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キエーウ強襲戦 4

ー/ー



(考えろ、冷静に考えろ)

 アシノはこの状況をどうにかする事をずっと考えた。考えることしか自分には出来ない。

(今まで、裏の道具には何かしら弱点があった。裏の強力な力には何かしらの代償があった……)

 精霊を出し続けているルーは体の負担が大きいらしく疲弊していた。

 そして、男を見ると、気付いたことがある。

 少しだけ動きが鈍ってきていた。

(まずいじゃんな、もう体にガタが来やがった)

 アシノの予想は当たっていた。男は裏の道具である薬で身体能力を強化していたが、体がそれについて行けなくなってきている。

 そしてルーに向かって一直線に走っていった。

(まずはこのうぜぇ精霊を召喚してる女じゃんな!!!)

 ヨーリィが庇おうとするが間に合わない。まずいとルーは防御壁を張ろうとしたがどう考えても間に合わないと悟ってしまう。

 やられる。

 結果としてルーが切り裂かれることはなかった。何故なら前にモモが盾を構えて立っていたからだ。

 しかし、無力化の盾で防げたのは鎌の柄の部分で、刃はモモの体に食い込んでいる。

「モモちゃん!!!」

「絶対に……」

 モモは荒い息をしながら叫んだ。

「もう絶対に、仲間を傷つけさせやしない!!!!」

「うぜぇじゃんよ!! やっぱクソオークから殺してやるじゃんな!!!」

 男は乱暴に鎌を引き抜こうとしたが、モモが右腕でガッチリと柄を握りしめていて引き抜くのに手間取ってしまった。

 腕は体を中心に内側へ引き込む力は強いが、外へ開く力はそれよりも弱い。それに、男の体は疲弊していたのだ。

 そして、追いかけてきたヨーリィが飛びかかり、男の首を斬ろうとしている。避けるためにはもはや鎌を手放すしか無いと思われたが。

「舐めんな!!」

 男は鎌の柄を両手で握ったまま下に滑り込んでヨーリィをかわすと、そのままの勢いで鎌をモモから引き抜いた。

「ぐうぅ」

 モモは痛みに声を出す。素早く傷口に回復薬をかけると右手で剣を抜いて構える。

「あーもううぜぇうぜぇうぜぇじゃんな!!!」

 男はモモをめちゃくちゃに鎌で斬りつけた。

 無力化の盾を構えているので切り裂かれることは無いが、鎌の先端10センチメートルは容赦なくモモの体に突き刺さった。

 ヨーリィは男の妨害をするために宙を舞い、鎌をかわし、何度も男に飛びかかるも、蹴られ殴られ吹き飛ばされてしまう。

 そして男はニヤリと笑い、しゃがむとモモの足元に鎌を走らせた。

 しまったと思う前に激痛を感じてモモは叫んだ。左足首が完全に切断されてしまったのだ。

「油断しやがったな、とどめだ、死ね!!!」

 男は思い切り鎌を振り上げてモモへトドメの一撃を入れる。

 油断をしたのは男の方だった。

 モモは男が鎌を振り下げるよりも早く。

 右手で剣を突き出した。

「がぁ……」

 それは男の首を正確に貫いて、断末魔と言うより空気の漏れと言った方が正しい最後の声を出して男はガクリと動かなくなる。

「はぁ、はぁ……」

 モモもそのまま、男に覆いかぶさるように、前のめりに倒れる。戦いが終わったことを悟ったヨーリィは歩いてモモの左足首を拾うと、元の場所へとくっつけた。

 瞬間また激痛が走りモモは唸る。

「ヨー…… リィ…… くっつけるなら、くっつけるといってくれ……」

「ごめんモモお姉ちゃん。でも早く薬を飲んだほうが良い」

 モモは薬を取り出すと、ハッとし男に飲ませようとする。アシノはモモのやろうとしている事に気付いて叫ぶ。

「モモ!! やめろ!! まだそいつを拘束していない!!!」

 モモは男を助けるつもりだった。

 首から血を流して虫の息の男を。男に回復薬を掛けようとしたが、なんと男は最後の力を振り絞り、手でその回復薬を弾き飛ばした。

 地面に溢れる回復薬、ユモトが慌ててもう一本だそうとしたが。

 男の瞳孔は開き、心臓は止まった。

 男は最後に走馬灯を見た、自分を1人で育ててくれた母親。大好きな母親。オークに殺された母親だ。

 ある日、治安維持部隊が来て、自分の母親はオークの盗賊団に殺されたと知った。

 夜遅く、街の仕事からの帰り道で母親は殺された。悔しくて、寂しくて。

 それが、何故だか分からないが、自分は母親に抱きしめられていた。温かい安心する体温が伝わった。

「お母さん!!」

 安心して泣いてしまっていた。母は頭を優しく撫でてくれる。

「寂しい思いをさせてごめんね、ごめんね……」





「ムツヤか? こっちは片付いた。すまないがもう一度キエーウの支部へ向かってくれ」

 アシノは連絡石でムツヤに話した。「わがりまじだ」と返事があったので任せて問題は無いだろう。

 ルーが探知盤で辺りの様子を見たが、反応はない。敵もこれ以上は居ないようだった。

 モモは体中の傷も足首も回復薬で元通りになった。そして治ると同時に走ってリースの元へと向かう。

 待っているのは残酷な現実だ。リースは下半身と上半身が斜めに切り分けられ、目は見開いたまま死んでいた。

 その惨さにユモトは思わずまた口元を抑える。

 モモは半ば無意識に2つになったリースを元に戻し回復薬を掛けようとした。

「やめろっ!! 回復薬の無駄遣いだ!!!」

 黙っていたアシノに一喝されてモモはビクリとする。

「あ、アシノ…… そんなふうに言わなくても」

 ルーは喋ったが、うまく言葉が見つからずまた黙り込んでしまう。

「死んだ人間は生き返らないんだ。たとえ裏の道具を使ったとしてもっ!!!」

「あっ、あっ、うぅぅぅ……」

 モモは膝から崩れ落ちて泣いていた。悲しさか、悔しさか、虚しさか、それともそれら全てが混ざった感情か。涙が溢れて止まらなかった。


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(考えろ、冷静に考えろ)
 アシノはこの状況をどうにかする事をずっと考えた。考えることしか自分には出来ない。
(今まで、裏の道具には何かしら弱点があった。裏の強力な力には何かしらの代償があった……)
 精霊を出し続けているルーは体の負担が大きいらしく疲弊していた。
 そして、男を見ると、気付いたことがある。
 少しだけ動きが鈍ってきていた。
(まずいじゃんな、もう体にガタが来やがった)
 アシノの予想は当たっていた。男は裏の道具である薬で身体能力を強化していたが、体がそれについて行けなくなってきている。
 そしてルーに向かって一直線に走っていった。
(まずはこのうぜぇ精霊を召喚してる女じゃんな!!!)
 ヨーリィが庇おうとするが間に合わない。まずいとルーは防御壁を張ろうとしたがどう考えても間に合わないと悟ってしまう。
 やられる。
 結果としてルーが切り裂かれることはなかった。何故なら前にモモが盾を構えて立っていたからだ。
 しかし、無力化の盾で防げたのは鎌の柄の部分で、刃はモモの体に食い込んでいる。
「モモちゃん!!!」
「絶対に……」
 モモは荒い息をしながら叫んだ。
「もう絶対に、仲間を傷つけさせやしない!!!!」
「うぜぇじゃんよ!! やっぱクソオークから殺してやるじゃんな!!!」
 男は乱暴に鎌を引き抜こうとしたが、モモが右腕でガッチリと柄を握りしめていて引き抜くのに手間取ってしまった。
 腕は体を中心に内側へ引き込む力は強いが、外へ開く力はそれよりも弱い。それに、男の体は疲弊していたのだ。
 そして、追いかけてきたヨーリィが飛びかかり、男の首を斬ろうとしている。避けるためにはもはや鎌を手放すしか無いと思われたが。
「舐めんな!!」
 男は鎌の柄を両手で握ったまま下に滑り込んでヨーリィをかわすと、そのままの勢いで鎌をモモから引き抜いた。
「ぐうぅ」
 モモは痛みに声を出す。素早く傷口に回復薬をかけると右手で剣を抜いて構える。
「あーもううぜぇうぜぇうぜぇじゃんな!!!」
 男はモモをめちゃくちゃに鎌で斬りつけた。
 無力化の盾を構えているので切り裂かれることは無いが、鎌の先端10センチメートルは容赦なくモモの体に突き刺さった。
 ヨーリィは男の妨害をするために宙を舞い、鎌をかわし、何度も男に飛びかかるも、蹴られ殴られ吹き飛ばされてしまう。
 そして男はニヤリと笑い、しゃがむとモモの足元に鎌を走らせた。
 しまったと思う前に激痛を感じてモモは叫んだ。左足首が完全に切断されてしまったのだ。
「油断しやがったな、とどめだ、死ね!!!」
 男は思い切り鎌を振り上げてモモへトドメの一撃を入れる。
 油断をしたのは男の方だった。
 モモは男が鎌を振り下げるよりも早く。
 右手で剣を突き出した。
「がぁ……」
 それは男の首を正確に貫いて、断末魔と言うより空気の漏れと言った方が正しい最後の声を出して男はガクリと動かなくなる。
「はぁ、はぁ……」
 モモもそのまま、男に覆いかぶさるように、前のめりに倒れる。戦いが終わったことを悟ったヨーリィは歩いてモモの左足首を拾うと、元の場所へとくっつけた。
 瞬間また激痛が走りモモは唸る。
「ヨー…… リィ…… くっつけるなら、くっつけるといってくれ……」
「ごめんモモお姉ちゃん。でも早く薬を飲んだほうが良い」
 モモは薬を取り出すと、ハッとし男に飲ませようとする。アシノはモモのやろうとしている事に気付いて叫ぶ。
「モモ!! やめろ!! まだそいつを拘束していない!!!」
 モモは男を助けるつもりだった。
 首から血を流して虫の息の男を。男に回復薬を掛けようとしたが、なんと男は最後の力を振り絞り、手でその回復薬を弾き飛ばした。
 地面に溢れる回復薬、ユモトが慌ててもう一本だそうとしたが。
 男の瞳孔は開き、心臓は止まった。
 男は最後に走馬灯を見た、自分を1人で育ててくれた母親。大好きな母親。オークに殺された母親だ。
 ある日、治安維持部隊が来て、自分の母親はオークの盗賊団に殺されたと知った。
 夜遅く、街の仕事からの帰り道で母親は殺された。悔しくて、寂しくて。
 それが、何故だか分からないが、自分は母親に抱きしめられていた。温かい安心する体温が伝わった。
「お母さん!!」
 安心して泣いてしまっていた。母は頭を優しく撫でてくれる。
「寂しい思いをさせてごめんね、ごめんね……」
「ムツヤか? こっちは片付いた。すまないがもう一度キエーウの支部へ向かってくれ」
 アシノは連絡石でムツヤに話した。「わがりまじだ」と返事があったので任せて問題は無いだろう。
 ルーが探知盤で辺りの様子を見たが、反応はない。敵もこれ以上は居ないようだった。
 モモは体中の傷も足首も回復薬で元通りになった。そして治ると同時に走ってリースの元へと向かう。
 待っているのは残酷な現実だ。リースは下半身と上半身が斜めに切り分けられ、目は見開いたまま死んでいた。
 その惨さにユモトは思わずまた口元を抑える。
 モモは半ば無意識に2つになったリースを元に戻し回復薬を掛けようとした。
「やめろっ!! 回復薬の無駄遣いだ!!!」
 黙っていたアシノに一喝されてモモはビクリとする。
「あ、アシノ…… そんなふうに言わなくても」
 ルーは喋ったが、うまく言葉が見つからずまた黙り込んでしまう。
「死んだ人間は生き返らないんだ。たとえ裏の道具を使ったとしてもっ!!!」
「あっ、あっ、うぅぅぅ……」
 モモは膝から崩れ落ちて泣いていた。悲しさか、悔しさか、虚しさか、それともそれら全てが混ざった感情か。涙が溢れて止まらなかった。