第026話 回復魔法が使えない女僧侶 その5
ー/ー「ふぅ………意外にも上手く行ったなぁ………」
冷や汗をかいていたシロウは、それを腕で拭うと二人が監禁されているテントを開けた。
『っ!!!』
テントが開いた瞬間こそ驚きの表情を浮かべた二人であったが、それが見知ったシロウであると分かると安堵の表情へと変わる。
「お、生きてるようだな……‥っと」
シロウはそう言いながら、二人を拘束していた縄をナイフで切り、口枷を外した。
「拘束が解かれて早々悪いが、さっさとずらかるぞ」
「どういうことじゃ?助けがたくさん来たのであろう?」
「それは走りながらな」
シロウはそう言うと、自分の馬にエリスを乗せ、次にリリスを乗せ、最後に自分が乗った。
「リリスさんはエリスさんが落ちないように支えて下さい」
「こ…こうですの?」
リリスはエリスの腰回りに両手をまわす。
「あと、リリスさん。すまないが我慢して下さい」
シロウは、落ちないように左手をリリスの腰に回した。
「ひゃっ!?」
今まで男に触られたことがないのか、リリスは素っ頓狂な声を上げる。
「あぁ…済みません。臭いでしょうが、町に着くまでは我慢して貰えると助かります」
そう言うと、シロウは手綱を握った右手で馬に指示を出したのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
山賊たちの野営地から出たエリスとリリスは、程なく無数の明かりの正体に気付いた。
「これが、大軍の正体だったとはのぅ」
二人が目にしたのは、地に突き刺した木の枝の先の縄が燃えているだけで、人の姿など何もなかった。
「確かに、あそこからでは遠くに大軍が押し寄せようとしているようにしか見えんのぅ」
そう言ってエリスはカラカラと笑う。
「んじゃ、もうちょっとスピード上げるぞ」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
「おおっ!!!エリス様にリリス!よくぞ無事で帰って来てくれた!!!」
町の入口で眠ることなく待っていたシルバは、二人の無事な姿を見て大いに喜びの声を上げ二人を抱いた。
「シロウも済まない。ありがとう………ってあれ?シロウは何処に行った?」
シルバは周囲を見渡すが、シロウの姿は無かった。
「………あっちへ行ったぞ」
エリスは、ギルドの方に指を差して言う。
「はっはっは。そんなに急がなくても報酬は逃げないってのになぁ」
「さ、俺達も行こう」
シルバはそう言うと、ギルドの方に向かって歩みを進め、エリスとリリスもそれに付き従った。
「……………あやつ………」
「どうしたのですか?伯母上?」
「いや……何でもない…………」
そんな中、ギルドの方から女性の悲鳴が響いた。
「あの声はアリアさん!?何があった!?」
シルバは走り出し、エリスとリリスもそれに続いて走り出す。
そして、三人がギルドの入口前まで到達した時、そこには大きな血だまりが出来ていた。
血だまりは、命からがら逃げて来てギルドによって保護されていた御者のもので、その原因を作ったのはシロウであることは彼が手に持っていたナイフから零れ落ちる血から一目瞭然であった。
「シロウ!何故そんなことを……」
シロウの肩に手を掛けて問い詰めようとしたシルバをエリスが止めた。
「其奴は山賊じゃ」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
その後、国の官憲による調査が入った。
拉致監禁されたエリスとリリスの証言、及び、シロウが保護した男の部屋に入った瞬間、一緒に入ったアリア人質にして逃げようとしたこと、二人が監禁された現場の検証の結果山賊の仲間と断定されたものの、単独行動により殺害したシロウは無罪放免とすることは出来ず、一か月間の収監が命じられたのだった。
「おー。元気にしておるかや、シロウ」
檻の外でエリスはシロウに声を掛ける。
「そうだな。毎日元気にしてるよ。飯もただで食えて美味いし」
「いや、飯代は後で請求されるぞ?」
「え?マジで!?」
「嘘じゃ」
エリスはそう言ってからかうとカラカラと笑った。
「ほれ、お主も何か言わぬか」
そう言って、エリスはリリスの腰をぽんぽんと叩く。
「あ…ありがとうございます。シロウさん……」
「えっと…さん付けしなくてもいいですよ。俺の方が年下だし」
「あ…はい。ではシロウ。シロウもわたくしの事は呼び捨てで構いませんよ」
体をモジモジとさせながらリリスは言う。
この事件以降、シロウはエリスとリリスに付きまとわれることになったのであった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「ふぅ………意外にも上手く行ったなぁ………」
冷や汗をかいていたシロウは、それを腕で拭うと二人が監禁されているテントを開けた。
『っ!!!』
テントが開いた瞬間こそ驚きの表情を浮かべた二人であったが、それが見知ったシロウであると分かると安堵の表情へと変わる。
「お、生きてるようだな……‥っと」
シロウはそう言いながら、二人を拘束していた縄をナイフで切り、口枷を外した。
「拘束が解かれて早々悪いが、さっさとずらかるぞ」
「どういうことじゃ?助けがたくさん来たのであろう?」
「それは走りながらな」
シロウはそう言うと、自分の馬にエリスを乗せ、次にリリスを乗せ、最後に自分が乗った。
「リリスさんはエリスさんが落ちないように支えて下さい」
「こ…こうですの?」
リリスはエリスの腰回りに両手をまわす。
「あと、リリスさん。すまないが我慢して下さい」
シロウは、落ちないように左手をリリスの腰に回した。
「ひゃっ!?」
今まで男に触られたことがないのか、リリスは素っ頓狂な声を上げる。
「あぁ…済みません。臭いでしょうが、町に着くまでは我慢して貰えると助かります」
そう言うと、シロウは手綱を握った右手で馬に指示を出したのだった。
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山賊たちの野営地から出たエリスとリリスは、程なく無数の明かりの正体に気付いた。
「これが、大軍の正体だったとはのぅ」
二人が目にしたのは、地に突き刺した木の枝の先の縄が燃えているだけで、人の姿など何もなかった。
「確かに、あそこからでは遠くに大軍が押し寄せようとしているようにしか見えんのぅ」
そう言ってエリスはカラカラと笑う。
「んじゃ、もうちょっとスピード上げるぞ」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
「おおっ!!!エリス様にリリス!よくぞ無事で帰って来てくれた!!!」
町の入口で眠ることなく待っていたシルバは、二人の無事な姿を見て大いに喜びの声を上げ二人を抱いた。
「シロウも済まない。ありがとう………ってあれ?シロウは何処に行った?」
シルバは周囲を見渡すが、シロウの姿は無かった。
「………あっちへ行ったぞ」
エリスは、ギルドの方に指を差して言う。
「はっはっは。そんなに急がなくても報酬は逃げないってのになぁ」
「さ、俺達も行こう」
シルバはそう言うと、ギルドの方に向かって歩みを進め、エリスとリリスもそれに付き従った。
「……………あやつ………」
「どうしたのですか?伯母上?」
「いや……何でもない…………」
そんな中、ギルドの方から女性の悲鳴が響いた。
「あの声はアリアさん!?何があった!?」
シルバは走り出し、エリスとリリスもそれに続いて走り出す。
そして、三人がギルドの入口前まで到達した時、そこには大きな血だまりが出来ていた。
血だまりは、命からがら逃げて来てギルドによって保護されていた御者のもので、その原因を作ったのはシロウであることは彼が手に持っていたナイフから零れ落ちる血から一目瞭然であった。
「シロウ!何故そんなことを……」
シロウの肩に手を掛けて問い詰めようとしたシルバをエリスが止めた。
「|其奴《そやつ》は山賊じゃ」
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その後、国の官憲による調査が入った。
拉致監禁されたエリスとリリスの証言、及び、シロウが保護した男の部屋に入った瞬間、一緒に入ったアリア人質にして逃げようとしたこと、二人が監禁された現場の検証の結果山賊の仲間と断定されたものの、単独行動により殺害したシロウは無罪放免とすることは出来ず、一か月間の収監が命じられたのだった。
「おー。元気にしておるかや、シロウ」
檻の外でエリスはシロウに声を掛ける。
「そうだな。毎日元気にしてるよ。飯もただで食えて美味いし」
「いや、飯代は後で請求されるぞ?」
「え?マジで!?」
「嘘じゃ」
エリスはそう言ってからかうとカラカラと笑った。
「ほれ、お主も何か言わぬか」
そう言って、エリスはリリスの腰をぽんぽんと叩く。
「あ…ありがとうございます。シロウさん……」
「えっと…さん付けしなくてもいいですよ。俺の方が年下だし」
「あ…はい。ではシロウ。シロウもわたくしの事は呼び捨てで構いませんよ」
体をモジモジとさせながらリリスは言う。
この事件以降、シロウはエリスとリリスに付きまとわれることになったのであった。