そんなこんなで旅支度に奔走してどたばたの内に、早、五日間が過ぎ去り、とうとう私たちがリーフリヘリオスへと旅立つ日がやってきました。
心配性な従兄たちの計らいで、私たち4人はロイシュライゼの民間の空港からでなく、軍のエアポートから専用機で発つことになりました。
仕事をこっそり抜け出してきた従兄たちに立ち会われ、旅立ちの瞬間です。
「気をつけていっておいで。――リーランド伯爵夫妻にくれぐれも…」
よろしく伝えてくれるように、と、続くのかと思ったら、
「よろしくお世話をして下さるように、と、連絡はしておいたから」
どこまでも過保護なエトガルなのでした。そんな双子の兄の隣で苦笑しつつ、
「リーランド伯爵夫妻には後日丁重にお礼をしないとね。楽しんでおいで」
マティアスが大いなる海の如き慈愛を湛えた深い青い瞳で私を覗き込みながら言いました。
いざ出発となると、本来の目的である薔薇のことなど口の端にも上らず、私を気遣う言葉ばかりなのが、私を溺愛する従兄たちらしいといえばらしいのでした。
「それでは行って参ります。エトガル、マティアス」
ここ数日の内にすっかり覚悟の決まった私が微笑んでそう告げると、あべこべに、従兄たちの方が如何にも心配そうな、切なそうな表情で、代わる代わる私を思い切り腕の中に抱きしめるものですから、中々出発に至らず、傍に控えているカタリナとロサルヴァ、フィリップの3人は限りなく微妙な面持ち――を、かみ殺して神妙な表情を装い、この美しい別れのシーンを生ぬるく見守っているのでありました。
後ろ髪引かれる様子の従兄たちをどうにか振り切ってやっと専用機に搭乗し、離陸してしまえば、フライトそのものは、ほんの2時間弱。
楽しくお喋りしてる内にもう着陸態勢に入っているーーといった感覚で、本当にあっという間でした。
初めての長旅に浮き立つ心を抑えきれぬまま、止めどなくお喋りした中で、フィリップが、
「…お従兄さま方、リリヤナ様がちょっとおつかいに出るだけであの調子じゃ、いつかご結婚なさるときは、さぞかしの見物――…いや、その、心配事ですね」
口を滑らせてそう呟いたのだけは、やたら印象深く覚えています――。