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酒宴(2)

ー/ー



 「ユージ君。あの子をどう思うかね?」
 アルファの姿が見えなくなったところで、クワンがそんなことを訊いてきた。
 「え?あ、可愛い娘さんですね」
 ユージはクワンの質問の意図が判らぬまま、無難な回答を選択した。
 「そういうことではなくてだね。――よく出来ているだろう?」
 (よく出来ているって、どういうことだろう?)
 ユージはますます質問の意図がわからなくなり、眉根を寄せた。
 天界人の兄弟子を見ると、ジンは素知らぬ顔で保温ポットから珈琲をおかわりし、ヤンは「また始まったか」といった顔でお菓子を頬張っている。
 クワンは軽く咳払いすると、胸を張って誇らしげに言った。
 「アルファは私の研究の集大成とも言える子でね。師匠のアドバイスを貰いながらだったが、私が初めてイチから造った人間なんだよ」
 ユージは仰天した。
 「ええっ!ということは、アルファちゃんは人造人間なんですか……?」
 「そういうことになるな」
 クワンはあっさり肯定した。
 「まあ、見た目があそこで止まってしまったのは誤算だったが、初めて造ったにしては我ながら上出来だと思っているんだ」
 目を白黒させているユージをよそに、クワンは嬉しそうに目を細めた。
 「違うな。逆にクワン父さんは娘がずっと可愛いまんまでいるのが嬉しいんだよ」
 「しかもあの顔は完全にクワンの趣味だし。なあ、クワン」
 二人の幼馴染にずけずけと言われ、クワンは鼻白んだ。そして、
 「娘を可愛いと思って何が悪いのかね」
 と、開き直った。
 

 兄弟子3人とその娘との宴会は、楽しかった。
 アルファが腕によりをかけて作った料理はどれも美味で、ジンが持ち込んだジムルグの酒は料理によく合った。経験豊富な兄弟子たちの昔話も大変興味深く、ユージは知らず知らずのうちに盃を重ねていた。
 話の中で、兄弟子たちがユージが思っていたよりもずっとずっと年上である気がしたが、それも話題を移すうちに忘れてしまった。
 誰もが料理と酒を楽しみ、冗談を言い合い、腹の底から笑った。
 (こんなに笑ったの、久し振りだ)
 ユージは大笑いしながら、何故かほろりとした気分になった。
 「ユージ、まあ吞め。どんなキツいことがあっても、人間生きてりゃ何とかなるもんだ」
 「ユージ君、こっちのワインも美味いぞ」
 ユージはそんな風にジンとクワンに勧められるままに気分よく酒をあおり、当然のように潰された。


 サクラはひとり、リビングで大して面白くもないテレビ番組を見ながら、ビターチョコレートを肴に缶のモヒートを飲んでいた。
 ユージからは自分を待たずに先に寝ていろと言われたものの、そんな気分にはどうしてもなれなかった。
 ただただ、夫のことが気がかりだった。
 (ユージ……ホントにどうしちゃったのよ)
 チョコレートを齧り、溜息をつく。
 そんな時、玄関の方からがたん、と物音が聞こえてきた。
 (やだ、何かしら)
 タブレット端末からモニターを確認すると、玄関の外で男が3人と女の子がひとり、何やら話をしていた。一番背の高い男が誰かをおんぶしているようだ。
 「ユージ、家に着いたぞ。さっさと鍵開けてくれ」
 「ユージお兄様、まだ寝ちゃだめです。しっかりして下さい」
 「だめだ、完全に潰れている。誰だねこんなに吞ませたのは」
 「それ、お前のことだよ、クワン」
 (え?何?ユージ?)
 サクラはタブレット端末越しに玄関の外に声を掛けた。
 「あの、すみません。どうしました?」
 一瞬、玄関の外の話し声が止んだが、ほどなくして、
 「夜分に申し訳ありません。実はユージ君が酔い潰れてしまって。済みませんが、鍵を開けて頂けませんか?」
 落ち着いた男の声がした。
 「あ、はい。ちょっと待って下さい」
 サクラは慌てて玄関に向かうとロックを解除し、ドアを開けた。
 そこには、サクラよりも幾分年上を思しき男性が3人と、13、4歳ぐらいのとびきりの美少女が居た。
 モニターから見た通り、ユージは一番背の高い男性の背中でだらしなく伸びてしまっている。
 「やだ、ユージ、何やってんのよ」
 サクラに言われて、ユージは何やら返答した。但し、何を言っているのか全く聞き取れなかったけれども。
 「残念ながらユージ君はこのような有様ですので、会話は無理だと思います。ところで、寝室はどちらでしょうか」
 と、ユージを背負っている男はにっこりと微笑んだ。
 「あ、こちらです」
 男はサクラと共に寝室に入ると、ユージをベッドに置いた。次いでてきぱきと邪魔な衣類を脱がせて肌着の状態にし、そのままころんとベッドに寝かせ、毛布を掛けた。
 「あの、夫は」
 「お酒を飲み過ぎただけなので、ぐっすり眠れば大丈夫です。ただ、明日は二日酔いで苦しむことになるかもしれません」
 不安気なサクラに、男は例の顔で微笑んだ。
 「サクラさん。夜分に突然、大勢で押しかけて申し訳ありません。でも、勝手ながら我々の顔をお見せするいい機会だと思いまして」
 「え?」
 サクラは何の話かわからず、目をぱちくりさせた。
 「実は、私は数カ月前にユージ君が天界に来られた時にお会いした者です。私たちはあなたの兄弟子です」
 「!」
 サクラは目を丸くして、両手で口元を押さえた。



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 「ユージ君。あの子をどう思うかね?」
 アルファの姿が見えなくなったところで、クワンがそんなことを訊いてきた。
 「え?あ、可愛い娘さんですね」
 ユージはクワンの質問の意図が判らぬまま、無難な回答を選択した。
 「そういうことではなくてだね。――よく出来ているだろう?」
 (よく出来ているって、どういうことだろう?)
 ユージはますます質問の意図がわからなくなり、眉根を寄せた。
 天界人の兄弟子を見ると、ジンは素知らぬ顔で保温ポットから珈琲をおかわりし、ヤンは「また始まったか」といった顔でお菓子を頬張っている。
 クワンは軽く咳払いすると、胸を張って誇らしげに言った。
 「アルファは私の研究の集大成とも言える子でね。師匠のアドバイスを貰いながらだったが、私が初めてイチから造った人間なんだよ」
 ユージは仰天した。
 「ええっ!ということは、アルファちゃんは人造人間なんですか……?」
 「そういうことになるな」
 クワンはあっさり肯定した。
 「まあ、見た目があそこで止まってしまったのは誤算だったが、初めて造ったにしては我ながら上出来だと思っているんだ」
 目を白黒させているユージをよそに、クワンは嬉しそうに目を細めた。
 「違うな。逆にクワン父さんは娘がずっと可愛いまんまでいるのが嬉しいんだよ」
 「しかもあの顔は完全にクワンの趣味だし。なあ、クワン」
 二人の幼馴染にずけずけと言われ、クワンは鼻白んだ。そして、
 「娘を可愛いと思って何が悪いのかね」
 と、開き直った。
 兄弟子3人とその娘との宴会は、楽しかった。
 アルファが腕によりをかけて作った料理はどれも美味で、ジンが持ち込んだジムルグの酒は料理によく合った。経験豊富な兄弟子たちの昔話も大変興味深く、ユージは知らず知らずのうちに盃を重ねていた。
 話の中で、兄弟子たちがユージが思っていたよりもずっとずっと年上である気がしたが、それも話題を移すうちに忘れてしまった。
 誰もが料理と酒を楽しみ、冗談を言い合い、腹の底から笑った。
 (こんなに笑ったの、久し振りだ)
 ユージは大笑いしながら、何故かほろりとした気分になった。
 「ユージ、まあ吞め。どんなキツいことがあっても、人間生きてりゃ何とかなるもんだ」
 「ユージ君、こっちのワインも美味いぞ」
 ユージはそんな風にジンとクワンに勧められるままに気分よく酒をあおり、当然のように潰された。
 サクラはひとり、リビングで大して面白くもないテレビ番組を見ながら、ビターチョコレートを肴に缶のモヒートを飲んでいた。
 ユージからは自分を待たずに先に寝ていろと言われたものの、そんな気分にはどうしてもなれなかった。
 ただただ、夫のことが気がかりだった。
 (ユージ……ホントにどうしちゃったのよ)
 チョコレートを齧り、溜息をつく。
 そんな時、玄関の方からがたん、と物音が聞こえてきた。
 (やだ、何かしら)
 タブレット端末からモニターを確認すると、玄関の外で男が3人と女の子がひとり、何やら話をしていた。一番背の高い男が誰かをおんぶしているようだ。
 「ユージ、家に着いたぞ。さっさと鍵開けてくれ」
 「ユージお兄様、まだ寝ちゃだめです。しっかりして下さい」
 「だめだ、完全に潰れている。誰だねこんなに吞ませたのは」
 「それ、お前のことだよ、クワン」
 (え?何?ユージ?)
 サクラはタブレット端末越しに玄関の外に声を掛けた。
 「あの、すみません。どうしました?」
 一瞬、玄関の外の話し声が止んだが、ほどなくして、
 「夜分に申し訳ありません。実はユージ君が酔い潰れてしまって。済みませんが、鍵を開けて頂けませんか?」
 落ち着いた男の声がした。
 「あ、はい。ちょっと待って下さい」
 サクラは慌てて玄関に向かうとロックを解除し、ドアを開けた。
 そこには、サクラよりも幾分年上を思しき男性が3人と、13、4歳ぐらいのとびきりの美少女が居た。
 モニターから見た通り、ユージは一番背の高い男性の背中でだらしなく伸びてしまっている。
 「やだ、ユージ、何やってんのよ」
 サクラに言われて、ユージは何やら返答した。但し、何を言っているのか全く聞き取れなかったけれども。
 「残念ながらユージ君はこのような有様ですので、会話は無理だと思います。ところで、寝室はどちらでしょうか」
 と、ユージを背負っている男はにっこりと微笑んだ。
 「あ、こちらです」
 男はサクラと共に寝室に入ると、ユージをベッドに置いた。次いでてきぱきと邪魔な衣類を脱がせて肌着の状態にし、そのままころんとベッドに寝かせ、毛布を掛けた。
 「あの、夫は」
 「お酒を飲み過ぎただけなので、ぐっすり眠れば大丈夫です。ただ、明日は二日酔いで苦しむことになるかもしれません」
 不安気なサクラに、男は例の顔で微笑んだ。
 「サクラさん。夜分に突然、大勢で押しかけて申し訳ありません。でも、勝手ながら我々の顔をお見せするいい機会だと思いまして」
 「え?」
 サクラは何の話かわからず、目をぱちくりさせた。
 「実は、私は数カ月前にユージ君が天界に来られた時にお会いした者です。私たちはあなたの兄弟子です」
 「!」
 サクラは目を丸くして、両手で口元を押さえた。