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キエーウ強襲戦 2

ー/ー



 しかし、敵もムツヤをまだまだ甘く見ていたようだ。

 人間離れした速さで飛び回り豪火を辺りに散らすムツヤを見て「本当に勝てるのか?」といった不安が少しずつ生まれる。

「くそっ、なんて奴なの!!」

 女召喚術師は次々と砂粒を依代に精霊を呼び続けた。流石に仮面越しの額に汗もかいてくる。

「クソックソッ、止まりやがれ!!」

 触手でムツヤを捉えようとする男も苦戦をしていた。

「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇってワケか……」

 ムツヤに何らかの方法でトドメを刺そうとしている半円状の刀を持つ男は、しびれを切らし初めていたが、どうすることも出来ないでいた。

 そんな何もかもが異次元で無茶苦茶な戦いが5分ほど続いた時、やっと進展があった。ムツヤが地面に着地し、何故か動かなくなったのだ。

「しめたっ!!」

 そのスキを逃さずに、触手でムツヤの足、そして次に手を拘束する。ムツヤは抵抗の1つもしない。

「よっしゃ、後はあいつの首を吹き飛ばすだけだ!!」

 ずっと長い刀を握りタイミングを図っていた男は一気に魔力を込めてムツヤ目掛けて弾けるように飛んだ。その姿は青い閃光に見える。

 この刀は魔力を込めると、雷が走りありとあらゆる障害物を破壊しながら使用者と共に一直線に飛んでいく裏の道具だ。

 ただ、例によって熟練の戦士であるこの男でさえ魔力不足かつ、完璧に使いこなせてはいないので、使用は1度きりだ。2度目は無い。

 木をなぎ倒しながらムツヤに近付く閃光。

 ムツヤはそれを知ってか知らずか触手に縛られ、小さい精霊が全身にまとわり付いて小さい山のようになっている。

「死ねぇ!! 亜人の味方が!!!」

 瞬間、小さい精霊の山から光が漏れた。そして起こるのは……

 大爆発だった。

 閃光になってムツヤに近付いた男はそれを間近で受けてしまい、吹き飛ばされる。

 激しく体を木に打ち付け、手足が吹き飛び、全身の骨が砕け、絶命した。

 遺骸は爆発に巻き込まれ粉微塵になる。

 女召喚術師も、触手を操る男も大爆発から逃れようと走るが、吹き飛ぶ石や木々に全身を撃ち抜かれてボロボロになり。

「いや、やめてええええええええ!!!!」

「ちくしょおおおお来るなああああああ!!!!!」

 巻き込まれた。

 爆発が終わると、ムツヤを中心に何も残らなかった。そう、何も。

 人の気配が消えたことを感じ、ムツヤはギュッと目を瞑った。

 じいちゃんとの約束を破ってしまった。人を殺してはいけないという約束だ。

「ごめん、じいちゃん。ごめんなさい、殺した人……」

 そう呟いてムツヤは目を開いた。アシノはムツヤが人を殺す覚悟ができていないと思っていたがそれは違う。

 仲間を守るためだったらムツヤは修羅になる覚悟をしていた。

 ムツヤは何も知らないわけでは無かったのだ。モモやユモトが仲間を守るために敵を殺したこと。

 全部全部知っていたのだ。

 この世界は残酷だ。事実とは残酷だ。

 でも生きていかなくてはならない。仲間を守らなくてはいけない。

 ムツヤは涙を流しながら、震える手を合わせて敵達を弔った。

 そして、キエーウの支部を目指す。疲れからではなく、気の迷いから呼吸が荒くなる。

 支部へ行けばもっと多くの戦いが始まるだろう。もっと多くの人が死ぬ。

 だが、キエーウを放っておけば多くの亜人の人達が危ない目に遭う。

 守るためには奪わなくてはいけない。

 ムツヤは守りたいものが出来た。

 人の気配が多く感じられるようになった。キエーウの支部がある枯れたダンジョンが近いのだろう。

 ムツヤは走る速度を更に上げた。今だけはこれ以上何も考えられないように、今だけは仲間のために剣を振るうために。

 一方で仲間たちはどうしているかと言うと、遠くで起きた大爆発にそれぞれ武器を強く握りしめていた。

「ムツヤ殿……」

 モモは小さくその名前を漏らす。モモ達には大爆発の正体が敵のものか、ムツヤのものか分からなかった。

 ただ1つ分かることはムツヤが負けることは無いということだ。

「派手にやってるわね……」

 探知盤を見ながらルーは言う。怪しげな影も探知盤に浮かぶ点も無かった。ギルスからの連絡もない。

 誰もが油断をしてしまっていた。気付けなかった。ヨーリィさえも。

 森から音もなく人が飛び出した。それはモモ、ユモト、アシノ、そしてリースの居る後陣の横からだった。

 とっさに反応できたのはモモだけだった。その方角へ向けて剣を構える。

 次にアシノ、ビンのフタを弾き飛ばすがその人間には当たらなかった。

 ユモトは2人の行動を見て察知できた。とっさに防御壁を貼るが、既にその内側へ敵は入り込んでいた。

 そして敵は大鎌を構えて、何が起きた分からないリースを。

 腹から真っ二つにした。


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 しかし、敵もムツヤをまだまだ甘く見ていたようだ。
 人間離れした速さで飛び回り豪火を辺りに散らすムツヤを見て「本当に勝てるのか?」といった不安が少しずつ生まれる。
「くそっ、なんて奴なの!!」
 女召喚術師は次々と砂粒を依代に精霊を呼び続けた。流石に仮面越しの額に汗もかいてくる。
「クソックソッ、止まりやがれ!!」
 触手でムツヤを捉えようとする男も苦戦をしていた。
「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇってワケか……」
 ムツヤに何らかの方法でトドメを刺そうとしている半円状の刀を持つ男は、しびれを切らし初めていたが、どうすることも出来ないでいた。
 そんな何もかもが異次元で無茶苦茶な戦いが5分ほど続いた時、やっと進展があった。ムツヤが地面に着地し、何故か動かなくなったのだ。
「しめたっ!!」
 そのスキを逃さずに、触手でムツヤの足、そして次に手を拘束する。ムツヤは抵抗の1つもしない。
「よっしゃ、後はあいつの首を吹き飛ばすだけだ!!」
 ずっと長い刀を握りタイミングを図っていた男は一気に魔力を込めてムツヤ目掛けて弾けるように飛んだ。その姿は青い閃光に見える。
 この刀は魔力を込めると、雷が走りありとあらゆる障害物を破壊しながら使用者と共に一直線に飛んでいく裏の道具だ。
 ただ、例によって熟練の戦士であるこの男でさえ魔力不足かつ、完璧に使いこなせてはいないので、使用は1度きりだ。2度目は無い。
 木をなぎ倒しながらムツヤに近付く閃光。
 ムツヤはそれを知ってか知らずか触手に縛られ、小さい精霊が全身にまとわり付いて小さい山のようになっている。
「死ねぇ!! 亜人の味方が!!!」
 瞬間、小さい精霊の山から光が漏れた。そして起こるのは……
 大爆発だった。
 閃光になってムツヤに近付いた男はそれを間近で受けてしまい、吹き飛ばされる。
 激しく体を木に打ち付け、手足が吹き飛び、全身の骨が砕け、絶命した。
 遺骸は爆発に巻き込まれ粉微塵になる。
 女召喚術師も、触手を操る男も大爆発から逃れようと走るが、吹き飛ぶ石や木々に全身を撃ち抜かれてボロボロになり。
「いや、やめてええええええええ!!!!」
「ちくしょおおおお来るなああああああ!!!!!」
 巻き込まれた。
 爆発が終わると、ムツヤを中心に何も残らなかった。そう、何も。
 人の気配が消えたことを感じ、ムツヤはギュッと目を瞑った。
 じいちゃんとの約束を破ってしまった。人を殺してはいけないという約束だ。
「ごめん、じいちゃん。ごめんなさい、殺した人……」
 そう呟いてムツヤは目を開いた。アシノはムツヤが人を殺す覚悟ができていないと思っていたがそれは違う。
 仲間を守るためだったらムツヤは修羅になる覚悟をしていた。
 ムツヤは何も知らないわけでは無かったのだ。モモやユモトが仲間を守るために敵を殺したこと。
 全部全部知っていたのだ。
 この世界は残酷だ。事実とは残酷だ。
 でも生きていかなくてはならない。仲間を守らなくてはいけない。
 ムツヤは涙を流しながら、震える手を合わせて敵達を弔った。
 そして、キエーウの支部を目指す。疲れからではなく、気の迷いから呼吸が荒くなる。
 支部へ行けばもっと多くの戦いが始まるだろう。もっと多くの人が死ぬ。
 だが、キエーウを放っておけば多くの亜人の人達が危ない目に遭う。
 守るためには奪わなくてはいけない。
 ムツヤは守りたいものが出来た。
 人の気配が多く感じられるようになった。キエーウの支部がある枯れたダンジョンが近いのだろう。
 ムツヤは走る速度を更に上げた。今だけはこれ以上何も考えられないように、今だけは仲間のために剣を振るうために。
 一方で仲間たちはどうしているかと言うと、遠くで起きた大爆発にそれぞれ武器を強く握りしめていた。
「ムツヤ殿……」
 モモは小さくその名前を漏らす。モモ達には大爆発の正体が敵のものか、ムツヤのものか分からなかった。
 ただ1つ分かることはムツヤが負けることは無いということだ。
「派手にやってるわね……」
 探知盤を見ながらルーは言う。怪しげな影も探知盤に浮かぶ点も無かった。ギルスからの連絡もない。
 誰もが油断をしてしまっていた。気付けなかった。ヨーリィさえも。
 森から音もなく人が飛び出した。それはモモ、ユモト、アシノ、そしてリースの居る後陣の横からだった。
 とっさに反応できたのはモモだけだった。その方角へ向けて剣を構える。
 次にアシノ、ビンのフタを弾き飛ばすがその人間には当たらなかった。
 ユモトは2人の行動を見て察知できた。とっさに防御壁を貼るが、既にその内側へ敵は入り込んでいた。
 そして敵は大鎌を構えて、何が起きた分からないリースを。
 腹から真っ二つにした。