表示設定
表示設定
目次 目次




ー/ー



 それから ぼくは、どうやって 帰ったかは 覚えていない。もうすっかり暗くなっていた道をまた、足が棒になるくらいに歩いて……気がついたら、目を真っ赤にしたお母さんに抱きしめられていた。
「お母さん、おばあちゃんは? おばあちゃんは、大丈夫なの?」
 何回もそうたずねた ぼくに、お母さんは「大丈夫。大丈夫だから……」と言って、なみだを 流していた。

 お正月の朝。目を 覚ますと、おばあちゃんが やさしく ぼくの 頭をなでてくれた。
「おばあちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫。もう、すっかり 元気だよ。ごめんねぇ、心配かけて」
「よかった……」
 すっかり安心して 泣きそうになっている ぼくに おばあちゃんは にっこりと 笑った。その笑顔は、まるでユキちゃんのようで……ぼくは、思い出した。おばあちゃんの 名前も ユキだったんだ。
「ねぇ……おばあちゃん」
「どうしたんだい?」
「小さい時……ぼくみたいな 泣き虫の 男の子に 会ったことない?」
 すると、おばあちゃんは 少し目を丸くしたけれど、すぐにまた、にっこりと笑った。
「そうだねぇ……。昔のことは 覚えてないけれど、夢……ハルくんっていう、泣き虫だけど、すっごくおばあちゃん想いのやさしい男の子の夢は 見たような 気がするよ」
「そっか」
 ぼくは おばあちゃんと 顔を見合わせて にっこりと 笑った。
「それより、ハル。いいにおいがしないかい?」
「あ、本当だ。お雑煮のにおい……」
 ぼくのおなかの虫がグーとなった。
「今日はごちそう。楽しみだねぇ」
「うん。でも……ぼくは、ごちそうよりも、お年玉よりも、おばあちゃんが 元気になったことが、一番うれしい!」
 昨日までより、ちょっぴり大人になったぼくを見て、おばあちゃんがにこにこと笑う。窓の外には、雪で作られた小さな うさぎさんが ちょこんと 置かれていた。


write-comment-icon コメントを書く
write-review-icon レビューを書く
誤字報告

 それから ぼくは、どうやって 帰ったかは 覚えていない。もうすっかり暗くなっていた道をまた、足が棒になるくらいに歩いて……気がついたら、目を真っ赤にしたお母さんに抱きしめられていた。
「お母さん、おばあちゃんは? おばあちゃんは、大丈夫なの?」
 何回もそうたずねた ぼくに、お母さんは「大丈夫。大丈夫だから……」と言って、なみだを 流していた。
 お正月の朝。目を 覚ますと、おばあちゃんが やさしく ぼくの 頭をなでてくれた。
「おばあちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫。もう、すっかり 元気だよ。ごめんねぇ、心配かけて」
「よかった……」
 すっかり安心して 泣きそうになっている ぼくに おばあちゃんは にっこりと 笑った。その笑顔は、まるでユキちゃんのようで……ぼくは、思い出した。おばあちゃんの 名前も ユキだったんだ。
「ねぇ……おばあちゃん」
「どうしたんだい?」
「小さい時……ぼくみたいな 泣き虫の 男の子に 会ったことない?」
 すると、おばあちゃんは 少し目を丸くしたけれど、すぐにまた、にっこりと笑った。
「そうだねぇ……。昔のことは 覚えてないけれど、夢……ハルくんっていう、泣き虫だけど、すっごくおばあちゃん想いのやさしい男の子の夢は 見たような 気がするよ」
「そっか」
 ぼくは おばあちゃんと 顔を見合わせて にっこりと 笑った。
「それより、ハル。いいにおいがしないかい?」
「あ、本当だ。お雑煮のにおい……」
 ぼくのおなかの虫がグーとなった。
「今日はごちそう。楽しみだねぇ」
「うん。でも……ぼくは、ごちそうよりも、お年玉よりも、おばあちゃんが 元気になったことが、一番うれしい!」
 昨日までより、ちょっぴり大人になったぼくを見て、おばあちゃんがにこにこと笑う。窓の外には、雪で作られた小さな うさぎさんが ちょこんと 置かれていた。


おすすめ小説


おすすめ小説



comment-icon新着コメント



コメントはありません。投稿してみようっ!