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【2】

ー/ー



《春ちゃん、会いたい~!》

《ちょっとここんとこ忙しいんだ。毎日帰り遅いし。》

 大学から帰った途端、なんの予定もなく飛ばしたメッセージに返って来た答えを確かめて、すぐまた送る。

《じゃあ部屋行って待ってる~。》

 しばらく待っても既読はつかない。仕事に戻ったのかな。まあいいわ、行っちゃえば。

 春ちゃんの部屋にはもう何回も行ったことあった。
 なかなか呼んでくれない彼に、強引にマンションまで押し掛けてオートロックのエントランスドア前で夜中まで待ってたんだ。

 帰れって言われても聞かなかったあたしを、仕方なさそうに上げてくれたのが最初だったな。

 そのときに、彼のキーケースからこっそりマンションの鍵を(かす)めて帰ったのよ。

 予備の鍵があるのは前に聞いて知ってたし、春ちゃんが困ることないしね。「恋人同士」なんだから、合鍵くらい持っていてもいいでしょ。
 ホントなら向こうから渡してくれるもんじゃないの?

 気づいた春ちゃんに、何度も「返せ」って言われたけど聞かなかったわ。あたしが言い張ったら彼は折れるのよ。ずっとそうだったの。

 だって彼はあたしのこと好きだから、結局はなんでも言う通りにしてくれる。それでも、春ちゃんの方から部屋に来るように誘われたことは一回もなかったんだよね。
 いつもあたしが勝手に行くだけだったのに。

 早速一人でやって来た春ちゃんの部屋。
 鍵を開けて入った1DKマンションにはソファなんかないのよ。

 小さい二人用のダイニングテーブルの椅子に座って、待ってる間にすっかり日は暮れてた。

 春ちゃんが帰って来たのは二十時ちょっと過ぎだった。

「おかえり、春ちゃん! 早かったね」
「ああ、お前が待ってるから……」
 遅くなるって言ってたのに、あたしのために仕事も切り上げて帰って来てくれた、っていうのがすごく嬉しい。やっぱり彼はあたしのこと愛してるんだ。

 普段素っ気ないのは、もともとあんまり感情出さない性格だからじゃないかな。毎日仕事忙しくて、疲れてるのもあるかも。

 そしてあたしは、春ちゃんから「薬」を渡されたんだよね。

「和佳、もう帰れ。遅いから家の人も心配する」
 薬の説明だけして、彼があたしから目を離して言う。

「大丈夫~。春ちゃんのとこ行くって親も知ってるし! 今日こそ泊めてよぉ」
「それは駄目だっていつも言ってるだろ」
 どんなに頼んでも、絶対この部屋に泊めてくれない春ちゃん。
 せめて「送ってほしい」ってせがんでも、車を出してくれたこともなかった。毎回タクシー呼ばれちゃう。

 お母さんにも「春之くんに迷惑だから。もう行くのはよしなさい」って怒られるばっかだった。今日だって、直接言ったら止められるに決まってるからメモ書いて来たんだ。

 あたしたちのをよく知ってるはずのお母さんなのに、どうして応援してくれないの?

「やだ! まだ帰らない! 会ったばっかりじゃん。もうちょっとだけ一緒にいたい~」
「じゃあ、本当に十二時までな。俺、ちょっと買い物行って来るから」
 溜息を吐いてOKしてくれた春ちゃんは、バッグから財布とスマートフォンだけ取ってドアを開けて出て行った。

 また部屋に一人にされて、あたしはいったんテーブルに置いてたピルケースをもう一度開けてみる。

 ぐっすり眠れる。──今飲んだら、帰らなくていい。

 椅子から立ち上がって、あたしはすぐ傍の冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのボトルを取り出した。



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《春ちゃん、会いたい~!》
《ちょっとここんとこ忙しいんだ。毎日帰り遅いし。》
 大学から帰った途端、なんの予定もなく飛ばしたメッセージに返って来た答えを確かめて、すぐまた送る。
《じゃあ部屋行って待ってる~。》
 しばらく待っても既読はつかない。仕事に戻ったのかな。まあいいわ、行っちゃえば。
 春ちゃんの部屋にはもう何回も行ったことあった。
 なかなか呼んでくれない彼に、強引にマンションまで押し掛けてオートロックのエントランスドア前で夜中まで待ってたんだ。
 帰れって言われても聞かなかったあたしを、仕方なさそうに上げてくれたのが最初だったな。
 そのときに、彼のキーケースからこっそりマンションの鍵を|掠《かす》めて帰ったのよ。
 予備の鍵があるのは前に聞いて知ってたし、春ちゃんが困ることないしね。「恋人同士」なんだから、合鍵くらい持っていてもいいでしょ。
 ホントなら向こうから渡してくれるもんじゃないの?
 気づいた春ちゃんに、何度も「返せ」って言われたけど聞かなかったわ。あたしが言い張ったら彼は折れるのよ。ずっとそうだったの。
 だって彼はあたしのこと好きだから、結局はなんでも言う通りにしてくれる。それでも、春ちゃんの方から部屋に来るように誘われたことは一回もなかったんだよね。
 いつもあたしが勝手に行くだけだったのに。
 早速一人でやって来た春ちゃんの部屋。
 鍵を開けて入った1DKマンションにはソファなんかないのよ。
 小さい二人用のダイニングテーブルの椅子に座って、待ってる間にすっかり日は暮れてた。
 春ちゃんが帰って来たのは二十時ちょっと過ぎだった。
「おかえり、春ちゃん! 早かったね」
「ああ、お前が待ってるから……」
 遅くなるって言ってたのに、あたしのために仕事も切り上げて帰って来てくれた、っていうのがすごく嬉しい。やっぱり彼はあたしのこと愛してるんだ。
 普段素っ気ないのは、もともとあんまり感情出さない性格だからじゃないかな。毎日仕事忙しくて、疲れてるのもあるかも。
 そしてあたしは、春ちゃんから「薬」を渡されたんだよね。
「和佳、もう帰れ。遅いから家の人も心配する」
 薬の説明だけして、彼があたしから目を離して言う。
「大丈夫~。春ちゃんのとこ行くって親も知ってるし! 今日こそ泊めてよぉ」
「それは駄目だっていつも言ってるだろ」
 どんなに頼んでも、絶対この部屋に泊めてくれない春ちゃん。
 せめて「送ってほしい」ってせがんでも、車を出してくれたこともなかった。毎回タクシー呼ばれちゃう。
 お母さんにも「春之くんに迷惑だから。もう行くのはよしなさい」って怒られるばっかだった。今日だって、直接言ったら止められるに決まってるからメモ書いて来たんだ。
 あたしたちの《《関係》》をよく知ってるはずのお母さんなのに、どうして応援してくれないの?
「やだ! まだ帰らない! 会ったばっかりじゃん。もうちょっとだけ一緒にいたい~」
「じゃあ、本当に十二時までな。俺、ちょっと買い物行って来るから」
 溜息を吐いてOKしてくれた春ちゃんは、バッグから財布とスマートフォンだけ取ってドアを開けて出て行った。
 また部屋に一人にされて、あたしはいったんテーブルに置いてたピルケースをもう一度開けてみる。
 ぐっすり眠れる。──今飲んだら、帰らなくていい。
 椅子から立ち上がって、あたしはすぐ傍の冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのボトルを取り出した。