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「ふたりが箱根に行った日の夕方、俺と約束していたからさ。流れで事情は全部聞いちゃったんだけど。スミレさんは、桔平の才能に惚れ込んでるだけなわけ?」
スミレは翔流を真っすぐ見つめている。口を出すと余計ややこしくなるかもしれないと思って、オレはなんとなく押し黙ってしまった。
「もちろん、桔平の才能にも惚れ込んではいるけど」
「一応、こいつの友達としては心配でさ。こう見えて、めちゃくちゃ純粋な奴だし。しかも超不器用。恋愛偏差値、低いんだよね」
「そうね、それは私にも分かる」
「でしょ? だから、傷つく姿は見たくないわけ。もし、スミレさんが遊びのつもりなら……」
「軽い女と思われているなら、とても心外なんだけど。誰彼構わずセックスする趣味はないから」
言葉を遮って、スミレは翔流を睨みつけた。それでも翔流は怯んでいない。一体どうなっているんだ、こいつの神経は。
「でもこいつ、まだ高1だよ。年上のスミレさんから見たらガキじゃん?」
「人を好きになるのに、年齢とか性別とか肩書きなんて関係ないでしょ? それにたった3歳差なのに、上とか下とか線引きしないで」
「女にも性欲はあるわけじゃんか。そんで女のほうが、セックスした相手に情が移りやすいって言うし」
「だからなに? 好きでもないのに体を許して、付き合う気もないのに桔平を振り回しているって言いたいの?」
スミレは明らかに憤慨している様子だった。初対面のガキにこんなことを言われたら、そうなるのも当然だろう。スミレは非常に気が強く、プライドも高かった。
そして翔流は翔流で、わざとスミレの癇に障るような言い方をしている。将来は弁護士か検察官になりたいらしいが、確かに向いていると思った。
「別にそうは言っていないけどさぁ。気持ち伝える前に、ヤッちゃってるわけじゃん? それって、セフレみたいなものなんじゃないの」
「そんなつもりないけど」
「じゃあ桔平のこと、好きなわけ?」
「好きよ」
スミレがきっぱりと言い放つ。あまりに迷いなく言うものだから、オレは思わず目を丸くしてしまった。
「……だってよ、桔平」
オレに視線を向けて、翔流がニヤリと笑う。ムカつく表情だ。そして満足げな顔で背伸びをすると、腹をさすりながら立ち上がった。
「よし。満腹になったし気が済んだから、俺は帰るね。あとは若いおふたりで、ごゆっくり~。あ、避妊はしろよ」
まるで竜巻のように感情を掻き回したあと、翔流はそそくさと去っていった。どうしろってんだよ、この状況。
スミレは眉間に皺を寄せたまま、俯いている。オレがなにか言ったほうがいいのか。しかし、気の利いた言葉など思い浮かばない。
「……売り言葉に買い言葉ってやつじゃねぇの」
重苦しい空気に耐えられなくなってそう言うと、スミレの鋭い視線が突き刺さった。
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スミレは翔流を真っすぐ見つめている。口を出すと余計ややこしくなるかもしれないと思って、オレはなんとなく押し黙ってしまった。
「もちろん、桔平の才能にも惚れ込んではいるけど」
「一応、こいつの友達としては心配でさ。こう見えて、めちゃくちゃ純粋な奴だし。しかも超不器用。恋愛偏差値、低いんだよね」
「そうね、それは私にも分かる」
「でしょ? だから、傷つく姿は見たくないわけ。もし、スミレさんが遊びのつもりなら……」
「軽い女と思われているなら、とても心外なんだけど。誰彼構わずセックスする趣味はないから」
言葉を遮って、スミレは翔流を睨みつけた。それでも翔流は怯んでいない。一体どうなっているんだ、こいつの神経は。
「でもこいつ、まだ高1だよ。年上のスミレさんから見たらガキじゃん?」
「人を好きになるのに、年齢とか性別とか肩書きなんて関係ないでしょ? それにたった3歳差なのに、上とか下とか線引きしないで」
「女にも性欲はあるわけじゃんか。そんで女のほうが、セックスした相手に情が移りやすいって言うし」
「だからなに? 好きでもないのに体を許して、付き合う気もないのに桔平を振り回しているって言いたいの?」
スミレは明らかに憤慨している様子だった。初対面のガキにこんなことを言われたら、そうなるのも当然だろう。スミレは非常に気が強く、プライドも高かった。
そして翔流は翔流で、わざとスミレの癇に障るような言い方をしている。将来は弁護士か検察官になりたいらしいが、確かに向いていると思った。
「別にそうは言っていないけどさぁ。気持ち伝える前に、ヤッちゃってるわけじゃん? それって、セフレみたいなものなんじゃないの」
「そんなつもりないけど」
「じゃあ桔平のこと、好きなわけ?」
「好きよ」
スミレがきっぱりと言い放つ。あまりに迷いなく言うものだから、オレは思わず目を丸くしてしまった。
「……だってよ、桔平」
オレに視線を向けて、翔流がニヤリと笑う。ムカつく表情だ。そして満足げな顔で背伸びをすると、腹をさすりながら立ち上がった。
「よし。満腹になったし気が済んだから、俺は帰るね。あとは若いおふたりで、ごゆっくり~。あ、避妊はしろよ」
まるで竜巻のように感情を掻き回したあと、翔流はそそくさと去っていった。どうしろってんだよ、この状況。
スミレは眉間に皺を寄せたまま、俯いている。オレがなにか言ったほうがいいのか。しかし、気の利いた言葉など思い浮かばない。
「……売り言葉に買い言葉ってやつじゃねぇの」
重苦しい空気に耐えられなくなってそう言うと、スミレの鋭い視線が突き刺さった。