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お疲れ様です😌💓

ー/ー



「皆様、今晩は。
マジシャンの××と申します。
今宵、ここにお集まりの皆様に、日頃の疲れを癒してもらう為、とっておきの魔法をご用意致しました」

 そんな自己紹介をした彼は、舞台下にいる様々な背格好の客達を、まるで品物でも選ぶかのように、品定めをし始めた。

 客達は客達で“自分が選ばれたりしたらどうしよう!?”と、ドキドキしながら、その実彼の目に留まる事に期待を寄せている。

 やがて彼は、品定めをやめて1人の若い女性に向かい
「そこの貴方!
私のサポートをお願いしたいのですが?」
と、右手を差し出しながら誘い文句を投げかけた。

 彼女は、“何だか恥ずかしいわ”と照れながら、辺りにはにかんで、遠慮がちに舞台へと上がっていく。

「ようこそ、僕の舞台へ!」

 決して広くも大きくもない木製の舞台を、彼は誉めまくり
「いやぁ、綺麗な方だ……」
と、彼女の少々赤くなった肌を見て
「選んだかいがあったな」
と、素直な感想を述べた。

 それから、彼は差し支えない程度に、彼女の個人情報を引き出していく。

「そうなんだ……
会社で嫌な事があったんだね。
それなら、とっておきの魔法がある。
ただ、それを教えるのには、ここで踊らなくちゃいけないんだ」

「踊るんですか!?
私、ハイヒールを履いているから、上手く踊れるか……」

 女性らしいピンクのワンピースを身に付けた彼女は、困惑した表情でマジシャンに上目遣いで訴えた。

 明らかに手助けしてほしいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。

 気持ちを汲んだマジシャンは、片目を瞑り
「大丈夫、そこは僕がリードするから!」
と、胸を張って言った。

 すると、何処からともなく音楽が流れてきて、彼女はおろか会場にいる人みんな、楽しそうに左右に体を揺らし始める。

 マジシャンは、リズムをとるのに夢中な彼女に
「踊ろう!」
と誘い、自分の体へと引き寄せた。

 彼女は抵抗する暇もなく、マジシャンのとるリードに合わせて踊り始める。

 それに合わせてスカートの裾がひらひらと閉じたり開いたりして、更にダンスの楽しさを伝えていた。

「おい、何だか面白そうだぜ」
「俺らも踊ろう!」

 その光景を見ていた他の客も、楽しさを味わおうと、座っていた椅子を片付け、ワルツの旋律に合わせて踊り出す。

 正式なタップを踏む者達は勿論、好き勝手に踊る輩も皆、今まで固かった表情が笑いに溢れ返った。

 その光景を目にしたマジシャンは、彼女から1回離れて、パチンと指を鳴らす。

 すると、曲調がガラリと変わり、タンゴの激しいリズムになった。

 突然の出来事に皆踊りを止めるのかと思いきや、引き続き踊り続ける。

「どうだい、この光景」

 舞台上で夢中になって踊っていた彼女に、小声だが自信たっぷりに訊ねるマジシャン。

 突然の声かけに、“えっ?”と驚きの声を上げた女性の瞳に映ったのは、会場に集まる人全てが、何の躊躇いもなく楽しく踊っている、まさに圧巻と言える風景だった。

「うわー、素敵!」

“皆、踊ってるわ!!”と、彼女は満面の笑みを浮かべて瞳を輝かせ、暫しその場から離れない。

「どうです?
嫌な事、忘れられましたか?」
「!?」

 彼女は自信に満ちた笑みを浮かべて問うたマジシャンを、驚いた表情で見つめた。

 それもそのはず、彼女は踊る楽しさに仕事の事など忘れてしまっていたのである。

「これが、貴方にかけたとっておきの魔法です」

 マジシャンはそう言ってニコリと笑い
「皆さんも楽しんで頂けましたでしょうか?」
と、声を張り上げた。

 それが合図となって、タンゴのリズムがパッと消える。

 何が起こったのか分からないが、心に残る高揚をひしひしと感じた観客は、マジシャンに向かって熱い声援と拍手を送った。

「喜んでくれて、そして楽しんでくれて有難う!
最後に僕から、お礼にこんなプレゼントを用意したよ」

 マジシャンはそう言って、まるで“受け取って”と言わんばかりに、右手を高く上げて、指をパチンと鳴らす。

 その途端、天井から桜の花びらがひらひらと舞い降りた。

 客も女性も開いた口が塞がらないほど驚いて、暫くの間その場に立ち尽くす。

「皆様、今日はお忙しい中、来てくれて有難う!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!!」

 マジシャンはごく普通の挨拶をして、舞台から颯爽と姿を消した。

 最後に会場に残ったのは、夢と希望のスポットライトだった。









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マジシャンの××と申します。
今宵、ここにお集まりの皆様に、日頃の疲れを癒してもらう為、とっておきの魔法をご用意致しました」
 そんな自己紹介をした彼は、舞台下にいる様々な背格好の客達を、まるで品物でも選ぶかのように、品定めをし始めた。
 客達は客達で“自分が選ばれたりしたらどうしよう!?”と、ドキドキしながら、その実彼の目に留まる事に期待を寄せている。
 やがて彼は、品定めをやめて1人の若い女性に向かい
「そこの貴方!
私のサポートをお願いしたいのですが?」
と、右手を差し出しながら誘い文句を投げかけた。
 彼女は、“何だか恥ずかしいわ”と照れながら、辺りにはにかんで、遠慮がちに舞台へと上がっていく。
「ようこそ、僕の舞台へ!」
 決して広くも大きくもない木製の舞台を、彼は誉めまくり
「いやぁ、綺麗な方だ……」
と、彼女の少々赤くなった肌を見て
「選んだかいがあったな」
と、素直な感想を述べた。
 それから、彼は差し支えない程度に、彼女の個人情報を引き出していく。
「そうなんだ……
会社で嫌な事があったんだね。
それなら、とっておきの魔法がある。
ただ、それを教えるのには、ここで踊らなくちゃいけないんだ」
「踊るんですか!?
私、ハイヒールを履いているから、上手く踊れるか……」
 女性らしいピンクのワンピースを身に付けた彼女は、困惑した表情でマジシャンに上目遣いで訴えた。
 明らかに手助けしてほしいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
 気持ちを汲んだマジシャンは、片目を瞑り
「大丈夫、そこは僕がリードするから!」
と、胸を張って言った。
 すると、何処からともなく音楽が流れてきて、彼女はおろか会場にいる人みんな、楽しそうに左右に体を揺らし始める。
 マジシャンは、リズムをとるのに夢中な彼女に
「踊ろう!」
と誘い、自分の体へと引き寄せた。
 彼女は抵抗する暇もなく、マジシャンのとるリードに合わせて踊り始める。
 それに合わせてスカートの裾がひらひらと閉じたり開いたりして、更にダンスの楽しさを伝えていた。
「おい、何だか面白そうだぜ」
「俺らも踊ろう!」
 その光景を見ていた他の客も、楽しさを味わおうと、座っていた椅子を片付け、ワルツの旋律に合わせて踊り出す。
 正式なタップを踏む者達は勿論、好き勝手に踊る輩も皆、今まで固かった表情が笑いに溢れ返った。
 その光景を目にしたマジシャンは、彼女から1回離れて、パチンと指を鳴らす。
 すると、曲調がガラリと変わり、タンゴの激しいリズムになった。
 突然の出来事に皆踊りを止めるのかと思いきや、引き続き踊り続ける。
「どうだい、この光景」
 舞台上で夢中になって踊っていた彼女に、小声だが自信たっぷりに訊ねるマジシャン。
 突然の声かけに、“えっ?”と驚きの声を上げた女性の瞳に映ったのは、会場に集まる人全てが、何の躊躇いもなく楽しく踊っている、まさに圧巻と言える風景だった。
「うわー、素敵!」
“皆、踊ってるわ!!”と、彼女は満面の笑みを浮かべて瞳を輝かせ、暫しその場から離れない。
「どうです?
嫌な事、忘れられましたか?」
「!?」
 彼女は自信に満ちた笑みを浮かべて問うたマジシャンを、驚いた表情で見つめた。
 それもそのはず、彼女は踊る楽しさに仕事の事など忘れてしまっていたのである。
「これが、貴方にかけたとっておきの魔法です」
 マジシャンはそう言ってニコリと笑い
「皆さんも楽しんで頂けましたでしょうか?」
と、声を張り上げた。
 それが合図となって、タンゴのリズムがパッと消える。
 何が起こったのか分からないが、心に残る高揚をひしひしと感じた観客は、マジシャンに向かって熱い声援と拍手を送った。
「喜んでくれて、そして楽しんでくれて有難う!
最後に僕から、お礼にこんなプレゼントを用意したよ」
 マジシャンはそう言って、まるで“受け取って”と言わんばかりに、右手を高く上げて、指をパチンと鳴らす。
 その途端、天井から桜の花びらがひらひらと舞い降りた。
 客も女性も開いた口が塞がらないほど驚いて、暫くの間その場に立ち尽くす。
「皆様、今日はお忙しい中、来てくれて有難う!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!!」
 マジシャンはごく普通の挨拶をして、舞台から颯爽と姿を消した。
 最後に会場に残ったのは、夢と希望のスポットライトだった。