。昼前には戻ると聞いていたアクリスだが…すでに正午を少し回っている。
「うーん…マエナスには悪いけどお昼食べようか?部屋の中じゃ狭いから中庭に用意を…ファラ、マーク、頼める?」
声が掛かった2人は中庭の方へと移動し、未だ部屋の中で騒いでいる者たちを連れ出した。
「ふぅ…これでしばらくは静かになると思うよマエナス。」
出入り口の死角に身を潜めていたのか、アクリスに呼ばれると、マエナスは部屋に帰ってきた。
「はぁ…ここは託児所じゃねぇっての…ククッ!それにしてもよくわかったな?アクリス。」
「あーまぁ…前回も似たような感じの事あったから。マエナスは騒がしいの苦手みたいだし、毎回怒るのも良くないし?」
「ふはっ!こりゃお優しいことで…っと。トムとミイナだけ残したのもこれからする話を見越してたのか?」
ドカッとマエナスは自分の椅子に座ると、布に包まれた謎の荷物を机の真ん中に乱暴に置いた。
「見越してた!わけじゃないけど…ミイナが行っていたハルトの情報はしっかりと聞いておきたいし、その上で今後の行動に関しての意見や助言、アドバイスとか。必要だから。」
「ククッ…少しずつ自覚してきてるみてぇだな。」
「ふっ…ファラの気持ちが少しわかってきた。さてミイナ、王子はハルト偵察の報告を待っているようだ、頼む。」
「ん…わかった。」
マエナスが持ってきた荷物の布を解き、中から取り出した青白く光る大きめの紙をふわりとテーブルに広げる。
「これは…魔法の地図?かなり貴重なものだろ?」
「よくわかったなアクリス?たとえ王族だとしてもなかなかお目にかかれるもんじゃねぇのにな。」
【魔法の地図】
古の魔術師が大陸各地から紙の材料となる素材と、各地の持つ魔力を結晶化させ混合して作られた魔力を帯びた地図だ。結晶化させることが難しく、時間がかかるもので、今の時代、好んで作ろうと思うものおらず、希少なもの。
青白く光を放っている内はその力が発揮されるが、魔力を失うとただの紙になる。再び魔力を紐付ける術を掛ければ使えるのだが、ただの紙になる性質のため見分けがつかず、効力を失ってしまえばそのまま捨てられるか他の紙製品にされるかで中々表向きには出回らない代物だ。
「俺も久しぶりにみたよ、まだ残っている物があったんだね。」
「見つけるのに苦労はしたが…実際現地に行って己の目で見るってぇのは、俺たちの目的からすると難しいし、愚行だ。これを使うほうが安全で…庭にいる脳筋たちにも説明しやすいだろ。」
机に広げられた無地の魔法の地図にミイナが手をかざし、意識を集中させる。すると、アクリスたちの眼前に青い光の線で構成された立体的な建物が浮き出てきた。
「すごいな…実物を見てるみたいだね。修復は済んで、破壊される前のハルトの王城そのまま…?」
「ん…住居区画は荒れたままだから、割愛してる。これでいい?マエナス?」
「ああ、構わねえ。侵入する箇所がこっちのがわかりやすいからな。」
『ハルト城奪還作戦』
偵察から帰還したミイナからの情報によると、城と防壁と正門以外は襲撃の日のまま放置された状態だそうだ。
それに加えて先日、王都サザンライトの王命により、大陸から『都』としての機能をしていない、と下され、通常の地図からハルトは抹消されてしまっている。
「あまりにも都合が良すぎる展開だな。」
「たしかにそうかも知れねぇ。だが、ここを拠点に据えることができるならこちらとしても動きやすいだろ。」
「…長い歴史からこうも簡単に故郷が消されるなんて思いもしなかったな。それでも取り戻せる勝算があるのなら、俺は全力で挑むよ。」
ニヤリといつもの笑みを見せるマエナス。
「我らが王子もやる気ってことで…ミイナ、続きを。」
「ん…。城内を確認。生体、人間が城に居たけど、1人だけ。」
「1人?」
王都程ではないが大きさもあるハルト城を占拠している何者かが、1人というのは不自然だった。
「でも、生きていないのは数え切れない。」
「なるほど、不死者がいるわけだな。これは厄介かもしれない…。」
「…不死者を従えてる生きている人間がハルト城に住みついてる?なんだかあいつの真似事みたいなことをしてるんだね。」
クルクルとミイナが立体の城を動かして詳細な場所と、比較的安全な侵入路を示していく。
「場所と道はこんなところ。…人物を隠れて見ていたけどアクリスより子供。でもすごく嫌な感じ。気を付けたほうがいい、かな。」
「若干だけど城内の細かい部屋とかが変わってるみたい…よくここまで見つからないで調べられたね。危険な仕事だっただのにありがとう、ミイナ。今はゆっくり休んで。」
「ん…マークのとこに行ってくる。」
ミイナが退席して、作戦を詰めていく。
「ねえマエナス、ミイナの出した立体の城に俺の記憶にある城の情報も投影できる?」
「出来るぜ?手を添えて思い描けばいい。…昔良くやってたからな、こういう建物を含む偵察ってなぁ短期間でひとりで普通はここまで詳細に出来ないないもんだ、ミイナが優秀過ぎる。だが、過去の情報はそれにはない。何人かの偵察部隊の情報を合わせて精巧にしていったもんさ。」
アクリスが手を添えると、青い線に重なるように赤い線で構成された新たな城が出来上がっていく。そこに映し出されていったのは…王族しか知り得ないだろう隠し通路を含めた過去の城の姿だった。
「多分マエナスとトムならわかってるとは思うけど緊急時の避難用の隠し通路と、隠し部屋。役に立つ、かな?」
「ククッ!これはありがたい収穫だなトム?」
「ああ、そうだな。大規模に城攻めをするつもりは毛頭ない。強いて言うのであれば暗殺をするようなものだからな。これでこちらの部隊も分けやすくなる。」
「役に立って良かった。元々平穏な世界にいた俺だから…まだまだこういった有事には疎い。2人を…いや、集まってくれたみんなを頼るしかないから。」
申し訳無さそうに笑うアクリスに対して2人は…
「謙遜するな。それだけ信じるに値する者として接し、託すことができるというのは簡単にできることではない。」
「下手すりゃ危うい行動だぞ?少しは警戒すべきだ…っと言いたいところだが、もう俺達はその程度で測れないところに来てるのかもしれねぇ…なんてな。」
「そんなに難しく言わないでさ、素直に人を見る目があるなー!とか言ってくれればいいのに…ははっ!」
束の間の談笑、冗談を交えながらも次なる行動に向けて作戦を練る。
トムが言ったように、侵略という名の城攻めではなく、あくまで拠点を据えることが目的とする作戦だ。
アクリスにとっては自身の故郷を取り戻す、という名目もある。その為か、いつになく真剣に2人の話に耳を傾け、意見をし、慎重に進めていく。
「と、言うことは…正面から陽動するチームと、隠し通路から潜入するチーム。それと後方から支援を行うチーム…の3つに別れる感じかな?」
「大まかに言うとそうなるな。陽動はほぼ襲撃に近い。故に、血の気が多く、細かいことが苦手な奴を抜粋するのがいいだろう。」
「…何となく誰と誰だかわかるね」
「こういうのは相性が大事なんだぜ?とはいえ、シンプルに分けやすい連中で助かるがな?ククッ!」
作戦の内容が固まった。
魔法の地図を一旦閉じ、昼食の準備が整った中庭に移動する。
作戦自体はとてもシンプル、指示通りに行動出来れば恐らくは問題はないだろう。だが、チームワークがどの程度取れるかと言うのは未知数だ。
「――っと。以上が今回の作戦になるよ。皆、大丈夫かな?」
料理を囲み、話終えたアクリスは問う。
「…結構重要な話なはずだけど、こんなタイミングで話ていいのか?」
「んー…皆をみてるとさ、お堅く会議みたいにするより、こんな風にリラックスしている時の方が話しやすいし、伝わる気がしてさ。もう少し厳しくした方がよかった?」
「ふっ…俺たちは今まで散々自由にしてきた。そこをあえて大きく変化をつける訳でなく、普段通りにしてくれる方がありがたい。」
「そうだぉ!こういうときのほうがやるぞぉ!ってなるぉな!?」
「お行儀よく座って集まれるのがご飯時しかないからでしょう?」
「くははっ!言えてるわ!」
和やかな時間が過ぎていく。
この先に待ち構えている脅威を前にしながらも余裕があるように見える…が、それぞれの心の内はザワザワと、そしてソワソワと落ち着きがない。
「決行は明後日…皆!よろしく頼む!」
自分にも喝を入れるようにアクリスは声を上げた。