ここをキャンプ地としよう 2
ー/ー
交代の時間の10分前、ヨーリィはバチッと目を覚ました。
「お兄ちゃん起きて」
魔力の補給のために手を繋いだまま一緒に眠っているムツヤを揺さぶって起こした。
「うーん、おはようヨーリィ」
眠そうにムツヤは起きる。テントを出るとユモトが魔法の訓練をしていた。
「そう、そこでドピュッと出す感じで!!」
「ど、ドピュッてですか!?」
相変わらずルーの教え方は直感的と言うか、下手だった。
「あ、おはようございますムツヤさん、ヨーリィちゃん!」
ムツヤを見てユモトはニコニコと笑って言う。
「交代の時間ね、もー眠すぎ、ねむたにえんだから私は寝るわよ!!」
ルーは椅子から立ち上がって家の中へと向かっていった。
「ユモトちゃんも私の部屋来て寝る?」
「な、何言ってるんですか!!」
終始ユモトはルーにからかわれていた。2人が家へ戻ると静寂が訪れる。
「皆さんを守るためにちゃんと見張らないとな、ヨーリィ」
「そうね、お兄ちゃん」
2人きりで相手が無口の場合、多くは気まずくなってしまうが、ムツヤとヨーリィの場合妙に通じ合う部分があるのかそんな事は起きないようだった。
「そうだ、ヨーリィって普段どんな事を考えてるの?」
「周囲に敵が居ないか、魔力の残量はどうか、主にその2つ」
聞きにくい事もムツヤはドンドン聞いていく。そしてヨーリィも淡々とそれに答える。
「マヨイギさんの事を考えたりはしないの?」
ヨーリィの育ての親とでも言うべきマヨイギの怪物の事を尋ねた。今度はうーんと少し考えて、言う。
「考えることはある」
「どういう事?」
「無事でいらっしゃるか、考える」
「ヨーリィにとってマヨイギさんってどんな存在なの?」
少し間が空く。
「大切な人」
その瞬間ムツヤのペンダントが紫色の光を放って、邪神サズァンとマヨイギの怪物の幻影が現れた。
「さ、サズァン様!? それにマヨイギさんも」
ムツヤは驚いて椅子から立ち上がる。マヨイギは今にも泣きそうな顔を必死に堪えていた。
「サズァン様、今、ヨーリィが…… ヨーリィが私の事を大切な人って……」
「良かったわねぇマヨイギ」
よしよしとサズァンはマヨイギの頭を撫でる。
「お久しぶりですサズァン様、マヨイギ様」
ヨーリィはと言うと特に照れるでも笑うでもなく、いつも通りの無表情で挨拶をした。
「ムツヤは私のことどう思ってるー?」
急に聞かれてムツヤは「えっ」と声を出す。
「俺も…… うーん、サズァン様は大切な人です」
そう言うとサズァンはムツヤに抱きついてヨシヨシと頭をなでた。幻影なのでもちろん感触はないが、ムツヤはデレデレした顔になる。
「うーん、良い子ねー。よく言えましたムツヤ!」
「ヨーリィ、私はいつも見守っているからな」
「はい、ありがとうございます」
ここで魔力が切れたのか、2人の幻影は消えてしまう。
マヨイギはヨーリィと離れてすっかり親ばかのようになっていた。
「行っちゃったね」
「そうね、お兄ちゃん」
親バカ組が消えて静かになった後は、特に話すこともなく、交代の時間までゆっくり過ごしていた。
「ムツヤ殿、お疲れさまです」
モモとリースが家から出てきた。ムツヤは椅子から立ち上がると眠気を感じてふわーっとあくびをする。
「後は私達が見張りをします。どうぞごゆっくりとお休みください。ヨーリィもご苦労だったな」
「それじゃよろしくおねがいします。テントに戻ろうかヨーリィ」
「うん、お兄ちゃん」
家に戻ると焚き火の前にモモとリースが座る。何か話題でも無いかとモモは話をしてみた。
「リース、何か聞きたいことは無いか? 分からないこと、困っていること、何でも良いぞ」
「何でもかぁ」
うーんと、リースは考えてモモに聞いてみる。
「モモはムツヤさんの事が好きなのけ?」
瞬間、モモはぽかんとした顔をし、しばらくするとアワアワと赤面をして言い返した。
「な、なにうぇを、何を言っているんだりりリース? そ、そんな証拠なんてあるのか?」
リースは思った、これは図星だべと。
「いや、普通に見ていたらわがるよ」
「そ、そんな事はないぞ。私はムツヤ殿の従者と言うだけで嫌いではないし、好きではあるが、あくまで恋愛感情としてではなく人として好きというか」
「あんのぉ、わたす恋愛感情とか言っでねーんだげど」
モモは自爆してしまったと思っていた。
リースは意地の悪い笑顔をして目を輝かせていた。
「やっぱ好きなんだべか!!」
「いや、違う、違くはないが違う!!」
「ムツヤさんとの馴れ初めを教えてほしいべ!」
「な、馴れ初めって…… まぁいい。旅の昔話をしてやる」
モモは咳払いをしてここ最近のことを思い出し、リースに語った。
――
――――
――――――
「なるほどなぁ、とても信じられないことばっかりだげど、本当の事なんだな」
まるでおとぎ話を聞いているようにリースは実感が沸かなかった。
「そうだ、ムツヤ殿と会ってから信じられないことの連続だ」
「モモもキエーウの…… 人間に仲間を…… 殺されちまっだんだな」
「……そうだ」
少し気まずくなってしまった。そしてリースは突然頭を下げる。
「私もキエーウに入っていただ、本当にすまねぇ!!」
「あ、いや、良いんだ。リースが悪いわけではない」
そうだ、リースも亜人に両親を殺されていた。
だからといってキエーウに入って良い理由にはならないが、少なくともその一件がなければリースはキエーウに入っていなかっただろう。
「私、今なら思うんだ。人間が亜人を奴隷なんかにしていたからこんな事になってるんだって」
「100年も前の話だ」
オークの寿命は人間とほぼ同じなのでモモはその時代を知らない。だがエルフなどの長命の種族の中にはその時代を生きたものも大勢いる。
「憎しみの連鎖は私達の世代で断ち切らなくてはならない」
モモが言うとリースは顔を上げた。
「あ、あぁ、そうだな!!」
まもなく夜が明け、地平線の向こうから光が差し込んでくる。その光は2人を照らすだろう。
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「お兄ちゃん起きて」
魔力の補給のために手を繋いだまま一緒に眠っているムツヤを揺さぶって起こした。
「うーん、おはようヨーリィ」
眠そうにムツヤは起きる。テントを出るとユモトが魔法の訓練をしていた。
「そう、そこでドピュッと出す感じで!!」
「ど、ドピュッてですか!?」
相変わらずルーの教え方は直感的と言うか、下手だった。
「あ、おはようございますムツヤさん、ヨーリィちゃん!」
ムツヤを見てユモトはニコニコと笑って言う。
「交代の時間ね、もー眠すぎ、ねむたにえんだから私は寝るわよ!!」
ルーは椅子から立ち上がって家の中へと向かっていった。
「ユモトちゃんも私の部屋来て寝る?」
「な、何言ってるんですか!!」
終始ユモトはルーにからかわれていた。2人が家へ戻ると静寂が訪れる。
「皆さんを守るためにちゃんと見張らないとな、ヨーリィ」
「そうね、お兄ちゃん」
2人きりで相手が無口の場合、多くは気まずくなってしまうが、ムツヤとヨーリィの場合妙に通じ合う部分があるのかそんな事は起きないようだった。
「そうだ、ヨーリィって普段どんな事を考えてるの?」
「周囲に敵が居ないか、魔力の残量はどうか、主にその2つ」
聞きにくい事もムツヤはドンドン聞いていく。そしてヨーリィも淡々とそれに答える。
「マヨイギさんの事を考えたりはしないの?」
ヨーリィの育ての親とでも言うべきマヨイギの怪物の事を尋ねた。今度はうーんと少し考えて、言う。
「考えることはある」
「どういう事?」
「無事でいらっしゃるか、考える」
「ヨーリィにとってマヨイギさんってどんな存在なの?」
少し間が空く。
「大切な人」
その瞬間ムツヤのペンダントが紫色の光を放って、邪神サズァンとマヨイギの怪物の幻影が現れた。
「さ、サズァン様!? それにマヨイギさんも」
ムツヤは驚いて椅子から立ち上がる。マヨイギは今にも泣きそうな顔を必死に堪えていた。
「サズァン様、今、ヨーリィが…… ヨーリィが私の事を大切な人って……」
「良かったわねぇマヨイギ」
よしよしとサズァンはマヨイギの頭を撫でる。
「お久しぶりですサズァン様、マヨイギ様」
ヨーリィはと言うと特に照れるでも笑うでもなく、いつも通りの無表情で挨拶をした。
「ムツヤは私のことどう思ってるー?」
急に聞かれてムツヤは「えっ」と声を出す。
「俺も…… うーん、サズァン様は大切な人です」
そう言うとサズァンはムツヤに抱きついてヨシヨシと頭をなでた。幻影なのでもちろん感触はないが、ムツヤはデレデレした顔になる。
「うーん、良い子ねー。よく言えましたムツヤ!」
「ヨーリィ、私はいつも見守っているからな」
「はい、ありがとうございます」
ここで魔力が切れたのか、2人の幻影は消えてしまう。
マヨイギはヨーリィと離れてすっかり親ばかのようになっていた。
「行っちゃったね」
「そうね、お兄ちゃん」
親バカ組が消えて静かになった後は、特に話すこともなく、交代の時間までゆっくり過ごしていた。
「ムツヤ殿、お疲れさまです」
モモとリースが家から出てきた。ムツヤは椅子から立ち上がると眠気を感じてふわーっとあくびをする。
「後は私達が見張りをします。どうぞごゆっくりとお休みください。ヨーリィもご苦労だったな」
「それじゃよろしくおねがいします。テントに戻ろうかヨーリィ」
「うん、お兄ちゃん」
家に戻ると焚き火の前にモモとリースが座る。何か話題でも無いかとモモは話をしてみた。
「リース、何か聞きたいことは無いか? 分からないこと、困っていること、何でも良いぞ」
「何でもかぁ」
うーんと、リースは考えてモモに聞いてみる。
「モモはムツヤさんの事が好きなのけ?」
瞬間、モモはぽかんとした顔をし、しばらくするとアワアワと赤面をして言い返した。
「な、なにうぇを、何を言っているんだりりリース? そ、そんな証拠なんてあるのか?」
リースは思った、これは図星だべと。
「いや、普通に見ていたらわがるよ」
「そ、そんな事はないぞ。私はムツヤ殿の従者と言うだけで嫌いではないし、好きではあるが、あくまで恋愛感情としてではなく人として好きというか」
「あんのぉ、わたす恋愛感情とか言っでねーんだげど」
モモは自爆してしまったと思っていた。
リースは意地の悪い笑顔をして目を輝かせていた。
「やっぱ好きなんだべか!!」
「いや、違う、違くはないが違う!!」
「ムツヤさんとの馴れ初めを教えてほしいべ!」
「な、馴れ初めって…… まぁいい。旅の昔話をしてやる」
モモは咳払いをしてここ最近のことを思い出し、リースに語った。
――
――――
――――――
「なるほどなぁ、とても信じられないことばっかりだげど、本当の事なんだな」
まるでおとぎ話を聞いているようにリースは実感が沸かなかった。
「そうだ、ムツヤ殿と会ってから信じられないことの連続だ」
「モモもキエーウの…… 人間に仲間を…… 殺されちまっだんだな」
「……そうだ」
少し気まずくなってしまった。そしてリースは突然頭を下げる。
「私もキエーウに入っていただ、本当にすまねぇ!!」
「あ、いや、良いんだ。リースが悪いわけではない」
そうだ、リースも亜人に両親を殺されていた。
だからといってキエーウに入って良い理由にはならないが、少なくともその一件がなければリースはキエーウに入っていなかっただろう。
「私、今なら思うんだ。人間が亜人を奴隷なんかにしていたからこんな事になってるんだって」
「100年も前の話だ」
オークの寿命は人間とほぼ同じなのでモモはその時代を知らない。だがエルフなどの長命の種族の中にはその時代を生きたものも大勢いる。
「憎しみの連鎖は私達の世代で断ち切らなくてはならない」
モモが言うとリースは顔を上げた。
「あ、あぁ、そうだな!!」
まもなく夜が明け、地平線の向こうから光が差し込んでくる。その光は2人を照らすだろう。