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ダンジョン攻略

ー/ー



 レベルを上げるには女神の御業を使わないといけない。御業を使うにはジュエールが必要。使わずにレベルを上げるには課金が必要。どのみちお金が必要だ。

「今回はダンジョン攻略を切りあげてくれないかなぁ」

 しかし、お供のふたりがレベルアップしたこともあって、調子に乗ったハヤトたちはぐんぐん進んで行く。『引き返せ』、『まだ早い』、『無謀だ』、『初心者』と、囁きとは言えない言葉の連打で不安を煽ったものの、ハヤトの心には響かない。最奥部に到着した三人は、そのままボス部屋に突入してしまった。

「入るなよー!」

 三十メートル以上ありそうな部屋は薄暗い。それはダンジョンの奥を見通せないからではないようだ。そのボス部屋の壁に飾られた燭台に火が灯っていくのは、こういったゲームや物語にありがちな演出だろう。でも、これほどのリアリティでそんな演出がおこなわれると、不気味さを倍増させて肝が冷える。

 それはプレイヤーも同じらしくサーラちゃんもレガシー君も表情が硬い。もしステータスが見えたなら【恐怖】や【緊張】が付いていそうだ。

 ボス部屋の奥にある円形の台に大きな影が浮かび上がる。それを見て足を引いたハヤトの顔は、ふたりよりも硬く真剣だった。

 現れたモンスターの名前は【ビッグボア】。その名が示すとおりに通常のイノシシよりもふたまわりは大きい。雑魚モンスターとは明らかに違う迫力がある。

 女神の力の見せどころになって、初めて女神の御業のボタンが赤くなっている理由に気がついた。

 『女神の力が弱く御業が届きづらい深度のため、より強い神聖力が必要です。消費する神聖力(ジュエール)が二割増になります』

「値上げすんのかい!」

 激しく突っ込んでしまったけれど使わないわけにはいかない。私は泣く泣くふたつの御業をハヤトにかけた。

 【女神の声援】(攻撃強化:小、効果時間:一分)『千(ジュエール)
 【女神の衣】(守備力強化:小、効果時間:一分)『千(ジュエール)
 (ジュエール二割増し)

 広いボス部屋を駆け回るビッグボアの突進をしょっぱなに食らったレガシー君のHPが三割も減少した。もしこれがサーラちゃんだったら五割くらいは持っていかれたかもしれない。

 突っ込んでくるだけとはいえ追尾してくるのだから簡単には避けられない。レガシー君は避けるというより逃げている状態だ。

 ハヤトはというと自分に引きつけるように前に出て、避けざまに攻撃を加えている。そのときのわずかな体の接触でHPは少しずつ削られていた。

 五度、六度と繰り返し、リズムを掴んだように思えたとき、ビッグボアはレガシー君が逃げ跳んだ後ろに立つサーラちゃんに向かっていった。

「きゃぁっ!」

 悲鳴を上げた彼女の前に飛び出したハヤトが毛玉の弾丸にぶつかった。車に突っ込まれたらこんな感じだろうという吹っ飛び具合で宙を舞う。

 HPは見えないけれどグングンと減少しているに違いない。なのに、着地もできずに転がったハヤトはすぐに起き上がりサーラちゃんの前に立った。

「生きてる。大丈夫だ」

 私がホッとひと息ついている間にサーラちゃんは一手先を打っていた。

「大地は力を 水は流れを
 傷つきし者を癒したまえ
 ルオーラ」

 白魔術の癒しがハヤトを包む。彼女が使った下級の治療系白魔術が、わずかながらハヤトの傷を癒した。

 単調な攻撃を繰り返すビッグボアだけど、初めてのボスモンスターということもあってかなりの苦戦を強いられた。サーラちゃんを守りながらハヤトは何度も剣を振り、弾かれては治療を受け、ドタバタな戦いながらも迷宮のボスモンスターに勝利した。

 モンスターが光を放散させて消えていくと、そこには黄色のダンジョンコアという宝珠が現れる。それを見た三人は勝利を実感し、それぞれの感情を表現していた。

「やりましたね、ハヤトさん!」
「サーラちゃんの治療が手早かったからね。おかげで助かったよ」

 この戦いで、今まで疑問に思っていたことに確証を得た。それはハヤトが痛みを感じているということだ。これは噂に聞くリミッター解除されたダイブレベル4ということなのかもしれない。

 サーラちゃんの白魔術によって癒していたのは傷だけじゃない。ハヤトの痛みを素早く和らげていたことが、この戦いを勝利に導いたのかもしれない。サーラちゃん、君は優秀なヒーラーだよ。

「ハヤトさんが守ってくれたので、魔術に専念できたんです」

 ハヤトを信用し、それに応えたサーラちゃん。今日初めて会ったふたりの共同作業は実に見事だった。

「それは俺も同じだよ。君が治療してくれるから頑張れたんだ
「そう言ってもらえて嬉しいです」

 照れた顔が可愛らしい。この表情はVRマスクが感知して繁栄した本物だ。もしかしてハヤトに惚れちゃった?

 勝利に大きく貢献したことで多くの経験値を得たハヤトのレベルが上がった。高額の【女神の恵】によるレベルアップボーナスの+1も今回は無事にゲットできた。神様ありがとう。もちろん、この神様はアドミスのことではない。

 ダンジョンから出てきたハヤトたちが喜んでいるのは、ボスモンスターが何かをドロップしたからのようだ。

 ドロップアイテムは【戦士の手袋】(筋力値+2)だ。いいね!

 【女神のお宝】(モンスタードロップや宝箱のアイテムのランクを上げる。効果時間:一時間)『千(ジュエール)

 これのおかげかな?

 初めてパーティーを組んだふたりとは気が合ったのかフレンド登録を済ませ、レベリングをしながら一緒に町に戻っていった。ありがとう、若く未熟な冒険者たち。強くなってまた再会しよう。



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 レベルを上げるには女神の御業を使わないといけない。御業を使うにはジュエールが必要。使わずにレベルを上げるには課金が必要。どのみちお金が必要だ。
「今回はダンジョン攻略を切りあげてくれないかなぁ」
 しかし、お供のふたりがレベルアップしたこともあって、調子に乗ったハヤトたちはぐんぐん進んで行く。『引き返せ』、『まだ早い』、『無謀だ』、『初心者』と、囁きとは言えない言葉の連打で不安を煽ったものの、ハヤトの心には響かない。最奥部に到着した三人は、そのままボス部屋に突入してしまった。
「入るなよー!」
 三十メートル以上ありそうな部屋は薄暗い。それはダンジョンの奥を見通せないからではないようだ。そのボス部屋の壁に飾られた燭台に火が灯っていくのは、こういったゲームや物語にありがちな演出だろう。でも、これほどのリアリティでそんな演出がおこなわれると、不気味さを倍増させて肝が冷える。
 それはプレイヤーも同じらしくサーラちゃんもレガシー君も表情が硬い。もしステータスが見えたなら【恐怖】や【緊張】が付いていそうだ。
 ボス部屋の奥にある円形の台に大きな影が浮かび上がる。それを見て足を引いたハヤトの顔は、ふたりよりも硬く真剣だった。
 現れたモンスターの名前は【ビッグボア】。その名が示すとおりに通常のイノシシよりもふたまわりは大きい。雑魚モンスターとは明らかに違う迫力がある。
 女神の力の見せどころになって、初めて女神の御業のボタンが赤くなっている理由に気がついた。
 『女神の力が弱く御業が届きづらい深度のため、より強い神聖力が必要です。消費する|神聖力《ジュエール》が二割増になります』
「値上げすんのかい!」
 激しく突っ込んでしまったけれど使わないわけにはいかない。私は泣く泣くふたつの御業をハヤトにかけた。
 【女神の声援】(攻撃強化:小、効果時間:一分)『千|J《ジュエール》』
 【女神の衣】(守備力強化:小、効果時間:一分)『千|J《ジュエール》』
 (ジュエール二割増し)
 広いボス部屋を駆け回るビッグボアの突進をしょっぱなに食らったレガシー君のHPが三割も減少した。もしこれがサーラちゃんだったら五割くらいは持っていかれたかもしれない。
 突っ込んでくるだけとはいえ追尾してくるのだから簡単には避けられない。レガシー君は避けるというより逃げている状態だ。
 ハヤトはというと自分に引きつけるように前に出て、避けざまに攻撃を加えている。そのときのわずかな体の接触でHPは少しずつ削られていた。
 五度、六度と繰り返し、リズムを掴んだように思えたとき、ビッグボアはレガシー君が逃げ跳んだ後ろに立つサーラちゃんに向かっていった。
「きゃぁっ!」
 悲鳴を上げた彼女の前に飛び出したハヤトが毛玉の弾丸にぶつかった。車に突っ込まれたらこんな感じだろうという吹っ飛び具合で宙を舞う。
 HPは見えないけれどグングンと減少しているに違いない。なのに、着地もできずに転がったハヤトはすぐに起き上がりサーラちゃんの前に立った。
「生きてる。大丈夫だ」
 私がホッとひと息ついている間にサーラちゃんは一手先を打っていた。
「大地は力を 水は流れを
 傷つきし者を癒したまえ
 ルオーラ」
 白魔術の癒しがハヤトを包む。彼女が使った下級の治療系白魔術が、わずかながらハヤトの傷を癒した。
 単調な攻撃を繰り返すビッグボアだけど、初めてのボスモンスターということもあってかなりの苦戦を強いられた。サーラちゃんを守りながらハヤトは何度も剣を振り、弾かれては治療を受け、ドタバタな戦いながらも迷宮のボスモンスターに勝利した。
 モンスターが光を放散させて消えていくと、そこには黄色のダンジョンコアという宝珠が現れる。それを見た三人は勝利を実感し、それぞれの感情を表現していた。
「やりましたね、ハヤトさん!」
「サーラちゃんの治療が手早かったからね。おかげで助かったよ」
 この戦いで、今まで疑問に思っていたことに確証を得た。それはハヤトが痛みを感じているということだ。これは噂に聞くリミッター解除されたダイブレベル4ということなのかもしれない。
 サーラちゃんの白魔術によって癒していたのは傷だけじゃない。ハヤトの痛みを素早く和らげていたことが、この戦いを勝利に導いたのかもしれない。サーラちゃん、君は優秀なヒーラーだよ。
「ハヤトさんが守ってくれたので、魔術に専念できたんです」
 ハヤトを信用し、それに応えたサーラちゃん。今日初めて会ったふたりの共同作業は実に見事だった。
「それは俺も同じだよ。君が治療してくれるから頑張れたんだ
「そう言ってもらえて嬉しいです」
 照れた顔が可愛らしい。この表情はVRマスクが感知して繁栄した本物だ。もしかしてハヤトに惚れちゃった?
 勝利に大きく貢献したことで多くの経験値を得たハヤトのレベルが上がった。高額の【女神の恵】によるレベルアップボーナスの+1も今回は無事にゲットできた。神様ありがとう。もちろん、この神様はアドミスのことではない。
 ダンジョンから出てきたハヤトたちが喜んでいるのは、ボスモンスターが何かをドロップしたからのようだ。
 ドロップアイテムは【戦士の手袋】(筋力値+2)だ。いいね!
 【女神のお宝】(モンスタードロップや宝箱のアイテムのランクを上げる。効果時間:一時間)『千|J《ジュエール》』
 これのおかげかな?
 初めてパーティーを組んだふたりとは気が合ったのかフレンド登録を済ませ、レベリングをしながら一緒に町に戻っていった。ありがとう、若く未熟な冒険者たち。強くなってまた再会しよう。