星に例えるのなら
ー/ー「…………あ、オリオン座だ」
ふと夜空を見上げた恋人の声に、つられて顔を上げる。
友人達と盛大な鍋パーティーをやった、その帰り道。街頭もない田舎道を照らすのは、夜空に瞬く沢山の星だ。
「……え、どれ?」
「よく見てみなさいよ、あそこにリボンっぽい星座があるでしょ」
星なんて正直どれも同じにしか見えないため、当然リボンなんて分かる筈もない。目を細めて探していると、その様子を見ていたのか彼女は小さな笑い声を漏らす。
「ふふっ、すっごい悪人面」
「しょーがねぇだろ、星なんてどれも同じに見えるし……」
「ほら、あそこに3つ連なっている星があるでしょ……見える?」
ドキッと跳ね上がった鼓動。おもむろに腕へ抱き付いて来た彼女が顔を寄せたのだ。
吐息を感じるほど近い距離にドキドキするが、彼女は気付いていないのか指を空へ向けている。
雑念から逃げるように視線を向け、彷徨わせれば――ようやく3つ連なっている星が見えた。
「うお、ホントだ。スッゲー分かりやすい!」
「ほらぁ、ちゃんと見れば分かるんだって」
寧ろ何故気付かなかったのかと思うほど、リボンの星座はハッキリ夜空に浮かんでいた。
見付けた喜びについ興奮してしまうと、彼女もまた嬉しそうに笑う。
「オリオン……つったっけ? それがあのリボンの名前?」
「そっ。星座にはそれぞれ由来があって、あのオリオン座は『オリオン』っていう凄腕の狩人の名前なの」
そういった彼女いわく、そのオリオンとやらは『地上に住む全ての動物を狩ってやるぜ!』と言ったために、大地の女神がサソリで殺したらしい。
いや怖すぎだろ、もしかしたら冗談だったかも知れないじゃん……。
「その後ゼウスって絶対神がその勇壮を見込んで星座にしたらしいけれど、彼を刺し殺したサソリも一緒に星座になったんだって。なんだか粋だよね」
「オリオンさんも報われねぇな……」
粋というより嫌がらせだろ。
まぁ星座になっても強く生きろよと、知り合いでもなんでもないが強く同情してしまった。
「……それにしてもちゃんとそれらしい話があるんだな」
「そうだね。こいぬ座は当初なかったらしいけれど、今はほとんどの星座に物語があるんじゃないかな?」
「こいぬ座?」
「ちょっと見え辛いかな……あそこにあるのがこいぬ座。ちなみに下の方に一際輝く星があるでしょう? あれは『おおいぬ座』の1つで、『シリウス』って言うの!」
再び示された星座は正直全く分からない。が、そのシリウスとやらが他の星より強い光を持っていることだけは分かった。
「確かに滅茶苦茶明るいな、あの星。確か何十億光年と前の光が届いているんだろ?」
「よく知ってるね。そう、あれは太陽を除く恒星の中ではいっちばん明るい星の1つなの。『一等星』って言うんだよ」
確かに『恒星の中で一番明るい』と言われるだけあり、青白い光はハッキリと分かった。
星1つにも名前が付いているのか。今までそんなに気にしていなかったが、星というものは案外奥が深いらしい。なんて思っていると、隣で同じように夜空を見上げていた彼女が言う。
「凄いよね。あの星達にはみーんな、1つ1つの物語があるんだよ?」
「物語?」
「オリオン座みたいに神話だったり、星を見付けた経緯だったり……アンタの言う通り過去の光が届いているから、もしかしたら今見ている星はもうないかもしんない。それを考えるとさ、愛おしくならない?」
こちらへ顔を向けたその表情はとても優しく、星の光を受けた瞳は柔らかい光を孕む。
素直で実直、大凶を引いただけで大騒ぎする娘だけれど――彼女が見付けてくれたからこそ自分はここにいるのだ。
「まるで人間みたい! 私達もまた、星と同じように必死で輝いて存在を知らしめているんだよ!」
「……なんじゃそりゃ」
両手を広げて屈託なく笑う彼女に、自分も釣られて笑う。
広大な土地に密集する人間は必死で己を輝かせる。
自分にとって『唯一』の光を見付けるために……まるで己の存在を知らしめる、星のように。
「じゃあ、もしオレ達が星ならお前は……」
「え、何?」
「……いや、やっぱなんでもねーや」
――もし星に例えるとしたら、彼女こそ『シリウス』だろうな。
自分で考えたクセにロマンチスト過ぎて、滅茶苦茶恥ずかしい。
口にしたらからかわれること間違いないので、首を傾げる彼女には絶対伝えないようにしようと決めた。
「え、何よ気になるじゃない。言ってよー!」
「ぜってー言わねー、だって言ったら調子に乗るもんお前!」
「はぁ? 言いなさいよー!」
追及から思わず逃げ出せば、彼女は笑いながら追いかける。
そんな他愛ないやり取りも星達は優しく見守ってくれたのであった。
雑念から逃げるように視線を向け、彷徨わせれば――ようやく3つ連なっている星が見えた。
「うお、ホントだ。スッゲー分かりやすい!」
「ほらぁ、ちゃんと見れば分かるんだって」
寧ろ何故気付かなかったのかと思うほど、リボンの星座はハッキリ夜空に浮かんでいた。
見付けた喜びについ興奮してしまうと、彼女もまた嬉しそうに笑う。
「オリオン……つったっけ? それがあのリボンの名前?」
「そっ。星座にはそれぞれ由来があって、あのオリオン座は『オリオン』っていう凄腕の狩人の名前なの」
そういった彼女いわく、そのオリオンとやらは『地上に住む全ての動物を狩ってやるぜ!』と言ったために、大地の女神がサソリで殺したらしい。
いや怖すぎだろ、もしかしたら冗談だったかも知れないじゃん……。
「その後ゼウスって絶対神がその勇壮を見込んで星座にしたらしいけれど、彼を刺し殺したサソリも一緒に星座になったんだって。なんだか粋だよね」
「オリオンさんも報われねぇな……」
粋というより嫌がらせだろ。
まぁ星座になっても強く生きろよと、知り合いでもなんでもないが強く同情してしまった。
「……それにしてもちゃんとそれらしい話があるんだな」
「そうだね。こいぬ座は当初なかったらしいけれど、今はほとんどの星座に物語があるんじゃないかな?」
「こいぬ座?」
「ちょっと見え辛いかな……あそこにあるのがこいぬ座。ちなみに下の方に一際輝く星があるでしょう? あれは『おおいぬ座』の1つで、『シリウス』って言うの!」
再び示された星座は正直全く分からない。が、そのシリウスとやらが他の星より強い光を持っていることだけは分かった。
「確かに滅茶苦茶明るいな、あの星。確か何十億光年と前の光が届いているんだろ?」
「よく知ってるね。そう、あれは太陽を除く恒星の中ではいっちばん明るい星の1つなの。『一等星』って言うんだよ」
確かに『恒星の中で一番明るい』と言われるだけあり、青白い光はハッキリと分かった。
星1つにも名前が付いているのか。今までそんなに気にしていなかったが、星というものは案外奥が深いらしい。なんて思っていると、隣で同じように夜空を見上げていた彼女が言う。
「凄いよね。あの星達にはみーんな、1つ1つの物語があるんだよ?」
「物語?」
「オリオン座みたいに神話だったり、星を見付けた経緯だったり……アンタの言う通り過去の光が届いているから、もしかしたら今見ている星はもうないかもしんない。それを考えるとさ、愛おしくならない?」
こちらへ顔を向けたその表情はとても優しく、星の光を受けた瞳は柔らかい光を孕む。
素直で実直、大凶を引いただけで大騒ぎする娘だけれど――彼女が見付けてくれたからこそ自分はここにいるのだ。
「まるで人間みたい! 私達もまた、星と同じように必死で輝いて存在を知らしめているんだよ!」
「……なんじゃそりゃ」
両手を広げて屈託なく笑う彼女に、自分も釣られて笑う。
広大な土地に密集する人間は必死で己を輝かせる。
自分にとって『唯一』の光を見付けるために……まるで己の存在を知らしめる、星のように。
「じゃあ、もしオレ達が星ならお前は……」
「え、何?」
「……いや、やっぱなんでもねーや」
――もし星に例えるとしたら、彼女こそ『シリウス』だろうな。
自分で考えたクセにロマンチスト過ぎて、滅茶苦茶恥ずかしい。
口にしたらからかわれること間違いないので、首を傾げる彼女には絶対伝えないようにしようと決めた。
「え、何よ気になるじゃない。言ってよー!」
「ぜってー言わねー、だって言ったら調子に乗るもんお前!」
「はぁ? 言いなさいよー!」
追及から思わず逃げ出せば、彼女は笑いながら追いかける。
そんな他愛ないやり取りも星達は優しく見守ってくれたのであった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「…………あ、オリオン座だ」
ふと夜空を見上げた恋人の声に、つられて顔を上げる。
友人達と盛大な鍋パーティーをやった、その帰り道。街頭もない田舎道を照らすのは、夜空に瞬く沢山の星だ。
友人達と盛大な鍋パーティーをやった、その帰り道。街頭もない田舎道を照らすのは、夜空に瞬く沢山の星だ。
「……え、どれ?」
「よく見てみなさいよ、あそこにリボンっぽい星座があるでしょ」
「よく見てみなさいよ、あそこにリボンっぽい星座があるでしょ」
星なんて正直どれも同じにしか見えないため、当然リボンなんて分かる筈もない。目を細めて探していると、その様子を見ていたのか彼女は小さな笑い声を漏らす。
「ふふっ、すっごい悪人面」
「しょーがねぇだろ、星なんてどれも同じに見えるし……」
「ほら、あそこに3つ連なっている星があるでしょ……見える?」
「しょーがねぇだろ、星なんてどれも同じに見えるし……」
「ほら、あそこに3つ連なっている星があるでしょ……見える?」
ドキッと跳ね上がった鼓動。おもむろに腕へ抱き付いて来た彼女が顔を寄せたのだ。
吐息を感じるほど近い距離にドキドキするが、彼女は気付いていないのか指を空へ向けている。
雑念から逃げるように視線を向け、彷徨わせれば――ようやく3つ連なっている星が見えた。
「うお、ホントだ。スッゲー分かりやすい!」
「ほらぁ、ちゃんと見れば分かるんだって」
「ほらぁ、ちゃんと見れば分かるんだって」
寧ろ何故気付かなかったのかと思うほど、リボンの星座はハッキリ夜空に浮かんでいた。
見付けた喜びについ興奮してしまうと、彼女もまた嬉しそうに笑う。
見付けた喜びについ興奮してしまうと、彼女もまた嬉しそうに笑う。
「オリオン……つったっけ? それがあのリボンの名前?」
「そっ。星座にはそれぞれ由来があって、あのオリオン座は『オリオン』っていう凄腕の狩人の名前なの」
「そっ。星座にはそれぞれ由来があって、あのオリオン座は『オリオン』っていう凄腕の狩人の名前なの」
そういった彼女いわく、そのオリオンとやらは『地上に住む全ての動物を狩ってやるぜ!』と言ったために、大地の女神がサソリで殺したらしい。
いや怖すぎだろ、もしかしたら冗談だったかも知れないじゃん……。
いや怖すぎだろ、もしかしたら冗談だったかも知れないじゃん……。
「その後ゼウスって絶対神がその勇壮を見込んで星座にしたらしいけれど、彼を刺し殺したサソリも一緒に星座になったんだって。なんだか粋だよね」
「オリオンさんも報われねぇな……」
「オリオンさんも報われねぇな……」
粋というより嫌がらせだろ。
まぁ星座になっても強く生きろよと、知り合いでもなんでもないが強く同情してしまった。
まぁ星座になっても強く生きろよと、知り合いでもなんでもないが強く同情してしまった。
「……それにしてもちゃんとそれらしい話があるんだな」
「そうだね。こいぬ座は当初なかったらしいけれど、今はほとんどの星座に物語があるんじゃないかな?」
「こいぬ座?」
「ちょっと見え辛いかな……あそこにあるのがこいぬ座。ちなみに下の方に一際輝く星があるでしょう? あれは『おおいぬ座』の1つで、『シリウス』って言うの!」
「そうだね。こいぬ座は当初なかったらしいけれど、今はほとんどの星座に物語があるんじゃないかな?」
「こいぬ座?」
「ちょっと見え辛いかな……あそこにあるのがこいぬ座。ちなみに下の方に一際輝く星があるでしょう? あれは『おおいぬ座』の1つで、『シリウス』って言うの!」
再び示された星座は正直全く分からない。が、そのシリウスとやらが他の星より強い光を持っていることだけは分かった。
「確かに滅茶苦茶明るいな、あの星。確か何十億光年と前の光が届いているんだろ?」
「よく知ってるね。そう、あれは太陽を除く恒星の中ではいっちばん明るい星の1つなの。『一等星』って言うんだよ」
「よく知ってるね。そう、あれは太陽を除く恒星の中ではいっちばん明るい星の1つなの。『一等星』って言うんだよ」
確かに『恒星の中で一番明るい』と言われるだけあり、青白い光はハッキリと分かった。
星1つにも名前が付いているのか。今までそんなに気にしていなかったが、星というものは案外奥が深いらしい。なんて思っていると、隣で同じように夜空を見上げていた彼女が言う。
星1つにも名前が付いているのか。今までそんなに気にしていなかったが、星というものは案外奥が深いらしい。なんて思っていると、隣で同じように夜空を見上げていた彼女が言う。
「凄いよね。あの星達にはみーんな、1つ1つの物語があるんだよ?」
「物語?」
「オリオン座みたいに神話だったり、星を見付けた経緯だったり……アンタの言う通り過去の光が届いているから、もしかしたら今見ている星はもうないかもしんない。それを考えるとさ、愛おしくならない?」
「物語?」
「オリオン座みたいに神話だったり、星を見付けた経緯だったり……アンタの言う通り過去の光が届いているから、もしかしたら今見ている星はもうないかもしんない。それを考えるとさ、愛おしくならない?」
こちらへ顔を向けたその表情はとても優しく、星の光を受けた瞳は柔らかい光を孕む。
素直で実直、大凶を引いただけで大騒ぎする娘だけれど――彼女が見付けてくれたからこそ自分はここにいるのだ。
「まるで人間みたい! 私達もまた、星と同じように必死で輝いて存在を知らしめているんだよ!」
「……なんじゃそりゃ」
「……なんじゃそりゃ」
両手を広げて屈託なく笑う彼女に、自分も釣られて笑う。
広大な土地に密集する人間は必死で己を輝かせる。
自分にとって『唯一』の光を見付けるために……まるで己の存在を知らしめる、星のように。
自分にとって『唯一』の光を見付けるために……まるで己の存在を知らしめる、星のように。
「じゃあ、もしオレ達が星ならお前は……」
「え、何?」
「……いや、やっぱなんでもねーや」
「え、何?」
「……いや、やっぱなんでもねーや」
――もし星に例えるとしたら、彼女こそ『シリウス』だろうな。
自分で考えたクセにロマンチスト過ぎて、滅茶苦茶恥ずかしい。
口にしたらからかわれること間違いないので、首を傾げる彼女には絶対伝えないようにしようと決めた。
口にしたらからかわれること間違いないので、首を傾げる彼女には絶対伝えないようにしようと決めた。
「え、何よ気になるじゃない。言ってよー!」
「ぜってー言わねー、だって言ったら調子に乗るもんお前!」
「はぁ? 言いなさいよー!」
「ぜってー言わねー、だって言ったら調子に乗るもんお前!」
「はぁ? 言いなさいよー!」
追及から思わず逃げ出せば、彼女は笑いながら追いかける。
そんな他愛ないやり取りも星達は優しく見守ってくれたのであった。
そんな他愛ないやり取りも星達は優しく見守ってくれたのであった。