もう一度
ー/ー 管理局の世界は今、暗闇。なにもない。
「まさか凍結させられちゃうなんてな」
私はほまれちゃんの凍った魂を前に立ち尽くしている。
してやられてしまった。
メノウが持ち込んでいたのはあいつの世界にあった【凍えるハート】というアイテムだ。なぜ持ち込めていたのかはわからないけど、これは相手の心を凍らせて思いを断つ魔法の薬。ほまれちゃんはその薬を飲んで死んだ。メノウも笑って、崩壊とともに闇に消えていった。
心=魂ってことだって。
今のこの空間では私は【語り手】ではなくなる。
「せめてもう一度くらい、ちゃんと話はしたかった」
なぜだろう、自分には実体はないはず。転生したときそうなったはず……なのに、涙が出てくる。
『あんたでも泣くのね』
「ほまれちゃん……?」
はっきりと声が聞こえた。ぼんやり、私の妄想かもしれないけれど、ほまれちゃんが目の前にいた。
『よーく見てみなさい?あんた、声だけじゃなくなってちゃんと体があるわよ?』
久しぶりすぎて実感がなかっただけだったんだろう。
『まさか貴方だとは思わなかった。でも、私に絶望を与えてくれるのは変わっていなかったわね』
「そうみたいだね……久しぶり、ルーナ」
本当に久しぶりにその名前で呼んだ。あの世界の聖女で、私の婚約者で……。
『その名前嫌いだからやめてよね?それよりも――……』
懐かしんでいたら、しまい込んでいた記憶も溢れてきた。
そう、私は彼女がいなくなって絶望を知った。何度も何度も……積み重なって、壊れた。新しい世界を作れるまでの力に膨れ上がっていて。本当なら、彼女の心を救ってあげなければいけなかったはずなのに、絶望からできた世界で与えられるのも、また絶望。
『私のせいでもあるのはわかった。【祈り】の力で何度も繰り返したせいで……はぁ………結局私は、あの世界に縛られたままだったわけかぁ』
私もルーナも、環境がかわっただけであの世界に囚われたまま絶望を繰り返す存在。
「ごめん、私が歪んでしまったせいだ。本当はこんなことしてはいけないはずなのに、本当は……」
『うだうだするな!』
あ、れ?ルーナってこんなかんじだったっけ?これはほまれちゃんってことになる感じ?
『いい加減、前向きに考えたらどうなの?そういうところがあるからつけ込まれるのよ!何度も何度も!ちょーーーめいわく!』
だから私は負の、絶望の力でこうなった……。
『私もループして、世界も心も壊したのは悪いとは思うけど、そこまでの力を持ってるんならひっくり返すことくらいできるでしょうが!今のあんたなら!』
転生管理局の世界も、何度もやり直したけど、できなかった。そんな力は私にはなかった。
「君にした仕打ちをまた繰り返すことになるだけだよ?なにも変わらない……」
『変わらない、じゃないの、変えるのよ。天の声してた時の勢いはどこにいったの?悪巧みしてないとそんなよわよわなわけ?ふざけないで!……私が好きな【語り手】はそんなんじゃなかったわ。あんたも、そこまでして私が好きならしっかりしなさい!』
私は、また貴女に、絶望以外のなにかを与えられる?
『最低で最悪な王子だし、絶対に許さないけど、それが私の与えた絶望であるなら、私もそれを背負う覚悟はあるわ』
「……今度こそ、ほまれちゃんの為に動かないといけませんね?」
『そうよ、それ!あんたはそういう感じでいーの。もうあの世界の自分じゃない、私も貴方も』
そっと……凍ったほまれちゃんの魂に触れる。
もう一度、もう一度だけ……――。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。