本編
ー/ー 俺はクリスマスが嫌いだ。 改めていう、俺はクリスマスが大嫌いだ。 世間が楽しさに賑わう中で、仕事をしていることもあるが一番の理由はいい思い出がないことだ。
輪をかけて、俺の住む町には【駅前のクリスマスツリーの下で愛を誓うと幸せになる伝説】が存在し、賑わうのである。
この時期の通勤で駅前を通る俺には帰るのにも一苦労するこの時期がますます嫌いになった。「よっ、三田もお疲れ」
「おう、何とか終電には間に合う時間に終わったな」 俺—三田充治(みた みつはる)—は同僚の遠仲 戒人(とおなか かいと)から缶コーヒーを貰う。
お疲れといっているが、カイトのミスを俺が尻ぬぐいするハメになったから残業をしていた。
もっとも、早い時間に帰ると駅前が混んでいるので終電近いのはある意味で狙い通りでもあるんだが……。「そういやさ、三田の住んでいるところって伝説のクリスマスツリーがあるんだろ? 告白とかしないの?」
「カイト、一つだけ言ってやる。かなわないから伝説っていうんだよ」
「なんだよ、ノリが悪いなぁ」
「オマエみたいに要領よくなんてできないからな……じゃあ、お疲れ」
「お疲れ~。今日は助かった! また何かあったら、頼む!」 チャラいカイトと別れを告げ、タイムカードを押して俺はオフィスを後にした。
電車に揺られて1時間ほどたち、最寄り駅につく。
駅前広場にツリーは立っているため、電車が到着する前にちらりと様子がうかがえた。
終電近いため、人はほとんどいない。「助かったな。これでまっすぐ帰れる。昨日は告白して振られた酔っ払いに絡まれたからなぁ……」 ため息を漏らしながら改札をくぐって外にでると、イルミネーションに彩られたクリスマスツリーが見える。
その先にあるビルの屋上付近には電光掲示板があり、【12/25 0:00】と時間が表示されていた。「メリークリスマスにベリー苦しみますってか……何をいっているんだか、年をとったな」 俺は30代も後半であり、同僚のカイトも高校時代の同級生も嫁や子供がいる。
当然俺は独り身だ。「女なんて……ロクでもない……」 小さくぼやいて駅前広場を去ろうとすると、騒がしい声がした。
そちらを見ると若い女が、ヤンキー達に絡まれているようである。「伝説のツリーの下にいるってことは恋人募集中っしょ? ねぇ、オレらと飲もうよ~」
「ちょっと、別に良いですから……ほっといてください」 立ち去ろうとする女を3人のヤンキーが取り囲んだ。
逃がすつもりはないらしい。
俺はため息を一つすると、大きな声を女にかけた。「おーい! こんなところにいたのか、待ち合わせに遅れてごめん!」
「ちっ、んだよ。カレシいるじゃんかよ……」 ヤンキーは俺が近づいてくると悪態をつきながら去っていく。
素直に去ってくれて何よりだった。「大丈夫か? 待たせて悪かった」
「あ、あの……」 何かを言おうとした女に俺は『話を合わせて、あいつらがまだいる』という文字を打った画面を見せる。
すると、女は小さく頷き俺の腕に腕を絡ませてきた。「遅いですよー。それじゃあ、待たせたお詫びにコンビニで飲み物奢ってくださいよ」 この女ノリノリである。
だから女は苦手なんだ……。
そう思いながらも、俺は女を連れてコンビニに向かった。「あ、名乗っていませんでしたね。私は来栖 凛(くるす りん)といいます。貴方の名前は?」 コンビニつくと、腕をほど頭を下げた女は自己紹介をしてくる。「俺は三田充治だ。こんな時間まで女一人でいるなんて、絡まってくれと言っているようなものだぞ?」
「一人でいたくていたわけじゃないんです……恋人と待ち合わせしていたんですが、振られちゃったみたいです」 あははと力なく笑う凛の目元は少し腫れていた。
事情はわからないが、深入りするべきことでもない。
厄介事に巻き込まれたくもなかった。
「そうか……それじゃあ、次の恋を頑張ってくれ。俺はお詫びの飲み物奢ったらお別れだ」
「酷い! こんな時間に女一人でいるなんてと言っておきながら、ここで放置ですか!? せめてウチまで送ってってくださいよ。セキニンとって!」
「誤解を与えるいい方をするなぁ!」 コンビニで騒ぎ始めた俺らは店員に注意されたので、すぐさま飲み物(なぜか、酒とツマミになっていた)を買って、リンの家に向かう。
道中、リンは元気というか自棄な雰囲気で恋人との馴れ初めとか、実は浮気されている可能性あることなどを話してきた。
大学生で、その恋人はバイト先の先輩らしい。
俺にとってはどうでもいい話なので、適当に相槌を打っているとリンの家に着いた。「ありがとうございました。お陰でスッキリしました」
「そりゃよかった。じゃあ、二度と会うことはないだろうが……おやすみ」
「おやすみなさい」
そうして、俺は家に戻り平和ともいえる日常が戻る。
はずだった。——翌年の春「今年より、新入社員になりました来栖 凛です! よろしくお願いします。三田先輩♪」 クリスマスツリーの伝説を俺は少しだけ信じることになる。
今でもクリスマスは嫌いだが、リンとの出会いだけは感謝した。
輪をかけて、俺の住む町には【駅前のクリスマスツリーの下で愛を誓うと幸せになる伝説】が存在し、賑わうのである。
この時期の通勤で駅前を通る俺には帰るのにも一苦労するこの時期がますます嫌いになった。「よっ、三田もお疲れ」
「おう、何とか終電には間に合う時間に終わったな」 俺—三田充治(みた みつはる)—は同僚の遠仲 戒人(とおなか かいと)から缶コーヒーを貰う。
お疲れといっているが、カイトのミスを俺が尻ぬぐいするハメになったから残業をしていた。
もっとも、早い時間に帰ると駅前が混んでいるので終電近いのはある意味で狙い通りでもあるんだが……。「そういやさ、三田の住んでいるところって伝説のクリスマスツリーがあるんだろ? 告白とかしないの?」
「カイト、一つだけ言ってやる。かなわないから伝説っていうんだよ」
「なんだよ、ノリが悪いなぁ」
「オマエみたいに要領よくなんてできないからな……じゃあ、お疲れ」
「お疲れ~。今日は助かった! また何かあったら、頼む!」 チャラいカイトと別れを告げ、タイムカードを押して俺はオフィスを後にした。
電車に揺られて1時間ほどたち、最寄り駅につく。
駅前広場にツリーは立っているため、電車が到着する前にちらりと様子がうかがえた。
終電近いため、人はほとんどいない。「助かったな。これでまっすぐ帰れる。昨日は告白して振られた酔っ払いに絡まれたからなぁ……」 ため息を漏らしながら改札をくぐって外にでると、イルミネーションに彩られたクリスマスツリーが見える。
その先にあるビルの屋上付近には電光掲示板があり、【12/25 0:00】と時間が表示されていた。「メリークリスマスにベリー苦しみますってか……何をいっているんだか、年をとったな」 俺は30代も後半であり、同僚のカイトも高校時代の同級生も嫁や子供がいる。
当然俺は独り身だ。「女なんて……ロクでもない……」 小さくぼやいて駅前広場を去ろうとすると、騒がしい声がした。
そちらを見ると若い女が、ヤンキー達に絡まれているようである。「伝説のツリーの下にいるってことは恋人募集中っしょ? ねぇ、オレらと飲もうよ~」
「ちょっと、別に良いですから……ほっといてください」 立ち去ろうとする女を3人のヤンキーが取り囲んだ。
逃がすつもりはないらしい。
俺はため息を一つすると、大きな声を女にかけた。「おーい! こんなところにいたのか、待ち合わせに遅れてごめん!」
「ちっ、んだよ。カレシいるじゃんかよ……」 ヤンキーは俺が近づいてくると悪態をつきながら去っていく。
素直に去ってくれて何よりだった。「大丈夫か? 待たせて悪かった」
「あ、あの……」 何かを言おうとした女に俺は『話を合わせて、あいつらがまだいる』という文字を打った画面を見せる。
すると、女は小さく頷き俺の腕に腕を絡ませてきた。「遅いですよー。それじゃあ、待たせたお詫びにコンビニで飲み物奢ってくださいよ」 この女ノリノリである。
だから女は苦手なんだ……。
そう思いながらも、俺は女を連れてコンビニに向かった。「あ、名乗っていませんでしたね。私は来栖 凛(くるす りん)といいます。貴方の名前は?」 コンビニつくと、腕をほど頭を下げた女は自己紹介をしてくる。「俺は三田充治だ。こんな時間まで女一人でいるなんて、絡まってくれと言っているようなものだぞ?」
「一人でいたくていたわけじゃないんです……恋人と待ち合わせしていたんですが、振られちゃったみたいです」 あははと力なく笑う凛の目元は少し腫れていた。
事情はわからないが、深入りするべきことでもない。
厄介事に巻き込まれたくもなかった。
「そうか……それじゃあ、次の恋を頑張ってくれ。俺はお詫びの飲み物奢ったらお別れだ」
「酷い! こんな時間に女一人でいるなんてと言っておきながら、ここで放置ですか!? せめてウチまで送ってってくださいよ。セキニンとって!」
「誤解を与えるいい方をするなぁ!」 コンビニで騒ぎ始めた俺らは店員に注意されたので、すぐさま飲み物(なぜか、酒とツマミになっていた)を買って、リンの家に向かう。
道中、リンは元気というか自棄な雰囲気で恋人との馴れ初めとか、実は浮気されている可能性あることなどを話してきた。
大学生で、その恋人はバイト先の先輩らしい。
俺にとってはどうでもいい話なので、適当に相槌を打っているとリンの家に着いた。「ありがとうございました。お陰でスッキリしました」
「そりゃよかった。じゃあ、二度と会うことはないだろうが……おやすみ」
「おやすみなさい」
そうして、俺は家に戻り平和ともいえる日常が戻る。
はずだった。——翌年の春「今年より、新入社員になりました来栖 凛です! よろしくお願いします。三田先輩♪」 クリスマスツリーの伝説を俺は少しだけ信じることになる。
今でもクリスマスは嫌いだが、リンとの出会いだけは感謝した。
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