リースと共に 3
ー/ー
ムツヤ達は、亜人を滅ぼそうとしているキエーウの元メンバーである『リース』の案内でその本拠地を叩こうとしていた。
リースが言うにはここから更に南へと下った枯れたダンジョンの中にあるらしい。
「ところで、『枯れたダンジョン』って何ですか?」
ムツヤが皆に尋ねると、アシノが答えてくれた。
「枯れたダンジョンってのは、物資や魔石の類が取り尽くされて魔物も生まれなくなったダンジョンだ。冒険者が寄り付かないから、盗賊団や山賊なんかのアジトになることが多い」
なるほどとムツヤは納得する。野営の撤収を終えるとアシノが一応周りを警戒してムツヤに言った。
「ムツヤ、カバンを貸せ。リースの武器と防具を見繕う」
はい、と言ってムツヤはカバンをアシノに渡した。
「お前、得意な武器はなんだ?」
「そ、それが…… キエーウに入る前は武器なんて使ったことなぐで……」
「そうか、とりあえずこの鎖かたびらは中に着ておけ。それと護身用の短剣を渡しておく」
「すみまぜん……」
「いいか、お前はもうキエーウに狙われる側なんだから常に周りを警戒して、何かあったら私達の後ろに隠れるか、逃げろ」
「はい!」
リースの装備も整え、ムツヤ達はその枯れたダンジョンを目指し歩き始める。
「なーんていうか、歩きっぱなしで疲れるわねー。ムツヤっち、何かこう空でも飛べる道具ないのー?」
歩いて5分でルーが文句を言い出した。ユモトは「ははは」と苦笑いをして、ムツヤはウーンと何かを考えていた。
「そういうのは無いですね……」
「ムツヤのカバンのおかげで大荷物を背負わなくて済んでるんだ、それで充分だろ」
アシノが言った後もルーはぶつぶつと文句を言っていてユモトとモモがまぁまぁとなだめていた。
「そうよ!! 私達に足りないものに今気が付いたわ!」
一同がどうせまたくだらない事を言うんだろうなと思っていたが構わずにルーは言う。
「馬よ馬!! お馬さんよ!!」
「馬か、たしかに馬車でもありゃ楽だが……」
「もう歩くのつかれたー!!!」
ルーが騒ぎ出したのでアシノは頭にチョップを食らわせて「へぴち」と言わせる。
「考えてみれば僕たちずっと歩きっぱなしですね……」
ムツヤやモモならいざ知れず、ついこの間まで寝たきりだったユモトには体力的に辛い部分があった。
「あ、馬ありました」
ムツヤがそう言うと全員の視線が集まった。
「え、マジ?」
ルーは素が出て思わず言った。ムツヤは「はい」と言ってカバンをゴソゴソといじる。
「確かカバンに生き物は入れられないはずでは?」
付き合いの長いモモが覚えていたことを言うと、ムツヤは言葉を返しながらカバンから馬のぬいぐるみを取り出した。
「はい、これ生き物じゃないんで」
そう言ってムツヤが取り出したのは小さな馬のぬいぐるみだ。
「あら可愛い、って! こんなんじゃ乗れないわよ!」
ルーがツッコミを入れるが、次の瞬間言葉を失った。地面においた馬はみるみるうちに大きくなっていったのだ。
まるで本物の馬のようになったぬいぐるみは、ヒイインといなないて足を上下に動かす。
「お前な、そんな便利なもの持ってんならもっと早く出せ……」
「え、あ、すみませんでした! すっかり忘れてて……」
一同は今までの歩きの旅は何だったのだろうと思っていた。
ムツヤは荷車も本から召喚し、そこには立派な荷馬車が出来た。
「何かこう、ポンポン召喚されると召喚術師の自信を失いそうね……」
複雑な気持ちになりながらもルーは馬を撫でてみる。
「良い馬ですね、それに本当に本物みたいです」
モモは感心して言った。
「すげぇ、こんなごどができるなんて!」
裏の道具の真価を初めて見たリースは少し興奮気味だ。
その後、荷馬車は馬の扱いをしたことがあるモモが運転することになった。
荷馬車の中でムツヤ達は座ってくつろいでいた。アシノは目をつぶって寝ており、ユモトもコクリコクリと眠そうにしている。
ムツヤとヨーリィは手を繋いで外の景色を眺め、ルーはモモの隣に座って馬の観察をしていた。
その時リースは思う。「あれ、逃げようと思えば逃げられるんでねぇか?」と。
今も亜人が憎くないかと言われたらそうは思えない。キエーウには裏切られて戻ることは出来ないが、どこかへ逃げることならできる。
「リース、馬車に酔ってはいないか?」
大きめの声でモモが言うと考えを悟られたのではと、ビクッとしてリースは答えた。
「あー、あぁー、だいじょーぶだー!」
「そうかー、何かあったらいつでも言うんだぞー」
「随分モモちゃんあの子を気にかけているわね」
モモの隣に座るルーが言うと「えぇ、まぁ」と短い返事をした。
馬車に乗ってすっかり日も落ちてきた。途中魔物の群れに襲われもしたが、ムツヤが馬車に乗ったまま石ころをぶつけて壊滅させた。
「よし、ここをキャンプ地とするわよ!!」
ルーが言うと皆で野営の準備に取り掛かかる。馬車に乗っていただけあり、体力は有り余っていた。
「アシノ、起きなさいアシノ!!」
アシノはほとんど馬車を寝て過ごしていた。ルーにペチペチ頬を叩かれてやっと起きる。
「なんだ、もう着いたのか?」
「違うわよ!! キャンプの準備!!」
ふわあっとあくびを1つしてアシノは周りを見渡した。夕焼け空がだだっ広い森を照らして不気味だけど綺麗だなと思う。
周りに人の気配は無いので今日は便利な魔導書から家をポンと取り出してあっという間に設営は完了だ。
それを見てリースは目を丸くしていた。
ユモトは鼻歌交じりに料理を作る。ムツヤはユモトから馬車で教わった魔物避けの結界を試しに行った。
「えーっと、こうしてこうして……」
次の瞬間森の中がざわめき出し、魔物が次々に奇声を上げながら逃げていった。
「あのアホ…… また何か騒ぎを起こしやがったか!?」
アシノはワインボトルを構え、モモとヨーリィも武器を構える。リースはえ? え? とオロオロしていた。
「あー、多分ですけど、魔物避けの結界のせいだと思います」
ユモトが言うとアシノは「あー」と言って納得する。
「で、でもごれっでおがしいでねーか!?」
「えーっと、魔物避けの結界って魔力を使って魔物で言うマーキングを行うんです。魔力が強ければ強いほどより強い魔物、より広い範囲に効くので……」
「ムツヤ殿の魔力ならありえるな……」
そして、騒動を起こした張本人が帰って来た。
「あれ、皆さんどうじたんですか?」
「どうしたんですかじゃねぇ!! お前は手加減とか限度ってモンを覚えろ!!」
「え、あ、す、ずみまぜん!」
思わずリースは笑ってしまう。ムツヤは今までの人生観がひっくり返るほど、とんでもない人間だ。もう笑うしか無い。
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リースが言うにはここから更に南へと下った枯れたダンジョンの中にあるらしい。
「ところで、『枯れたダンジョン』って何ですか?」
ムツヤが皆に尋ねると、アシノが答えてくれた。
「枯れたダンジョンってのは、物資や魔石の類が取り尽くされて魔物も生まれなくなったダンジョンだ。冒険者が寄り付かないから、盗賊団や山賊なんかのアジトになることが多い」
なるほどとムツヤは納得する。野営の撤収を終えるとアシノが一応周りを警戒してムツヤに言った。
「ムツヤ、カバンを貸せ。リースの武器と防具を見繕う」
はい、と言ってムツヤはカバンをアシノに渡した。
「お前、得意な武器はなんだ?」
「そ、それが…… キエーウに入る前は武器なんて使ったことなぐで……」
「そうか、とりあえずこの鎖かたびらは中に着ておけ。それと護身用の短剣を渡しておく」
「すみまぜん……」
「いいか、お前はもうキエーウに狙われる側なんだから常に周りを警戒して、何かあったら私達の後ろに隠れるか、逃げろ」
「はい!」
リースの装備も整え、ムツヤ達はその枯れたダンジョンを目指し歩き始める。
「なーんていうか、歩きっぱなしで疲れるわねー。ムツヤっち、何かこう空でも飛べる道具ないのー?」
歩いて5分でルーが文句を言い出した。ユモトは「ははは」と苦笑いをして、ムツヤはウーンと何かを考えていた。
「そういうのは無いですね……」
「ムツヤのカバンのおかげで大荷物を背負わなくて済んでるんだ、それで充分だろ」
アシノが言った後もルーはぶつぶつと文句を言っていてユモトとモモがまぁまぁとなだめていた。
「そうよ!! 私達に足りないものに今気が付いたわ!」
一同がどうせまたくだらない事を言うんだろうなと思っていたが構わずにルーは言う。
「馬よ馬!! お馬さんよ!!」
「馬か、たしかに馬車でもありゃ楽だが……」
「もう歩くのつかれたー!!!」
ルーが騒ぎ出したのでアシノは頭にチョップを食らわせて「へぴち」と言わせる。
「考えてみれば僕たちずっと歩きっぱなしですね……」
ムツヤやモモならいざ知れず、ついこの間まで寝たきりだったユモトには体力的に辛い部分があった。
「あ、馬ありました」
ムツヤがそう言うと全員の視線が集まった。
「え、マジ?」
ルーは素が出て思わず言った。ムツヤは「はい」と言ってカバンをゴソゴソといじる。
「確かカバンに生き物は入れられないはずでは?」
付き合いの長いモモが覚えていたことを言うと、ムツヤは言葉を返しながらカバンから馬のぬいぐるみを取り出した。
「はい、これ生き物じゃないんで」
そう言ってムツヤが取り出したのは小さな馬のぬいぐるみだ。
「あら可愛い、って! こんなんじゃ乗れないわよ!」
ルーがツッコミを入れるが、次の瞬間言葉を失った。地面においた馬はみるみるうちに大きくなっていったのだ。
まるで本物の馬のようになったぬいぐるみは、ヒイインといなないて足を上下に動かす。
「お前な、そんな便利なもの持ってんならもっと早く出せ……」
「え、あ、すみませんでした! すっかり忘れてて……」
一同は今までの歩きの旅は何だったのだろうと思っていた。
ムツヤは荷車も本から召喚し、そこには立派な荷馬車が出来た。
「何かこう、ポンポン召喚されると召喚術師の自信を失いそうね……」
複雑な気持ちになりながらもルーは馬を撫でてみる。
「良い馬ですね、それに本当に本物みたいです」
モモは感心して言った。
「すげぇ、こんなごどができるなんて!」
裏の道具の真価を初めて見たリースは少し興奮気味だ。
その後、荷馬車は馬の扱いをしたことがあるモモが運転することになった。
荷馬車の中でムツヤ達は座ってくつろいでいた。アシノは目をつぶって寝ており、ユモトもコクリコクリと眠そうにしている。
ムツヤとヨーリィは手を繋いで外の景色を眺め、ルーはモモの隣に座って馬の観察をしていた。
その時リースは思う。「あれ、逃げようと思えば逃げられるんでねぇか?」と。
今も亜人が憎くないかと言われたらそうは思えない。キエーウには裏切られて戻ることは出来ないが、どこかへ逃げることならできる。
「リース、馬車に酔ってはいないか?」
大きめの声でモモが言うと考えを悟られたのではと、ビクッとしてリースは答えた。
「あー、あぁー、だいじょーぶだー!」
「そうかー、何かあったらいつでも言うんだぞー」
「随分モモちゃんあの子を気にかけているわね」
モモの隣に座るルーが言うと「えぇ、まぁ」と短い返事をした。
馬車に乗ってすっかり日も落ちてきた。途中魔物の群れに襲われもしたが、ムツヤが馬車に乗ったまま石ころをぶつけて壊滅させた。
「よし、ここをキャンプ地とするわよ!!」
ルーが言うと皆で野営の準備に取り掛かかる。馬車に乗っていただけあり、体力は有り余っていた。
「アシノ、起きなさいアシノ!!」
アシノはほとんど馬車を寝て過ごしていた。ルーにペチペチ頬を叩かれてやっと起きる。
「なんだ、もう着いたのか?」
「違うわよ!! キャンプの準備!!」
ふわあっとあくびを1つしてアシノは周りを見渡した。夕焼け空がだだっ広い森を照らして不気味だけど綺麗だなと思う。
周りに人の気配は無いので今日は便利な魔導書から家をポンと取り出してあっという間に設営は完了だ。
それを見てリースは目を丸くしていた。
ユモトは鼻歌交じりに料理を作る。ムツヤはユモトから馬車で教わった魔物避けの結界を試しに行った。
「えーっと、こうしてこうして……」
次の瞬間森の中がざわめき出し、魔物が次々に奇声を上げながら逃げていった。
「あのアホ…… また何か騒ぎを起こしやがったか!?」
アシノはワインボトルを構え、モモとヨーリィも武器を構える。リースはえ? え? とオロオロしていた。
「あー、多分ですけど、魔物避けの結界のせいだと思います」
ユモトが言うとアシノは「あー」と言って納得する。
「で、でもごれっでおがしいでねーか!?」
「えーっと、魔物避けの結界って魔力を使って魔物で言うマーキングを行うんです。魔力が強ければ強いほどより強い魔物、より広い範囲に効くので……」
「ムツヤ殿の魔力ならありえるな……」
そして、騒動を起こした張本人が帰って来た。
「あれ、皆さんどうじたんですか?」
「どうしたんですかじゃねぇ!! お前は手加減とか限度ってモンを覚えろ!!」
「え、あ、す、ずみまぜん!」
思わずリースは笑ってしまう。ムツヤは今までの人生観がひっくり返るほど、とんでもない人間だ。もう笑うしか無い。