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第027話 リリスの憂鬱 前編

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「はぁ………………」

昼下がり、町の中央にある広場の噴水で、リリスは一人黄昏ていた。

シロウとエリスとオフィーリアは緊急の救出クエストにギルドに召集されてダンジョンに潜っているし、マコトとサーシャはこの前のゴブリン討伐の際にサーシャの放った火球(ファイアボール)でマコトの剣が壊れたためボッタクル商店に買い物ついでのデートをしている。

だが、黄昏ている理由は独りぼっちだからではない。

伯母のエリスはともかく、マコトとサーシャがこのまま成長して戦力になれば、未だに回復魔法の使えない自分の立場がいよいよ危うくなる、そんな焦りがあるのだ。
かと言って、二人の成長を邪魔する気は毛頭ない。
性格属性が『悪』といっても、根っこまで腐っているわけでは無いし、何より彼らの成長はシロウが望んでいるところだ。

「このままでは、また(・・)、お役御免になってしまいますわ………………………」

リリスは、それが来た時の情景が頭に浮かんだ。

『リリス、君はもう用済みだ』
『えっ!?そんなっ!?わたくしにもう一度チャンスを下さいまし』
『チャンスなんて何度もやっただろ?もう、これ以上は無理だ。それに』
『はっ!?何なんですの?その小娘は!?』
『彼女が新しい回復役(ヒーラー)だ。既に契約も済ませている。あ、ついでに彼女と婚約も済ませたところだ。見てくれ、彼女の豊満でエロい体を。つまり、回復も使えない上に貧相な体の君にはもう用はない。じゃ、そゆことで行こうかイザベラ』
『待ってシロウ!!!待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!………………………』

「ぐっはあぁっ!!!!!」

リリスは、自身の妄想に精神的ダメージを受け四つん這いになって俯いた。

「う゛うぅぅぅ………シロウ………………」

自分の妄想に嗚咽まで漏れる始末であった。
そんなリリスの頭上に影が落ちた。

「おばちゃん、何してるの?」

その声にリリスが顔を上げると、そこにいたのは首を傾げた子供の少女だった。
リリスは無言で立ち上がり、地に付いていた服をパンパンと払った後、何事も無かったかのように口を開けた。

「わたくしは『おばちゃん』ではありませんわ。こう見えても今年で137歳ですのよ」

「確かに『おばちゃん』じゃなかった。それで、どうしたの『おばあちゃん』?」

「ぐっ!………」

『おばちゃん』から『おばあちゃん』に進化しただけだった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


数分後。

「おいしい、おいしい」

少女は、リリスが屋台で購入したフランクフルトを美味しそうに食べていた。

「ありがとう、お姉ちゃん」

どうやら、買収は上手く成功したようだ。
リリスは、心の中で握りこぶしを作った。

「それで、さっきは何してたの?」

「その事は忘れて下さいまし」
「そんな事より、貴方、迷子にでもなったんですの?」

「ううん。ギルドに依頼しに行った帰り」

「へぇ……。貴方、見かけによらずお金持ってますのね」

少女の服装は、つぎはぎだらけで、とてもではないがお金など持っているようには見えない。
ギルドの依頼は様々であるが、どのような安価な依頼でも数千コッポラは必要だ。
日数がより必要となれば、当然それに応じた報酬が必要となるし、人数が必要になればその分も上乗せしなければならない。

「それで、いくらで依頼したんですの?」

「513コッポラ」

「………………えっと………ちなみに依頼は何なんですの?」

「ポポラの実をとってきてもらうの」

「あぁ…喘息に効く薬の材料ですわね」

回復の魔法が使えないリリスは、薬の知識を得るために数多くの本を読み漁っていたこともあり、すぐさま理解した。
しかし、その報酬額では誰も受けないことも知っている。
ポポラの実の採取自体は大した労力がいるわけでは無いし、依頼以上の量を取って売れば金にもなる。
とはいえ、時間的拘束力が最低でも半日は必要で、それも考慮すれば報酬額は最低でも10倍は必要だろう。

「あら、半分しか食べませんの?」

「うん。残りはお母さんにあげるの」

そう言うと少女は、フランクフルトを紙に包んで自身のバッグに入れた。

「それじゃあ、帰るね。ありがとう、お姉でゃん」

「えぇ…あぁ、そうだわ。明日の朝にでも、またギルドに来なさいな」

「???うん。分かった」

こうして、リリスは少女と別れたのだった。


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みんなのリアクション


「はぁ………………」
昼下がり、町の中央にある広場の噴水で、リリスは一人黄昏ていた。
シロウとエリスとオフィーリアは緊急の救出クエストにギルドに召集されてダンジョンに潜っているし、マコトとサーシャはこの前のゴブリン討伐の際にサーシャの放った|火球《ファイアボール》でマコトの剣が壊れたためボッタクル商店に買い物ついでのデートをしている。
だが、黄昏ている理由は独りぼっちだからではない。
伯母のエリスはともかく、マコトとサーシャがこのまま成長して戦力になれば、未だに回復魔法の使えない自分の立場がいよいよ危うくなる、そんな焦りがあるのだ。
かと言って、二人の成長を邪魔する気は毛頭ない。
性格属性が『悪』といっても、根っこまで腐っているわけでは無いし、何より彼らの成長はシロウが望んでいるところだ。
「このままでは、|また《・・》、お役御免になってしまいますわ………………………」
リリスは、それが来た時の情景が頭に浮かんだ。
『リリス、君はもう用済みだ』
『えっ!?そんなっ!?わたくしにもう一度チャンスを下さいまし』
『チャンスなんて何度もやっただろ?もう、これ以上は無理だ。それに』
『はっ!?何なんですの?その小娘は!?』
『彼女が新しい|回復役《ヒーラー》だ。既に契約も済ませている。あ、ついでに彼女と婚約も済ませたところだ。見てくれ、彼女の豊満でエロい体を。つまり、回復も使えない上に貧相な体の君にはもう用はない。じゃ、そゆことで行こうかイザベラ』
『待ってシロウ!!!待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!………………………』
「ぐっはあぁっ!!!!!」
リリスは、自身の妄想に精神的ダメージを受け四つん這いになって俯いた。
「う゛うぅぅぅ………シロウ………………」
自分の妄想に嗚咽まで漏れる始末であった。
そんなリリスの頭上に影が落ちた。
「おばちゃん、何してるの?」
その声にリリスが顔を上げると、そこにいたのは首を傾げた子供の少女だった。
リリスは無言で立ち上がり、地に付いていた服をパンパンと払った後、何事も無かったかのように口を開けた。
「わたくしは『おばちゃん』ではありませんわ。こう見えても今年で137歳ですのよ」
「確かに『おばちゃん』じゃなかった。それで、どうしたの『おばあちゃん』?」
「ぐっ!………」
『おばちゃん』から『おばあちゃん』に進化しただけだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
数分後。
「おいしい、おいしい」
少女は、リリスが屋台で購入したフランクフルトを美味しそうに食べていた。
「ありがとう、お姉ちゃん」
どうやら、買収は上手く成功したようだ。
リリスは、心の中で握りこぶしを作った。
「それで、さっきは何してたの?」
「その事は忘れて下さいまし」
「そんな事より、貴方、迷子にでもなったんですの?」
「ううん。ギルドに依頼しに行った帰り」
「へぇ……。貴方、見かけによらずお金持ってますのね」
少女の服装は、つぎはぎだらけで、とてもではないがお金など持っているようには見えない。
ギルドの依頼は様々であるが、どのような安価な依頼でも数千コッポラは必要だ。
日数がより必要となれば、当然それに応じた報酬が必要となるし、人数が必要になればその分も上乗せしなければならない。
「それで、いくらで依頼したんですの?」
「513コッポラ」
「………………えっと………ちなみに依頼は何なんですの?」
「ポポラの実をとってきてもらうの」
「あぁ…喘息に効く薬の材料ですわね」
回復の魔法が使えないリリスは、薬の知識を得るために数多くの本を読み漁っていたこともあり、すぐさま理解した。
しかし、その報酬額では誰も受けないことも知っている。
ポポラの実の採取自体は大した労力がいるわけでは無いし、依頼以上の量を取って売れば金にもなる。
とはいえ、時間的拘束力が最低でも半日は必要で、それも考慮すれば報酬額は最低でも10倍は必要だろう。
「あら、半分しか食べませんの?」
「うん。残りはお母さんにあげるの」
そう言うと少女は、フランクフルトを紙に包んで自身のバッグに入れた。
「それじゃあ、帰るね。ありがとう、お姉でゃん」
「えぇ…あぁ、そうだわ。明日の朝にでも、またギルドに来なさいな」
「???うん。分かった」
こうして、リリスは少女と別れたのだった。