オレの同居人はとても我儘だ。
四六時中、何かにつけては文句をいい、同居人であるオレを困らせた。
ある日、散歩に出ていた同居人が帰って来るや否や、何処で購入したのか、大きくて怪しいビニール袋を、玄関まで出迎えたオレに突き付けた。
不機嫌な顔で中を覗き込むと、何かの材料が入っている。
眉をひそめたオレに
「これで今すぐプリンを作れ」
と、同居人が命令する。
「やなこった、自分で作れ!」
「ここの部屋代、誰が出していると思っているんだ?」
「……それを言うな」
オレは不貞腐れて、もう一度袋の中身を見ながら、材料を確認した。
「何かが足らん」
そう呟くオレの瞳には、牛乳という物が捉えられなかった。
「なぁ、牛乳……」
「買うの忘れた」
「仕方ねぇなぁ、ちょっと買ってくるから、用意だけしておいてくれ」
オレは、大きく溜め息を吐いてそう言うと、自室へと向かう。
数分後、再び同居人の前に姿を現したオレの手には、可愛いアヒルの絵柄の財布が握られていた。
それから、近くのスーパーで牛乳とプラスα《アルファ》を購入して帰ってきたオレは、早足でキッチンに入って驚愕した。
まるでキッチンにだけ台風が通り過ぎたかのように、何もかもがひっちゃかめっちゃかになっていたからだ。
「あっ、ゴキブリがいて、追っかけていたらこうなった」
”仕留めた”と言わんばかりに、丸まったティッシュを見せた同居人に
「どうでもいいから、さっさと片付けろ!」
と、オレは目くじらを立てて命令する。
流石にまずいと思ったのであろう。
同居人は特に反抗もせず、辺りを無言のまま片付け始める。
オレも、“こんなに本気で怒ったのは久しぶりだな”と思いながら、黙々と手を動かす同居人に倣い、片付けを手伝った。
それから1時間後。
普段よりも綺麗になったキッチンで、珍しく2人で協力しあって出来たプリンは、市販されているものよりも、大きくて食べがいがあるプリン卯《モノ》になった。
同居人と一緒に食べるプリン。
数年後、いつか笑い話として語り継がれるんだろうなと思ったら、なんだかいつもよりも美味しく感じた。
お仕舞い
令和6(2024)10月10日~令和6(2024)年10月18日作成
Mのお題
平成29(2017)年12月1日①
「ある日突然、世界中の猫が話せるようになった」