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最終話 新たな予言

ー/ー



「どうして仲良くできなかったのよ。小次郎と武蔵クンをドッグランに連れてこうと、ずっと楽しみにしていたのに」

 結局、トイプードルのドッグランデビューは失敗に終わった。

 というのも、俺がドッグランの入り口で狂ったように吠えたために、他のお客様の迷惑になるからと店員に入店を拒まれたのだ。

 しかし、深雪と女性は懲りもせず、来週にもリベンジを果たそうと約束を交わした。

 俺とトイプードルをどうしても仲良くさせたいようだが、そもそも日本史上の武蔵と小次郎でさえライバル同士であり決して仲良しではない。それなのに仲良くしろというのは彼女たちのエゴであり、偉人たちにも失礼ではないか。

 俺は今後もトイプードルと馴れ合うつもりは毛頭なかったから、深雪が女性と連絡を取り合っているスマホを奪い取り、噛み応えのいいおもちゃのようにガリガリと噛んだ。

「コラ、スマホを噛んじゃダメって言ってるでしょ! まったく油断も隙も無いんだから」

 スマホをすぐにひったくられ、不満で鼻を鳴らすと、彼女は呆れたように溜め息を吐いた。

 俺は仕方なく深雪の太ももに頭を寄せて、彼女の心地よい手のひらに身を任せることにした。

 ふとテレビを見ると、サイエンスミステリーの特別番組が流れていた。

 いつか俺にドーパミンの予言をしたあの胡散臭そうな脳科学者がまたもや()()()()()()()顔で持論を述べているところだった。

「人と犬が見つめ合うとオキシトシンという愛情ホルモンが双方で分泌されることが分かっています。この愛情ホルモンは双方の心を癒し、人と犬をとても幸せな絆で結びつけてくれるのです」

 とても幸せな絆──。

 その美しい響きが気に入り、彼女を見上げると、世界で一番いとおしい存在へ向ける穏やかな視線がしっかりと俺に注がれていた。

 一瞬にして笑顔綻ぶ幸せがやって来る。

 来週はトイプードルと仲良くするふりくらいだったらしてやってもいいと思えるから不思議だ。

 脳科学者は俺たちの愛で満ち溢れた日々を、予言よりも確かな言葉で保証した。


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「どうして仲良くできなかったのよ。小次郎と武蔵クンをドッグランに連れてこうと、ずっと楽しみにしていたのに」
 結局、トイプードルのドッグランデビューは失敗に終わった。
 というのも、俺がドッグランの入り口で狂ったように吠えたために、他のお客様の迷惑になるからと店員に入店を拒まれたのだ。
 しかし、深雪と女性は懲りもせず、来週にもリベンジを果たそうと約束を交わした。
 俺とトイプードルをどうしても仲良くさせたいようだが、そもそも日本史上の武蔵と小次郎でさえライバル同士であり決して仲良しではない。それなのに仲良くしろというのは彼女たちのエゴであり、偉人たちにも失礼ではないか。
 俺は今後もトイプードルと馴れ合うつもりは毛頭なかったから、深雪が女性と連絡を取り合っているスマホを奪い取り、噛み応えのいいおもちゃのようにガリガリと噛んだ。
「コラ、スマホを噛んじゃダメって言ってるでしょ! まったく油断も隙も無いんだから」
 スマホをすぐにひったくられ、不満で鼻を鳴らすと、彼女は呆れたように溜め息を吐いた。
 俺は仕方なく深雪の太ももに頭を寄せて、彼女の心地よい手のひらに身を任せることにした。
 ふとテレビを見ると、サイエンスミステリーの特別番組が流れていた。
 いつか俺にドーパミンの予言をしたあの胡散臭そうな脳科学者がまたもや|も《・》|っ《・》|と《・》|も《・》|ら《・》|し《・》|い《・》顔で持論を述べているところだった。
「人と犬が見つめ合うとオキシトシンという愛情ホルモンが双方で分泌されることが分かっています。この愛情ホルモンは双方の心を癒し、人と犬をとても幸せな絆で結びつけてくれるのです」
 とても幸せな絆──。
 その美しい響きが気に入り、彼女を見上げると、世界で一番いとおしい存在へ向ける穏やかな視線がしっかりと俺に注がれていた。
 一瞬にして笑顔綻ぶ幸せがやって来る。
 来週はトイプードルと仲良くするふりくらいだったらしてやってもいいと思えるから不思議だ。
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