冬からの旅立ち
ー/ー 蓄えた金が尽きつつある、これ以上は進めない。会計係のワンウンムウが、そう言った。旅費が無ければ冒険の旅は続けられない。リーダーのスローレウスは冒険のスポンサーから金を貰いに行こうと言った。後戻りすることになるが、それしかないとパーティーの全員が思った。俺もだ。だが俺は一応、警告することにした。
「戻るのなら山越えになる。冬の終わりが近づいているけど、山の上は、まだ冬の真っ最中だと覚悟しておいたほうがいいぞ」
俺を除く五人の勇者は寒さに対し自信があるようで、俺の発言にはっきりした反応を示さなかった。山育ちのワンウンムウと経験豊富なリーダーのスローレウスの二人だけは、俺の不安を理解したようだった。
ワンウンムウは言った。
「念のために冬用の装備を買っておきたいけど、その費用は無いんだよ、これが」
嘆くワンウンムウにスローレウスが萎びた顔を向けた。
「そうは言ってもなあ、体が資本だから。毛布くらいなら買えるんじゃないか」
朝早くに市場へ行って全員分の毛布を買って、出発。しかし、そのときには天候が崩れ始めていた。暗澹たる気分を身の内に湧き上がらせる灰色の大気が俺たちの前方に重くのしかかる。灌木の茂った丘陵地帯が影絵のように浮かんで見えた。丘々の間を通り抜ける。丘の斜面の傾斜には古い時代の地層が斜めの層になって折り重なっていた。古代の獣の化石らしき石が幾つか見える。掘れば採れそうだ。化石を掘り出して売れば儲かるかもしれない。だが、貴重な化石を喜んで買ってくれる文明社会は、ここから遠く離れた場所にある。掘ったところで、それを売りに行く金が無いのだから、話にならない。
やがて霧が出てきた。丘と丘の間の峡谷にある融雪の泥流跡が見えなくなる。そのうち冷たい雨を含んだ雪が降り始めた。道の勾配がきつくなってきた。峠が近づいているのだ。正午頃、まるで薄暮にも似た暗さの中に峠の砦跡が佇んでいるのが遠目に分かった。でも、それは一瞬のこと。すぐに降雪にかき消えて見えなくなる。雪の勢いが強まった。山頂に近づくにつれ、風も強くなる。夕方になったら、もう何も見えない。それでも何とか峠の砦跡にたどり着き、そこで一泊。食事を摂りながら暖を取ったが、寒すぎて味が分からない。さっさと寝るに限る。だが毛布を二枚重ねても寒い、眠れない。寒さに疲れが勝ったのが、三枚目の毛布の代わりになった。凍死せず全員が朝を迎えた。簡単な朝食を食べ出発。下り坂は凍結していた。俺は転んだ。いや、皆、一回は転倒した。山向こうにある冒険のスポンサーが暮らす村へ到着した昼過ぎには、泥だらけの集団となっていた。リーダーのスローレウスがスポンサーと交渉し、旅費をゲットするまで、俺たちは村の片隅で泥のように眠った。
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