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天花

ー/ー



俺は六花に向かって語り始める。

「聞いてくれるかな六花?少し長い話になるけど。疲れたら、遠慮なく休んでくれていいから」

「ごめんね」

「俺に気を使わないで。彼女の寝顔を見られるのは彼氏の特権だろ。あ、いや間違えた。六花の寝顔」

「翔ちゃん」

「あの日俺とんでもなく急いでてさ、仕事が予想外に長引いて約束の時間に間に合うか分からなかったんだ。でもあの日はイルミネーションの点灯式に行こうって前から決めていたし」

「私が翔ちゃんに手を振ったから。だから翔ちゃんが車に」

六花の目からまた大粒の涙が溢れ出す。

「違う。六花のせいじゃないんだ。青信号が点滅してたのは知っていたけどワンチャンいけると思って道路に飛び出した俺が悪いんだ」

六花からの答えはない。こうなったら全てを打ち明けるしかなさそうだ。

「実は俺、あの日六花にプロポーズしようと思ってたんだ。イルミネーションが点灯した瞬間に、指輪手渡して、俺と結婚してください。そう言うつもりだったんだ。だから約束の時間に間に合わせなきゃって必死だったんだ。でもそれで事故に遭うとか、バカだよな。プロポーズどころかデートもできなくなっちゃって。最低だよな俺」

本当、最低だ俺。愛しい人の目の前で車に跳ねられるとか。カッコ悪すぎだろ。六花の心に大きなショックを与えてしまった事を思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。全部俺のせいなんだ。分かってくれ六花。

六花はまだ窓の方を向いたままだ。頬をつたう涙が窓ガラスに反射しキラキラと輝いている。俺は何度も六花に詫びた。ごめん。ほんっとにごめん。

そうだ。もしかしたら。
俺は全神経を集中して、天に願う。

「うそ。雪!?」

驚いたように六花が声を上げる。

「ヤバっ。マジか」

これ俺の力だよな。そうじゃなきゃこんなにタイミングよく雪が降ってくるわけないもんな。しかしそれはほんの一瞬の出来事だった。

「残念。終わっちゃった。翔ちゃんも見たよね。雪が大好きだったから」

六花が呟く。

見たに決まってるだろ。この雪俺が降らせたんだから。多分だけど。もっと徳や力のある人だったら、たくさん降らすことも可能かもしれないけど、天国人見習い?の俺は、一生懸命やってこの程度なんだ。

未来予知とか、危険回避術とか、学ばなきゃいけないこと沢山あるな。俺、真面目に勉強してお前をずっと守っていくから。だから時々は思い出してほしいんだ。毎日じゃなくていいし、一年に一度だって構わない。ただ六花の心から俺の存在が完全に無くなってしまうのは嫌なんだ。自分勝手なのは分かってる。でも、でも忘れないでほしいんだ。

気がつくと今日が終わろうとしていた。明日で50日目。いよいよ本当にさよならだ。

俺がこの世界で六花と会うことは二度とない。

気がつくと俺の周りを光の粒が取り囲んでいる。気がつくと指先や足先が透明になっている

六花。俺の愛する六花、こんな別れ方になっちゃって、なんて言っていいかよく分からないけど。
でもこれから先の六花の人生は溢れるほどの幸せが降り注いでくるから。だからこれからは自分の幸せを最優先してください。愛せる人に出会えたら結婚したって構わない。誰よりも優しい君は、きっと誰よりも幸せになる権利を持っていると思うから。

さようならは言わない。これは俺が持っているささやかなプライドってやつかな。本当はずっと話していたい。出来ることなら、また俺を感じてほしい。

俺は六花を力いっぱい抱きしめた。

その時、不意に六花が後ろを振り返る。

「いるんでしょ。そこにいるんだよね。お願い声を聞かせて。りっか。って一言だけでいいから」

俺は必死に口を動かし最後の言葉を紡いでいく。


「愛しい六花、君と出会えて俺は幸せでした」


その瞬間、六花が涙を拭ってにっこりと微笑んだ。きっと俺の思いが伝わったに違いない。

遠くの方で鷹の声が聞こえた気がした。









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俺は六花に向かって語り始める。
「聞いてくれるかな六花?少し長い話になるけど。疲れたら、遠慮なく休んでくれていいから」
「ごめんね」
「俺に気を使わないで。彼女の寝顔を見られるのは彼氏の特権だろ。あ、いや間違えた。六花の寝顔」
「翔ちゃん」
「あの日俺とんでもなく急いでてさ、仕事が予想外に長引いて約束の時間に間に合うか分からなかったんだ。でもあの日はイルミネーションの点灯式に行こうって前から決めていたし」
「私が翔ちゃんに手を振ったから。だから翔ちゃんが車に」
六花の目からまた大粒の涙が溢れ出す。
「違う。六花のせいじゃないんだ。青信号が点滅してたのは知っていたけどワンチャンいけると思って道路に飛び出した俺が悪いんだ」
六花からの答えはない。こうなったら全てを打ち明けるしかなさそうだ。
「実は俺、あの日六花にプロポーズしようと思ってたんだ。イルミネーションが点灯した瞬間に、指輪手渡して、俺と結婚してください。そう言うつもりだったんだ。だから約束の時間に間に合わせなきゃって必死だったんだ。でもそれで事故に遭うとか、バカだよな。プロポーズどころかデートもできなくなっちゃって。最低だよな俺」
本当、最低だ俺。愛しい人の目の前で車に跳ねられるとか。カッコ悪すぎだろ。六花の心に大きなショックを与えてしまった事を思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。全部俺のせいなんだ。分かってくれ六花。
六花はまだ窓の方を向いたままだ。頬をつたう涙が窓ガラスに反射しキラキラと輝いている。俺は何度も六花に詫びた。ごめん。ほんっとにごめん。
そうだ。もしかしたら。
俺は全神経を集中して、天に願う。
「うそ。雪!?」
驚いたように六花が声を上げる。
「ヤバっ。マジか」
これ俺の力だよな。そうじゃなきゃこんなにタイミングよく雪が降ってくるわけないもんな。しかしそれはほんの一瞬の出来事だった。
「残念。終わっちゃった。翔ちゃんも見たよね。雪が大好きだったから」
六花が呟く。
見たに決まってるだろ。この雪俺が降らせたんだから。多分だけど。もっと徳や力のある人だったら、たくさん降らすことも可能かもしれないけど、天国人見習い?の俺は、一生懸命やってこの程度なんだ。
未来予知とか、危険回避術とか、学ばなきゃいけないこと沢山あるな。俺、真面目に勉強してお前をずっと守っていくから。だから時々は思い出してほしいんだ。毎日じゃなくていいし、一年に一度だって構わない。ただ六花の心から俺の存在が完全に無くなってしまうのは嫌なんだ。自分勝手なのは分かってる。でも、でも忘れないでほしいんだ。
気がつくと今日が終わろうとしていた。明日で50日目。いよいよ本当にさよならだ。
俺がこの世界で六花と会うことは二度とない。
気がつくと俺の周りを光の粒が取り囲んでいる。気がつくと指先や足先が透明になっている
六花。俺の愛する六花、こんな別れ方になっちゃって、なんて言っていいかよく分からないけど。
でもこれから先の六花の人生は溢れるほどの幸せが降り注いでくるから。だからこれからは自分の幸せを最優先してください。愛せる人に出会えたら結婚したって構わない。誰よりも優しい君は、きっと誰よりも幸せになる権利を持っていると思うから。
さようならは言わない。これは俺が持っているささやかなプライドってやつかな。本当はずっと話していたい。出来ることなら、また俺を感じてほしい。
俺は六花を力いっぱい抱きしめた。
その時、不意に六花が後ろを振り返る。
「いるんでしょ。そこにいるんだよね。お願い声を聞かせて。りっか。って一言だけでいいから」
俺は必死に口を動かし最後の言葉を紡いでいく。
「愛しい六花、君と出会えて俺は幸せでした」
その瞬間、六花が涙を拭ってにっこりと微笑んだ。きっと俺の思いが伝わったに違いない。
遠くの方で鷹の声が聞こえた気がした。