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キエーウ強襲戦 3

ー/ー



 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。

「リイイイイイィィィース!!!!!!!」

 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。

 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。

「貴様あああああああ!!!!!」

 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。

 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。

「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」

 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。

「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」

「人を殺しておいて何を言う!!」

 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。

「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」

 それを言われてモモはハッとした。

「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」

「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」

「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」

 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。

 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。

 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。

「例の死体少女のお出ましってわけか」

 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。

「ユモト!! ボーッとするな!!」

 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。

「遅いじゃんな」

 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。

 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。

「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」

 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。

「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」

 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。

 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中、森からドスドスと何かが走る音が聞こえた。

「ヨーリィちゃん待って…… って、何てこと……」

 走る大型精霊の上に乗ったルーは、真っ二つになり事切れているリースを見て口に手を当てた。

「ルー、こいつは裏の道具持ちじゃないのか!?」

「えぇ、探知盤には何も……」

 厄介だなとアシノは思った。裏の道具を使わずにこれだけの戦闘が出来るという事は相当の手練れだ。

 だが、どうしてこんな奴がここに居るのだ?

 キエーウが迎撃の準備を進めていたにしても、支部を守らずに自分達の元へこの男を仕向けた。リースの口封じのためだろうか?

 しかし、今は考えていても仕方がないと戦いに集中する。

 ヨーリィが短剣を持って男へ襲いかかる。カンカンキンキンと金属がぶつかり合う音が響いた。

「許さない、許さないわよ!!!」

 怒りに震えたルーは精霊を取り囲むように多数召喚させた。

「こんな雑魚精霊、どれだけ居ようと無駄じゃんな」

 男は大鎌を振り回して精霊を切り刻む。ルーの攻撃に加勢しようとヨーリィも男に近付いて短剣を鋭く振っていた。

 アシノは何かを考えていた。いくら何でも強すぎる。動きが人間離れしている。それこそ勇者も凌ぐ様な強さだ。

 こんな強さのやつであれば、キエーウに属する前に嫌でも名が有名になるだろうがこの男の存在をアシノは知らない。

「ハハハハ、気分がいいじゃんよー。今の俺に敵なんて居ねぇ!!!!」

 ヨーリィの腕が切られ枯れ葉に変わる。モモは「ヨーリィ!!」と叫んでいた。何も出来ない自分がもどかしく、情けない。

 アシノは更に考えた。そしてたどり着いたのは裏の道具の存在。

 探知盤に映らない裏の道具か、それともムツヤの持つ薬のような何かで身体を強化しているか。

 自分達では敵わないと判断したアシノは連絡石を取り出してムツヤにひっそりと伝えた。

「すまない、私達では手に負えない敵が現れた。おそらく裏の道具を何かしら使っている、引き返してきてくれ」

「わがりまじだ!!!」

 ムツヤからの返事があった。アイツが戻ってくるまでどうにか時間を稼がなくてはいけないとアシノは思う。

「ひゃーはははははは!!!!」

「くっ……」

 ルーの精霊は決して弱くない。1体1体がそこら辺の冒険者よりも強いのだ。それらがいとも簡単に切り捨てられている。

 ユモトも雷の魔法で攻撃をしているが全く当たらない。男はヨーリィの動きにも付いていける。


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 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。
「リイイイイイィィィース!!!!!!!」
 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。
 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。
「貴様あああああああ!!!!!」
 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。
 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。
「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」
 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。
「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」
「人を殺しておいて何を言う!!」
 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。
「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」
 それを言われてモモはハッとした。
「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」
「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」
「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」
 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。
 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。
 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。
「例の死体少女のお出ましってわけか」
 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。
「ユモト!! ボーッとするな!!」
 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。
「遅いじゃんな」
 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。
 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。
「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」
 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。
「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」
 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。
 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中、森からドスドスと何かが走る音が聞こえた。
「ヨーリィちゃん待って…… って、何てこと……」
 走る大型精霊の上に乗ったルーは、真っ二つになり事切れているリースを見て口に手を当てた。
「ルー、こいつは裏の道具持ちじゃないのか!?」
「えぇ、探知盤には何も……」
 厄介だなとアシノは思った。裏の道具を使わずにこれだけの戦闘が出来るという事は相当の手練れだ。
 だが、どうしてこんな奴がここに居るのだ?
 キエーウが迎撃の準備を進めていたにしても、支部を守らずに自分達の元へこの男を仕向けた。リースの口封じのためだろうか?
 しかし、今は考えていても仕方がないと戦いに集中する。
 ヨーリィが短剣を持って男へ襲いかかる。カンカンキンキンと金属がぶつかり合う音が響いた。
「許さない、許さないわよ!!!」
 怒りに震えたルーは精霊を取り囲むように多数召喚させた。
「こんな雑魚精霊、どれだけ居ようと無駄じゃんな」
 男は大鎌を振り回して精霊を切り刻む。ルーの攻撃に加勢しようとヨーリィも男に近付いて短剣を鋭く振っていた。
 アシノは何かを考えていた。いくら何でも強すぎる。動きが人間離れしている。それこそ勇者も凌ぐ様な強さだ。
 こんな強さのやつであれば、キエーウに属する前に嫌でも名が有名になるだろうがこの男の存在をアシノは知らない。
「ハハハハ、気分がいいじゃんよー。今の俺に敵なんて居ねぇ!!!!」
 ヨーリィの腕が切られ枯れ葉に変わる。モモは「ヨーリィ!!」と叫んでいた。何も出来ない自分がもどかしく、情けない。
 アシノは更に考えた。そしてたどり着いたのは裏の道具の存在。
 探知盤に映らない裏の道具か、それともムツヤの持つ薬のような何かで身体を強化しているか。
 自分達では敵わないと判断したアシノは連絡石を取り出してムツヤにひっそりと伝えた。
「すまない、私達では手に負えない敵が現れた。おそらく裏の道具を何かしら使っている、引き返してきてくれ」
「わがりまじだ!!!」
 ムツヤからの返事があった。アイツが戻ってくるまでどうにか時間を稼がなくてはいけないとアシノは思う。
「ひゃーはははははは!!!!」
「くっ……」
 ルーの精霊は決して弱くない。1体1体がそこら辺の冒険者よりも強いのだ。それらがいとも簡単に切り捨てられている。
 ユモトも雷の魔法で攻撃をしているが全く当たらない。男はヨーリィの動きにも付いていける。