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5 桟原香織②

ー/ー



 遠くから見たら点のように見えた人影たちも随分と姿かたちがはっきりするようになってきた。大半が水着を着たりしている中で何人かは服を着ている人たちがいる。私と同じように散歩がてら来た人たちなのだろうか。面白いことにこういう場所では普通に服を着ている人ほど目立って見えるものだ。
 まだまだ遠くだが私と全く同じ制服を着ている女子が高架下の砂浜に座っているのが見えた。ちょっとずつ近づいていくと顔や髪形もなんとなく分かってきた。相手も私に気が付いたみたいでジーッとこっちを見ていた。おそらく互いが誰だかはっきりと分かったのは同時くらいだったと思う。綾奈は一瞬、体育座りを崩して手を地面についたが観念したようにため息をつくと再び両腕で膝を抱えた。私はそれを見て走り出すわけでもなく、これまでと同じ速さで近づくことで自然に振る舞おうとした。
「結衣ちゃん、なにしてるの?」
「別に……ただボーっとしてただけよ」
「そっか」
 鞄を肩からドサッと下して靴もそっとその隣に置く。結衣の鞄は彼女の右隣にあって、私は結衣とそれを挟むようにして座った。前にも似たような状況があった。中二のとき。体育館裏でのことだ。もうあれから二年も経つのかと思うと実感が湧かな過ぎて何とも言えない気持ちになる。だが、あの時とは違って感じる気まずさが現実を押し付けてきているような気がした。
 誰かといてこんなに気まずいと感じるのはいつぶりだろう。基本的に学校の友人たちといてそんな感情になることがない。感じるとしたら多分もっと近しい相手にだけだ。そう考えると初めての経験かもしれない。避けられるということもその相手と偶然ばったり会うというのもあまり体験したことない経験だった。そんな状況でどうすればいいのか分からなくて、内心動揺で頭がいっぱいだった。
「そっちこそこんなところで何してるのよ?帰り道と全然違うじゃない」
「私も結衣ちゃんと同じだよ。ボーっとしたかっただけ」
「ふーん」
 少し会っていなかっただけなのに随分と別人のように感じる。
「あと夏だしね。こんなに海が近いのに行かないのはもったいないなって思ってさ」
「確かにね……言われてみれば海を見ることはあっても砂浜とかに来たことはなかったかも。なんだかんだ夏は村が忙しいし」
「そうそう!夏祭りの準備とかで疲れちゃって、全然行く気になれない。だから近くにこんな良いところがあるなんて知らなかったよ」
「私も」
 結衣は「あーあ」とため息交じりに言って足を伸ばした。
「せっかくいい場所見つけたと思ったのに、また香織に見つかるなんて」
「嫌だった?」
「別に……こっそり後をついてきたってわけじゃないわよね?」
「流石にしないよ。そんなストーカーみたいな」
「香織ならやりかねないし」
「私をなんだと思ってるの?」
「さあ」
「酷いなあ」
 おかしくなって笑ってしまう。
「単純に私たちの考え方が似てるってことじゃない?」
「私と香織が?」
「そう」
 結衣は少し考えこむと「違うと思う」ときっぱり否定した。
「そんなはっきり言わなくても」
「まあ、でも似てるっていうのはそうかも」
「どっち?」
「似てるのは考え方じゃなくて感性ってことよ」
「一緒じゃないの?」
「全然違う」
 分かってないなあ、と言わんばかりに結衣はゆっくりと首を横に振った。
「もっと感覚的な話。良いなって思うか思わないかみたいな。それのどういったところが良いか、どういうところに惹かれたか、とかそういう理由みたいなものが考え方」
「それも含めて感性って言うんじゃないの?」
「私には別物なの」
「なるほど……じゃあ、結衣ちゃんの言ってることは当たってるかも」
「……そういうものでしょ。別々の人間なんだから」
 本当は結衣にずっと訊きたかったことがった。
「なんで避けるの?」
 たった七文字なのに言うことが出来ない。訊きたくても訊けない。もし言えたとして結衣はなんて答えるだろう。「そんなふうに見えた?」と冗談めかすだろうか。「避けてるわけじゃない」と弁明するだろうか。「ごめん」と謝るのだろうか。それとも、何も答えないだろうか。
 昔の結衣ならおそらく謝ってくるような気がする。謝ってそのあとはいつも通りの関係だ。結衣もそうなることを望んでいるというのが分かり切っていた。だから遠慮せずにそういう気まずい話題でも話せた。
 今の彼女からはどの返答も想像できるし、どの返答も想像できないように思える。もし何も答えてくれなかったらどうすればいいのだろう。避ける理由なんていうのもはっきりと言われてしまったら。ただ結衣がなんて言うのかが分からなくて、怖くて、恐ろしくて、喉元まで出かかる七文字を飲み込むしかなかった。結衣の言う通り私たちの考え方は全く違うものになったのかもしれない。
「そういえばさ……綾奈ちゃんが出発する時間聞いた?」
「いや」
 誤魔化すように訊いた質問に結衣が短く答える。
「明後日の朝6時だって。コミュニティセンターにお迎えがくるみたい」
「そう」
「見送りに行こうかなって思ってるんだけど」
「いいんじゃない?」
「……結衣ちゃんもどう?」
 結衣の方をちらりと見るとまっすぐ海を見たままだった。「そうねえ」と言って視線を下げて少しだけ俯く。遠くで海猫の鳴く声が聞こえてきた。
「約束できなくてもいいのなら」
「それって来る気はあるってこと?」
「……そうなるわね」
 体が軽くなった気がした。身体が強張っていたみたいで力が抜ける。いつの間にか肺の奥にたまっていた空気も口から出ていった。曖昧な返答で何か解決したというわけでもないのにお気楽なものだと我ながら思う。だがここ数日間、頭の片隅にずっと住み着いていた問題だったのだ。そうなるのも当然と言えば当然だった。
 とりあえずやらなくてはいけないことを一つ終えたことで肩の荷が下りた私はすでに頭の中で綾奈の見送りについての妄想を膨らませていた。
「じゃあ待ってるね」
「期待しないでよ」
「分かったから。忙しいんだもんね?」
「まあね」
 また少し伸びて肩にかかっている髪を触りながら結衣は答えた。
「手伝えることある?お家の用事。二人でやれば早く終わるかもよ」
 気分がよくなって気が大きくなったみたいだ。触れにくかったことがさらっと口から出た。結衣もちょっと驚いたのか、一瞬固まったみたいに動きを止めた気がした。
「大丈夫。自分でできることだから」
「へえ。もしかして夏祭りの準備とか?大きいのやるならこれくらいの時期から始めなきゃだもんね」
「違うわ。それは香織のお家の話でしょ?私の家はそんなことしないし」
「出店とかも?」
「しない。意地悪で言ってるの?」
「違うよ!用事ってなんだろうなって気になっただけ」
「それは……今、家の大掃除中なのよ」
「夏なのに?」
「夏なのに。悪い?」
「悪くないけどそういうのって冬やるイメージがあるからさ」
「……急に人を呼ばなくちゃいけなくなって。全然人が家に来ることってなかったからもう大変」
「友達?」
「そんなところ」
「ふーん?」
 気まずさが嘘だったかのように口が回る。結衣もどこかあったぎこちなさが抜けて、さっきよりも声色が少し上がった気がする。
 不満げに相槌を打ったのが気になったのか結衣が私の方を向いた。そういえば今日初めて目があったかもしれない。
「なによ」
「いや。別に?」
「言いなさいよ。そこまで態度に出したんだったら」
「大したことじゃないよ。私はいつ呼んでくれるのかなって思っただけ」
「ああ……」
 結衣は困ったように言葉に詰まって目を逸らした。
「でも、ほとんど家に呼んだことないし」
「綾奈ちゃんのことはあるでしょ?」
「それは……ほら!家が隣じゃない?小さいころからお互いの家を行き来してたってのもあるから」
 抗議の意を示すために無言でジーッと結衣のことを見つめた。向こうを見ていた結衣もチラリとこっちを見て確認すると観念したように「分かったわよ」と言った。
「いつかね」
「じゃあ呼ばれるの待ってる」
 結衣が口を開いた瞬間、私は彼女が言うだろう言葉をかぶせるように言った。
「期待しないで、でしょ?」
「……そういうこと」
 結衣が低い声で呟くのと同時に携帯電話の振動する音が聞こえた。私の鞄からだ。取り出して画面を確認すると家から連絡が入っていた。せっかくいい感じに話せているのにこの場を離れなければならないなんて、とお尻が地面とくっついているかのようだ。
「帰るの?」
 片手を地面について今にも立ち上がりそうな体勢でいると、それを見た結衣が声をかけた。
「うん。ちょっと用事ができちゃって」
 結衣の声に押されるようにして腕で身体を押し上げる。よいしょ、と声が出た。手や脚についた砂を払って鞄を肩にかける。
「掃除?」
「そんなところ」
 全然そんな用事ではないが、冗談めかして頷いてみせると鞄の底を手で叩いた。
「結衣ちゃんも帰る?」
「いや、まだいようかな。せっかくだし」
「そっか」
 丸まった靴下の入ったローファーを指先に引っかけて持つ。海水で湿った足には砂がへばりつくようにしていてシャワーか何かで流す必要があった。
「じゃあね」
 綾奈が言う。
「うん。じゃあ、またね」
 少し急いで家に帰る必要がありそうだ。結衣に手を振ったあと駆けだそうとしたが、砂に足を取られて走りにくい。それでも歩くよりは速かったから、そうやってもと来た道を戻っていった。


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 まだまだ遠くだが私と全く同じ制服を着ている女子が高架下の砂浜に座っているのが見えた。ちょっとずつ近づいていくと顔や髪形もなんとなく分かってきた。相手も私に気が付いたみたいでジーッとこっちを見ていた。おそらく互いが誰だかはっきりと分かったのは同時くらいだったと思う。綾奈は一瞬、体育座りを崩して手を地面についたが観念したようにため息をつくと再び両腕で膝を抱えた。私はそれを見て走り出すわけでもなく、これまでと同じ速さで近づくことで自然に振る舞おうとした。
「結衣ちゃん、なにしてるの?」
「別に……ただボーっとしてただけよ」
「そっか」
 鞄を肩からドサッと下して靴もそっとその隣に置く。結衣の鞄は彼女の右隣にあって、私は結衣とそれを挟むようにして座った。前にも似たような状況があった。中二のとき。体育館裏でのことだ。もうあれから二年も経つのかと思うと実感が湧かな過ぎて何とも言えない気持ちになる。だが、あの時とは違って感じる気まずさが現実を押し付けてきているような気がした。
 誰かといてこんなに気まずいと感じるのはいつぶりだろう。基本的に学校の友人たちといてそんな感情になることがない。感じるとしたら多分もっと近しい相手にだけだ。そう考えると初めての経験かもしれない。避けられるということもその相手と偶然ばったり会うというのもあまり体験したことない経験だった。そんな状況でどうすればいいのか分からなくて、内心動揺で頭がいっぱいだった。
「そっちこそこんなところで何してるのよ?帰り道と全然違うじゃない」
「私も結衣ちゃんと同じだよ。ボーっとしたかっただけ」
「ふーん」
 少し会っていなかっただけなのに随分と別人のように感じる。
「あと夏だしね。こんなに海が近いのに行かないのはもったいないなって思ってさ」
「確かにね……言われてみれば海を見ることはあっても砂浜とかに来たことはなかったかも。なんだかんだ夏は村が忙しいし」
「そうそう!夏祭りの準備とかで疲れちゃって、全然行く気になれない。だから近くにこんな良いところがあるなんて知らなかったよ」
「私も」
 結衣は「あーあ」とため息交じりに言って足を伸ばした。
「せっかくいい場所見つけたと思ったのに、また香織に見つかるなんて」
「嫌だった?」
「別に……こっそり後をついてきたってわけじゃないわよね?」
「流石にしないよ。そんなストーカーみたいな」
「香織ならやりかねないし」
「私をなんだと思ってるの?」
「さあ」
「酷いなあ」
 おかしくなって笑ってしまう。
「単純に私たちの考え方が似てるってことじゃない?」
「私と香織が?」
「そう」
 結衣は少し考えこむと「違うと思う」ときっぱり否定した。
「そんなはっきり言わなくても」
「まあ、でも似てるっていうのはそうかも」
「どっち?」
「似てるのは考え方じゃなくて感性ってことよ」
「一緒じゃないの?」
「全然違う」
 分かってないなあ、と言わんばかりに結衣はゆっくりと首を横に振った。
「もっと感覚的な話。良いなって思うか思わないかみたいな。それのどういったところが良いか、どういうところに惹かれたか、とかそういう理由みたいなものが考え方」
「それも含めて感性って言うんじゃないの?」
「私には別物なの」
「なるほど……じゃあ、結衣ちゃんの言ってることは当たってるかも」
「……そういうものでしょ。別々の人間なんだから」
 本当は結衣にずっと訊きたかったことがった。
「なんで避けるの?」
 たった七文字なのに言うことが出来ない。訊きたくても訊けない。もし言えたとして結衣はなんて答えるだろう。「そんなふうに見えた?」と冗談めかすだろうか。「避けてるわけじゃない」と弁明するだろうか。「ごめん」と謝るのだろうか。それとも、何も答えないだろうか。
 昔の結衣ならおそらく謝ってくるような気がする。謝ってそのあとはいつも通りの関係だ。結衣もそうなることを望んでいるというのが分かり切っていた。だから遠慮せずにそういう気まずい話題でも話せた。
 今の彼女からはどの返答も想像できるし、どの返答も想像できないように思える。もし何も答えてくれなかったらどうすればいいのだろう。避ける理由なんていうのもはっきりと言われてしまったら。ただ結衣がなんて言うのかが分からなくて、怖くて、恐ろしくて、喉元まで出かかる七文字を飲み込むしかなかった。結衣の言う通り私たちの考え方は全く違うものになったのかもしれない。
「そういえばさ……綾奈ちゃんが出発する時間聞いた?」
「いや」
 誤魔化すように訊いた質問に結衣が短く答える。
「明後日の朝6時だって。コミュニティセンターにお迎えがくるみたい」
「そう」
「見送りに行こうかなって思ってるんだけど」
「いいんじゃない?」
「……結衣ちゃんもどう?」
 結衣の方をちらりと見るとまっすぐ海を見たままだった。「そうねえ」と言って視線を下げて少しだけ俯く。遠くで海猫の鳴く声が聞こえてきた。
「約束できなくてもいいのなら」
「それって来る気はあるってこと?」
「……そうなるわね」
 体が軽くなった気がした。身体が強張っていたみたいで力が抜ける。いつの間にか肺の奥にたまっていた空気も口から出ていった。曖昧な返答で何か解決したというわけでもないのにお気楽なものだと我ながら思う。だがここ数日間、頭の片隅にずっと住み着いていた問題だったのだ。そうなるのも当然と言えば当然だった。
 とりあえずやらなくてはいけないことを一つ終えたことで肩の荷が下りた私はすでに頭の中で綾奈の見送りについての妄想を膨らませていた。
「じゃあ待ってるね」
「期待しないでよ」
「分かったから。忙しいんだもんね?」
「まあね」
 また少し伸びて肩にかかっている髪を触りながら結衣は答えた。
「手伝えることある?お家の用事。二人でやれば早く終わるかもよ」
 気分がよくなって気が大きくなったみたいだ。触れにくかったことがさらっと口から出た。結衣もちょっと驚いたのか、一瞬固まったみたいに動きを止めた気がした。
「大丈夫。自分でできることだから」
「へえ。もしかして夏祭りの準備とか?大きいのやるならこれくらいの時期から始めなきゃだもんね」
「違うわ。それは香織のお家の話でしょ?私の家はそんなことしないし」
「出店とかも?」
「しない。意地悪で言ってるの?」
「違うよ!用事ってなんだろうなって気になっただけ」
「それは……今、家の大掃除中なのよ」
「夏なのに?」
「夏なのに。悪い?」
「悪くないけどそういうのって冬やるイメージがあるからさ」
「……急に人を呼ばなくちゃいけなくなって。全然人が家に来ることってなかったからもう大変」
「友達?」
「そんなところ」
「ふーん?」
 気まずさが嘘だったかのように口が回る。結衣もどこかあったぎこちなさが抜けて、さっきよりも声色が少し上がった気がする。
 不満げに相槌を打ったのが気になったのか結衣が私の方を向いた。そういえば今日初めて目があったかもしれない。
「なによ」
「いや。別に?」
「言いなさいよ。そこまで態度に出したんだったら」
「大したことじゃないよ。私はいつ呼んでくれるのかなって思っただけ」
「ああ……」
 結衣は困ったように言葉に詰まって目を逸らした。
「でも、ほとんど家に呼んだことないし」
「綾奈ちゃんのことはあるでしょ?」
「それは……ほら!家が隣じゃない?小さいころからお互いの家を行き来してたってのもあるから」
 抗議の意を示すために無言でジーッと結衣のことを見つめた。向こうを見ていた結衣もチラリとこっちを見て確認すると観念したように「分かったわよ」と言った。
「いつかね」
「じゃあ呼ばれるの待ってる」
 結衣が口を開いた瞬間、私は彼女が言うだろう言葉をかぶせるように言った。
「期待しないで、でしょ?」
「……そういうこと」
 結衣が低い声で呟くのと同時に携帯電話の振動する音が聞こえた。私の鞄からだ。取り出して画面を確認すると家から連絡が入っていた。せっかくいい感じに話せているのにこの場を離れなければならないなんて、とお尻が地面とくっついているかのようだ。
「帰るの?」
 片手を地面について今にも立ち上がりそうな体勢でいると、それを見た結衣が声をかけた。
「うん。ちょっと用事ができちゃって」
 結衣の声に押されるようにして腕で身体を押し上げる。よいしょ、と声が出た。手や脚についた砂を払って鞄を肩にかける。
「掃除?」
「そんなところ」
 全然そんな用事ではないが、冗談めかして頷いてみせると鞄の底を手で叩いた。
「結衣ちゃんも帰る?」
「いや、まだいようかな。せっかくだし」
「そっか」
 丸まった靴下の入ったローファーを指先に引っかけて持つ。海水で湿った足には砂がへばりつくようにしていてシャワーか何かで流す必要があった。
「じゃあね」
 綾奈が言う。
「うん。じゃあ、またね」
 少し急いで家に帰る必要がありそうだ。結衣に手を振ったあと駆けだそうとしたが、砂に足を取られて走りにくい。それでも歩くよりは速かったから、そうやってもと来た道を戻っていった。