シナリオ
ー/ー 週明けの朝は新たな一週間分の重みにうんざりするけれど、4月はまだ少し年度始まりの特別な高揚が残っている。そんな月曜日。
「ねぇ、お母さんから話聞いた?」
教室に入った早々、鞄を降ろす間もなく南緒がすっ飛んできた。
「ほら、予備校のことだよ! 雄眞の親から盟子んちに資料行ったでしょ?」
教室に入った早々、鞄を降ろす間もなく南緒がすっ飛んできた。
「ほら、予備校のことだよ! 雄眞の親から盟子んちに資料行ったでしょ?」
「ああ、うん、あれ……」
「あれ、私が頼んどいたんだよ!」
質問を返す間も与えず、南緒は畳みかけてくる。
けれど意味がさっぱり解らない。どうして南緒が小林雄眞の親に頼んで盟子のために予備校の資料を手配する必要があるのか。
質問を返す間も与えず、南緒は畳みかけてくる。
けれど意味がさっぱり解らない。どうして南緒が小林雄眞の親に頼んで盟子のために予備校の資料を手配する必要があるのか。
「どうだった? 中見たでしょ?」
そう言われても。
質問しようにもわけが解らなすぎて、何から尋ねていいかも解らなくて。
……ようやくそこで、盟子は気が付いた。
突如として降って湧いた予備校の話は、どうやら南緒があの美術教師に取り入るためのシナリオの序盤らしい、ということに。
曖昧に微笑みながら、盟子は鞄を下ろしてそろっと椅子に腰かけた。教室には南緒の声がひときわ甲高く響き渡っている。
「盟子って美大受けるんでしょ?」
「え?」
「小学校の頃から賞取ったりして絵上手かったじゃんね! だから予備校紹介してやって、って雄眞に頼んだわけ」
美大に行くなんて、南緒に言ってない。言ったはずがない。なぜって自分の中ですらそんな発想が頭をもたげてきたことないのだから。
「え……うん、と……」
盟子は曖昧に小首を傾げた。思いっきりドヤ顔の南緒にどう返すのが正解なのか解らなくて。
「そしたら雄眞の親が色々調べて予備校の資料手配してくれたんだって。なんかいとこが美大らしい」
「……そう、だったんだ」
「だからさ、よかったじゃん。たまたまそういう知り合いがいて」
「でも私……まだどこの大学行くとかちゃんと決めてないんだよね」
盟子の反論は尻すぼみに小さくなった。どうして南緒がそんなことを?とは思いながらも、友達のためにひと肌脱いでやった!みたいな顔で悦に入っている南緒の機嫌に水を差すのはやっぱり怖くて。
「大丈夫。その予備校、そういう進路相談もしてくれるっぽいよ。美大って言っても色んな科があるんだって。玲峰先生はデザインて言ってたよね!」
玲峰先生という発音のところできらっと瞳が輝いた。これで辻褄を合わせたとばかり満足そうに。
「でさ、玲峰先生って美大じゃん? 年もけっこう近いんだし、聞いてみたら? 私も一緒に行ってあげるから」
「盟子って美大受けるんでしょ?」
「え?」
「小学校の頃から賞取ったりして絵上手かったじゃんね! だから予備校紹介してやって、って雄眞に頼んだわけ」
美大に行くなんて、南緒に言ってない。言ったはずがない。なぜって自分の中ですらそんな発想が頭をもたげてきたことないのだから。
「え……うん、と……」
盟子は曖昧に小首を傾げた。思いっきりドヤ顔の南緒にどう返すのが正解なのか解らなくて。
「そしたら雄眞の親が色々調べて予備校の資料手配してくれたんだって。なんかいとこが美大らしい」
「……そう、だったんだ」
「だからさ、よかったじゃん。たまたまそういう知り合いがいて」
「でも私……まだどこの大学行くとかちゃんと決めてないんだよね」
盟子の反論は尻すぼみに小さくなった。どうして南緒がそんなことを?とは思いながらも、友達のためにひと肌脱いでやった!みたいな顔で悦に入っている南緒の機嫌に水を差すのはやっぱり怖くて。
「大丈夫。その予備校、そういう進路相談もしてくれるっぽいよ。美大って言っても色んな科があるんだって。玲峰先生はデザインて言ってたよね!」
玲峰先生という発音のところできらっと瞳が輝いた。これで辻褄を合わせたとばかり満足そうに。
「でさ、玲峰先生って美大じゃん? 年もけっこう近いんだし、聞いてみたら? 私も一緒に行ってあげるから」
……ようやくそこで、盟子は気が付いた。
突如として降って湧いた予備校の話は、どうやら南緒があの美術教師に取り入るためのシナリオの序盤らしい、ということに。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
週明けの朝は新たな一週間分の重みにうんざりするけれど、4月はまだ少し年度始まりの特別な高揚が残っている。そんな月曜日。
「ねぇ、お母さんから話聞いた?」
教室に入った早々、鞄を降ろす間もなく南緒がすっ飛んできた。
「ほら、予備校のことだよ! 雄眞の親から盟子んちに資料行ったでしょ?」
教室に入った早々、鞄を降ろす間もなく南緒がすっ飛んできた。
「ほら、予備校のことだよ! 雄眞の親から盟子んちに資料行ったでしょ?」
「ああ、うん、あれ……」
「あれ、私が頼んどいたんだよ!」
質問を返す間も与えず、南緒は畳みかけてくる。
けれど意味がさっぱり解らない。どうして南緒が小林雄眞の親に頼んで盟子のために予備校の資料を手配する必要があるのか。
質問を返す間も与えず、南緒は畳みかけてくる。
けれど意味がさっぱり解らない。どうして南緒が小林雄眞の親に頼んで盟子のために予備校の資料を手配する必要があるのか。
「どうだった? 中見たでしょ?」
そう言われても。
質問しようにもわけが解らなすぎて、何から尋ねていいかも解らなくて。 曖昧に微笑みながら、盟子は鞄を下ろしてそろっと椅子に腰かけた。教室には南緒の声がひときわ甲高く響き渡っている。
「盟子って美大受けるんでしょ?」
「え?」
「小学校の頃から賞取ったりして絵上手かったじゃんね! だから予備校紹介してやって、って雄眞に頼んだわけ」
「え?」
「小学校の頃から賞取ったりして絵上手かったじゃんね! だから予備校紹介してやって、って雄眞に頼んだわけ」
美大に行くなんて、南緒に言ってない。言ったはずがない。なぜって自分の中ですらそんな発想が頭をもたげてきたことないのだから。
「え……うん、と……」
盟子は曖昧に小首を傾げた。思いっきりドヤ顔の南緒にどう返すのが正解なのか解らなくて。
「え……うん、と……」
盟子は曖昧に小首を傾げた。思いっきりドヤ顔の南緒にどう返すのが正解なのか解らなくて。
「そしたら雄眞の親が色々調べて予備校の資料手配してくれたんだって。なんかいとこが美大らしい」
「……そう、だったんだ」
「だからさ、よかったじゃん。たまたまそういう知り合いがいて」
「でも私……まだどこの大学行くとかちゃんと決めてないんだよね」
盟子の反論は尻すぼみに小さくなった。どうして南緒がそんなことを?とは思いながらも、友達のためにひと肌脱いでやった!みたいな顔で悦に入っている南緒の機嫌に水を差すのはやっぱり怖くて。
「……そう、だったんだ」
「だからさ、よかったじゃん。たまたまそういう知り合いがいて」
「でも私……まだどこの大学行くとかちゃんと決めてないんだよね」
盟子の反論は尻すぼみに小さくなった。どうして南緒がそんなことを?とは思いながらも、友達のためにひと肌脱いでやった!みたいな顔で悦に入っている南緒の機嫌に水を差すのはやっぱり怖くて。
「大丈夫。その予備校、そういう進路相談もしてくれるっぽいよ。美大って言っても色んな科があるんだって。玲峰先生はデザインて言ってたよね!」
|玲峰先生《・・・・》という発音のところできらっと瞳が輝いた。これで辻褄を合わせたとばかり満足そうに。
|玲峰先生《・・・・》という発音のところできらっと瞳が輝いた。これで辻褄を合わせたとばかり満足そうに。
「でさ、玲峰先生って美大じゃん? 年もけっこう近いんだし、聞いてみたら? |私も一緒に行ってあげるから《・・・・・・・・・・・・・》」
……ようやくそこで、盟子は気が付いた。
突如として降って湧いた予備校の話は、どうやら南緒があの美術教師に取り入るためのシナリオの序盤らしい、ということに。